りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“キャシーの森(原作)” ―全6場― 2

2012年10月04日 19時20分11秒 | 脚本


  花の妖精「(微笑んで。)よかったわね。」
  クルト「うん!花の精のお陰さ!」
  花の妖精「いいのよ。それより小鳥さん、私の花園に何か御用
        かしら?」
  クルト「そうだ!キャシー!」

         その辺の様子を見回していたキャシー、
         クルトの呼びかけに振り返る。

  キャシー「やっととれたの?」
  花の妖精「あなた、小鳥さんのお友達?随分冷たいのね。小鳥
        さん、もう少しで蜘蛛さんに食べられてしまうところだ
        ったのよ?」
  キャシー「友達じゃないわ。私の案内係りよ。“フルト”って言うの
        。(悪戯っぽく舌を出す。)」
  クルト「違う!!僕はクルト!!」
  花の妖精「まぁ・・・(呆れたように。)それで、一体何の案内をし
        てもらってるのかしら?」
  キャシー「願いを叶える石を集める為に、5人の妖精に会うの、
        私!」
  花の妖精「私の石が欲しいのね?」
  キャシー「じゃあ、あなたが5人の妖精の一人?」
  花の妖精「花の精よ。」
  キャシー「私、石が欲しいの!!」
  花の妖精「そう・・・。でも、直ぐにあげる訳にはいかないわ。」
  キャシー「何故よ!?沢山持ってるんでしょ!?一つくらい私に
        くれたって構わないじゃない!」
  花の妖精「質問に答えて!そうすれば、私の石をあなたにあげ
        てもいいわ。」
  キャシー「・・・質問・・・?質問って何よ・・・」
  花の妖精「あなたの大切なものは何?」
  キャシー「大切なもの?」
  花の妖精「ええ。あなたが本当に大事にしたいもの・・・。さぁ答
        えて!」
  キャシー「そんなの一杯あるわよ!!私の大切なものは・・・」

         キャシー、答えるように歌う。

         “大切なもの・・・
         この間 買ってもらったピンクのワンピース”

  花の妖精「駄々捏ねてね!」

         “クラスメイトに貰ったオレンジの香りの消しゴム”

  花の妖精「貰った?取り上げたんでしょ?」

         キャシー、花の妖精を睨む。

         “妹が捨てた花柄のリボン
         私の髪にピッタリ”

  花の妖精「捨てたんじゃないわ。置いてあっただけ!」

         “学校の帰り道で拾った1ドル”

  花の妖精「目の前で探してた人に、気付いてた筈よ。」
  キャシー「知らなかったわよ!おばあさんのことなんて!あ・・・
        (仕舞ったと言う風な顔付きになる。)」
  花の妖精「そう、おばあさん・・・1ドル足りなくて、電車に乗れな
        いって困ってたのよね・・・?」
  キャシー「あれは!!」

         花の妖精、歌う。

         “あなたにとって大切なもの
         形あるくだらないものばかりね
         もっと他に何かないの?”

  キャシー「・・・他に何があるって言うの?」

         “心に手を当ててよく考えて
         それに気付いた時
         ただの石は魔法の石にかわるの”

  キャシー「どう言うこと・・・?」

         花の妖精、キャシーに近寄り、自分が持って
         いた石をキャシーに手渡す。

  キャシー「(その石を見て。)・・・ただのその辺に転がってる石じ
        ゃない・・・」

         “あなたが冷たい心なら
         何時までも冷たい石・・・
         あなたが暗い心なら
         何時までたっても黒い石・・・
         あなた次第で
         どんな風にも変わる石・・・”       ※

  花の妖精「これを持って行きなさい。但し今のままのあなたじゃ、
        たとえ5つの石が集まったところで、願いが叶うとも思
        えないけど・・・。(微笑む。)」

         キャシー、怪訝そうな面持ちで、優しく微笑む
         花の妖精を見詰める。
         フェード・アウト。

    ――――― 第 3 場 ―――――       ※2

         風の吹き荒れる音、大地が地響きを立てて
         揺れる音が、轟くように交互に聞こえる。
         フェード・インする。と、森の中。
         風の精と大地の精、向き合うように立ち、お互
         いを睨み付けたまま、力自慢に興じている。

  風の精「そら!!(風が吹き抜ける音。)」
  大地の精「おっと・・・(その風に一瞬、身体がよろけるように。)
        やるな!!(足を踏み鳴らすと、地鳴りがする。)どう
        だ!!」
  風の精「(ふらつく。)おっとっとっと・・・」
  大地の精「俺様の大地を揺るがすこの地響きの前じゃ、そのひ
        ょろっちい身体なんか立つことも出来ないぜ!!(声
        を上げて笑う。)」
  風の精「貴様こそ、俺の嵐を呼ぶ大風の前に、両足踏ん張った
       ところで何時まで持ち堪えられるかな!?(笑う。)」
  2人「やるか!!」

         暴風と地鳴りの音。
         その時、下手より出たキャシー、風と大地
         の揺れに、身体をよろけさせてフラフラする。
         続いてクルト出る。        ※3

  キャシー「キャアッ!!」
  クルト「キャシー・・・!!(フラフラして倒れる。)」
  キャシー「なんなの、ここ!!」
  クルト「ちょっ・・・ちょっと・・・風の精!!大地の精!!」

         風の精、大地の精、2人に気付きながら、
         知らん顔して力自慢を繰り返している。
         その間でキャシー、クルト、ヨロヨロしている。
         風の精、大地の精、そんな2人の様子に、
         声を上げて笑う。

  クルト「・・・いい加減に・・・止めろよ!!」

         キャシー、クルトを見る。

  大地の精「なんだ?」
  風の精「ただの小鳥のくせに!!」
  クルト「あ・・・立つことも出来なくて危ないから・・・」
  大地の精「おまえ達が勝手に2人の間に割り込んで来たんじゃ
        ないか!!」
  風の精「それとも俺たちに挑戦でもする気か!?」
  クルト「・・・いや・・・あの・・・」
  大地の精「おまえは何が出来るんだ!?」
  風「立つものを脅えさす強い風か!?」
  大地の精「それとも大地を揺るがす怪力か!?」
  2人「何で俺たちに対抗するんだ!!」
  風の精「受けて立つぜ!!」
  大地の精「喜んで!!」
  キャシー「待って!!ハルトはただの小鳥よ!!あなたたちの
       ように、力自慢出来る訳ないじゃない!!」
  クルト「ハル・・・?僕は・・・!!」
  大地の精「じゃあ、おまえが代わりにやるのか!?」
  風の精「OK!!いつでもいいぜ!!」
  キャシー「私は人間よ!!どうして、あなたたちと力自慢しなき
       ゃいけないの!?」
  大地の精「じゃあ矢っ張り、そっちの小鳥が相手か!?」
  キャシー「そうね・・・それがいいわ!!」
  クルト「キャシー!!」
  キャシー「私の分まで頑張って頂戴!」
  クルト「そんな・・・キャシー・・・僕は!!」
  キャシー「男でしょ!?」
  風の精「さぁ、いつでもかかって来い!!」  
  大地の精「かかってこないなら、こっちから仕掛けるぞ!!」

         風の精は強い風を、大地の精は地響きを
         クルトの方へ向かって起こす。
         クルト、再びヨロヨロと。キャシー、その場に
         座り込んで、クルトの様子を暫く黙って見て
         いる。

  クルト「・・・や・・・止めてくれよ・・・あっ・・・危ないじゃないか・・・」

         風の精、大地の精、声を上げて笑う。
         キャシー、その様子に呆れた面持ちを
         する。

  キャシー「あなたたちって卑怯よ!!2人で寄ってたかって1羽
        の小鳥を苛めるなんて!!」
  風の精「(手を止めて、キャシーを見る。)俺たちが卑怯だって?
       」
  大地の精「こいつを苛めてるだって?」
  キャシー「だってそうじゃない!!ミルトには強い風を起こす力
        も、大地を揺るがす怪力もないのよ!?そんなの、単
        なる弱いもの苛めだわ!!」

         風の精、大地の精、顔を見合わせて笑う。

  風の精「おまえの口から弱いもの苛めなんて言葉が出るのは、
       全くお笑いだな。」
  大地の精「本当だ!!弱いもの苛めは、今まで散々おまえが
        クラスメイトにしてきたことだろう?」
  キャシー「ち・・・違うわよ・・・!!私がいつそんなこと!!」
  風の精「さぁね。」
  大地の精「それは自分が一番よく知っていることだろう?」
  キャシー「・・・もう!!愚図愚図言ってないで、今は私のことよ
        り、あなたたちのことでしょう!!力を競うなら、同じ
        ものを使って勝負しなさいよ!!」
  クルト「キャシー!!」
  2人「同じもの?」
  風の精「じゃあ、おまえは一体何を持ってるって言うんだ?」
  大地の精「それを使おうじゃないか!」
  風の精「早く言えよ!!」
  大地の精「何もないなら相撲でもするか!?」
  クルト「僕・・・そんな・・・」

         キャシー、横に落ちていた木の棒を
         拾って構える。    

  キャシー「(ニヤリと笑って。)私はこれで闘うわ!!フルとの代
        わりよ!!いざ、尋常に勝負しなさい!!」   ※4
  クルト「(オロオロして。)キャシー・・・!僕はフルトじゃなくって・・
      ・。」

         風の精、大地の精、呆気にとられたように
         キャシーを見るが、その様子を面白がる風
         に、2人顔を見合わせて笑う。

  風の精「面白い!!」
  大地の精「ならば俺たちも・・・!!」

         風の精、大地の精、側に落ちていた
         木の枝を拾って構える。
         3人、構えたまま睨み合う。
         その時、長老の笑い声が聞こえる。
         3人、構えを止めて周りを捜すように
         キョロキョロする。

  クルト「・・・長老?」

         上手より長老、ゆっくり登場。

  長老「えらく物騒なものを振り回しておるんじゃのう・・・。(笑う。)
      」
  クルト「長老!!」
  大地の精「長老!丁度いい!今からこいつと力自慢をやるとこ
        だったんだ!」
  風の精「審判してくれよ!」           ※5
  長老「また、おまえたちは力自慢などと馬鹿げたことをやっとっ
     たのか?」
  大地の精「馬鹿げたことじゃないぜ!!」
  風の精「この森の中で、本当の一番は誰かを決める為にやって
       るんだ!!」
  長老「一番が誰であったとしても、わしにはたいして変わりはな
     いと思うがのぉ・・・。誰が一番でも、この森はなんも変わら
     んて・・・。違うか?」
  クルト「一番は長老に決まってるじゃないか。」
  風の精「それはそうだけど!」
  大地の精「長老はもう年だし・・・そろそろ引退して森のことは俺
        たちに任せてもらって、ゆっくり隠居生活でも送っても
        らおうかな・・・って・・・な!」
  風の精「そうだよ!」
  長老「(笑う。)心配には及ばんわ。わしはまだまだ元気じゃ。そ
     れにわしは、確かにこの森で一番年は食っているが、一番
     力強くも、一番偉いとも思っとらん・・・。力強さで言えば、お
     まえたちの方が、ずっと上じゃろうて・・・。」
  クルト「うん、そうだよ!」
  長老「おまえたちは其々、風を操る者・・・大地を司る者・・・どち
     らもこの森には欠かすことの出来ない大切な力を持つ者た
     ちじゃ・・・。風の精は大地の精にないよさを・・・大地の精
     は風の精にないよさを持ち、2人揃って、より一層この森は
     誰にも住みよい、素晴らしいところになると思うがの・・・。」
  キャシー「(2人の精に。)もう!やるの?やらないの?」

         風の精、大地の精、顔を見合わす。
         其々、手に持っていた枝を放り投げる。

  風の精「止めた・・・」
  大地の精「俺も・・・」
  2人「帰る!!」

         風の精、大地の精、其々上手下手へ
         別々に行きかける。

  キャシー「なんだ・・・つまんないの・・・。そうだ、石・・・!!私、こ
        んなことしに来た訳じゃないのよ!!ちょっと!!あな
        たたち!!帰る前にあなたたちの持ってる石を頂戴!
        !」
  風の精「石・・・?」
  キャシー「願いを叶える石よ!!持ってるんでしょ!?」
  大地の精「ああ・・・」

         風の精、大地の精、キョロキョロと周りを
         見回して、その辺に落ちていた石を、
         其々拾いキャシーに差し出す。

  風の精「ほら・・・」
  キャシー「何・・・?」
  大地の精「これが欲しいんだろ?」
  キャシー「こんな、その辺に落ちてる石コロ、貰ったって、仕様が
        ないじゃない!!」
  風の精「けど、俺たち他に石なんて持ってないぜ。」
  大地の精「ああ・・・」
  キャシー「そんな・・・」

         風の精、大地の精、其々上手下手へ去る。





  


  ――――― “キャシーの森(原作)”3へつづく ―――――











   ※ この書き上げ当時は、まだ曲も決まっていないので、
     ここに書いてあるのは単なる“詞”であります。
     ここから劇団の方が曲を決められ、改めてその曲に
     合うように詞を書き直すので、公演された舞台の歌の
     歌詞とは若干変わっています^_^;

     人形劇では、曲決めも自分で出来る為、掲載歌詞と
     公演歌詞が変わることはありませんが・・・そのことが
     何故か嬉しい私です(^^)v

   ※2、人形劇では場面転換の時間が必要だった為、紗幕前
     での歌の場面が追加されてたと思います(^。^)

     最近の作品では、絵を見せたまま引き抜きで、場面転換
     したりするので、その為だけに紗幕を閉めて場面を増やす
     ようなことは、あまりしないですね^^;

   ※3、この場面、舞台では大きく動けるので、見せ方によって
     は迫力ある場面に仕上がるのですが、人形劇では画面が
     小さくなる為、単なるドタバタ場面にならないように、お人形
     の動かし方に、とっても気の使った場面でありました(>_<)

   ※4、“尋常に勝負”って・・・このキャシーさん、意外とお姉さん
     なのかも知れないですね・・・^^;

   ※5、人形劇の方の長老は、もっと登場と共に精たちが脅え
     るような存在だったと思うのですが、舞台の方の長老は、
     精たちに身近な、幾分フレンドリーな存在のようですね(゜゜)



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    (どら余談^^;)

    今日は練習日でした~(^_^)v
    仕上がった“J”のお人形・・・期待に違わず、と~っても
    重量感のあるものとなり、出ずっぱり・・・と言っても過言で
    ない“J”・・・練習だけで、腕がとっても疲れました~(>_<)
   









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