トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ ジャディ・マセソン商会https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/1df77aae650497988383afa152bbd217
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アヘン戦争で飛躍したJM商会
一方、一八世紀以降、イギリス本国では産業革命の進展、国内の産業資本家層が東インド会社の貿易独占に対して強い批判、不満の眼を向け始めた。また、同社自身、軍事費の拡大やインド綿布の本国への輸出の減少などによる採算割れから、一八三三年、同社の貿易活動は全面的にストップ状態となってしまった。
それから間もない一八五八年、長年にわたり東インドを支配し続けていた同社は、ついに解散へと追い込まれてしまったのだ。 同社のこの趨勢を睨み続けていたスコットランド出身のジャーディーンとマセソンが「好機到来」とばかり設立したのがJM商会だったというわけである。
そしてJM商会の設立は、まさにグッドタイミングだった。 設立から八年後の一八四〇年、イギリス本国は中国(清朝)との間に「アヘン戦争」を惹起、二年後の一八四二年、イギリスはこの戦いに勝利し「南京条約」を締結させた。
当時、イギリスの支配下にあったインド(主としてベンガル地方)において大量の阿片を生産、大半を中国への輸出にふり向けていた。
本来、アヘンの作用の主体は「モルヒネ」で、使い方によっては、中枢神経に対する抑制作用の結果として鎮痛、咳止め、下痢止めなどの効果を持たらす良薬であった。ところが、薬用に限定されていたアヘンが一八○○年頃から麻薬と化し、誰でも入手できるようになった。 その麻薬に大きく手を染め、中国へアヘンを大量に輸出していたのが東インド会社(後にJM商会も加わる)だったのである。
アヘンを一~二年も吸い続けると廃人同然になる。しかし人口が急増中の清朝では、アヘン中毒患者の急増を黙認した。これに危機を感じた鉱業大臣・林則徐はアヘンの輸入禁止策を打ち出した。 至極当然の措置であろう。
ところが自国の利益が減少することに怒ったイギリスは正義も恥もかなぐり捨てて、ついにはアヘン戦争へと突入してしまったのだ。 このアヘン戦争に勝利した結果一八四二年八月、イギリスは典型的な不平等条約と言われる「南京条約」を締結させた。この結果、清朝はイギリスの属国となったと言っても過言ではない。
これを契機にJM商会は、開店休業中の東インド会社に代わり、香港に本社を置き、アヘンと茶、さらには運輸、保険、造船、倉庫、不動産などにも次々と進出、当時としては世界最大の総合商社として発展したのである。
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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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