りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“マリア” ―全14場―

2012年05月24日 21時31分58秒 | 未発表脚本


         〈 主な登場人物 〉
   
     ジェシー  ・・・  泥棒一味の一人。
                 ずっと一人で生きてきた、人生に何処
                 か冷めた所のある無鉄砲者。

     マリア  ・・・  舞台女優を夢見る娘。

     ニック  ・・・  泥棒一味の一人。

     ラリー  ・・・  泥棒一味の一人。

     マイク  ・・・  泥棒一味の一人。

     スザンヌ  ・・・  マリアの入っている劇団員。マリアに何
                 かと対抗意識を持つ。

     シャロン  ・・・  ジェシーの働く店の歌手。

     バリー  ・・・  美術館の警備員。

     メアリ  ・・・  マリアの入っている劇団員。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    ――――― 第 1 場 ――――― A

         静かな音楽で幕が上がる。(カーテン前。)
         薄明かりの中、地下道を吹き抜ける風の音。
         誰かが歩く靴音が響く。
         と、一発の銃声が辺りに響く。
         上手より一人の男、銃を片手に誰かを捜して
         いるように登場。

  男(ラリー)「(舌打ちをして。)ちっ!何処に行ったんだ、あの野
         郎!!一年前のあの時以来、姿を暗ましやがって、
         よくものこのこと、この町に戻って来れたものだ!!
         見つけたらただでは済まないぞ!!」

         男、再び誰かを捜すように下手へ去る。
         一時置いて、腹部に傷を負った男、ヨロヨロと
         本を片手に握り締め上手より登場。
         中央、痛みに顔を歪め、膝を付く。
         男の名前はジェシー。

  ジェシー「・・・マリア・・・もう直ぐ・・やっと、おまえの笑顔に・・・
       会えるんだな・・・。やっと・・・(フッと笑って。)・・・長かっ
       たなぁ・・・(咳き込む。遠くを見遣って。)・・・そう・・・忘れ
       もしない・・・おまえと初めて出会ったのは・・・一年前の
       今日・・・夏の・・・暑い・・・日だった・・・(倒れる。)」

         暗転。

    ――――― 第 1 場 ――――― B

         楽し気な音楽が流れてくる。カーテン開く。
         (ライト・イン)と、ニューヨークの下町。
         中央にポーズを取ったマリアと、数人の男女。
         満面の笑みを湛えながら、嬉しそうに歌い
         踊る。

         “明るい日差し浴びて
         初夏の清々しい微風
         ときめき逸るこの心
         何かの出会いの予感・・・
         何時か思い描いた
         未来の足跡
         何時か必ず叶うと
         未来を夢見た”

         マリア、希望に胸膨らませたように大空を
         見上げ、下手奥へ走り去る。
         入れ代るように上手より、スーツ姿のジェシー、
         ゆっくりと無表情で登場、歌う。

         “前を歩くな 横切るな
         視界の入るな 目障りだ
         今まで自分の為だけに
         これからだって変わらない
         俺は遣りたいように遣る
         誰から何と言われても
         人のことには興味ない
         それが例え人間の
         生きる道から外れても
         誰がどれ程泣こうとも
         俺の知ったこっちゃない
         俺は遣りたいように遣る!!”

         カーテン閉まる。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         カーテン前。
         下手より、黒いシャツに黒いズボン、黒い靴に
         黒い帽子を手に持ったニック、ズボンのポケット
         に片手を突っ込んでゆっくり登場。続いて同じ
         格好をし、帽子を深く被ったラリー、マイク登場。

  ラリー「おい、ニック!先週盗んだ・・・」
  ニック「(ラリーの言葉を遮るように。)ラリー!!そう言う言葉を 
      軽々しく口に出すな。今は中だからいいようなものを、気
      を付けておかないと、うっかり外でも喋ってしまうぞ。」
  ラリー「(肩を窄めて。)そうだな。で、如何なった?」
  ニック「(ニヤリと笑って。)凄い札束に変身して、店の金庫で眠
      ってるさ。」
  マイク「おお!!それで、俺達の分け前は?」
  ニック「そう焦るな。一先ず俺が預かっといて、何時でも必要な
      時、必要なだけ用意してやるから。」
  ラリー「けどジェシーの奴、見つかったら殺されるとか、全く心配
      しないのかねぇ・・・。」
  マイク「そうだよなぁ。俺は嫌だな、捕まるのは・・・。」
  ラリー「誰もおまえを当てになんてしてないさ。」
  ニック「そう言うことだ。あいつがいるお陰で、俺たちゃ随分、助
      かってるんだぜ。あいつが囮になってくれるお陰で、俺た
      ちゃ楽々と獲物に在り付けるって訳だからな。」
  ラリー「だけどあいつ、何だってよりによって自分から一番危ない
      役を遣りたがるんだろ・・・。」
  ニック「さあな。」
  マイク「ところで今日の獲物“聖母マリアの肖像”って言ったら、
      時価数億円は下らないって?」      ※
  ニック「ああ。あれに目をつけたのもジェシーなんだぜ。あのニュ
      ーヨーク一、警備の頑丈な美術館を狙うなんてね・・・。そ
      れに盗みに入る時間も、閉館後直ぐだなんて・・・。」
  ラリー「どうもチャレンジ精神旺盛らしいな。」
  ニック「・・・って言うか、自分を無理矢理窮地に追い込むような
      所がある奴だとは思うがね・・・。」
  マイク「へぇ・・・」
  ニック「あいつが俺達の仲間に加わって、もう一年位になるが、
      未だに掴みどころのない奴なのは確かだね。」
  マイク「あいつ、自分のこと余り喋んないしな。」
  ニック「ああ。おまえと違って、自分の方から聞かれもしないこと
      を、ベラベラ喋ったりはしないな。」
  マイク「酷いなぁ。俺だって何も聞かれもしないことを、自分から
      喋ったりは・・・あんまりしないようにはしてるんだけど・・・
      。偶にはするかも・・・。」
  ラリー「(笑って。)自分でもよく分かってるじゃないか。」
  マイク「ちぇっ。」

         そこへ下手よりジェシー、ニック達と同じ
         ように黒の上下に身を包み登場。

  ジェシー「まだ出ないのか?」
  ニック「(振り返って。)ああ、ジェシー。いや、もう出ようと思って
      た所だ。」
  ジェシー「なら、もう準備はいいぜ。」

         ニック、ラリーとマイクに目で合図して、
         行くように促す。

  ラリー「OK。」

         ラリー、マイク上手へゆっくりと去る。ジェシー
         2人に続く。

  ニック「よお、ジェシー・・・。」
  ジェシー「(振り返る。)」
  ニック「(手に持っていた帽子を被りながら。)おまえにとって、一
      番怖い物ってなんだ・・・?」
  ジェシー「怖い・・・?」
  ニック「ああ。例えば死ぬのが怖いとか・・・誰かを傷付けられる
      のが怖いとか・・・。」
  ジェシー「くだらない・・・。」  
  
         ジェシー、上手へ去る。ニック、首を傾げ
         ながらジェシーに続く。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         音楽でカーテン開く。と、閉館前の美術館。
         一枚の大きな肖像画の前でマリア、見上げ
         るようにその絵に見入っている。

  スザンヌの声「あなたも今度の舞台の主役オーディションを受
           けるんですって!?(笑い声。)あなたは自分の
           実力を知ってて、そんな無謀なことを考えている
           のかしら?この劇団のスターは私よ!!私よ・・・
           (木霊する。)」

         マリア、涙を拭うような仕種をする。
         一時置いて、警備員バリー、上手より
         登場。マリアを認めて近寄る。

  バリー「やあ、マリア、また来てたのかい?」
  マリア「(振り返ってバリーを認める。)バリーさん・・・。」
  バリー「熱心に見入っている所、申し訳ないが、もう閉館だよ。」
  マリア「もうそんな時間だったの?(回りを見回して。)本当、何
      時の間にか私一人ね・・・。」
  バリー「全く、おまえさんはこの絵が好きだねぇ。・・・何か・・・あ
      ったのかい?」
  マリア「え?如何して・・・」
  バリー「(微笑んで。)おまえさんは、劇団で何か嫌なことがある
      と、必ず決まってこの絵を見にくるからね。何も口に出さ
      なくても分かるよ。」
  マリア「(再び絵に目を遣って。)何故かしら・・・この絵を見てる
      と、とても心が穏やかになるの。外でどんな嫌なことがあ
      ってもね・・・。」
  バリー「そうか。屹度、おまえさんのこの絵を見る気持ちが穏や
      かだから、そう感じるのかも知れないな。」
  マリア「(微笑んで、バリーを見る。)それに、バリーさんと話しも
      出来るし、元気になるのね!」
  バリー「それは嬉しいね。」
  マリア「頑張らなくっちゃ!!もう直ぐ、次の公演の主役オーデ
      ィションがあるの!!今夜も今から自主稽古よ!!」
  バリー「ほう・・・。じゃあ応援しないとな。」
  マリア「ありがとう!!おやすみなさい!!」

         マリア、バリーに向かって手を振り、上手へ
         走り去る。バリー、微笑ましくマリアの後ろ姿
         を見詰める。
         去るのを見計らって、ゆっくり回りを見回しな
         がら、下手へ去る。回りはライトを消したよう
         に薄暗くなる。と、怪し気な音楽が静かに流
         れ、回りの様子を窺いながら、忍び足のニック、
         ラリー、マイク其々歌いながら登場。 

         “人が皆 寝静まる
         頃には少し早いけど
         今が俺らの稼ぎ時
         夜の闇が辺りを包み
         この緊張感が堪らない
         一歩一歩踏み締めて
         守る者の待つ場所へ
         導くものがあるように
         黙って歩みを積み重ね
         俺らは闇の帝王さ!”

         3人、其々絵に近付き、外し具合を
         見たり回りを見張ったりしている。
         その時、遠くでバリーの声が聞こえる。

  バリーの声「泥棒ー!!」

         ニック、ラリー、マイク、思わず身を
         縮めるが、お互い顔を見合わせ、頷いて
         再び絵を外しにかかる。

  ニック「ジェシーの奴、上手くやったようだな。」

         暫くすると、絵が壁から外される。
         3人、再び顔を見合わせて、ニヤリと
         笑う。
         音楽で紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン前。
         上手より、レオタード姿のスザンヌ、メアリ、
         話しながら登場。

  スザンヌ「全く、信じられないわ!!如何して今度の舞台に限
        って、主役がオーディションなの!?何時もは私に決
        まってるのに!!」
  メアリ「フランスから有名な演出家が来るらしいから、その先生
      のお眼鏡に適った主役ってことじゃないかしら・・・。」
  スザンヌ「・・・にしてもよ!!私はこの劇団の看板スターよ!!
        私抜きにして、お客が入るかしら!?」
  メアリ「さあ・・・。でも、その辺のところは、勿論考えているでしょ
      う?だから、あなたの主役は決まってることよ。」
  スザンヌ「(得意気な顔付になる。)・・・そう・・・ねぇ・・・。まあ、
        誰が受けても私に敵う女優がいるとは思わないけど
        ・・・。」

         その時下手より、練習着に身を包んだマリア、
         台本を抱えて登場。スザンヌ、マリアを認め
         近寄る。

  スザンヌ「あら、マリア。台本を抱えて、こんな遅くまで自主レッ
        スン?」
  マリア「・・・ええ・・・。」
  スザンヌ「へえ。本当に頑張ればオーディションに受かると思っ
        てるんだ。たいした自信ねぇ。」
  マリア「自信なんて・・・」
  スザンヌ「今まで、この劇団のどの舞台を成功に導いたのも、
        私の実力と人気があってのことだって分かってるの
        かしら?」
  マリア「・・・それはもう・・・」
  スザンヌ「だけど敢えて挑戦するなんて、その心構えは立派よ
        ねぇ。まぁ、精々頑張って頂戴!!」

         スザンヌ、スタスタと下手へ去る。
         メアリ、スザンヌに続いて行きかけて、振り返り
         マリアに駆け寄る。

  メアリ「スザンヌの言ったことなんて、あまり気にしない方がいい
      わ!」
  マリア「メアリ・・・」
  メアリ「私はあなたの実力を知ってるもの!あなたなら必ず、オ
      ーディションに合格するわ!!確かにここに来た当初の
      あなたの演技は荒削りで、そりゃ酷いものだったけど、今
      は違う!!私、あなたが毎晩レッスンが済んでから、一人
      で頑張ってたの知ってる・・・。その頑張りがあれば、絶対
      大丈夫よ!!」
  マリア「(嬉しそうに。)メアリ・・・ありがとう。けど、あなたも・・・」
  メアリ「(マリアの言葉を遮るように首を振る。)ううん!私は駄目
      ・・・。自分の実力は自分が一番よく知ってもの。私はダン
      スで一場面貰えればラッキーだと思ってるの。だから頑張
      って!!私はあなたを応援してる!!そして一度あのス
      ザンヌの鼻をへし折ってやって!!」

         メアリ、下手へ走り去る。

  マリア「(走り去るメアリの背後を、暫く見ている。)メアリ・・・。」

         マリア、微笑みを洩らして上手へ去る。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         カーテン開く。と、夜の町の公園。
         遠くにビル街の明かりが見える。
         中央にジェシー、佇み歌う。

         “一体何をしているのか
         自分の身をすり減らし・・・
         一体何の為だと言うのか
         有り余る危険を冒し・・・
         この世には何も魅力はない・・・
         ただ生かされるこの身のその為だけに・・・
         俺は突き進む・・・

         一体何があると言うのか
         この歩いていく向こうに・・・
         一体何が見えると言うのか
         この道の果てには・・・
         何もある筈はない・・・
         ただ何処までも続く平坦な道を・・・
         俺は歩き続ける・・・”

         ジェシー、溜め息を吐いて中央に後ろ向きに
         置いてあったベンチへゴロンと横になる。
         一時置いて、下手よりマリア、鞄を担いで手に
         は本類を持ち、練習帰りの出で立ちで、幾分
         疲れたように登場。
         中央、立ち止まり鞄を下ろし、回りを見回す。
         誰もいないのを確認したように、手に持って
         いた台本を開いて大声で叫ぶ。

  マリア「(息を吸って。)キャーッ!!キャーッ!!」

         ジェシー、思わず驚いて、寝ていたベンチ
         から飛び起き立ち上がる。










       ――――― “マリア”2へつづく ―――――










    ※ 今回、態と日本円の表示に直させて頂きました^_^;




 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


        (おまけフォト^^;)

        
    
      犬バージョンのプッチくん、作りなおしてみました^^;

      ご覧の通り、ジョンより若干大き目の、同じタイプの
      お人形です(^^)v
      何故作りなおしたか・・・と言うと・・・前回のプッチくん、    
      直ぐに関節からポロッと手足が落っこちてしまうのと、
      ジョンで練習をしてみたところ、意外とこのジョンくん
      が可愛らしかったので、同じようなお人形にしようと
      思ったからです(^^)v
      今回は、串刺しにせず、お腹の部分を手で持って、
      動かす予定です(^.^)



   (どら余談^^;)

   いよいよ2012年春公演が明日に迫ってまいりました(>_<)

   今日は一日ドタバタと過ごしていた為、とても眠いのでブログ
   の更新はお休みさせて下さい
   春公演が終われば、そちらの2作品の公開も合わせて行って
   いこうと思っていますので、また公演日記共、楽しみにお待ち
   下さい(^^)v

   それでは明日、頑張ります(^^♪


                                  どら。












  http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 





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