11日の東京株式市場で日経平均株価が3日続伸し、前日比392円03銭(1%)高の4万2224円02銭と初めて4万2000円の大台に到達した。直近の株高局面では日中の上昇ぶりが目立つ。海外投資家の日本株再評価に加え、企業の自社株買い、逆張り個人の変質といった複数の要因が重なり、全員参加型の上昇相場になっている。
日経平均は取引開始から間もない9時台には上昇幅が600円に迫り、4万2426円77銭まで上げる場面もあった。ファーストリテイリングや第一三共、ソニーグループといった主力の大型株が買われ、相場を押し上げた。
東証株価指数(TOPIX)も1%上げ最高値を更新した。前日の米株市場でS&P500種株価指数が最高値を付けたことで投資家心理が強気に傾き、東京市場でも幅広い銘柄に資金が流入した。東証プライム市場銘柄の8割が値上がりする全面高の展開だった。
日経平均は前日まで連日で史上最高値を更新し、きょうもその勢いが続いた。2023年末からの上昇幅は前日10日時点で8367円にのぼる。これを日本の取引時間(終値-始値)とそれ以外の時間(始値-前営業日の終値)に分解すると、日本の取引時間中に合計で5742円上げており、全体の上昇幅の69%を占めた。
楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは「このところは場中での値動きが特に大きい」と指摘する。
実際に、これまでの最高値だった3月22日時点では、昨年末比の上昇幅(7424円)に対する日本の取引時間の累積上昇幅は4441円で割合は60%だった。足元で日中の上昇分が大きくなっていることがわかる。
野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは日中の上昇が目立ってきた要因として主に4つの要素を指摘する。
①中国株から日本株に投資マネーを移すアジア投資家の現物株買い
②上場企業の自社株買い
③「逆張り」個人の変質
④欧州のパッシブ(指数連動)型運用の機関投資家のリバランス(資産配分の調整)だ。
景気の底入れ期待から5月半ばまで持ち直し基調にあった中国株は足元で再び軟調になっている。
企業のガバナンス改革や地政学上での優位性を持つ日本株を再評価する流れから、「海外投資家がアジア時間帯に中国株を売り、日本株の現物を買う流れがある」(須田氏)。
資本効率改善の一手として広がる企業の自社株買いの好影響も見逃せない。自社株買いはハイペースだ。4〜6月に決議された取得枠を数えると約7.3兆円と前年同期より7割多い。
これまでの株高局面で利益確定売りに動いてきた個人投資家も変質しているようだ。強い上昇基調が続いていること、今後も株高期待が強いことから、「逆張り」の売りが出にくくなっている。
また、欧州のパッシブ(指数連動)型運用の機関投資家による機械的なリバランスもある。
4月以降の日本株の相対的な株安や、ドル建てでみた価値縮小により投資比率が低下していたとみられ、足元で再び投資比率を埋め戻している可能性が指摘されている。機械的な買いで、欧州市場より商いの多い東京市場で取引しているとみられる。
いまの日本株は多様な買い手に対し、売り手不在の状況だ。
基本的に日中の値動きは、国内外の投資家による現物株の売買動向および日経平均先物の取引動向が反映される。
一方、毎営業日15時に場が閉まり、翌営業日の9時に再開されるまでの間は、グローバルマクロ系ヘッジファンドやCTA(商品投資顧問)などによる先物取引の動向が反映される。
その間に取引される米国株の値動きに影響されやすい。
楽天証券の土信田氏は「(日中の上昇が大きくなっていることから)これまでの米国株連動から日本株主体の相場に変わりつつある」と話す。日本株の復活は着実に進んでいるようだ。
(桝田大暉)