この日私は、同級生のMくんから声を掛けられた。
「りあらちゃん、今度、俺の前髪切ってくれん?」
「うん、いいよ。でも、私、家知らんよ?」
「じゃぁ、○○駅に、11時に待ち合わせね。」
「うん。わかった」
その日は朝から晴れていた。
学校が休みだったこともあり、電車も普段より空いていた。
駅に降りたら、改札口の階段の下で、Mくんが待っていた。
「おはよう」
「おはよう」
私はMくんと肩を並べて、二人で学校の裏を歩いた。
とりとめのない話をし、ただ、Mくんのアパートまで、20分ほど歩いた。
Mくんは、小さな2階建ての白いアパートに住んでいた。
夏休みに下宿が取り壊されるため、秋からここに住んでいたのだった。
「へー、ここ?」
「うん」
その白い殺風景な部屋には、スケッチブックとクロッキー帳が置かれ、部屋の片隅にはベースギターが立てかけてあった。
新聞紙を広げ、Mくんの髪の毛を切っていく。
「これぐらいでいい?」
「うん、こんなもんかな?」
当時、Mくんは、肩ほどの長さの髪の毛だった。
バンドをしていたので、髪を伸ばしていたが、さすがに前髪が伸びたのでどうにかしようと思っていたのだろう、仲が良かった私に頼んできたのだ。
きれいな真っ黒の髪の毛に、私がはさみを入れる。
髪を切り終わった後、また二人で話をする。
一緒に宅配ピザを食べ、ただ、この白い部屋にいる。
音楽のこと、絵のこと、バイクのこと、友達のこと・・・・。
白い部屋から開け放った窓からは、秋の青空と白い雲、吹き抜ける風が入り込んでくる。
窓枠に引っかけた、洗濯した黒いシャツが揺れる。
「ねぇ、晩ご飯、作ってやろうか?」
「うん」
二人で歩き、近くのスーパーに行く。
材料と調味料を選び、買い物袋を下げて、再びアパートに戻る。
ご飯を炊き、鶏肉を焼く。
食事の準備が一通り出来た頃、帰る時間が近づいてきた。
「もう、帰らなきゃ」
「駅まで送るよ」
「ええっ、いいよ、道わかるし」
「もう暗いから」
秋の夕暮れは早い。
また二人で肩を並べながら、駅まで歩く。
「今日はありがとう」
「うん。またね」
「またね」
階段を下りるMくんを見送り、私も電車に乗った・・・。
あの白い部屋は、まだあるのかな?
あのとき、不思議なぐらい静かな時間が流れていた。
ただしゃべって、大好きだった音楽をがっつりと流しながら・・・。
手も繋がず、キスもせず、当然体を重ねることもなかった。
「好きな人がいたら、私はその人と同じ時間を共有したい。そして同じモノを見て、同じように感動を分かち合いたい」
・・・今日、そんな話をした。
「私は、好きな人のために、なにかできることをしたい。その人が喜ぶ顔が見たい」
・・・この言葉も言いたかった。
その時私は・・・。
ただ、この白い部屋の時間が、ずっと続けばいい・・・そう思った。
「りあらちゃん、今度、俺の前髪切ってくれん?」
「うん、いいよ。でも、私、家知らんよ?」
「じゃぁ、○○駅に、11時に待ち合わせね。」
「うん。わかった」
その日は朝から晴れていた。
学校が休みだったこともあり、電車も普段より空いていた。
駅に降りたら、改札口の階段の下で、Mくんが待っていた。
「おはよう」
「おはよう」
私はMくんと肩を並べて、二人で学校の裏を歩いた。
とりとめのない話をし、ただ、Mくんのアパートまで、20分ほど歩いた。
Mくんは、小さな2階建ての白いアパートに住んでいた。
夏休みに下宿が取り壊されるため、秋からここに住んでいたのだった。
「へー、ここ?」
「うん」
その白い殺風景な部屋には、スケッチブックとクロッキー帳が置かれ、部屋の片隅にはベースギターが立てかけてあった。
新聞紙を広げ、Mくんの髪の毛を切っていく。
「これぐらいでいい?」
「うん、こんなもんかな?」
当時、Mくんは、肩ほどの長さの髪の毛だった。
バンドをしていたので、髪を伸ばしていたが、さすがに前髪が伸びたのでどうにかしようと思っていたのだろう、仲が良かった私に頼んできたのだ。
きれいな真っ黒の髪の毛に、私がはさみを入れる。
髪を切り終わった後、また二人で話をする。
一緒に宅配ピザを食べ、ただ、この白い部屋にいる。
音楽のこと、絵のこと、バイクのこと、友達のこと・・・・。
白い部屋から開け放った窓からは、秋の青空と白い雲、吹き抜ける風が入り込んでくる。
窓枠に引っかけた、洗濯した黒いシャツが揺れる。
「ねぇ、晩ご飯、作ってやろうか?」
「うん」
二人で歩き、近くのスーパーに行く。
材料と調味料を選び、買い物袋を下げて、再びアパートに戻る。
ご飯を炊き、鶏肉を焼く。
食事の準備が一通り出来た頃、帰る時間が近づいてきた。
「もう、帰らなきゃ」
「駅まで送るよ」
「ええっ、いいよ、道わかるし」
「もう暗いから」
秋の夕暮れは早い。
また二人で肩を並べながら、駅まで歩く。
「今日はありがとう」
「うん。またね」
「またね」
階段を下りるMくんを見送り、私も電車に乗った・・・。
あの白い部屋は、まだあるのかな?
あのとき、不思議なぐらい静かな時間が流れていた。
ただしゃべって、大好きだった音楽をがっつりと流しながら・・・。
手も繋がず、キスもせず、当然体を重ねることもなかった。
「好きな人がいたら、私はその人と同じ時間を共有したい。そして同じモノを見て、同じように感動を分かち合いたい」
・・・今日、そんな話をした。
「私は、好きな人のために、なにかできることをしたい。その人が喜ぶ顔が見たい」
・・・この言葉も言いたかった。
その時私は・・・。
ただ、この白い部屋の時間が、ずっと続けばいい・・・そう思った。