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俺のランニング生活

大学で長距離走をやっていました。練習日誌や普段思っていること、自分の陸上競技論を書きます!

長距離を速く走るには何を改善すべきか

2014-02-19 23:14:26 | 陸上競技論

何事も目的を持って行うということはとても大切なことだと思います。トレーニングについても例外ではありません。長距離走を速く走るためには、 


「何を改善したら記録が向上するのかを知る」→「それを改善するトレーニングを行う」

 

を行うことが必要だと思います。「何を改善したら記録が向上するのか」という疑問に対して、単に「持久力」とか「スピード」といった定義が曖昧なものではなく、正確にその要素をとらえることが必要だと思います。

 

今回紹介するのは Owen Anderson著, "Running Science",にあった内容です。この本は昨年出版されたばかりの本で、目からウロコが落ちるような内容です。今までの日本の伝統的な長距離走のトレーニングを覆すような内容でショッキングでした。また、川内優輝選手や藤原新選手の活躍の理由が分かった気がしました。

http://www.amazon.com/Running-Science-Owen-Anderson/dp/073607418X

 

 

この本の中でOwen Andersonは、以下の7つの要素を挙げています。

 

 

トレーニングで改善すべき7つの要素

 

1.最大酸素摂取量

一定時間に身体に取り込める酸素の最大量。

 

2.最大酸素摂取量100%ペース維持時間

最大酸素摂取量が出現するペースを維持できる時間。人によって4分から10分と差がある。

 

3.乳酸性作業閾値

高強度の運動で血中に蓄積される乳酸を再利用して、エネルギーに変換する能力。

 

4.疲労への耐性

高強度の運動時に、脳からの運動制限の指令に打ち勝つ能力。従来は運動中の疲労の原因は主に乳酸と考えられてきたが、それだけでは説明しきれない現象がある。その矛盾に対して、Tim Noaksは、身体が限界を超えて運動しないように、予測を立てて末梢を管理している、セントラルガバナー(central governor)を提唱した。(Noaks,1997)

 

5.ランニングエコノミー

走りの経済性。一定のペースで走るためにどれだけ少ない酸素の消費量に抑えることが出来るか。車で例えるなら燃費。最大酸素摂取量が同じ2人のランナーでも、ランニングエコノミーが優れているランナーの方が長距離を速く走れる。

 

6.ランニングの為の筋力

走動作に関わる筋力。

 

7.ランニングの最大スピード

20m~300mを全力で走る際の最大スピード。

 

 

 

「最大酸素摂取量」や「最大酸素摂取量100%ペース維持時間」、「乳酸性作業閾値」 は伝統的な日本の長距離走のトレーニングでよく改善が図られてきましたが、「疲労への耐性」、「ランニングエコノミー」、「ランニングの為の筋力」、「ランニングの最大スピード」はまだまだ未開拓の部分だと思います。

特に興味深いのは「ランニングエコノミー」と「ランニングの最大スピード」です。アフリカのランナーは体型が走りに有利なために「ランニングエコノミー」が優れていると言われていますが、実はトレーニングで改善することが可能なのです。また、マラソン選手であっても「ランニングの最大スピード」を向上させることが42kmの記録改善につながると著者は説いています。


200m、400m、800m、1500m各記録の相関関係

2014-02-16 20:52:35 | 陸上競技論

久しぶりの投稿です。

 私は以前、様々なレベルの短距離走者の200mと400mの記録の関係を調べたことがあります。その結果おおよそ次のような関係が成り立つことがわかりました。(※単純なことなので私以外にもこのことに気付いた人はいると思います。)

 

400mの記録=(200mの記録+2秒)×2

 

例えば200mが25秒の選手の400mの記録は

 

(25+2)×2=54

 

から54秒であると予測できます。

 

 

また、400m、800m、1500mの各記録の相関関係はDanielsが"Daniels Running Formula"で報告しています。(Daniels,1998)

 

 

これらのデータを用いて、Danielsが作成した400m、800m、1500mの各記録の相関関係の表に200mの記録を追加したもの(表1)を作成しました。

 

表1からは以下の2つのことがわかります。

1.持久力とスピードのバランス

2.ある距離での目標記録を達成するために必要な他の距離での記録の目安
200,400,800,1500の相関

 例えば、800mで2分を切るためには、200m:25秒、400m:54秒、程度の記録が必要だと分かります。

 

 200mの記録改善は400mの記録改善に、400m記録改善は800mの記録改善に、800mの記録改善は1500mの記録改善に、1500mの記録改善は5000mの記録改善に、5000mの記録改善は10000mの記録改善へと繋がっていきます。この論法でいけば、長距離走者といえども、短い距離でのスプリント力の養成が重要だということになります。今、ネット上でアメリカのAlberto Salazarが指導するMohamed Farahや Galen Rupp(それぞれ、ロンドン五輪10000m金、銀メダリスト)のトレーニングが公開されていますが、彼らも長距離走者ながら短距離選手が行っているようなトレーニングを取り入れているようです。

これらのことから長距離走の記録が頭打ちになっている選手は、短い距離の記録を改善するようなトレーニングを行うことが勧められます。「短距離は短距離、長距離は長距離」と分けて考えるのではなく一つの「走り」として捉え、スピードと持久力をバランスよく引き上げることが大切だと思います。