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財閥解体後、銀行を中心とした企業集団の形成

2023-02-16 23:23:24 | 日本の企業・世界の企業、ビジネスマン、技術者




1952年4月、サンフランシスコ講和条約の発効により、日本占領は終了し、公職追放や財閥商号・商標の使用禁止、過度経済力集中排除法等は失効しました。

これにより、財閥企業の経営者は徐々に経済界に復帰し、社名を変更した企業の多くは旧称に戻しました。 また、旧財閥傘下にあった企業が再結集をはじめ、ジャーナリズムは「財閥の復活論」を唱えました。


1950年代中盤から日本経済は高度経済成長期へと進んでいきました。 日本企業は空前絶後の急成長を遂げていきましたが、それには莫大な資金調達が必要でした。

都市銀行を傘下に持つ三菱・住友は、銀行を中心に再結集して企業集団を形成しました。三井がそれに続き、さらに都市銀行を中心に事業会社が結集して企業集団を形成していきました。 それに続き、さらに都市銀行を中心に事業会社が集結して企業集団を形成していきました。


このように、傘下に都市銀行と事業会社を持つ三大財閥(住友・三井・三菱)は、銀行を中心に企業集団(旧財閥系企業集団)に再編されました。

分かり易く言えば、住友グループと言った場合、財閥解体前は住友家が株式を所有するグループの事を指しましたが、財閥解体後にできた住友グループとは、住友家が株式を所有していない、また住友家と親戚関係に無い企業、松下電器産業、三洋電機とか村田製作所などを含め、住友銀行を中心としてまとまった企業群を、住友グループと呼ぶようになったという事です。


そういう意味では、住友銀行は創業者の学歴・財産に関わらず、人を見て、その企業に融資し大成功を収めており、住友銀行の眼力には定評がありました。


一方、残り上位都市銀行は、出身母体の財閥に固執せず、独自に成長戦略を描いて企業集団を形成していきました。 安田財閥の安田銀行(のちの富士銀行)、渋沢財閥第一銀行(のちの第一勧業銀行)、山口・鴻池財閥の系譜を引く三和銀行が新興系企業集団(芙蓉・三和・一勧)を形成していきました。

そして、銀行を持たない財閥を母体とする事業会社が、新興系企業集団に参加していきました。 古河財閥のように丸ごと一勧グループに取り込まれたケースや、それぞれの企業が芙蓉・三和・一勧グループに参加した日産コンツェルンなど、事情は様々です。

かくして、1960年代中盤には、六つの企業集団(住友・三井・三菱・芙蓉・三和・第一[のちの一勧]グループ)が出揃いました。

財閥は事業分野に偏りがありましたが、六大企業集団は当時の主要産業すべてを網羅していました。 つまり、戦前のような事業分野の棲み分けはなくなり、至る所で、住友・三井・三菱、プラス芙蓉・三和・一勧グループがライバル心むき出しにして競合し合う構図が出来上がりました。




企業集団と財閥の違い

財閥解体を挟んで、財閥は企業集団に再編されました。それは看板の書き替えだけだったのでしょうか。

そもそも企業集団とは何か、そして財閥とどう違うのか。 企業集団研究の第一人者・奥村宏氏は、企業集団を定義するのに、次の六つを上げています。


➀社長会の結成
②株式持ち合い
③都市銀行による系列融資
④総合商社による集団内取引
⑤包括的な産業体系 ⑥共同投資会社による新規事業進出

財閥と企業集団の最大の違いは、「株式持ち合い」に見られる株式所有構造にあります。 財閥の株式所有構造は、巣業者一族→持ち株会社→財閥直系企業→その子会社・孫会社と連なっていました。

財閥解体で創業者一族と持ち株会社の所有株式が株式市場に放出されました。GHQが進める「証券民主化」でその株式はいったん個人の手に渡っていましたが、好不況の波に翻弄され、株式を手放す者が増え、やがて法人所有(企業による株式所有)へと収斂(しゅうれん)していきました。

中でも親密企業による株式所有が進み、互いに株式を持ち合う「株式持合い」が支配的な流れになりました。



この株式持ち合い比率が企業集団の結束度合いを示す指標として用いられています。 企業集団における株式持ち合いの特徴は、個別企業レベルでは数%しか株式を所有しておらず、戦前の財閥本社のような親会社が存在していないことです。

日立グループには日立製作所、トヨタグループにはトヨタ自動車といった親会社が存在しますが、戦後の三菱グループや三井グループには親会社が存在しません。 それで4.7%は、三菱や三井グループの企業には支配的な株主集団はいないのかといえば、そうでもありません。


たとえば、1979年の三菱重工業は三菱商事株を4.7%しか持っていません。同様に三菱銀行は7.48%、三菱電機は1.78%しか所有していません。

しかし、三菱グループ20数社の所有株主を累計すると、三菱商事株式であるの39.7%に達します。 こうなると三菱商事は、大株主である三菱グループの意向を無視できなくなってきます。



つまり、企業集団の中核企業の社長が集まって、たとえばグループ全体の方向性などを決議すると、それら企業はその決議を尊重せざるを得なくなります。

六大企業集団にはそれぞれ中核企業の社長が月一回くらい集まる会合があります。 それが「社長会」です。


六大企業集団の社長会については、1979年当時のデータで配下の通りです。
➀住友グループ(白水会21社)
②三井グループ(二木会23社)
③三菱グループ(三菱金曜会27社)
④芙蓉グループ(芙蓉会29社)
⑤三和グループ(三水会39社)
⑥一勧グループ(三金会45社)


ちなみに、①の「白水会」を構成する企業は、住友銀行、住友信託銀行、住友生命保険、住友商事、住友林業、住友石炭鉱業、住友建設、住友化学工業、住友ベークライト、日本板硝子、住友セメント、住友金属工業、住友金属鉱山、住友電気工業、住友アルミ精錬、住友軽金属工業、住友重機械工業、日本電気、住友不動産、住友倉庫。順不動。 バブル期にNECが絶好調の時も、上座に座るのは住友家当主、住友銀行、住友金属鉱山、住友化学の順であったと聞いています。



(参考)

・世界最強の財閥・ロスチャイルド家より古い歴史を持つ住友家
  https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/851659949fd3bf4aa65d9f6c0a13940a
・三井財閥
  https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/6d0bb2d7f4aaf01429a8671faf7d590b
・三菱財閥
  https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/ff1869da00b5825eccba224f6c98762c
・安田財閥
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/ff4cf875e7466eb19734a2c6c077012d
・鈴木財閥(鈴木商店)
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/f28770d8c80ee52eddb9d94bb80af35a

・鴻池財閥
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/a011e884647a86f6ff75144d711ff4f9
・浅野財閥
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/4cbff696220c5713b1e1458b65ff4564
・古河財閥
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/1e943423625680ee36969aab2d9a6eec
・鮎川財閥
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/a6d561d0a90a8310ac3ac4513492ba2a

・財閥とコンツェルン
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/7f98f17fa96ef7161bd46f65e316c9fe


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