りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“Thank you!B・J” ―全○場― 4

2013年05月24日 21時17分02秒 | 未発表脚本



    ――――― 第 6 場 ――――― A

         前方下手スポットに、バート浮かび上がる。

  バート「さて、その日よりアダムス邸には、毎日のようにマーク
      様がお見えになり、何やらB・Jお坊ちゃんにちょっかいを
      出してはお怒りを買い、それが楽しいご様子でありました
      。奥様もそんなご兄弟のように戯れあうお2人を、微笑ま
      しく見ておいででしたが、ある日、何かを思いついたよう
      にお屋敷で、親しい者達を招いてパーティを開くとお申し
      になられたのです。突然のことに我々使用人は、その準
      備にてんてこ舞いとなったのは言うまでもございません。
      そして無事、準備も整いパーティ当日・・・」

    ――――― 第 6 場 ――――― B

         前方下手スポット、フェード・アウト。
         音楽流れ、舞台明るくなる。(紗幕前。)
         上手よりB・J登場。歌う。

         “博学多才・・・
         言葉遣いも丁寧な
         凛としたたたずまい
         あんな風にこの俺が
         なれると言うの いつの日か・・・
         誰が見てもいいとこの
         お坊ちゃまじゃないか あの野郎・・・
         何故か頭にくるあの余裕
         なのにいつもまとわりつく
         何て野郎だ目障りだ
         だけど少し・・・気にかかる・・・”

  B・J「畜生、マークの野郎・・・!あれから毎日毎日来ては、俺に
     なんやかんや、いちゃもんつけやがる!せっかく今まで婆ち
     ゃんの言うことを聞いて、いい子にしてきたってのに・・・あ
     いつのせいで、なんか調子狂うんだよな・・・」

         その時、下手よりマーク登場。

  マーク「B・J!いたいた、こんなとこに!」
  B・J「何だよ!また来たのかよ。毎日毎日、余程ヒマなんだな、
     おまえ。そんなんで兄ちゃんみたいな立派な医者になれん
     のかよ!」
  マーク「いいじゃないか。この間まで受験勉強一色だったし、新
      学期が始まれば始まったでまた勉強勉強・・・この休みの
      間くらい、人間観察に時間を使ってもさ!」
  B・J「人間観察・・・?なんだ、それ。誰を観察しに来てんだよ!
     あ、そっか!この家はバートさんやルーシー達みたいな人
     が沢山いて、人間観察するには持って来いだもんな。」
  マーク「そう言うことさ!それにしても君・・・その言葉遣い・・・中
      々直らないみたいだね。(笑う。)」
  B・J「いいだろ別に。それにおまえの前だけだよ。婆ちゃんの前
     ではちゃんと喋れるようになったんだ!なのに何でか、おま
     えには敬語が使えねぇんだよなぁ・・・(首を捻る。)」
  マーク「面白いな・・・(笑う。)」
  B・J「面白がってんじゃねぇよ!それより今日は、婆ちゃんの思
     いつきでやることになったパーティだろ?夜始まるパーティ
     に、何でこんな早い時間から・・・」
  マーク「いいんだよ。ところでB・J、今日のパーティに誘うステデ
      ィはいるのかい?」
  B・J「ステ・・・い・・・いねぇよ、そんなの・・・」
  マーク「じゃあ、いとこのマグリットを紹介するよ。丁度、君と同じ
      歳で・・・」
  B・J「(マークの言葉を遮るように。)いいよ!!」
  マーク「何だよ、ダンス踊れないのか?」
  B・J「ダンスなんかしないよ!!」
  マーク「(笑う。)そんなムキになるなよ。ダンスくらい、教えてや
      るからさ。(B・Jに手を差し出す。)ほら・・・」
  B・J「(驚いたように、マークの手を見て。)な・・・なんだよ!!
     何でおまえとダンス踊んなきゃなんないんだよ!!」
  マーク「何テレてるんだよ。いいじゃないか、ダンスくらい。」
  B・J「テ・・・テレてなんかいねぇ!!」
  マーク「じゃあいいだろ?男同士だってさ。」
  B・J「・・・男同士・・・あ・・・ああ!そりゃあ別に・・・男同士でも・・・
     何でも・・・」
  マーク「(微笑む。)じゃあほら・・・!(B・Jの手を取る。)」

         紗幕前、フェード・アウト。
         豪華な音楽、段々大きく。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         舞台、明るくなる。と、アダムス邸大広間。
         沢山の美しく着飾った人々、談笑したり
         ワルツを踊ったりしている。
         その時、上手よりジムの押す車椅子に乗った
         ミセスアダムス登場。

  ジム「ミセスアダムス、久しぶりにパーティの誘いがあって、驚い
     ていたのですよ。この間お会いした時に、随分とお加減が
     いいご様子だったので安心していたのですが、また行き成
     りこんな盛大なパーティを開くだなどと言い出されて、まだ
     体調の回復と見合わせ、ご無理ではないかと案じていたの
     です。」
  ミセスアダムス「先生・・・私、先生にお礼申し上げなくてはなり
            ませんわ。」
  ジム「お礼・・・?」
  ミセスアダムス「ええ。本当に先生には心から感謝していますの
            よ。」
  ジム「と言いますと・・・?」
  ミセスアダムス「孫達が遠く離れた土地へ行ってからと言うもの
            、毎日鬱々と過ごしていた私ですけれど、先生
            の勧めに従って、新しい風を取り入れることを承
            知して本当によかったと・・・」
  ジム「・・・B・Jですか?」
  ミセスアダムス「ええ・・・。あの子のお陰で、何れ程私が元気を
            取り戻すことができたか・・・。先生にはお分かり
            でしょう?」
  ジム「それはもう、ミセスアダムスのお顔を拝見しているだけで、
     その変化は一目瞭然だと感じていました。」
  ミセスアダムス「私、最初はそんな得体の知れない子どもを、我
            が家に上げていいものかと、それは心配しまし
            たけれど、何より私が信頼しているグレイ先生が
            治療の一貫と・・・先生が勧める荒療治をダメ元
            で受けることにしましたのよ。」
  ジム「ダメ元・・・?」
  ミセスアダムス「あら、私ったら・・・(フフフと笑う。)ダメ元だなん
            て言葉・・・B・Jの影響かしらね。良くも悪くも・・・
            今の私にとってあの子は・・・もうなくてはならな
            い家族ですの・・・。」
  ジム「ミセスアダムス・・・」

         そこへ下手より、2人の姉妹(マグリット、
         マーサ)、楽しそうにはしゃぎながら登場。
         ミセスアダムスを認め、駆け寄る。

  マグリット「お祖母様!!」
  マーサ「お祖母様!!」
  ミセスアダムス「まぁ、マグリット、マーサ、よく来たわね。」
  マグリット「今日はお招き頂いてありがとうございます、お祖母様
        !」
  マーサ「光栄ですわ、お祖母様!」
  ミセスアダムス「それは良かったこと。グレイ先生にちゃんとご
            挨拶なさい。」
  マグリット「はい!グレイ先生、こんにちは!」
  マーサ「こんにちは!お久しぶりです、先生!」
  ジム「こんにちは。2人共、相変わらず元気そうだね。」

         マグリット、マーサ、嬉しそうに顔を
         見合わせる。

  マグリット「ええ!」
  マーサ「とっても!」
  マグリット「お祖母様のお家でパーティなんて、いつ以来かしら
        ・・・」
  マーサ「いとこのアラン一家が、遠く離れた場所へ引っ越して以
       来でしょ?」
  マグリット「あれからのお祖母様は、とてもお加減が悪そうで、パ
        ーティどころではなかったから、久しぶりの今日のパー
        ティが私、嬉しくて!」
  マーサ「私もよ!お祖母様のお家のパーティは、いつも盛大で、
      毎回とても楽しみにしていたのよ!」
  ミセスアダムス「まぁまぁ2人共、それでは今日はゆっくり楽しん
            で行って頂戴。後で皆に、少し報告することもあ
            るのよ。」
  マグリット「報告?」
  マーサ「わぁー・・・何かしら。」
  マグリット「いいこと?お祖母様!」
  ミセスアダムス「さぁね。それは後のお楽しみよ。」
  マーサ「意地悪ね。」
  マグリット「本当。」

         マグリット、マーサ、笑い合う。

  ミセスアダムス「さぁさぁ、美味しいものでもつまんでいらっしゃい
            。」
  マグリット「はい、お祖母様!」
  マーサ「それじゃあグレイ先生!」
  ジム「また後で。」
  
         マグリット、マーサ、はしゃいだ様子で
         ミセスアダムス達から離れ、一寸後方へ。

  ジム「ミセスアダムス・・・さっき仰った報告って一体・・・」
  ミセスアダムス「それは先生にもまだ内緒ですわ。後のお楽しみ
            に取って置いて下さいな。でも、とても・・・いいこ
            とですのよ。さ、先生、私達も何か少し頂きに参
            りましょう。私、さっきからお腹がペコペコ・・・(笑
            う。)」
  ジム「そうですね。」

         ジム、ミセスアダムスの乗った車椅子を
         押しながら、下手へ去る。
         入れ代わるように上手より、正装した
         マーク登場。続いて正装したB・J、回りを
         キョロキョロ見回しながら登場。

  B・J「わぁーっ・・・今日は一段とお屋敷の中が豪華に見える・・・
     」
  マーク「パーティは?初めてかい?」
  B・J「決まってるだろ!俺・・・今までこんなキラキラした洋服だっ
     て、着たことないや・・・」
  マーク「(笑う。)その割には、よく似合ってるじゃないか。」
  B・J「・・・う・・・うるせぇな・・・」
  マーク「さて・・・と・・・(回りを見回す。)」
  B・J「(呟くように。)・・・嬉しくないや・・・褒められたって・・・」
  マーク「(マグリットを認め、手を上げて呼び掛ける。)マグリット!
      」
  B・J「・・・マグリット・・・?」
  マグリット「(マークを認め。)マーク!」

         マグリット、マークの側へ。マーサ続く。

  マグリット「久しぶりね、マーク!」
  マーク「こんにちは、マグリット、マーサ!」
  マーサ「こんにちは!」
  マーク「今日はまた一段と華やかなパーティだね。お祖母様の
      気合の入り具合が分かるようだ。(笑う。)」
  マグリット「あら、あなたもそう感じて?私達もさっきから、いつも
        以上に盛大なパーティに、圧倒されていたところなの
        よ。」
  マーサ「(B・Jに気付いて。)マーク、そちらの方は?」
  マーク「ああ、僕の友人で、今はこの屋敷でお祖母様と一緒に
      暮らしているB・J。B・J、こちらの2人は僕のいとこのマグ
      リット、マーサ姉妹だよ。」
  マグリット「初めまして、B・J。」
  マーサ「こんにちは。」
  B・J「・・・こんにちは・・・」
  マグリット「あなたもK大附属のハイスクール生なの?」
  B・J「(俯いて首を振る。)・・・僕は・・・」
  マーサ「どうしてお祖母様と一緒に暮らしていらっしゃるの?」
  マグリット「お祖母様とはどう言ったお知り合い?」
  マーサ「それにしてもお祖母様、どうして急に元気になられたの
       かしら?」
  マグリット「そうよね、ついこの間までベッドの中で横になったき
        り、起き上がることもままならないご様子だったのに。」
  マーサ「あなたと一緒に暮らしていることと、何か関係があるの
       かしら・・・」
  マグリット「それにしても今日のパーティは盛大よねぇ。」
  マーサ「こんなに沢山のお客様をお呼びして・・・」
  マグリット「皆さん、とても素敵に着飾っていらっしゃるわ。」
  マーサ「本当!私達もこのドレスを選ぶのに、随分時間がかか
       ったのよ!」
  マグリット「ねぇ!」
  マーサ「どう?マーク、私達!」
  マーク「(微笑んで。)とても綺麗だよ、2人共・・・。」
  マグリット「まぁ・・・」
  マグリット・マーサ「ありがとう。」
  マーサ「(下手方を見て。)あ、お姉様!アンナ達が来たようよ。
       」
  マグリット「(下手を見て。)あら、本当。(B・Jの耳元で。)後で私
        とワルツを踊って下さいね。」
  B・J「え・・・?」
  マグリット「じゃあ、マーク!」
  マーサ「また後で!」
  マーク「じゃあ!」

         マグリット、マーサ、下手へ去る。

  マーク「何だって?マグリット。」
  B・J「べっ・・・別に・・・」
  マーク「ふうん・・・」
  B・J「ど・・・どうして女って、ああお喋りなんだろうな・・・」
  マーク「え?」
  B・J「口を開けば、他人がどうとかドレスがどうとか・・・もっと他
     に考えることはないのかね・・・」
  マーク「(思わず笑う。)B・J・・・」
  B・J「何だよ・・・何が可笑しいんだよ・・・」
  マーク「いや・・・別に・・・。ごめんよ、何だか君の口から意外な
      言葉が飛び出したもんでさ。」
  B・J「意外・・・?」
  マーク「ああ、ちょっとね・・・」
  
         そこへ下手より登場したジム、B・Jとマーク
         を認め、嬉しそうに近寄る。

  ジム「やあ!」
  B・J「(ジムを認め。)兄ちゃん。」
  マーク「グレイ先生、もういらしてたんですか?」
  ジム「ああ。ミセスアダムスの診察も兼ねて、少し早めにね。」
  マーク「そうですか。」
  ジム「そう言うマークも、結構早くから来てたようだけど?」
  マーク「ええ・・・」
  ジム「何だかんだ言ってB・J!マークと仲良くやってるみたいじ
     ゃないか。」
  B・J「ち・・・違うよ、兄ちゃん!こいつ、あれからしょっちゅう家来
     て、俺にまとわりついて鬱陶しいったらありゃしない・・・」
  マーク「それは酷いな。」
  B・J「だってそうだろ!」
  マーク「僕は休みの間の、自由研究をさせてもらいに通ってるん
      ですよ。」
  ジム「へぇ・・・」
  B・J「自由研究・・・?おまえ、人間観察に来てるんだって言って
     なかったか?」
  マーク「その通り!その人間観察が、僕の自由研究・・・って訳
      さ。」
  B・J「何だそれ。」
  ジム「人間観察・・・?」
  マーク「はい!先生は・・・お気付きでは・・・」
  ジム「ん・・・?」
  マーク「・・・いえ・・・別に・・・」
  B・J「この屋敷には、バートさんやルーシーみたいな人が沢山
     いるから、人間観察するのに丁度いいんだってさ。・・・その
     割にはおまえ・・・いっつも俺についてウロウロしてんな。何
     でだ?」
  マーク「B・J、曲りなりにも僕は君より年上なんだぞ。おまえ呼ば
      わりはないだろ・・・?」
  B・J「あ・・・わりぃ・・・つい・・・」

         その時、下手よりバート登場。

  バート「皆様、奥様からご挨拶が御座います。しばしの間、お静
      かに願います。」

         音楽止まり、踊ったり談笑していた人々、
         静かに段上を見る。
         そこへ、後方段上に、ルーシーの押す
         車椅子に乗ったミセスアダムス登場。

  ミセスアダムス「皆様、本日はようこそおいで下さいました。暫く
            の間、私、加減を悪くしておりましたけれど、漸く
            この通り以前同様、元気に過ごすことが出来る
            ように回復致しました。本日はご心配頂いた皆
            様に、感謝の気持ちを込めて、このパーティを主
            催した次第です。」

         (一同拍手。)








      
   ――――― “Thank you!B・J”5へつづく ―――――


























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