りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“フランチェスコ” ―全14場― 4

2011年12月23日 21時23分35秒 | 未発表脚本


         フランチェスコ、リーザを抱き上げ、ベットまで
         連れて行く。
         ジェシカ、駆け寄る。リーザ、苦しそうに。

  ジェシカ「如何して起き上がったりしたの!!大丈夫!?(リー
        ザの手を取り。)確りして・・・!!」
  フランチェスコ「薬は・・・?」
  ジェシカ「・・・ある訳ないでしょ・・・。パンを買うお金もないのに、
        薬なんて・・・!!リーザ・・・!!」
  フランチェスコ「(ヴィクトールに目で合図を送る。)」

         ヴィクトール、頷いてポケットから小さい巾着袋を
         取り出し、中から何か出し、フランチェスコに手渡す。
         フランチェスコ、ベットの傍らへ膝をつき、少しリーザ
         を起こし、その取り出したものを口へ含ませる。

  ジェシカ「(驚いたように。)何!?」
  フランチェスコ「これは我が家に代々伝わる秘薬だ。これさえ飲
           めば、どんな病も忽ち良くなる・・・そう伝えられて
           いる・・・。暫く立てば、発作も治まるだろう。」
  ジェシカ「・・・本当・・・?」
  フランチェスコ「ああ・・・。(微笑んで立ち上がる。)ヴィクトール!
           (ヴィクトールの持っていた袋を見て、合図する。)
           」
  ジェシカ「リーザ・・・(心配そうに。)」
   
         ヴィクトール、その袋をジェシカの方へ差し出す。
         ジェシカ、それに気付いてフランチェスコを見る。

  フランチェスコ「それをあげよう。何時も急な時用に、少しだが持
           ち歩いているものだ。今はそれだけしかないが、
           次に会った時に、もっと用意しておく。」
  ジェシカ「(立ち上がる。)そんな高価なもの・・・。お金ないし・・・
        貰えない・・・。(下を向く。)」
  フランチェスコ「金などいらない!毎日、時間通りに花を届けて
           くれているお礼に・・・。」
  ジェシカ「でも・・・今日は・・・」
  フランチェスコ「今日は、リーザの具合が良くなかったからだろう
           ?それに・・・(テーブルの花籠を見て。)ちゃんと
           花の用意はしてあるじゃないか・・・。今日はマー
           ガレットか・・・。可愛い花だ・・・。丸でおまえのよう
           に・・・。花言葉は・・・真実の・・・愛・・・」
  ジェシカ「・・・フランチェスコ・・・」

         ヴィクトール、一瞬困惑の表情を浮かべる。
         フランチェスコ、ジェシカ残してフェード・アウト。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         紗幕前。
         ジェシカ、下を向いて戸惑うように、
         フランチェスコから一寸離れる。
         フランチェスコ、ジェシカを優しく見詰める。

  フランチェスコ「如何した?」
  ジェシカ「・・・薬・・・本当にありがとう・・・。でも・・・何故、家へ来
        たりしたの・・・?」
  フランチェスコ「何時も時間通りに来るおまえが、今日に限って
           来ないのは可笑しいと思ってね・・・。迷惑・・・だっ
           たか?」
  ジェシカ「(下を向いたまま。)私・・・見られたくなかった・・・こん
        な酷い家・・・。あなたのお屋敷とは比べ物にならない
        もの・・・。」
  フランチェスコ「そんなこと!!何を気にしてるんだ・・・。おまえ
           がどんな所へ住もうと・・・おまえがどんな身分の
           女性であろうと・・・。何も関係ないじゃないか・・・
           。」

         ジェシカ、フランチェスコを見詰める。

  フランチェスコ「毎日、自分で手作りした花籠を届けてくれるの
           は、今ここにいる・・・今私の目の前にいる、おまえ
           じゃなかったのか?ここ一週間、私の心を小さな
           花籠で満たしてくれていたのはおまえなんだ・・・。
           他の誰でもない・・・病身の妹を必死になって世話
           している・・・毎日、広場で一生懸命花売りをして
           いる・・・そして毎日、私の所へ花を運んで来てく
           れている、おまえ自信なのだから・・・。出会ってま
           だ、一週間程しかたたないが・・・たった一日、お
           まえの姿が見えなかっただけで、私は居ても立っ
           てもいられなかった・・・。だから馬を飛ばしてまで、
           探しに来たんだ・・・。私は・・・おまえを・・・心から
           愛してしまったようだ・・・。」
  ジェシカ「フランチェスコ・・・(フランチェスコにゆっくり近付く。)」

         フランチェスコ、ジェシカを見詰めながら、
         手を差し出し歌う。ゆっくり側へ。

         “愛している・・・
         花の香りと共に
         安らぎを与える乙女を・・・
         恋焦がれそうだ・・・
         私の回りだけでない・・・
         ほんの少し触れただけ
         ただそれだけのものをも
         優しい気持ちにさせるおまえが・・・
         ただ愛している・・・
         今までこんな思いは味わったことがない・・・
         恋焦がれるかも知れない
         おまえにただ会いたくて・・・
         見えない場所に姿を捜す
         噎せ返るような沢山の花の香りと共に
         やってくるおまえを・・・”

         ジェシカ、呼応するように歌う。

         “愛している・・・
         力強く勇気あるあなたを・・・
         心から愛している・・・
         毎日あなたに会えるのが
         幸せに変わっていく程・・・
         ただ偶然に出会ったあなたの・・・
         仕種に面影・・・
         風に靡くブロンドの髪・・・
         そのどれもが何時の間か
         私の全てと変わる・・・”

         2人、手を取り合い歌う。

         “愛している・・・愛している・・・
         心からおまえ(あなた)だけを・・・
         この思いは永久に変わることなく
         たとえ死が2人を引き離そうとも・・・”

         フランチェスコ、ジェシカに口づけ、その胸に
         力強く抱き締める。
         フェード・アウト。

    ――――― 第 8 場 ―――――

         紗幕開く。
         と、舞台はクリストフ公爵邸。居間。
         中央ソファーに、クリストフ、テレーズ腰を
         下ろしている。傍らにカロリーネ立つ。
         クラシック音楽が、静かに流れ、辺りを
         優しく包む。クリストフ、テーブルの上の
         コーヒーカップを手に取り、口を付ける。

  クリストフ「今日は朝から町の様子を見て来たが、パン屋の前
        で、店の主人と市民の間で諍いが起きていたよ。」
  テレーズ「まぁ・・・」
  クリストフ「店の主人が、食料難を理由に、実の所はただ自分達
        だけの貯えをする為に、売り惜しみするようになり、そ
        れを知った市民達が、餓えを恐れる恐怖感から店を襲
        い、略奪に走ると言う・・・。町は段々、町らしさを失い、
        世の中は殺伐として行く・・・人を人と思わず、暴力が
        横行する・・・。このままで本当によいのだろうかと私は
        案じるよ・・・。」
  テレーズ「本当ですわね・・・。」
  クリストフ「ところで、フランチェスコは相変わらず馬を走り回して
        いるのか?」
  テレーズ「ええ・・・。あなた・・・私、フランチェスコのことで、良くな
        い噂を耳にしましたの・・・。」
  クリストフ「良くない噂?」
  テレーズ「ええ・・・。(チラッとカロリーネを見る。)」
  カロリーネ「小母様・・・、私もそのお噂は伺っております・・・。(下
         を向く。)どうぞ、お気になさらないで仰って下さい・・・
         。」
  
         クリストフ、カロリーネをチラッと見る。

  テレーズ「あの子・・・近頃、ある娘さんに夢中になっているとか
        ・・・。」
  クリストフ「・・・娘・・・?」
  テレーズ「ええ・・・。それが何でも、広場で花を売りながら、その
        日暮らしをなさってる方だそうで・・・。少し前から、フラ
        ンチェスコの所へ毎日、花を届けに来ていたらしいん
        ですけれど・・・私、全く知らなくて・・・。」
  クリストフ「(笑って。)まさか、あいつがそんな娘に好意を寄せる
        筈がないだろう。その娘の何に、フランチェスコが夢中
        になると言うのだ。馬鹿馬鹿しい・・・。」
  テレーズ「でも・・・」
  クリストフ「噂は噂だ、あてになどならん。」

         そこへ奥の扉よりフランチェスコ登場。
         ヴィクトール続く。

  フランチェスコ「ただ今戻りました。」
  テレーズ「(立ち上がって。)フランチェスコ・・・おかえりなさい。
        (フランチェスコの頬にキスする。)」
  フランチェスコ「シーザーを乗り回して来たので、汗だくですよ。
           (笑う。)着替えてきます。(ヴィクトールを見る。)」

         フランチェスコ、ヴィクトール、3人の前を通って、
         上手へ行こうとする。

  クリストフ「フランチェスコ・・・。(立ち上がる。)」
  フランチェスコ「(立ち止まって。)何か・・・?」
  クリストフ「チラッと噂を小耳に挟んだのだが・・・。まさかおまえ
        に限って、身分の卑しい女性に現を抜かしているよう
        なことは、あるまいな?」
  フランチェスコ「・・・身分の卑しい女性に現を抜かす・・・とは、如
           何言うことですか・・・?」
  クリストフ「その言葉の通りだ・・・。全く、妙な噂だな。(笑う。)」
  フランチェスコ「・・・もし、その言われた女性が、今・・・私が一番
           心に掛けている女性であるとするなら・・・その噂
           とやらは、噂ではなく・・・真実です・・・。(カロリー
           ネを見る。)」

         カロリーネ、落胆した面持ちで、フランチェスコを
         見詰める。

  テレーズ「あなた・・・」
  クリストフ「(呆気にとられたように。)・・・花・・・売り娘だぞ・・・?
        」
  フランチェスコ「そうです。どうやら父上の仰った女性と、私が言
           う女性は、同一人物のようだ・・・。と、すると・・・
           先程言われた“卑しい女性”と言う言葉は、取り消
           して頂きたい。」
  クリストフ「その女性が好きだと・・・愛していると言うのか・・・?
        (呆然と。)」
  フランチェスコ「はい。(力強く。)」
  クリストフ「フランチェスコ・・・人を好きになると言うことは、合わ
        せて尊敬の念や、共感できる部分が、その相手に持て
        ると言うことだ。一体そんな平民の花売り娘の何処が、
        おまえにとって思いを寄せる対象になったと言うのだ!
        !」
  フランチェスコ「父上!!たとえ父上だとしても・・・よく知りもしな
           い彼女のことを、そんな風に言い放つのはよして
           頂きたい!!彼女は父上が考えているような娘
           ではありません!!彼女だけではない。父上は私
           達、貴族以外の人々を、如何してそう見下すよう
           な見方を為さるのです。」
  クリストフ「私が何時、見下したと言うのだ!?」
 









    ――――― “フランチェスコ”5へつづく ―――――




     
    この後、フランチェスコさんのチョー長台詞に入ります^^;
   なので、ページを代えさせて頂きますm(__)m


  





 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


     (どら余談^^;)

     このお話し・・・またまた少し、ラストに場面を付け加えて
     仕上げたいと思います(^.^)
     だって・・・今では殆ど書くことのない、可哀相な終わり方
     なのです~・・・(T_T)
     この頃の作品・・・やたらと“悲劇”チックなものが多いの
     は何故でしょうか・・・(>_<)













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“フランチェスコ” ―全14場― 3

2011年12月20日 21時02分00秒 | 未発表脚本


  フランチェスコ「(振り返ってカロリーネを見る。)如何しました?
            楽しくありませんか?」
  カロリーネ「いいえ!!(大きく首を振る。)」
  フランチェスコ「さっきから、余り話しをされないのですね?」
  カロリーネ「(恥ずかしそうに下を向く。)それは・・・何度、お会
         いしても・・・フランチェスコ様の前に出ると、とても
         緊張してしまって、お顔を見ることすら儘ならないん
         ですもの・・・。ほら・・・、こうしてあなたに見詰められ
         ていると感じるだけで、心臓がもうこんなに・・・。(自
         分の胸を押さえる。)」
  フランチェスコ「(微笑んで。)あなたにそんな風に言ってもらえ
           るとは光栄ですね。」

         2人、中央に置かれているベンチの側へ。
         フランチェスコ、カロリーネに座るよう勧める。
         カロリーネ、軽く頷いて、腰を下ろす。
         カロリーネが座ってから、フランチェスコ、
         カロリーネの横へ腰を下ろす。

  カロリーネ「如何ですか?馬術大会・・・。私、とても楽しみにし
         ていますの。フランチェスコ様の勇姿が見られるから
         と・・・。」
  フランチェスコ「ええ・・・必ず勝ちますよ!!愛馬のシーザーの
           調子もぐんぐん上がってきていますからね。今の
           シーザーに敵う馬は、そうはいないでしょう。大会
           では屹度、素晴らしい走りを見せてくれると、私も
           楽しみにしているのです。」
  カロリーネ「そうですわね。それにシーザーに劣らず、騎手も手
         綱捌きでは右に出る者がいないと、噂されている程
         の、フランチェスコ様ですものね。」
  フランチェスコ「兎角、人の噂と言うものは、あてにはならないも
           のです・・・。だが、今回ばかりはその噂を信じて
           下さっても結構ですよ。」

         その時、下手よりカロリーネの侍女、登場。

  侍女「お嬢様、お屋敷からお迎えの馬車が参りました。」
  カロリーネ「(侍女を認め。)分かりました。(立ち上がる。)フラン
         チェスコ様、今日はとても楽しい時間を、私の為に作
         って下さって、ありがとうございました・・・。それでは
         これで失礼致します。(スカートをつまんで、お辞儀を
         する。)」
  フランチェスコ「(立ち上がって礼をする。)気をつけて・・・。」

         侍女、下手へ去る。カロリーネ、侍女に続いて
         去る。フランチェスコ、カロリーネが去るのを
         見計らって、再びベンチへドッカと腰を下ろす。

  フランチェスコ「(溜め息を吐いて。)必ず・・・勝つ・・・!!」

         そこへ家臣、下手より登場。

  家臣「フランチェスコ様、ただ今、門の所にフランチェスコ様に頼
      まれたからと、花売り娘が来ておりますが・・・。如何致し
      ましょう・・・?(少し困惑したように。)」
  フランチェスコ「(幾分、嬉しそうに。)そうか。私の客だ。ここへ
           通してくれ。」
  家臣「はい・・・。(首を傾げて、下手へ去る。)」

         フランチェスコ、立ち上がり呟くように歌う。

         “たった一輪で咲く野花のごとく
         君は我にほんの少しの安らぎを与える・・・”

         一時置いて、下手よりジェシカ、回りを見回し
         ながら、心細げに花籠を手に登場。
         フランチェスコ、ジェシカのそんな様子を楽し気に
         見詰める。

  フランチェスコ「やぁ・・・。」
  ジェシカ「(フランチェスコを認め。)こんにちは・・・。」
  フランチェスコ「約束、忘れなかったようだな。(微笑む。)」
  ジェシカ「だって、あんな大金・・・ただで貰えないから・・・。(少
        し興奮ぎみに。)それよりでっかい家ね!!こんなお
        屋敷に入ったの、生まれて初めて・・・。この庭に出る
        までに、一体幾つの部屋を通ったかしら?一体何回
        長い廊下の曲がり角を曲がって来たのかしら?屹度
        同じ来た道を通って、一人で帰れと言われても、私、
        迷って一生このお屋敷から出られないかも知れない
        !!」
  フランチェスコ「面白いことを言うんだな。(笑う。)誰も一人で帰
           れとは言わないよ。」
  ジェシカ「(フランチェスコに近寄り、花を差し出す。)はい、約束
        の花・・・。何も態々、私なんかの野花を買わなくても、
        あなたならどんな花でもより取り見取りでしょうに・・・。
        現にほら、あそこに花壇だって・・・。(上手方にあった
        花壇を指差す。)」
  フランチェスコ「あれは母が趣味で育てているもので、私の花
           ではない・・・。(ジェシカから籠を受け取る。)この
           花は私の部屋に飾る為に買うんだ。」
  ジェシカ「へ・・・ぇ・・・。私、貴族の奴らって、争いごとが好きで
        ・・・野蛮で・・・血を見るのを何とも思わない冷血人間
        ・・・そんな風に考えてたから、少し意外ね・・・。況して
        男の人なのに・・・。(何か思い出したように、クスクス
        笑う。)昨日は・・・ごめんなさい・・・。助けてもらったの
        に、酷いこと言っちゃって・・・。」
  フランチェスコ「いや・・・いいんだ。君の言ったことは、本当のこ
           となんだから・・・。」
  ジェシカ「(意外な面持ちで、フランチェスコを見詰め、微笑む。)
        私達ね・・・とても期待していたの。新しい国王になって
        、これで住み易い世の中にんるんじゃないかって・・・。
        なのに景気は一向に回復しないし、それどころか益々
        物価は高くなって、段々生活が苦しくなる・・・。仕事は
        ないし・・・。そこへきて馬術大会でしょ?ついカッとなっ
        ちゃって・・・。」
  フランチェスコ「昨日、一緒にいた娘は妹かい?」
  ジェシカ「ええ。私のたった一人の肉親・・・。」
  フランチェスコ「具合が悪そうだったけど・・・。」
  ジェシカ「あの子・・・生まれつき体が弱くて・・・。ここ暫く、じゃが
        いものスープ以外、食事らしい食事もしてなかったし
        ・・・。」
  フランチェスコ「(驚いたように。)じゃがいも・・・の・・・?」
  ジェシカ「けど、昨日あなたのお陰で、久しぶりにパンを食べさ
        せてあげることができたの!!ありがとう・・・。」
  フランチェスコ「(微笑んで。)それはよかった・・・。」
  ジェシカ「あの子が美味しそうにパンを食べるのを見て、とても
        嬉しかったの!!嬉しかったの・・・美しい花々は心を
        満たしてくれるけど、お腹は一杯にならないもの・・・。
        私は元気だから、少しくらい食べなくても全然平気だ
        けど、リーザはね・・・。あの子には、うんと栄養のある
        ものを食べさせてやりたかったから・・・。」
  フランチェスコ「(微笑ましくジェシカを見詰めたまま。)おまえの
           名前は・・・?」
  ジェシカ「ジェシカ・・・」
  フランチェスコ「ジェシカ・・・いい名前だ・・・。」
  
         ジェシカ、恥ずかしそうに下を向く。
         その時、美しいバイオリンの音が流れてくる。

  ジェシカ「(その音に気付いて。)この音楽は・・・?」
  フランチェスコ「ヴィクトールだ・・・。昨日、私と一緒にいた男、覚
           えているか?」
  ジェシカ「(頷く。)」
  フランチェスコ「あいつは毎晩、こうしてバイオリンを楽しむのが
           趣味なんだ。」
  ジェシカ「へぇ・・・。」
  フランチェスコ「(微笑んで、手を差し出す。)一曲・・・お相手願え
           ますか・・・?」
  ジェシカ「(驚いた面持ちで。)私・・・そんな・・・ダンスなんて・・・
        (恥ずかしそうに下を向く。)」」
  フランチェスコ「(ジェシカの手を取る。)大丈夫・・・」

         バイオリンだけだった音楽、豪華に盛り上がる。
         フランチェスコ、優しく微笑む。
         戸惑い気味のジェシカ、フランチェスコのリードに
         身を任せ、その音楽に乗って、嬉しそうにデュエット
         ダンスを踊る。
         一踊りし終えた時、中央2人、手を取り合ったまま
         見詰め合う。(音楽流れたまま。)
         ジェシカ、フランチェスコの瞳に堪えられないように
         視線を捥ぎ取り、下手へ走り去る。
         フランチェスコ、呆然とその方を見詰めたまま、
         立ち尽くす。
         フェード・アウト。(紗幕閉まる。)       ※

    ――――― 第 6 場 ―――――

         紗幕前。
         音楽で、上手スポットにヴィクトール浮かび上がる。
         (フェード・インする。)
         ゆっくり歌いながら中央へ。

         “生まれた時から今日まで
         何の疑いもなく
         何時も共にいた・・・
         主従の関係を越え
         心から分かり合える
         唯一の友のように
         俺はおまえのことなら何でも分かる
         そう信じていたのは
         ついこの間までのこと・・・
         なのに今は
         おまえの心が余所にあるようで
         理解しようとすれば尚のこと
         俺の心は迷路を迷い
         抜け出すことは不可能に思える程・・・
         その迷いに自分自身も分からなくなる・・・”

         そこへ、上手よりフランチェスコ登場。    
         ヴィクトールを認め、幾分早足に近寄る。

  フランチェスコ「おい、ヴィクトール!!出掛けるぞ!!」
  ヴィクトール「(フランチェスコを認める。)フランチェスコ・・・。出
          掛けるって、こんな時間から何処へ・・・?」
  フランチェスコ「ジェシカの家を捜しに行く!!」
  ヴィクトール「(驚いたように。)ジェシカの・・・家・・・?」
  フランチェスコ「彼女に花を届けるように頼んで一週間、今日ま
           で一度だって約束の時間を違えたことはないん
           だ!!その彼女が、今日に限って来ないなんて
           可笑しいと思わないか!?」
  ヴィクトール「そりゃあ・・・そうだが・・・。だけど何故態々・・・」
  フランチェスコ「何故・・・?愚問だな。」
  ヴィクトール「フランチェスコ・・・」
  フランチェスコ「行くぞ!!(下手へ去る。)」

         ヴィクトール、困惑気味な面持ちでフランチェスコ
         に続いて下手へ去る。
         静かな音楽で紗幕開く。
         と、ジェシカの家。
         中央に設えられたベットの上に、リーザ横になって
         いる。その横のテーブルの上に、フランチェスコに
         持って行く筈の花籠が置いてある。
         一時置いて、奥の扉よりパンを持ったジェシカ登場。

  ジェシカ「(リーザの枕元に跪いて。)リーザ・・・、パンを買って来
        たわ・・・。食べる?」
  リーザ「(首を振る。)」
  ジェシカ「駄目よ。少しは食べないと・・・。(リーザを起こしてやり、
        パンを千切ってリーザに手渡す。明るく。)もう、一個の
        パンを買うにも、パン屋の前は長い行列で大変!」
  リーザ「・・・姉さん・・・ごめんなさい・・・。」
  ジェシカ「何謝ってるの!さ、沢山食べて元気つけなくちゃ!!」
  リーザ「私がもっと健康なら、姉さんに苦労かけることないのに
      ・・・。」
  ジェシカ「そんなこと気にしないの!さぁ・・・。(リーザのパンを
        持っていた手を、口元へ近付ける。)」

         リーザ、頷いて少しパンを口に入れる。
         ジェシカ、その様子を優しく見詰めている。
 
  ジェシカ「何か飲み物を持って来るわね・・・。」
  リーザ「ありがとう・・・」

         ジェシカ、微笑んで奥へ去る。
         一時置いて、扉をノックする音。

  リーザ「(奥を見ながら。)姉さん・・・?」

         再びノックの音。
         リーザ、ジェシカが気付かないのを確認し、
         ゆっくりベットから起き上がり、扉の方へ。  

  リーザ「はい・・・。(扉を開ける。)」
  
  フランチェスコの声「ジェシカは・・・?」
  
  リーザ「はい・・・。どうぞお入り下さい・・・。」

         フランチェスコ扉から登場。続いてヴィクトール
         回りを見回しながら登場。

  フランチェスコ「(入りながら。)中々見つからなくてね。随分捜し
           たんだ。大体この辺りだと聞いていたんだが・・・。
           で・・・?ジェシカは・・・」
  リーザ「今・・・呼んで・・・(突然、胸を押さえて苦しそうに座り込
      む。)」
  フランチェスコ「(リーザに気付いて駆け寄る。)君!?」

         その時、奥よりジェシカ登場。フランチェスコ達を
         認め、驚いたように。

  ジェシカ「フランチェスコ・・・(リーザに気付き。)リーザ!!」










     ――――― “フランチェスコ”4へつづく ―――――










    ※ 子ども向き人形劇では考えられないシチュエーション
      です^^;久しぶりにこんな感じの場面・・・何だか少し
      ・・・ジェシカちゃんではありませんが、恥ずかしいです
      ~・・・(^_^;)




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“チュー吉くんの星に願いを・・・” ―全7場― 2

2011年12月20日 19時40分10秒 | 新作(人形劇用)


  チュー太「ねぇ、チュー吉、そうしようよ!これを母さんのプレゼ
        ントにすればいいじゃないか。」
  チュー吉「・・・そんな盗んだ物を、母さんのプレゼントになんて
        出来ない。行こう、兄さん!!」
  チュー太「チュー吉!」
  チュー五郎「ちぇっ!!なんでぇ・・・折角、俺様が安くで売って
          やるって言ってるのによ・・・。で?おまえさん達は
          何を母さんにプレゼントするつもりなんだよ。」
  チュー太「僕達は、辺りが真っ暗になれば現われる、あの高い
        場所にキラキラ輝く、おじさんが持ってるその石を取
        りに行くんだよ。」
  チュー五郎「え・・・?キラキラ輝く・・・(持ってたダイヤモンドと
          空を交互に見る。)」
  チュー吉「兄さん、行こう!暗くなる前に、たかいさんの頂上に
        着かなけりゃ。」
  チュー太「う・・・うん。」
  チュー五郎「(笑う。)馬鹿だなぁ・・・!あれは“星”って言うんだ
          。」
  チュー吉「え・・・?」
  チュー太「(チュー吉を見て、首を傾げる。)」
  チュー吉「・・・星・・・って何・・・?」
  チュー五郎「星って言うのは、この今、俺達が立ってる地球と同
          じようなものさ。」
  チュー太「地球・・・?」
  チュー吉「おじさんの手に持ってるのは・・・?」
  チュー五郎「これは宝石!」
  チュー吉「おじさんも、あのキラキラを取って来て、今そうやって
        持ってるんじゃないの・・・?」
  チュー五郎「あの空でキラキラ光ってるものと、これとは全く違う
          別物だ!それに、あんな風に夜になりゃキラキラ輝
          いて見えるけど、実際はキラキラもしてねぇし、あん
          な風に小ちゃくもねぇってことさ!」
  チュー吉「嘘だ・・・」
  チュー五郎「嘘吐いてどうすんだ!だから、あんなのを取りに行
          こうだなんて、馬鹿なこと考えてないで、さっさとこ
          のダイヤモンドを買って、家に帰った方がいいぜ!
          どうせ家で母ちゃんが、心配して待ってるんだろ?」
  チュー吉「嫌だよ!!折角、こんな遠くまでやって来たのに、何
        も持って帰ることが出来ないなんて!!」
  チュー五郎「だから俺様が、売ってやるって・・・」
  チュー吉「嫌だ!!そんな泥棒したものなんていらない!!」
  チュー五郎「だけど、いくらどれだけ高いとこに登ったとしても、
          あの“星”に着くのは・・・まぁ、無理だ。(笑う。)」
  チュー吉「無理・・・」
  チュー太「無理だって・・・チュー吉・・・」
  チュー吉「じゃあ、あの高いところを飛んでいる、あの鳥に頼ん
        で連れて行ってもらうよ!!おーい!!(手を振る。)
        おーい!!そこの高いところを飛んで・・・!!」
  チュー五郎「馬鹿!!(チュー吉を押さえて隠すように。)あいつ
          らは鷹だぜ!!あいつらに見つかっちゃ、俺らみた
          いな小さなネズミ、一飲みにされちまうぜ!!それ
          にさっきから言ってるだろ!?あの“星”って奴は、
          見えてるみたいに小さくもないし、綺麗でもないん
          だ。諦めろ諦めろ。」
  チュー吉「嫌だ!!僕は、自分の力で母さんにプレゼントを用意
        するんだ!!」
  チュー五郎「ああ、そうかい。じゃあ好きにするがいいさ。俺には
          関係ない。さぁ、そう言うことならさっさと行きな!!
          俺は薬屋から薬を頂戴・・・おっと違った、買う為に
          来たんだ!忙しいんだから早いとこ行った行った!
          !」
  チュー吉「兄さん!行こう!!」
  チュー太「う・・・うん・・・」

         チュー吉、チュー太、下手へ去る。

  チュー五郎「(2人が去るのを見計らって。)ばーか!!星なん
          か手に入る訳ねぇだろ!!ふん!!俺様が折角
          ・・・(手に持っていたダイヤモンドを見る。)」

         音楽流れ、チュー五郎歌う。

         “こいつは金持ちの家から拝借したんだ・・・
         こっちは通りすがりに見つけた
         家の庭で拾った宝・・・
         そっちは店の軒先から
         店主の目を盗んでちょいと頂いた・・・
         何もあんなに拒否しなくてもいいだろう
         泥棒だってこの俺様が・・・?
         確かに泥棒かも知れない
         けど何がいけないんだ泥棒の・・・
         余り余ったお宝を
         小さな俺様が頂いて
         何が悪いんだ分からない・・・”

  チュー五郎「馬鹿な奴らだぜ・・・あんな、たかいさんの天辺に登
          ったところで星なんて・・・取れる訳ねぇのに・・・。な
          んて一生懸命なんだ・・・あいつら・・・。(下手方を見
          て。)あ・・・おーい!!ちょっ・・・ちょっと待ってくれ
          ー!!俺様も一緒に行くからー!!」

         チュー五郎、慌てたように下手へ走り去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より一羽のトビ、怯えるように回りを
         見回し、ゆっくり登場。
         その時、オオタカの声が聞こえる。

  オオタカの声「おいトビ!!そんなところをコソコソと、どこへ行
           くつもりだ!!それでも隠れているつもりか?俺
           にはおまえの行動は一目瞭然・・・!!」

  トビ「オ・・・オオタカの親分・・・」

  オオタカの声「早くエサになりそうな生き物を、探して連れて来
           るんだ!!でないと、おまえとおまえの家族を、
           今日の食卓へ乗せてしまうぞ!!」

  トビ「は・・・はい、オオタカの親分・・・!!直ぐに獲物を探して
     連れて来ます!!だから、今しばらく待って下さい!!」

  オオタカの声「早くしろ!!俺は今朝から何も食べてないんだ。
           腹が減って死にそうなんだよ!!」

  トビ「はい!!」

         鳥の羽ばたく音、遠ざかる。

  トビ「はぁ・・・全く、エライ親分に見つかってしまったなぁ・・・。毎
     日毎日、エサになりそうな生き物を連れて行かないと、オイ
     ラの生まれたばかりの子ども達がやられちまう・・・。姿形は
     似てはいても、オイラ達トビは、オオタカの親分なんかと比
     べりゃあ、力も何も敵ったもんじゃないのに・・・。自分達の
     エサすりゃ、満足に探して来れないオイラ達トビに・・・。」

         トビ、歌う。

         “何てことだ
         何て不幸なオイラだろう
         ちょいと目にした卵を頂こうと
         抜き足差し足 側に行くと・・・
         そこに現れた大きなタカ”

  トビ「オオタカの親分の卵を頂こうなんて、これっぽっちも思っち
     ゃいなかったんだ!!ただ腹が減って、腹が減って・・・巣
     で待ってる子ども達の為に、ちょいと目に付いただけなん
     だ、美味そうな卵が・・・。あああ・・・何てこった・・・何てオイ
     ラは運が悪いんだ・・・。さぁ、早いとこ獲物を探して・・・(そ
     の時、下手方に何か気付いたように。)おっ!!向こうから
     山を登って来るのは・・・しめしめ!!野ネズミが2匹・・・い
     や・・・3匹だ!!今日はついてるぜ!!あいつらを、さっさ
     と親分のとこに連れて行きゃあ・・・。ようし・・・!!」

         トビ、上手へ(一旦)去る。

    ――――― 第 5 場 ――――― 
 
         その時下手より、チュー吉、チュー太登場。
         続いてチュー五郎登場。

  チュー五郎「おいおい、つれないなぁ、お2人さん。」
  チュー吉「何で僕達に付いて来るんだよ!」
  チュー五郎「いや、何・・・何でそんなに一生懸命になれるのか
          なぁ・・・って。ちょいと好奇心って奴さ。」
  チュー太「好奇心・・・?」
  チュー五郎「変な奴・・・。さぁ、兄さん!!いよいよその木の間
          を抜けたら頂上だよ!!」
  チュー太「うん・・・」
  チュー吉「丁度、辺りも暗くなってきたし、この木の先には屹度、
        沢山のキラキラした宝石が、目の前にあるんだ!!」
  チュー太「そうだね!」
  チュー五郎「そうかねぇ・・・」
  チュー吉「(チュー五郎を睨む。)さぁ・・・!!」

         チュー吉、走りながら上手方へ。
         紗幕開く。(と、だだっ広い山頂の様子。)

  チュー吉「ほら!!(紗幕が開いた後方を、指し示す。)」
  チュー太「うん!!・・・あれ・・・?」
  チュー吉「・・・ない・・・」
  チュー太「・・・ないね・・・」
  チュー吉「辺りは、もう真っ暗なのに・・・」
  チュー五郎「(ボソッと。)ほうら・・・だから言ったじゃないか・・・。
          」
  チュー太「あっ!!見て、チュー吉!!(空を指差す。)」
  チュー吉「え・・・?(上方を見る。)」

         (満天の星空が広がる。)

  チュー吉「キラキラした宝石だ・・・」
  チュー太「まだ、あんなところにあるよ・・・。」
  チュー吉「こんな山の高いところまで登って来たのに・・・」
  チュー五郎「だからさぁ・・・言ってやっただろ?あれは“星”って
          言って、この地球からもっと、もーっと遠くにあって、
          誰も手にすることなんて出来ねぇ代物なんだよ。」
  チュー太「なんだ・・・」
  チュー吉「そんな・・・」

         その時、一つの流れ星が流れる。

  チュー吉「あっ!!キラキラだ!!今、キラキラの宝石が落ちて
        いったぞ!!」
  チュー太「ホント!?」
  チュー吉「届かないんなら、あの落ちたキラキラを探しに行けば
        ・・・」
  チュー五郎「ばーか!」
  チュー吉「馬鹿ってなんだよ!!」
  チュー五郎「あれは“流れ星”・・・。あんなもん探せる訳ないだろ
          !?おまえ、何も知らないんだなぁ、全く・・・」
  チュー吉「・・・だって・・・」
  
         その時、木の陰からトビ登場。

  トビ「やあ、お3人さん。」
  チュー吉「え・・・?」
  チュー五郎「(チラッとトビを見る。)おっと、タカ・・・!!・・・じゃ
          ねぇ・・・。なんでぇ、トビか。」
  チュー吉「トビ・・・?」
  トビ「はいはい、確かに私はトビでござます。そちらの方はよく
     ご存じで・・・」
  チュー五郎「ふん・・・(一寸、離れたところへ腰を下ろす。)」
  トビ「何やらさっきからお話しを伺っていると、あの流れ落ちた
     “星”の場所が知りたいと・・・?」
  チュー吉「え・・・?トビさん分かるの・・・?」
  トビ「いやあ何、私はこの辺りのことは、そこいらの誰よりもよく
     知っている、この山の住人ですから・・・。今起きたことは、
     全てこの私に聞いてくれさえすれば、何でもお答え出来る
     と思いますがねぇ・・・。」
  チュー太「へぇ・・・」
  トビ「どうです?この私が、あのキラキラ星の落ちた場所まで、
     案内して差し上げましょうか?」
  チュー吉「本当!?」
  トビ「ええ。」
  チュー吉「やった、兄さん!!これで母さんの誕生日プレゼント
        が無事、手に入るよ!!」
  チュー太「うん。」
  チュー五郎「おいおい・・・おまえら本当に、そんなトビの言うこと
          を信用していいのか?」
  チュー吉「いいじゃない!だってトビさん、この山のことは何だっ
        て知ってるんだって言ったんだ!如何様物売りのあな
        たより、ずっと信用できるよ!」
  チュー五郎「ふうん・・・まぁ、いいや、好きにしな。俺様はここで
          暫く休憩させてもらうことにするぜ。」
  チュー吉「お好きに!ねぇ、トビさん!!早く僕達を、そのキラキ
        ラ星が落ちた場所へ案内して!!」
  トビ「ああ、お安いご用でさぁ・・・。(意味ありげに笑う。)」  

         チュー吉、チュー太、トビに付いて上手へ去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― A

  チュー五郎「あああ・・・本当にあんな奴に付いて行って、大丈
          夫なのかよ。俺は知らねぇぞっと・・・(ゴロンと横
          になる。が、何か落ち着かない様子で、直ぐに起
          き上がる。)馬鹿野郎・・・トビったって、タカには違
          いねぇんだよ!!それを信用してノコノコと・・・。ホ
          ント馬鹿な奴らだぜ・・・。」

         音楽流れ、チュー五郎歌う。

         “何で気になるこんなに・・・
         つい今しがた偶然知り合った
         ただの子ネズミ達・・・
         放っておきゃあいいんだ気にするな・・・
         何があっても知っちゃいねぇ
         俺は関係ないんだ何も
         だから知らん顔してれば
         それでいい・・・”

  チュー五郎「でも・・・あいつらの、あの瞳を見てると・・・何故か
          昔の自分を思い出すんだ・・・。まだこんな悪びれた
          仕事に手を染めるなんてことを、これっぽっちも考
          えなかった・・・餓鬼の頃の自分を・・・」

         その時、鳥の激しい羽ばたきの音に交じって
         チュー吉、チュー太の悲鳴が聞こえて来る。

          
     








  ――――― “チュー吉くんの星に願いを・・・”
                          3へつづく ―――――












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“フランチェスコ” ―全14場― 2

2011年12月17日 22時10分28秒 | 未発表脚本


         そこへ、ジェシカの妹(リーザ)上手奥より
         登場。ジェシカを認め、近寄る。

  リーザ「姉さん・・・。」
  ジェシカ「リーザ!(立ち上がる。)外へ出たりして大丈夫なの!
        ?あなたは体が弱いんだから、こんな所まで歩いて来
        たりしたら・・・」
  リーザ「(微笑んで。)平気よ、姉さん・・・。今日は何時もより、具
       合いがいいの。それに家の中にばかり籠もってないで、
       偶には外の空気も吸いたいし・・・。」
  ジェシカ「・・・本当に?」
  リーザ「(頷く。)それよりお花売れた?(ジェシカの持っていた籠
       の中を覗くように。)」
  ジェシカ「(首を振る。)駄目・・・。こんな不景気じゃ、パンすら満
        足に買えないって言うのに、誰が花なんか・・・。お腹
        の足しにもなりゃしない・・・。ごめんね・・・。今日こそり
        ーザに美味しいものを食べさせてあげたかったのに・・
        ・。」
  リーザ「いいのよ!私、好きよ!ジャガイモのスープ・・・!」
  ジェシカ「リーザ・・・」
  リーザ「姉さんも好きでしょ?」
  ジェシカ「・・・そうね。母さんの自慢料理だったものね・・・。でも
        今じゃ、あの頃母さんが作ってくれたように、色々な野
        菜は入れられないけど・・・。」
  リーザ「私はいいの!姉さんと食事出来るだけで・・・。」
  ジェシカ「・・・ありがとう・・・リーザ・・・。」
  リーザ「父さんも母さんも亡くなって・・・私には姉さんが、母さん
       代わりだもの・・・。(微笑む。)」

         その時、馬が駆けて来る音が近付く。
         ジェシカ、リーザ、何か話している風に、
         一寸脇へ寄る。
         一時置いて、上手よりフランチェスコ、ヴィクトール
         鞭を片手に登場。

  ヴィクトール「(大きく溜め息を吐いて、深呼吸するように。)全く
          ・・・おまえには敵わないなぁ。如何してあの角で、
          手綱を引かずに突っ込んで行けるんだ。下手すりゃ
          落馬どころか、馬諸共、地面に叩き付けられるんだ
          ぜ?」
  フランチェスコ「駄目だな。そんなことを言ってるんじゃ、馬術大
           会の優勝は諦めるんだな。おまえは勇気も腕力
           も持ち合わせているのに、唯一足りないのは、い
           ざと言う時の決断力だ。」
  ヴィクトール「おまえに言われなくても知ってるよ、その位・・・。
          自分の欠点はね。おまえは勇猛果敢だよ、全く・・・
          。怖いもの知らずと言うか何と言うか・・・。」
  フランチェスコ「そりゃどうも・・・。」
  ヴィクトール「おまえは俺がいなけりゃ、糸の切れた風船のよう
          に何処までも飛んで行ってしまうんだぜ。その点は
          感謝してもらわないとな。」
  フランチェスコ「分かってるさ。(ヴィクトールの肩に手を置く。)」
 
         2人、カフェへ。外に並べてあるテーブル
         につく。

  ヴィクトール「(横を通り掛かった、店の主人に。)親父!何か冷
          たいものをくれ!」
  主人「おや、貴族の学生さん、馬術大会の練習ですかい?」
  フランチェスコ「ああ・・・。」
  主人「(フランチェスコに気付いて。)これはこれは、クリストフ公
      爵家のフランチェスコ様じゃあありませんか。あなた様も
      大会に?」
  フランチェスコ「勿論!」
  主人「こりゃあ、他の者に勝ち目はありませんねぇ。可哀相だが
      あなた様が出るんじゃあ、あなた様の優勝はもう決まった
      も同然ですからねぇ。」
  ヴィクトール「そうなんだよな・・・。」
  フランチェスコ「そんなこと、分かるものか。一番のライバルであ
           るおまえから、そんな気弱な発言が飛び出すと、
           こっちの勝気がなくなるだろ。」
  主人「それじゃあ勝利の前祝いに、この店自慢のワインをご馳
      走するとしましょうかねぇ。」
  ヴィクトール「いいねぇ。」
  主人「では少々お待ちを・・・。」

         主人、店の奥へ去る。
         途中で、上手奥よりルネを従えて、ルグラン伯
         登場。ジェシカ達と話していたが、急に何か
         揉めているように。

  ルグラン「失礼だぞ!!貴様、私を泥棒呼ばわりする気か!!」
  ジェシカ「だってそうでしょ!!この花は売り物なのよ!!お金
        も払わずに持ってかれちゃ堪らないわ!!」
  ルグラン「こんなそこら辺の野原に咲いているような、小汚い花
        に金を払えるか!!貰い手がなくて可哀相だから、引
        き取ってやろうとしたものを!!こんな花・・・!!(花
        を投げ捨て踏み付ける。)」
  ジェシカ「何するの!?(思わず、ルグラン伯の腕に噛み付く。)」
  ルグラン「いてててて・・・。(ジェシカを払い除ける。)」
  ルネ「ルグラン伯!!」

         ジェシカ、尻餅をつく。
         ルグラン伯の声に気付いたフランチェスコ、
         ただならぬ雰囲気に近寄る。
         ヴィクトール、慌ててフランチェスコを追うように。
         ルグラン伯、剣を抜いてジェシカに向かって
         振り上げる。
         ジェシカ、ルグラン伯を見据える。ルネ、オロオロと。

  ルグラン「この娘!!今ここで叩き切ってやる!!」
  リーザ「姉さん!!」

         フランチェスコ駆け寄り、後ろよりルグラン伯の
         振り上げている腕を掴む。

  フランチェスコ「やめろ!!」
  ルグラン「誰だ!!離せ!!」
  ルネ「フランチェスコ殿・・・。」
  フランチェスコ「(腕を離す。)」
  ルグラン「フラン・・・?(振り返り、フランチェスコを認める。)おま
        えは!!何故、私の邪魔をする!!それともおまえが
        やられたいのか!?(フランチェスコに剣を突き付ける
        。)」
  フランチェスコ「女相手に、格好悪いと思わないのか?」
  ルグラン「何だと・・・!?」
  フランチェスコ「(ニヤリと笑って、ゆっくり剣を抜く。)だが、そん
            なに一戦を交えたいのなら、相手をしてやって
            もいいぞ・・・。」
  ルネ「ルグラン様!!(心配そうに。)」
  ルグラン「おまえは黙ってろ!!」
  ヴィクトール「(ボソッと、大き目の独り言のように。)フランチェス
          コの剣の腕前は、誰もが知っているだろうに・・・。」
  ルグラン「(ヴィクトールの言葉を聞いて、フランチェスコを見据
        えたまま、暫く考えるように。)・・・畜生・・・!!覚えて
        おきやがれ若造!!ルネ!!」

         ルグラン伯、憤慨した様子で、剣を握り締めた
         まま、ズンズンと下手へ去る。ルネ、オロオロと
         しながら、ルグラン伯に続いて去る。

  ヴィクトール「やれやれ・・・、あれが貴族の言う言葉かね・・・。」
  フランチェスコ「全くだ・・・。(剣を鞘に収めながら笑う。ジェシカ
            の方を向いて笑いながら。)あの業突く張りに噛
            み付くとは、中々勇ましいな。大丈夫か?」
  ジェシカ「(素っ気なく。)ありがとう・・・。」
  フランチェスコ「如何した?助けを出して迷惑だったような顔だ
            な?」
  ジェシカ「私は、あなた達のような貴族が、大っ嫌いなだけよ!
        !」
  フランチェスコ「・・・ほう・・・。」
  ジェシカ「あなた達は、何でも暴力で解決しようとする!!直ぐ
        に刀を出せば、相手を押さえられると考えている!!
        あなた達は人を殺すことなんて、平気でやって退ける
        んだものね!!」
  ヴィクトール「おい娘!!言葉が過ぎるぞ!!」
  フランチェスコ「(ヴィクトールの言葉を遮るように。)いいんだ!
            !そうか・・・。他に言いたいことは・・・?」
  ジェシカ「あるわ!!こんな不景気な世の中で、私達はパンす
        ら満足に買えないって言うのに、何?あなた達貴族は
        、馬術大会のお馬の稽古?全く、いいご身分ね!!」
  リーザ「姉さん・・・(胸を押さえて座り込む。)」
  ジェシカ「リーザ!?如何したの!?苦しいの!?大丈夫・・・?
        (リーザを立たせてやりながら。)さぁ、もう今日は帰り
        ましょう・・・。」
  フランチェスコ「娘!!(ジェシカの手を取って、ポケットから取り
           出した金貨を握らす。)今は、馬術大会の練習中
           で、いくらも持ち合わせはないが・・。」
  ジェシカ「施しなんかいらないわ!!(金を投げようとする。)」
  フランチェスコ「施しじゃない!(微笑んで。)その籠に入ってい
           る花を全部貰おう・・・。」
  ジェシカ「(握っていた金貨を見て、驚いたように。)でも、こんな
        大金で、私、お釣りなんてないから!!(金貨を差し出
        す。)」
  フランチェスコ「今日から一ヶ月間!!私の屋敷まで花を届けて
           おくれ・・・。それで文句はないだろう・・・?ちょっと
           待ってくれ・・・。」

         フランチェスコ、カフェまで走って行き、主人の
         持っていたメモ用紙とペンを借り、何かを書いて
         一枚千切り、持って来る。

  フランチェスコ「(その紙をジェシカに差し出し、手渡す。)場所は
           ここだ・・・。時刻は夕暮れ時・・・。頼んだぞ。(微
           笑んでジェシカの持っていた花籠を取り、籠から
           一束花を取り、ジェシカの方へ差し出す。)私から
           君へ・・・出会った記念に・・・。ヴィクトール!!」
  ジェシカ「あの・・・!(受け取った花を見詰める。)」

         フランチェスコ、ヴィクトール上手へ去る。
         戸惑いの表情のジェシカ。
         音楽で紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕前。
         下手より、ルグラン伯登場。
         続いて、ルネ登場。
 
  ルグラン「全く・・・!!何時も何時も、何て忌々しい奴なんだ!
        !何か問題が起こると、決まってあいつが絡んでくる
        !!そもそも長年、私が思いを寄せていたカロリーネ
        嬢と奴が、婚約したことから我々の因縁の間柄は、よ
        り一層深まったと言ってもよいのだ!!」
  ルネ「はぁ・・・。」
  ルグラン「(振り返ってルネを見る。)おまえもそう思うだろう!?
        ルネ!!思い起こせば、奴がまだ大学へ入る前・・・、
        初めてカロリーネ嬢と舞踏会で出会い、あの白百合の
        ような清純な美しさに、一目で心奪われ、私がダンス
        の相手を願い出た時に、同じように彼女に手を出した
        若造・・・それが奴だ!!2人同時にダンスに誘われ、
        頬を赤らめ戸惑いながら、彼女が受けたのは、よりに
        よって奴の方の願いだったとは!!本当に今思い出し
        ても腹の立つ・・・!!」
  ルネ「私もあの時のことは、よく覚えております、はい・・・。」
  ルグラン「何故、奴なんだ!!何故、奴が手を握り返される!?
        私の何処が、奴に劣ると言うのだ!!そう思うだろう
        ルネ!!教養もある!!馬術も狩りも踊りも、私は奴
        より完璧にこなす自信がある!!」
  ルネ「(ボソッと。)剣は・・・」
  ルグラン「・・・(チラッとルネの顔を見て、言葉に詰まったように。
        )剣は・・・ハッキリ言って奴には敵わないかも知れない
        ・・・。だが!!他のことなら・・・!!男っ振りも私の方
        が・・・!!」
  ルネ「(思わず。)えーっ!?」
  ルグラン「何だルネ!!おまえは奴の方が、見栄えすると言う
        のか!?(ルネに詰め寄る。)」
  ルネ「い・・・いえ・・・(独り言のように。)誰が見ても、一目瞭然
     ・・・。」
  ルグラン「だが見てろ!!剣では奴に敵わなくとも、他のことで
        なら・・・!!カロリーネ嬢の見てる目の前で、思う存
        分、苦行を味あわせてやる!!」

         ルグラン伯、スポットに浮かび上がり、
         力強く遠くを見遣り、歌う。
        
         “何時も私の目の前に
         立ちはだかる奴の影
         愛しい者を奪い
         その愛を一身に受ける
         奴の影が横切る度
         私の心はただ怒りに
         打ちひしがれ燃え滾る
         この思いに胸の中は
         熱い炎で焼き尽くされる
         憎い・・・奴が憎い
         何もかも私から奪い去る
         奴が目の前を歩く限り
         私の心が安らぐことは
         ある筈がない・・・
         だが何時か屹度・・・!!”

         フェード・アウト。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         静かな音楽流れ、紗幕開く。
         と、舞台はフランチェスコの屋敷の庭。
         下手よりゆっくりと、フランチェスコ登場。
         続いてカロリーネ登場。

  フランチェスコ「夕方になると、随分と過ごしやすくなるものです
            ね・・・。」
  カロリーネ「ええ・・・。」
  フランチェスコ「昼間は馬を駆り、走り回っているせいか、余計
           夕暮れ時の爽やかさが、肌に心地好い感じを与
           えるのでしょうね。」
  カロリーネ「ええ・・・。」
           









    ――――― “フランチェスコ”3へつづく ―――――












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“チュー吉くんの星に願いを・・・” ―全7場―

2011年12月14日 16時24分13秒 | 新作(人形劇用)


     〈主な登場人物〉

    チュー吉  ・・・  子ネズミ。本編の主人公。

    チュー五郎  ・・・  風来坊の物売りネズミ。

    チュー太  ・・・  チュー吉の兄。

    トビ  ・・・  オオタカの子分。

    オオタカの親分。

    チュー吉の母。

    

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

  
     「小さな扉・・・小さな煙突・・・小さなレンガを積み上げた
     可愛い可愛い小さなお家・・・。そこは小さな小さなネズミ
     さん達が住む、ネズミさん達の家だったのです。
     その家の小さな窓から覗いているのは・・・この物語の
     主人公、小さなネズミのチュー吉くんです。」

         音楽流れ、幕が開く。

    ――――― 第 1 場 ―――――

  チュー吉「あの高い高い場所に、キラキラ輝いている、あの綺麗
        な・・・何だろう・・・あのキラキラ光っているもの・・・。晴
        れた日の夜・・・辺りが暗くなると、決まって現われるん
        だ・・・。」

         チュー吉歌う。
 
         “何だろう・・・
         あの綺麗な輝き・・・
         すぐそこに見えているけれど
         手を伸ばすと離れて行く・・・
         決して掴めそうで掴めない・・・
         キラキラ輝く
         あの不思議な光・・・”

  チュー吉「そうだ!!今度の日曜日の母さんの誕生日に、あの
        キラキラしたものを取りに行って、母さんにプレゼント
        しよう!!母さん、喜ぶぞー!!飛びっきりの誕生日
        プレゼントだ!!」

         そこへ上手より、のんびりしたチュー吉の兄
         (チュー太)登場。

  チュー太「チュー吉!何を見てるんだい?」
  チュー吉「兄さん!うん!ほら見て!あそこにキラキラ光る綺麗
        な石が、沢山見えるだろ?あれを僕と兄さんで、取り
        に行こうよ!」
  チュー太「えーっ!?」
  チュー吉「今度の日曜日の母さんの誕生日に、2人で(窓の外
        の高いところを指差し。)キラキラ光る、あの宝石を取
        りに行って、それをプレゼントしようよ!!」
  チュー太「・・・光る・・・宝石・・・?」
  チュー吉「そうさ!それを僕と兄さんで一つずつ取って来て、母
        さんの右の耳と左の耳に付ける、綺麗な耳飾りを作っ
        て、プレゼントしようよ!!」
  チュー太「でも・・・そんな・・・あんなに高いところ(窓の外の高い
        ところを指差す。)・・・だろ?そんなとこにどうやって取
        りに行くのさ・・・。」
  チュー吉「高いところと言えば・・・森の先にある“たかいさん”だ
        よ!!あの山の一番高い場所に登れば、屹度手が届
        く筈だよ!!」
  チュー太「えー・・・“たかいさん”に登るのかい・・・?」
  チュー吉「うん!!」
  チュー太「僕・・・あんな高いところまで、屹度登れないよ・・・。」
  チュー吉「大丈夫さ!!兄さんが疲れたら、僕が兄さんの背中
        を押してあげるよ!!だから行こうよ、2人で!!あ
        の“たかいさん”へ!!」
  チュー太「でも・・・そんなに長いこと、留守にしたら屹度みんな
        が心配するよ。」
  チュー吉「ちょっと行って、さっと取って、直ぐに戻ってくれば、誰
        も気付かないうちに帰って来れるよ!!」
  チュー太「・・・そうかなぁ・・・」
  チュー吉「そうさ!!だから行こう、“たかいさん”へ!!」

         音楽流れ、チュー吉歌う。        

         “行こう行こう
         あの山目指して
         さぁ行こう
         キラキラ光った宝物
         探しに行くんだ
         あの場所へ”

  チュー太「でも・・・僕怖いよ、チュー吉・・・」
  
         チュー吉歌う。

         “大丈夫さ
         僕と兄さん2人なら
         力を合わせて
         屹度行けるさ
         あの場所へ”

  チュー吉「さぁ、行くぞ!!」
  チュー太「う・・・うん・・・」

         2人、下手へ去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         紗幕前。(音楽変わる。)
         上手より、大きな袋を担いだ大人なネズミ
         (チュー五郎)ぶらっと登場。歌う。

         “俺は宿なし
         色んなものを売り歩き
         その日暮らしの風来坊
         俺はただのはぐれ者
         一人きりで生きている
         誰にも頼らず自分の力で
         何をしようが俺の好き好き”

  チュー五郎「さぁて・・・今日はどんな薬を頂戴するとするかな。
          (笑う。)」
   
         チュー五郎、下手へ去る。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         紗幕開く。と、森の中。
         一軒の小屋が建っている。
         そこへ上手より、チュー吉登場。その後に
         続いて、疲れたようにチュー太登場。

  チュー太「チュー吉!待って・・・待ってよ・・・」
  チュー吉「早く来なよ、兄さん!」
  チュー太「もう僕歩けないよ・・・(座り込む。)」
  チュー吉「仕様がないなぁ、兄さんは・・・。ほら僕が背中を押し
        てやるよ。」

         チュー吉、チュー太の背中を押してみるが、
         びくともしない。

  チュー吉「う~ん・・・っと!!・・・よっ!!はっ!!駄目だ・・・!
        全く動かない・・・。兄さんもちょっとくらい歩く努力して
        よ・・・。」
  チュー太「僕、お腹が空いたんだ・・・。」
  チュー吉「お腹が・・・って・・・まだ家を出て、ほんの少ししか経っ
        てないじゃないか・・・。朝ご飯、食べたばっかり・・・あ
        れ・・・?兄さん、朝ごはん食べてないの?」
  チュー太「だって、母さん達が起きる前に出発するんだって、
        チュー吉にたたき起こされたから、そんなの食べる暇
        なんてなかったよ・・・。」
  チュー吉「何だ・・・そうか・・・。仕方ないなぁ・・・ほら、僕のビス
        ケットを半分あげるよ。」
  チュー太「ビスケット!?(嬉しそうに。)」
  チュー吉「ほら・・・(ポケットからビスケットを取り出し、半分に割
        りチュー太に差し出す。)」

         チュー吉、残りの半分のビスケットを食べる。

  チュー太「わぁーっ!!ビスケットなんて珍しいなぁ。こんな人間
        の食べ物・・・人間の・・・?チュー吉・・・このビスケット、
        どうしたんだい・・・?」
  チュー吉「・・・え?貰ったのさ。」
  チュー太「・・・貰った?誰に・・・?」
  チュー吉「知らない。」
  チュー太「知らないって・・・」          ※      
  チュー吉「だって毎日、扉の陰に知らない誰かが、ビスケットを
        半分置いてくれてるんだ。」
  チュー太「そんな!毒でも入ってたらどうするんだよ!!」
  チュー吉「大丈夫さ!もうずっと長いこと食べてるけど、ほら、こ
        の通り!ピンピンしてるだろ?(笑う。)」
  チュー太「でも父さんがいつも言ってるじゃないか!人間が置い
        た食べ物は、絶対に食べちゃ駄目だって!!どんな
        恐ろしい毒が入ってて、あっと言う間に天国へ行っちゃ
        うようなことになるかも知れないからって・・・」
  チュー吉「心配性だなぁ、兄さんは・・・(笑う。)」
  チュー太「だって・・・(手に持つビスケットを見る。)」
  チュー吉「それ、食べないなら返してもらうよ。」
  チュー太「あ・・・た・・・食べるよ!!食べるさ!!(手に持って
        いたビスケットを、口に放り込む。)」
  チュー吉「ね?美味しいだろ?」
  チュー太「う・・・うん・・・」
  チュー吉「でも一体・・・どんな人間が毎日、僕にビスケットを分
        けてくれるんだろう・・・。」

         音楽流れ、語るようにチュー吉歌う。

         “屹度 君にとっても
         大切な食べ物・・・
         誰とも分からない僕の為に
         毎日欠かさず置いてくれる
         優しい・・・誰か・・・”

  チュー太「そんなこと、どうでもいいだろ?あんまり人間なんて
        ものに拘っちゃ、碌なことにならない。父さんの言い付
        けは守った方がいいよ、チュー吉。」
  チュー吉「分かってるさ!」
  チュー太「(後方の小屋に気付いて。)あ、チュー吉!こんな森
        の奥深くに家があるよ!」
  チュー吉「え・・・?本当だ。誰が住んでるんだろう、こんな薄暗
        い森の中に・・・」

         チュー吉、小屋の方へ。

  チュー太「あ!!待って・・・待ってよ・・・!!」

         2人、小屋の窓から中を覗く。
         その時、下手より鼻歌を歌いながら、
         ぶらっとチュー五郎登場。

  チュー五郎「俺は宿なし~・・・その日暮らしの風来坊~・・・」

         チュー五郎、チュー吉とチュー太を認め、
         その方へ。

  チュー五郎「よおっ!」
  チュー吉、チュー太「わあっ!!」
  チュー五郎「何て声出すんだ。何見てんだよ、そんなとこで。」
  チュー太「あー・・・ビックリした・・・。」
  チュー五郎「ここは、人間の薬やだぜ?覗いたって何もいいもん
          は出てこねぇ。」
  チュー太「薬や・・・?」
  チュー五郎「ああ・・・。どんな薬でも作ってくれるのさ。病気や
          怪我だって忽ち治っちまう秘薬だぜ。但し・・・金さ
          え払えば・・・だけどな・・・。」
  チュー太「じゃあ僕達には関係ないね。」
  チュー吉「おじさん・・・誰?」
  チュー五郎「俺?俺か・・・俺様は・・・チュー五郎ってんだ。色ん
          なものを売り歩いて生活している、ただの気紛れな
          物売りよ。」
  チュー太「・・・物売り・・・?」
  チュー吉「物売りって、何を売ってるの?」
  チュー五郎「何でもさ!その薬売りのばあさんが作った薬も売っ
          てるんだぜ。」
  チュー吉「ふうん・・・」
  チュー五郎「そうだ!おまえさん達にピッタシの物を持ってるぜ。
          」 
  チュー太「え!?何々?」
  チュー五郎「(担いでいた袋の中を探すように。)えっと・・・どこ
          へやったかなぁ・・・。おお、あったあった、これこれ!
          (袋の中から、1本のハブラシを取り出す。)見てみ
          ろ!!いいだろう!!」
  チュー太「(ハブラシをマジマジと見て。)・・・何に使うの・・・?」
  チュー五郎「これ?これはだなぁ・・・(ハブラシを反対にしてみた
          りして、考えているように見入る。)えっと・・・そうそ
          う、これは・・・こうするんだ!!(ハブラシで、背中
          をゴシゴシ掻いてみる。)ほら!!こうやって背中が
          痒くて堪らない時に、こいつでこうやって・・・掻くん
          だ!!」
  チュー太「へぇ~・・・っ!!」
  チュー五郎「なぁ、便利だろう!!」
  チュー太「いいなぁー・・・。」
  チュー五郎「どうだ!!買わねぇか!?こんな森の奥深く知り合
          ったよしみだ!安くしとくぜ!!」
  チュー太「本当!?」
  チュー吉「僕達そんな物いらないよ。もう行こう、兄さん。」
  チュー五郎「おいおい、冷たいなぁ。これは気に入らねぇか?じゃ
          あ他にも・・・」
  チュー太「へぇ・・・今度は何が出て・・・」
  チュー吉「兄さん!僕達は母さんの誕生日プレゼントを取りに行
        くところなんだ。お金なんて持ってないし、急いでるんだ
        。邪魔しないで。」
  チュー五郎「誕生日プレゼント・・・?」
  チュー吉「そうさ。」
  チュー五郎「それなら・・・これはどうだ!飛びっきりの宝石だぜ。
          」
  チュー太「わぁーっ!!チュー吉!!見てご覧よ!!僕達が取
        りに行こうとしてる、キラキラした石だ!!」
  チュー五郎「これは“ダイヤモンド”ってんだ!!」
  チュー太「ダイヤ・・・?」
  チュー五郎「こいつは人間の世界でも、飛びっきり上等な石なん
          だぜ!ちょっとやそっとじゃ手に入らねぇ。」
  チュー吉「じゃあ、どうやって手に入れたの?」
  チュー五郎「それは・・・まぁ、いいじゃねぇか。どうだ!こいつを
          母さんの誕生日プレゼントにすればいいじゃないか
          。」








   ――――― “チュー吉くんの星に願いを・・・”
                        2へつづく ―――――







    


     ※ 皆さんはご存じですよね^^;




 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


     (どら余談^^;)

     久しぶりに、人形劇用・・・とは言いつつ、あまりそう言った
     制約に拘らず、“書くのが楽しい♥”と感じながら書き上げた
     作品です(^^♪
     だって、もし人形劇の舞台に仕上げようと思ったら、とって
     も大変かも知れません(^_^;)
     途中、人形劇でない舞台を頭で思い浮かべながら書いて
     いたら、そりゃ人形劇舞台には・・・し難いですよね^^;









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