goo blog サービス終了のお知らせ 

黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

追悼・岡本敏子

2005-12-11 01:07:55 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像


昨日、太陽の塔をアップして突然思い出しました。
軍艦島のサイトの素材作りで、頭がいっぱいで、
回りの事がなにも目にはいらなかった時です。

随分遅れてですが、岡本敏子さんのご冥福をお祈りします。

最後に敏子さんにお会いしたのは、
去年の暮れ頃だったでしょうか?
川崎の岡本太郎美術館のオープンでお会いして以来、
数回しかおめにかかりませんでしたが、
まだまだ100年はいけそうな位、
いつもいつも大笑顔の元気な方でした。
ちなみに敏子さんのお元気なころの姿は、
岡本太郎美術館の出口近くの映像ブースでみることができますが、
そのうちの一本のBGMを担当させていただきました。
(なにげに宣伝しています(汗)

画像は岡本太郎美術館の中庭にある『母の塔』です。
 


太陽の塔

2005-12-10 09:10:50 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像


大阪万博 EXPO'70 のシンボルだった太陽の塔は、
現在も跡地を利用した万博公園のシンボルとして聳え立つ、
とても綺麗な廃墟です。
万博当時はエキスポ広場を覆う巨大な天井を、
突き破るように立っていたので、
会期中はその全貌をみることが出来ませんでしたが、
終了後は画像のように単体で立っているので、
遠くからでも全体をみることができます。

モノレールをはさんで向かいにあった
<エキスポランド>のシンボル<エキスポタワー>も解体された今、
当時を伝えるのはこの太陽の塔とその奥に写るエキスポホール、
そして倉庫に使われている鉄鋼館くらいになってしまいました。

子供心にはすんなりと受け入れられたこの塔も、
今からみるとかなり奇妙奇天烈な建築です。
思えばFXPO'70のパビリオンはどれも奇妙奇天烈でした。
でも魅力に溢れた建物でした。

EXPO'70 の入場者数は約6400万人。
国をあげての大祭りに国民が皆のっかった、
最後のイベントだったと思います。
ちなみに今年行われた愛知万博の入場者数は約2200万人。
EXPO'70で展示されたリニアモーターカーがやっと動きました。
<超高速特急>という言葉にわくわくしなくなってから、
遥かに時間がたった今も、
まだ<東京←→大阪1時間>は実現していません。



園内には EXPO'70 のシンボル<桜>のマークが入ったマンホールの蓋が、
錆び付きながらも残っていました。


チルアウトと廃墟

2005-02-04 12:51:07 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像
 

'Cafe del Mar 25'のCDにオリジナル曲が収録されました。(disc2:M-15)

カフェ・デル・マーとは、スペインのリゾート島にあるサンセット・バーで、
ここが毎年リリースするコンパイルCDはクラブ・ミュージックの癒し系と言われる
チルアウト・ミュージックのブランド。

このCDのシリーズは私も昔から聴いていましたが、その記憶を思い出してみると、
以外に多くの曲に廃墟のイメージをだぶらせて聴いていたような気がします。
廃墟とサンセット・バー・・・一見似つかわしくなさそうですが、
夕日と廃墟は以外と共通性があるようにも思えます。
夕日を見たときに感じる、「静かな時の流れ」や「荘厳な印象」、「天空の微妙なグラデーション」
といった感じは、廃墟の中に立った時にも感じる同じキーワードのような気がします。
またこのチルアウトという音楽は、アフターアワーズ、つまりクラブで踊り疲れた明け方、
熱を冷ますために聴く音楽でもあり、明け方のすがすがしさや新しい朝日の感じは、
廃墟の中に力強く生きる植物たちの生命力にも共通するような気もします。

そんなわけでオープロジェクトの作品には、だいたいチルアウト系の音を付けてきたので、
廃墟に心霊的な楽しみや、恐怖の楽しみを求める方には、あまりそぐわないBGMかもしれませんね。


イギリスのミュージカルと廃墟

2005-01-30 19:32:50 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像
 
 
オペラ座の怪人』を観ました。
このミュージカル映画はイギリスの代表的ミュージカル脚本家であり作曲家の、
ウェバー(アンドリュー・ロイド)の手による、本人曰く最高傑作のミュージカルを映画化したものです。
全編に流れる印象的な曲は、ウェバーが当時熱愛中だったサラ・ブライトマンのために書いたもの。
勿論サラが出演するオリジナル版は観てませんが、公演をそのまま録音したCDは、発売されています。
それを聞く限り、クリスティーヌの歌声は今回の映画版のエミー・ロッサムの方がいい感じだと思います。

それはさておき、舞台となるオペラ座の廃墟から始まるこの映画は、
怪人の住む洞窟状の部屋など、充分廃墟心を満たしてくれる作品でした。
この舞台設定があるからこそ、怪人のかなわない思いもいっそう強調されていると。

ところでイギリスのミュージカルと言えば『ロッキー・ホラー・ショー』を忘れられません。
ジェンダーの宇宙人フランケン・フルターが自分好みのマッスル人造人間を作っては大暴れする、
イギリスのみならず世界でも屈指のB級ミュージカル。
映画版は、アカデミー賞常連女優のスーザン・サランドンの初主演映画でもありますが、
この作品も廃墟(古城)が舞台です。
この古城の廃墟は実在する建物がモデルになっていて、今ではオークリーコートというホテルになっています。
もう20年位前、ロッキー・ホラー・ショーにはまってこの古城を観に行ったことがありますが、
確かに映画に出くるまさにそれと同じ外観でした。
この映画の配給はアメリカで、舞台もアメリカという設定にはなっていますが、
原作者のオブライエン(リチャード)は生粋のイギリス人です。

イギリスのミュージカルに漂う独特な廃墟感が好きです。

■blog search■
ノース・ヨークシャーにお住まいの方の美しい廃墟の写真
ウィットビー修道院跡スカーバラ城ボルトン小修道院跡

生体廃墟-大野一雄

2005-01-24 16:48:39 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像
 

一昨日、久しぶりに大野一雄を観ました。
本来は大野慶人のミニ公演だったのですが、珍しく体調が良かったので、大野一雄も来たのでしょう。
大野一雄とは、日本舞踏界の第一人者で、土方巽と共に舞踏を世界に知らしめたその人です。
もう100才近いため、殆ど公演を行うことはできなくなってしまいましたが、それでも本人は健在です。

それにしても舞踏はなぜ廃墟のイメージと繋がるのでしょう?
土方巽大駱駝艦山海塾も、そして勅使河原三郎も、
それぞれまったくアプローチは違いながら、そのどれもが観るたびに常に廃墟を連想します。
人の息吹が十分に感じられる若い廃墟の土方巽、
さらにもっとわぎわぎとして体液を感じる麿赤子の廃墟、
逆に乾ききって、もう人の息吹を感じなくなった山海塾の廃墟、
そしてインダストリアル・エイジの廃墟、勅使河原三郎。

そんな中にあって、大野一雄の廃墟は、凄く身近であり、常にそこには花があります。
できる事なら、見る物を涙の渦に誘い込む、
生体廃墟-大野一雄の指先から咲く一輪の美しい花を、また観てみたいものです。



ファッション<旗>展

2005-01-16 03:32:02 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像
 

銀座の廃墟ビル「奥野ビル」。
廃墟と言っても、このビルは現役だから本当は廃墟ではありませんが、
昭和7年に建てられたこのビルは、充分近代レトロ建築物の域に入っています。
現在は画廊が沢山入り、画廊ビルとして機能している変わったビルです。

このビルにある画廊の一つ、「巷房」で明日1月17日から
門田秀雄氏の「ファッション<旗>展」という展覧会が開かれます。
旗とは日の丸のこと。
芸術家、門田秀雄氏が2001年から拘ってきたテーマで、
今回はそのファッションへの展開が目論見です。
2001年には平面で、2002年には映像で、そして今回はファッションによって、
身近でありながらあまりにも遠い「日の丸」に新しい視点を与える試みですが、
この一連の作品は、日本や日本人ということを改めて考えさせられる作品だと思います。
私は2002年の映像バージョンの時に、音楽で参加させてもらいましたが、
これは去年の夏、栃木県立美術館での上映作品にも選定されました。
そして今回はチラシのデザインで関わらせてもらいました。





普段あまり気にしない日の丸ですが、
この機会に、日の丸から今を考えてみるのはどうでしょうか。

ギャラリー巷房
中央区銀座 1-9-8 奥野ビル 3F+BF
TEL : 03-3567-8727


ロード・オブ・ザ・リングと廃墟

2005-01-11 15:02:44 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像
久しぶりにロード・オブ・ザ・リングの第一話を観ました。
二話『2つの塔』と三話『王の帰還』は時々観てますが、一話は今回が2回目。
今回観ていて気が付いたのが、
フロドが初めて指輪をはめるシーンの背景。
なぜなら、フリードリッヒの「エルデナの廃墟」(画像)にみえたからです。



フリードリッヒ (カスパー・ダーヴィッド) とはドイツロマン派を代表する、
恐らく世界で最も有名な廃墟画家でしょう。
特にエルデナの修道院跡のモチーフに拘ったフリードリッヒは、
様々なシチュエーションにこの廃墟を描いています。
そして、そのイメージはヨーロッパに深く根ざし、引用されてきました。
代表的な例がタルコフスキーの『ノスタルジア』でしょう。
ラストシーンに延々と登場する光景は、まさに「エルデナの修道院跡」そのもそ。
フリードリッヒが廃墟を新しい光が生まれる場所とポジティブに捉えているのに反し、
タルコフスキーのそれは出口なしの状況を
ネガティブに表現するメタファーになっていたと思いますが、
ともあれヨーロッパには脈々と廃墟と共存する感覚があることが感じられます。

日本では長く木造建築が主流だったため、廃墟という概念が生まれにくかったですが、
近代以降鉄筋コンクリートの建造物が造られるようになって100年、
やっと日本にも廃墟と共存するという感覚が育ってきたのではないかと思います。

天空の城ラピュタと廃墟

2005-01-10 06:16:58 | コラム:アート・デザイン・音楽・映像
 

オープロジェクトの展示発表をしていると、
よくラピュタのようだと言われることがありますが、
そもそもラピュタが植物と共生する廃墟をモチーフに
造られているのだから、当然の事でしょう。
ラピュタの外観は特にアンコールワット遺跡によくみられる、
石の壁面にからみつく植物の状態をかなり克明に再現しています。
またラピュタの冒頭シーンのパズーが引き上げる機械は、
あきらかに炭鉱の巻揚機でしょう。
宮崎駿の作品には、至る所に廃墟のテイストがちりばめられています。
そういった意味で『千と千尋の神隠し』は
廃墟という空間の夢を見るようなアミューズメン性を表現しきった、
秀逸な作品だと思います。