オムロンが2日発表した2024年4〜6月期の連結決算(米国会計基準)は、最終損益が96億円の赤字(前年同期は133億円の黒字)だった。
4〜6月期で最終赤字になるのはリーマン・ショックの影響があった09年以来、15年ぶり。主力のファクトリーオートメーション(FA)機器事業が中国などで不振で、構造改革費用も膨らんだ。
売上高は前年同期比10%減の1837億円、営業利益は56%減の62億円だった。
営業損益段階では黒字を確保したが、人員削減に伴い195億円の構造改革費用を計上したことで最終赤字になった。四半期ベースで最終赤字になるのは23年7〜9月期以来、3四半期ぶり。
オムロンは2月に国内外で連結従業員の7%に当たる約2000人を削減する方針を明らかにし、国内では40歳以上のグループ企業正社員やシニア社員を対象に1000人程度の希望退職を募集した。
実際には約1200人が応募して7月に退職し、海外でも約1000人を削減する方針だ。25年3月期通期では合計で約280億円の構造改革費用を計上する。
事業面では国内FA大手のなかでオムロンの「一人負け」の構図が鮮明になっている。
FAなど制御機器事業の4〜6月期の売上高は前年同期比23%減の856億円、営業利益は42%減の71億円だった。中国などを含む中華圏の売上高は21%減の227億円と不振だった。電気自動車(EV)関連や太陽光関連など顧客メーカーの投資抑制が響く。
中国経済の減速の影響を受けたのは、他の国内FA大手も同じだが、競合は底打ちの兆しを見せている。
キーエンスは4〜6月期の連結売上高を前年同期に比べ11%伸ばし、中国を含むアジア地域でも12%増だった。三菱電機の中国向けFAシステムの売上高も1%増、ファナックのFA部門も62%増だった。
オムロンの苦戦の背景には中国のFAメーカーの台頭もある。
竹田誠治最高財務責任者(CFO)は2日の投資家向けオンライン説明会で「価格競争が激しくシェアを落としている領域がある」と話した。
25年3月期通期の業績予想は据え置いた。売上高は前期比1%増の8250億円、純利益は5%増の85億円になる見通し。
血圧計などヘルスケア部門は堅調だが、FA事業の構造改革が響き、純利益の水準は過去最高だった20年3月期(748億円)の9分の1にとどまる。
オムロンは26年3月期には固定費を前期から300億円圧縮することを目指す。
一方で、中国や国内向けが中心だったFA事業では「欧米で顧客を開拓し、食品・日用品や医療など需要の拡大する業界向けを伸ばす」(辻永順太社長)という方針を掲げる。
しかし、4〜6月期の欧州向けFA事業の売上高は前年同期比3割減の166億円になるなど成果はまだ見えない。
欧州では地元大手との競争もある。独シーメンスや仏シュナイダーエレクトリックはFA機器を制御するコントローラーと生成AI(人工知能)サービスを連動させる機能などに力を入れる。
SBI証券の小宮知希アナリストは「欧州勢がハードだけでなくソフトウエアに競争軸を移しているなかで後手に回っており、欧州での顧客開拓には時間がかかる可能性がある」と指摘する。
人員削減を進める一方で中国での顧客基盤を再構築し、欧米などで新たな成長分野を開拓できるのか。オムロンに課せられたハードルは高い。
(新田栄作)
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日経記事2024.08.03より引用