今年もあと残すところ十日足らずとなりました。
クリスマスツリーの先端にはたいてい大きな星が飾ってあります。
あの星は東方より来る三人の博士(三人の王とする説もあり)を
救い主の生まれた場所へ導くために現れたもので
「ベツレヘムの星」と呼ばれます。
「ベツレヘムの星」がいったいどんな星であったのかについては諸説ありますが、
紀元前後の詳しい天文記録が残っていないため、未だ定説がありません。
主な説に
1.最大光輝に達した金星説
2.彗星説
3.超新星説
4.大流星・火球説
5.惑星会合説
などがありますが、
1.の場合、確かに金星は明るい星ではありますが、普段から見られる星であり、
「奇跡」に結びつけることは難しいであろうとのことです。
3.の「超新星」は一つの銀河の中で数百年に一度しか起こらない事象で、
場合によっては昼間でも見ることができるほどの光輝を発するものですが、
同時代の記録にそのような天体が現れたとするものが全くないため
この説は成立しないことになります。
4.の場合、流星も火球も一瞬の出来事であるので、
三博士がベツレヘムに到着するまで輝いていた星という条件に当てはまりません。
現在有力視されているのは2.と5.の説です。
5.の説は天文学者ケプラーが唱えたもので、
彼は紀元前7年5月にうお座で木星と土星が会合したことをつきとめました。
ユダヤ民族の間ではうお座は聖なる星座と考えられており、
モーゼが生まれる3年前にもうお座での惑星会合があったことが記録に残っているそうです。
2.の説の場合最有力視されたのはハレー彗星なのですが、
ハレー彗星のイエスの誕生に最も近い出現年は紀元前12年であり、
紀元前5~6年ごろと考えられているイエスの誕生年と年代が合いません。
しかし、彗星には周期が数百万年というものもあり、
人類史上で一度しか目にすることができないというものも数多く存在するということです。
そして彗星といえば長い尾を箒のように引いている姿を連想しますが、
地球から見える角度によっては短い尾を垂直に引いて、
まるで矢印のように見えるものもあるそうです。
「ベツレヘムの星」はこういった彗星ではないかとする説もあります。
画像はジョット『東方三博士の礼拝』です。
馬小屋の上に見える長く尾を引いた球体は彗星です。
1301年に地球に接近したハレー彗星をジョットは作品に描きました。
1986年のハレー彗星接近時に欧州宇宙機関によって打ち上げられた探査機は
ジョットの名前にちなんで「ジオット」と名づけられました。
参考文献
メロスが見た星