りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ワンダフルToday!―君と僕の新しい出会い―” ―全11場―

2012年06月17日 20時17分57秒 | 脚本


      


 
     〈 主な登場人物 〉

     ジュリー ・・・ 本編の主人公。

     プッチ ・・・ ジュリーの愛犬。

     村長 ・・・ 犬の王国に住む犬。

     アナベル ・・・ 村長の娘。

     ジュリーの父と母。

     犬たち。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         開演アナウンス。
         音楽流れる。(幕が開く。)

    「人間世界から隔離されたかのような隠れた山間に、外
    からは一見分かり難い不思議な場所がありました。一歩
    足を踏み入れたその場所には、明るく賑やかな、とても
    楽しそうな村があったのです。人間達から隠れるように
    造られたその村は・・・ワンダフルな・・・犬の王国だったの
    です。」

    ――――― 第 1 場 ―――――

         山間の村の風景。
         犬たち、楽しそうに歌う。

         “ここは犬の国
         危険な人間世界から離れ
         みんな幸せに暮らすパラダイス
         今 希望満ち同じ仲間同士だけで
         生きるそこは素敵な楽園
         犬の為の王国
         心安らぐ隠された
         誰も知らない僕たちの
         素敵な場所だ
         犬ならば 誰でも住める
         王国だ”

         その時、村長とアナベル、下手より登場。

  犬1「あ!!村長さんとアナベルお嬢さんだワン!!」
  村長「今日も変わったことはないかワン?」
  犬たち「はい、村長ワン!!」
  村長「うむ・・・」

         犬たち歌う。

         “ここは犬の国
         豊かで実り溢れてる
         ただひっそり
         誰にも知られず
         築き上げた犬の王国だ
         実り多い楽園”

  村長「さぁ、そろそろ来年の作物の準備を始めるぞワン。」
  犬2「はいワン!!」
  犬3「ワン!!」

         その時、上手より犬4の声が聞こえる。

  犬4の声「大変だー、ワン!!」

         上手より犬4、走り登場。

  犬4「(息を切らせて。)村長!!大変だ・・・ワン・・・。」
  村長「何事だワン。」
  アナベル「どうしたの?ワン。」

         その時、犬5に抱えられたノラ犬(プッチ)、
         息も絶え絶えな様子で登場。
         (中央、倒れ込む。)

  アナベル「キャーッ!!」
  犬1「どうしたんだワン!!」
  犬2「どうしたの?このノラ犬ワン!!」
  犬4「それが村の入り口の川辺に倒れていたんだワン!!」
  アナベル「お父様!!酷い怪我ワン!!」
  村長「早く私の家へ連れて来なさいワン!直ぐに手当てをしよ
     うワン!」
  犬5「おい、しっかりしろワン!!」
  犬3「ワン!!ワン!!」
  犬たち「ワン!!ワン!!ワン!!」
 
         犬たち、騒ぎながら下手へ去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         紗幕前。音楽流れ上手よりジュリー、
         走り登場。

  ジュリー「プッチー!!こっちよー!!早く来てー!!」
  
         犬のプッチ、上手より嬉しそうに走り登場。

  プッチ「ワンワンワン!!」
  ジュリー「(笑う。)プッチ!!やめてよ!!やめてったら!!く
       すぐったいわ!!」
  プッチ「ワンワンワン!!」
  ジュリー「(笑う。)プッチ!!プッチ!!大好きよ!!」

         ジュリー歌う。

         “あなたが一緒なら
         私 何も欲しがらないわ
         一緒にいるだけで
         私は幸せだから
         いつまでも2人で”

         プッチ、心の歌声。

         “僕はいつも君の側にいるよ”

  ジュリー「プッチ!!行くわよ!!」
  プッチ「ワンワンワン・・・」

         ジュリー、下手へ走り去る。(音楽フェード・アウト。)
         プッチ、下手方へ行きかけるが、
         上手方に気を取られ立ち止まる。
         (プッチ、下手へ一旦去る。)
         上手よりジュリーの父と母、話しながら登場。


   
          (左・ジュリー父、 右・ジュリー母)


  母「あなた・・・。どう考えても今度の引っ越し先は、自然溢れる
    こことは違って都会過ぎますわ。新しい住まいも、町の中の
    高層マンションなんですもの。犬を連れて行くことは・・・」
  父「そうだな・・・。プッチには可哀相だが、どこか引き取ってくれ
    る新しい飼い主を捜すことにするか・・・。」
  母「ええ・・・」
  父「これからのジュリーの学業のことを考えると、田舎の一軒家
    より都会の方が、環境も整い絶対にいいだろうからな・・・。」
  母「そうね・・・。」

         父、母、上手へ去る。
         プッチ、下手より2人の話しを聞いていたように
         登場。(音楽流れる。)


   
                     ※



  プッチ「僕・・・どこかへやられるんだ・・・。ジュリーと一緒には行
      ないんだ・・・。離れ離れになってしまうんだ・・・。」

         プッチ歌う。

         “大好きな君
         ずっと側にいつも
         離れることなく       コーラス“いつも
         そう信じてた”             側に”

         プッチ、淋しそうに下手へ去る。
         ジュリーの声が聞こえる。

  ジュリーの声「え・・・?おばあちゃんのお家へ連れて行ったプッ
          チがいなくなったですって!?どうして新しいお家
          へ一緒に連れて行っては駄目だったの!?どうし
          てプッチをおばあちゃんのお家へ連れて行ったりし
          たの!?どうして・・・どうして私に黙って、プッチを
          連れて行ってしまったの!?パパもママも大っ嫌い
          !!」
  母の声「ジュリー!!」

         紗幕開く。と、森の風景。
         ジュリー上がる。

  ジュリー「私・・・プッチを捜しに行くわ・・・!」

         ジュリー歌う。

         “大好きだから
         大切な友達
         ずっと側にいつも
         一緒にいてね
         あなたを捜す
         きっとこの私が
         だから待っててね     コーラス“きっと
         心配ないわ”              捜す
                               あなたを・・・”

  ジュリー「(回りを見回して。)確かこの辺りに・・・どんな薬でも作
       ってくれる魔法使いのおばあさんがいるって、ママに聞
       いたことが・・・」

         後方、木が割れるように左右に開くと、
         一軒の小屋が現れる。

  ジュリー「あ・・・こんな所に小屋が・・・」

         (音楽変わる。)

    ――――― 第 3 場 ―――――

         扉の開く音(“ギィーッ”)と共に、小屋が
         下がると、小屋の中の風景。
         一人の老婆、後ろ向き上がる。 ※2


   


  ジュリー「こんにちは・・・」
  老婆「(ジュリーを見る。)・・・何か用か・・・」
  ジュリー「・・・ここが・・・どんな薬でも作ってもらえるお薬屋さん
       ・・・?」
  老婆「いかにも・・・。お望みとあらば、人間をひき蛙に変える薬
     でも作ってやろう・・・。(笑う。)」
  ジュリー「人間を・・・。私・・・犬になりたいの!!おばあさん!!
       どうか私を犬に変える薬を作ってちょうだい!!」

         老婆歌う。

         “望みとあらば
         信じられないような
         薬だとしても
         作ってやろうぞ・・・”

  老婆「ただし・・・金貨100枚じゃ。」
  ジュリー「え?」
  老婆「“え?”なんじゃ、その驚いた声は。ここは薬屋じゃ・・・。
     ただで薬をもらえるとでも思ったか。」

         ジュリー歌う。

         “お願いします
         私を犬にして
         薬を作って下さい
         私に”

  老婆「金貨100枚払えば、犬にでも猫にでも・・・何にでも変わ
     れる薬を作ってやろう。」
  ジュリー「私・・・ここに今までお小遣いを少しずつ貯めた、金貨
       10枚持って来たの・・・。どうかおばあさん・・・この金貨
       10枚で私に・・・」
  老婆「10枚じゃと!?笑わせるでないわ。」
  ジュリー「私どうしても犬になって、犬の王国へプッチを捜しに
       行かなけりゃならないの!!」
  老婆「わしには関係ないわ。」
  ジュリー「おばあさん、お願いします!!どうか・・・どうか私を犬
       にして下さい!!」
  老婆「ふん・・・」
  ジュリー「どうかお願い・・・優しいおばあさん!!」
  老婆「そんなおべんちゃらを言ったところで、駄目なものは駄目
     じゃ・・・!!しかし・・・そこまで言うのなら・・・金貨10枚分
     の薬を作ってやってもいいがのぉ・・・。」
  ジュリー「本当!?おばあさん!!」
  老婆「その代わり・・・薬の効き目は金貨100枚分の10分の1
     ・・・10時間じゃ・・・」
  ジュリー「それでもかまわないわ!!」
  老婆「10時間経てば、おまえは人間の姿に戻る。そのことを忘
     れんようにな。犬の王国で人間の姿に戻ると言うことは、そ
     の命の保証もないと言うことじゃ。なんせ犬の王国の犬た
     ちは、ここら辺のノラ犬たちよりたちの悪い、自分たちの不
     遇は全て、人間のせいだと考えておるような犬たちばかり
     じゃからな。だが同じ仲間だと思われれば、あそこ程楽しい
     場所もないであろう。まぁせいぜい10時間の間、その犬の
     王国を楽しんで来るんじゃな。」
  ジュリー「ありがとう!!おばあさん!!」

         (音楽フェード・アウト。)
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         上手よりジュリーの母、慌てて登場。

  母「あなた!!あなたー!!」

         下手よりジュリーの父、登場。

  父「どうしたんだ?」
  母「あ、あなた!!大変ですわ!!ジュリーがプッチを捜しに行
    くと言って、私が止めるのも聞かず、家を飛び出して行った
    んです!!」
  父「何だって!?」
  母「あの子、プッチのことが本当に大好きだったから・・・。おばあ
    様の家からいなくなったことを知って、ものすごく泣いて・・・
    それで!!一体どこへ行ったのかしら・・・!!」
  父「直ぐ警察に電話しよう!!」
  母「そうだわ・・・もしかして・・・」
  父「どうした?」
  母「あの子が小さい時によく話して聞かせた犬の王国・・・そこへ
    行ったんじゃ・・・」
  父「犬の王国だって?」
  母「ええ・・・。そんな場所ある筈ないのだけれど、小さい時から
    あの子は心から犬の王国なんて場所があるんだと信じてい
    ましたから・・・。プッチもいつかそんな素敵な場所へ行けた
    らいいなって・・・。あの子・・・犬の王国へ、プッチを捜しに行
    ったんだわ!!」
  父「ジュリー・・・」

         紗幕開く。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         幻想的な音楽流れる。
         スモーク流れ、木々で覆われた森の
         ような風景。     ※3

      コーラス“犬たちだけ”

         (音楽フェード・アウト。)
         音楽変わる。
         木々が割れるように開く。と、明るい村。
         (犬の王国。)犬たち歌う。

  犬1「(下手より登場。)おーいワン!!」
  犬2「(上手より登場。)みんなーワン!!」

      “ここは犬たちの国だ”    コーラス“犬たちの
                              守られた”
      “ここにいれば”              “安心だぜ
                              安全だから”
      “ここは犬たちの国だ”         “犬たちの
                              守られた”
      “ここにいれば”             “平和で
                              幸せ
                              楽しく
                              暮らせる”
      “犬たちだけの国”
      “犬たちの国だ”
   
         そこへ下手より、犬の姿に変わったジュリー、
         わくわくしたような面持ちで登場。
         犬たちの様子を楽しそうに見ている。

  犬3「誰だワン?」
  犬1「新入りワン?」
  犬2「あなたも人間に捨てられたのワン?」
  ジュリー「私、プッチって言う犬を捜しにやって来たの!!ここの
       国に来てないかしら!?」
  犬2「プッチ・・・?」
  犬1「知らないなぁワン・・・」
  犬3「・・・そう言えば・・・2、3日前に傷だらけで現れたノラ犬が、
     この国へやって来て村長のところへ連れて行かれたが・・・
     まだ目が覚めないって・・・ワン。」
  ジュリー「え・・・?」
  犬1「名前は分からないけど・・・君が捜してる犬がそいつなら、
     まだ村長ん家で傷の手当てをしてもらってるぜワン。」
  ジュリー「本当!?」
  犬2「ええワン!」
  ジュリー「お願い!!私をその村長さんのところへ連れて行って
       !!」
  犬3「おやすいごようさワン!」
  犬1「さぁ、こっちだワン!」     








 ――――― “ワンダフルToday!
       ―君と僕の新しい出会い― 2へつづく ―――――










   ※ ここで、犬形のお人形から、人形(ひとがた)のプッチくん
     に変わります(^^)

   ※2 この“老婆”、ご存じクリフ作品の魔法使いと同一人物
      です(^^)v
      時期的には、ジュリーちゃん作品の方が先で、まだこの
      頃は金貨の枚数に応じて、薬の質を変えはしても、作っ
      てあげないなどと意地悪の言わない、それなりの薬売り
      のお婆さんでした^^;
      でも、ジュリーちゃんも後で分かりますが、薬の利き目が
      切れて、人間に戻ってしまったりするのですが、クリフくん
      作品の中で“ひき蛙”に変わってしまったお婆さんも、
      その内、効き目が切れて元にもどるのかな~・・・なんて、
      想像して頂けると、また楽しいのではないでしょうか^^;

   ※3 久しぶりに“スモーク”・・・またまた挑戦致しました^^;
      結果は・・・矢張り“スモーク”は難しい・・・でした(>_<)
      
      次回、記念公演では「スモークマシン」なるものをお借り
      しようか・・・と思案しております^_^;



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪








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