Chiro's Memo

My Sweet RoseとRosariumの更新記録です。

彼方より来る―色の名前vol.9

2006-07-13 21:25:50 | Weblog
9回にわたってお送りしてきた「色の名前」シリーズも今回で最終回です。
大トリを飾るのは、美術史上最も重要な役割を果たしてきたこの色です。

ultramarineウルトラマリン
ウルトラマリンは文字通り「海を越えて」やってきた青です。
中世ヨーロッパにおいては金と同じ価格で取引され、
当時の絵画制作の契約においては
金とウルトラマリンの使用量が取り決められていました。
この青はラピス・ラズリより作られました。

lapis lazuliラピス・ラズリ
“lapis”はギリシア語で「石」を、
“lazuli”はペルシア語で「空」を意味します。
この石は深い青の中に雲のような白い筋や、黄鉄鋼の金の斑がちりばめられ、
まさに「天空の石」にふさわしく、空を固めて作ったような石です。
ラピス・ラズリは現在では南アメリカ産のものも流通していますが、
長らくアフガニスタンの一部地域でのみ産出する石でした。
そのため極めて貴重で高価でした。

「青」の歴史はラピス・ラズリの歴史ともいえます。
ツタンカーメンの黄金の棺とマスク、
シルクロードの仏教遺跡の石窟の壁画
聖母マリアの纏うマント、
ミケランジェロ『最後の審判』の背景、
フェルメールの描く青い衣服やターバン
これらはすべてラピス・ラズリによって彩られました。

瑠璃色るりいろ
「ルリ」という言葉はペルシア語の“lazuli”と同語源とされています。
正倉院御物にラピス・ラズリを象嵌したベルトや瑠璃色のグラスがあります。
「瑠璃色」は日本人にとってはシルクロードの彼方の色といえます。


まだまだ取り上げていない色はたくさんあるのですが、
今後HPで色についてのページを作りたいと思っています。

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3 コメント

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Unknown (遊行七恵)
2006-07-13 22:59:54
ありがたいことに毎年正倉院展に向かいます。

瑠璃碗を見るたび、魂がその中に吸い込まれ、封印されてしまうような気がします。

孤独でつらく、哀しいでしょうが、瑠璃色と同化するうちに、色んなことを忘れるかもしれません。

・・・・・・そんな妄想が、あります。
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ラピス・ラズリ (sekisindho)
2006-07-14 00:25:53
千露さん

こんばんは。

「ラピス・ラズリ」と云えば、フェルメールの青を思い浮かべますが、同時にフェルメールの贋作事件を思い浮かべます。
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Unknown (千露)
2006-07-14 12:59:11
「色の名前」連載をごらんいただき、誠にありがとうございます。



>遊行七恵様

私も何度か正倉院展に行きました。

瑠璃椀は写真で見るよりも小さいものだと思いましたが、

その青の深さはシルクロードの天空と海の道の紺碧を飲み込んだ深さなのではないかと感じます。



>sekisindho様

フェルメールはラピスラズリの青をあくまでもさりげなく使用することによって、青の美しさを引き立てているようです。

フェルメール作品は現存作品が少ないため希少性が高く贋作のターゲットになってしまったのでしょうね。
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