『富竹ジロウは二度死ぬ』
『祭囃し編』の後日談。
惨劇回避後における鷹野の処遇が描かれる、言わば『ハト時計と慈愛の家の夢』のバリエーション。
彼女は、自分自身の雛見沢症候群の治療経過を見ながら、入江診療所に復帰し、富竹と結ばれる。
極めて順当な結末だ。
物語は、そこへ至る前。自責の念に潰されかかっている鷹野を励まそうと部活メンバーが奮闘する。
富竹が「東京」の刺客に襲われるという狂言により、鷹野は自らの本意を自覚し、生きる決意を固める。
私としてはここまでのプロットで充分興味深い。
が、そこに浸りたい気持ちを、激しいノイズが邪魔をする。
部活メンバーによる「ゲーム」の設定が、理解できない。
今もって私の脳が拒絶する。
その原因の一つは、一同が名前をシャッフルしてロールプレイするという設定が、場面によって食い違っているから。
本当に他者を演じているなら、「鷹野が沙都子に好意」「鷹野のために羽入が苦労する」「鷹野のせいでレナが困る」などのような台詞が出てくるはずがない。
何故かこの場面だけ、名前と口調を入れ替えただけになってしまっている。
それでいて、全員が滑らかに喋っているから、演技とも読み取れず、ただ単に名前表記が狂ってるだけにしか見えない。
しかも、時系列まで微妙かつ複雑に前後しているから、混乱に拍車がかかる。
読者を驚かせる事を重視しすぎ、そもそも何を言いたいのか伝わりにくくなっているように感じるのが残念だ。
出来るなら、時系列を整理した形で読んでみたかった。
それでは。また次回。