りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“キャシーの森(原作)” ―全6場―

2012年09月27日 19時20分17秒 | 脚本

  

    今回は、“キャシーの森”の原作となる舞台脚本、そして
   これは、私がファミリー向き脚本を書いた、初めての作品と
   なります(^_^)

   それまでの、大人チックなものから、子どもさんでも見て楽し
   んでもらえるものへと移行していく、初めての脚本・・・と言う
   ことで、今でこそ言葉使いの“いい”“悪い”も大体は把握で
   きていますが、その当初は子ども向きとは言え、それまでの、
   難しい言い回しの名残がチラホラ見え隠れする、作品となっ
   ております(^。^)・・・とは言え・・・今現在も難しい言い回し、
   やっぱり好きなので、未だにチラホラ見え隠れしていますよ
   ね~・・・^^;

   今回は、皆さんもご存知の作品と言うことで、いつも書いて
   いる“主な登場人物”表記は省かせて頂きます



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



         開演アナウンス。

    ――――― 第 1 場 ―――――

         スポットに横になって眠っているひとりの
         少女(キャシー)浮かび上がる。

  キャシーの母の声「何故、あなたはいつも人を傷付けることを平
              気で言えるのかしら!!泣いて帰ったお友
              達の気持ちも分からないような悪い子は、暫
              くの間、屋根裏部屋で反省して、何が本当に
              大切なことなのか、よく考えてごらんなさい!
              !」              ※
  キャシー「(寝言のように。)・・・何が大切なことなのか・・・ママ
        ・・・」

         フェード・インする。と、キャシーの横に、
         一羽の黄色い小鳥(クルト)が立っている。
         (森の様子。)       ※2

  クルト「僕はママじゃないよ。甘えん坊だな!(笑う。キャシーを
      見て、まだ眠っているのを確認して、キャシーの耳元で。)
      ねぇ、どうしてこんなところで眠ってるんだい?鷲の爺さ
      んに食べられちまうぜ!(笑う。)」
  キャシー「ううん・・・(目覚める。目を擦りながら。)誰よ、さっきか
        ら煩いなぁ・・・(クルトを認め、驚いたように。)小鳥・・・
        ?どうして小鳥がうちの屋根裏部屋にいるのよ!?」
  クルト「小鳥には違いないけど、ちゃんと名前があるんだ!僕の
      名前はクルト!“クルト”って呼んでほしいな。」
  キャシー「あんた、なんで喋れるの!?」      ※3
  クルト「君・・・僕の言ったこと聞いてるかい?僕は“あんた”でも
      “小鳥”でも・・・」
  キャシー「聞いてるわよ!“ケルト”でしょ!?ねぇ、なんで喋れ
        るの!?」
  クルト「“ケル・・・”クルトだよ!!(溜め息を吐いて。)なんでっ
      て言われても・・・。この世界じゃ、皆喋れるのが当たり前
      じゃないか。(笑う。)」
  キャシー「(立ち上がり周りを見回す。)ここ・・・屋根裏部屋じゃ
        ない!!一体、ここは何処なの!?」
  クルト「何言ってるんだよ、さっきから・・・。ここは僕たちの世界
      じゃないか・・・キャシー!」

         クルト、明るく歌う。

         “緑に溢れ 風が歌う
         花たちが踊り 木々が誘う
         陽の光 降り注ぎ
         空に一番近い場所

         皆仲良く手を取れば
         心温かく笑顔に満ち
         小川のせせらぎ水の音
         大地が一番香る場所”

  キャシー「分かったわ。ここが何処だか分かったけど、何故私が
        今ここにいるのか分からない!それにどうしてあなた
        が私の名前を知ってるの!?」
  クルト「そんなこと言われたって、僕にだって分からないよ。キャ
      シーだって、ずっとキャシーなんだし・・・。そうだ!長老な
      ら分かるかも知れないぜ!」      ※4
  キャシー「・・・長老・・・?誰それ・・・」
  クルト「森の奥に昔々から住む長老さ!」
  キャシー「いいわ!その長老のところへ、私を案内して頂戴!」
  クルト「うん!」

         2人にスポット。歌いながら上手より客席方へ。
         客席前通り、下手方へ。

         “行こう!
         分からないことを知る為に
         行こう!
         分からないことを聞く為に
         なんでも知ってる
         森の生き字引 長老に
         なんでもお見通し
         長老に聞けばなんでも分かる筈
         だから行こう!行こう!
         森の奥深く長老のもとへ”

         2人、下手側より舞台へ。

  クルト「長老!!長老!!何処にいるんだい、長老!!」

  長老の声「・・・どうしたんじゃ、クルト・・・そんな大声で・・・」

         上手方スポットに、胡坐をかいた長老
         (白いマントに身を包む。)浮かび上がり、
         フェード・イン。
         場面は森の風景。

  クルト「(長老を認め。)長老!!」
  長老「折角、静かな森の奥が台無しじゃ・・・。」
  クルト「捜してたんだよ!」
  長老「何か用か?(キャシーに気付いて。)ん?キャシーも一緒
     じゃないか。」
  キャシー「あなたも私を知ってるの!?」
  長老「(笑って。)当たり前じゃないか。おまえさんが、赤ん坊の
     時から見てきたんじゃぞ。」
  キャシー「でも、私はあなたたちのことなんて知らないわ!!な
        のに何故!?」
  長老「それは・・・最初からそう決まってたことじゃからのぉ・・・。」
  キャシー「そんなの答えになってないわ!それになんでも知っ
        てる長老って言ったって、ただのおじいさんじゃない!
        」
  クルト「キャシー・・・」
  長老「わしに答えて欲しいなら、おまえさんが自分でちゃんと考
     えんとな・・・。でなけりゃ、わしらにはおまえさんの納得いく
     ような答えは言ってやれんよ。」
  キャシー「どう言うこと?」
  クルト「キャシーはここは自分の世界じゃないって言うんだ。」
  キャシー「当たり前じゃない!私は今日、ママにお仕置きされて
        屋根裏部屋に閉じ込められてたのよ!なのに、気が
        ついたらこんな森の中・・・!冗談じゃないわ!!私は
        早く帰りたいの!!(長老に。)あなた、なんでも知って
        るんでしょ!?どうやったら元の世界に帰れるか、教
        えて頂戴!!」         ※5
  長老「そうさなぁ・・・それなら、この森に住む5人の妖精たちに
     会うんじゃ。」
  キャシー「5人の妖精・・・?」
  クルト「花、泉、風、大地、木・・・其々の妖精は、この森の守り神
      なんだ!」
  長老「5人の妖精に会って、願いの石を貰ってくるんじゃ。」
  キャシー「願いの石?」
  長老「そうじゃ、願いの石じゃ。その石が5つとも揃った時、その
     石を持つ者の願いは、なんでも叶えられる。」
  キャシー「なんでも?(嬉しそうに。)」
  長老「ああ。」
  キャシー「じゃあ元の世界へ帰れるのね!?」
  長老「そうじゃな・・・。」
  キャシー「分かったわ!!」

         キャシー、慌てて下手方へ走り出ようとする。

  クルト「僕も一緒に行くよ!!」
  キャシー「え?(振り返る。)」
  クルト「君一人じゃ、5人の妖精に会うことなんて、出来ないぜ。
      」
  キャシー「・・・そうね・・・いいわ!連れて行ってあげる!」
  クルト「つれ・・・!?」
  キャシー「さぁ、早く案内して頂戴!カルト!!」

         キャシー、下手へ走り去る。

  クルト「カル・・・!?僕はクルトだってば!!(足を踏み鳴らす。
      呆れたように、キャシーが去った方を見て、溜め息を吐く
      。)それが協力を願い出た僕に対して言う台詞かなぁ・・・
      ね!?長老!!」
  長老「(笑う。)やぶ蛇じゃったかの?」       ※6

         フェード・アウト。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         音楽でフェード・インする。と(森の花畑)、
         ポーズをとった蝶たち、楽しそうに踊る。
         そこへ蜘蛛が登場。蝶たちを捕まえようと
         躍起になって踊る。      ※7

  蜘蛛「いい加減に観念して、わいの餌になってしまいいな!!」
  蝶「いやよ!!」

         その時、花の妖精の声が聞こえる。

  花の妖精の声「私のお花畑で、乱暴な言葉を使うのは誰!?」

         上手より、ゆっくり花の妖精、登場。
         皆、その方を注目する。

  蝶「花の精!!」

         蜘蛛、“仕舞った”と言う風な顔付きで、
         ソロリと下手方へ行こうとする。

  花の妖精「まぁ!またあなたなのね、蜘蛛さん!!あれ程、私
        の花園に遊びに来る、可愛い子たちに乱暴はしない
        って約束した筈なのに・・・。」
  蜘蛛「(ボソッと呟きながら、ゆっくり下手方へ。)そやけど、ここ
     んとこいっこも獲物はかかれへんし、腹減って腹減って・・・
     。そんなん言うんやったら、わいの空腹、満たしてぇや・・・。
     」

         蜘蛛、不貞腐れたように座り込む。

  蝶「ありがとう、花の精!」
  花の妖精「今度からは気を付けないと駄目よ。」
  蝶「ええ!」

         その時、上手よりキャシー登場。続いて
         クルト登場、そこに垂れ下がっていた蜘蛛の
         糸に引っ掛かる。

  クルト「わあっ!!(もがく。)」
  蜘蛛「(クルトに逸早く気付いて。)やった!!かかったで!!」
                       
         蜘蛛、嬉しそうに飛び上がり、上手方へ
         走り寄る。

  クルト「(脅えて。)助けて!!キャシー!!」

         キャシー、チラッとその方を見るが、興味が
         ないように向き直り、周りの様子を見回して
         いる。          ※8 

  蜘蛛「小鳥か!!ご馳走やな!!」
  クルト「キャシー!!キャシー!!」

         花の妖精、気付いて近寄る。

  花の妖精「蜘蛛さん!!」
  蜘蛛「なんやねん!!これはわいの餌やで!!ちゃんと、わい
     の蜘蛛の巣にこいつ自らかかったんや!!食おうが殺そう
     が放っといてんか!!」
  クルト「こ・・・殺す・・・!?」
  花の妖精「小鳥さん脅えてるじゃない。助けてあげて。」
  蜘蛛「いやや!!」
  花の妖精「そんなこと言わないで。ね?」
  蜘蛛「わいは腹減ってんねん・・・。」
  花の妖精「その代わり私が後で蜘蛛さんに、飛びっきりのご馳
        走するわ!フラワーレストランスペシャルメニューよ!」
  蜘蛛「花なんか食うても、腹一杯になれへんわ・・・!」
  花の妖精「(さっきまでとは打って変わって、怖い顔付きになる。
        )・・・そう・・・もとはと言えば蜘蛛さんが、約束を破って
        私の花園で乱暴したのよね・・・。」
  蜘蛛「それは・・・」
  花の妖精「二度とここへは来れなくなるわね。(蜘蛛を睨む。)」
  蜘蛛「・・・あの・・・(一時考えて。)わ・・・分かったわ・・・そんだけ
     言うんやったら・・・今回だけは見逃したるわ・・・」
  花の妖精「(再びさっきまでの優しい笑顔になって。)本当?」
  蜘蛛「・・・ああ・・・男に二言はない!その代わり・・・そのスペシ
     ャルなんとか・・・っての頼むで・・・。」
  花の妖精「ええ!あなたの為に、最高を用意するわ!」 ※9
  
         蜘蛛、渋々クルトに絡まった糸を外してやる。

  クルト「・・・ありがとう!」
  蜘蛛「ふん・・・どんくさい鳥やで、ほんまに・・・(ブツブツと言いな
     がら、下手へゆっくり去る。)」










   ――――― “キャシーの森(原作)”2へつづく ―――――











    ※ 早速、この台詞、人形劇用では“パパ”を登場させまし
      たが、本来キャシーは“ママ”にお仕置きされていたので
      した(^.^)
      何故パパに代えたかと言うと、台詞メンバーのパパ声
      が聞いてみたかった・・・と言う、単なる私の勝手な好奇
      心からでした~^^;

      余談ですが・・・全場数も違いますね"^_^"

    ※2、クルトって、黄色だったんですね~(゜.゜)
      自分で書いておきながら、たった今まで忘れていた事実
      でした(~_~)
      人形劇でクルトを青色にしたのは、舞台で公演して頂い
      た時に青い小鳥だったので、青が正解だと思ってたから
      です^^;
      確かにでも舞台などに上がると、黄色より青色の方が、
      締まりがいいかも知れないですね~^_^;
  
    ※3、今なら“あなた”とするでしょう^^;・・・と言うことは・・・
      昔の方が、使っていい、悪い関係なく、自分の頭の中に
      思い浮かんだ表現に素直に従い、どちらが正解か・・・と
      言うことではなく、書きたいものを書いていた・・・と言うこ
      とですね・・・(>_<)

    ※4、この「知れないぜ」の“ぜ”は、明らかにそれまで書い
      ていた作品群の名残です^_^;

    ※5、どちらかと言えば、今回の舞台脚本でのキャシーの
      方が、人形劇のキャシーより気持ちキツイ子で書かれて
      います(^。^)

    ※6、「やぶ蛇」って・・・^^;

    ※7、読んで頂いた通り、人が演じなければ無理な場面の
      為、人形劇では省いています(^。^)

    ※8、人形劇舞台では、ゴチャゴチャと沢山の登場人物を
      一度に同じ場面に出すことは、見た目の問題から、極力
      避けるので、この場面もキャシーは出ていなかったと思
      うのですが、舞台では引っ込むことなくウロウロしている
      ようですね(^.^)

    ※9、この場面、人が演じてるのなら、表情や雰囲気など
      で、優しい花の妖精と怖い花の妖精の演じ訳は容易い
      と思うのですが、お人形でそこまでの差をどうして出す
      か・・・と考え、見た目ではなく耳から入る“音”で、怖く
      なった花の妖精を演出したのでした"^_^"


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