月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『雪に願うこと』@伏見ミリオン座・6/21

2006-07-01 16:49:17 | Movie
“冬は、つとめて。雪の降りたるは、いふべきにもあらず。霜のいと白きも。”………まだ空けきらない冬の早朝の冷気の中、綺麗なブルーグレイと鴇色に染まった空を背景に、輓馬の馬体から立ち上る湯気と鼻息がとても美しく、ふと冒頭の枕草子の一節が浮かびました。

『雪に願うこと』公式

バブルの波に乗り文字通り泡のように消えかけている弟・学。
都会の喧騒とは無縁な地方で地道に生きる兄・威夫。
当然のようにことあるごとに対立し「こき使ってやるからな」と兄は弟に厳しく接するも、その態度には陰湿なものはありません。
儚いバブルの世界にいた弟に、単純に“働く”厳しさを伝えたかったのでは?
「人は殴っても馬は殴んねえ」
このひと言で、威夫の厳しいだけではない、普段はそれほど表に出ることのない大きくあたたかい人柄が感じられます。
しっかり者の兄、甘えん坊の弟。子供時代は仲が良い兄弟だったんだろうなと思いました。

見どころはやはり帯広競馬場での“ばんえい競馬”のレース場面。馬体重1トンの輓馬が重たいソリを曳く姿は勇壮で、一所懸命坂を越えようとするひたむきな姿は感動的。
今回の勝てなきゃ馬刺しのウンリュウ、ウンリュウを預かる威夫、ウンリュウに乗る牧恵、そして学……皆、崖っぷち土壇場の中、ウンリュウは力強く“障害”を越えていく。
その姿を見ることなく、“願いが叶う雪玉”を屋根に乗せ、厩舎を出て行く学の軽い足取りに、迷いのなさと再生へと新たな一歩を見出すことができたラストシーンでした


浩市っちゃんは大好演
個人的には『トカレフ』とか『KT』のようなハードなのが好きだけど、こういう大地の香りのする役もいいなあ

弟役の伊勢谷さんてちょっと大根?(暴言)
ネット起業家として都会的な冷たさを持った硬質な表情とルックスは、イメージにぴったり。
最初の方は彼のぎこちなさが、そのまま“都会からやってきた転校生”な感じでよかったんだけど、兄の周囲の人々やウンリュウとの交流の中で変化していく姿が、ちょっと単調だったかな?
あまりに劇的な変化はクサい演出になるので勘弁だけどね。

純粋で心優しいテツオに和みまくり
本当のことしか言わない彼のひとことひとことで、その後何が起こるか想像できて、その度に客席からくすくす笑いが漏れてました

キョンキョンはいい女優になったなー
割ぽう着着てアイロンかけてる姿の違和感のなさに感動(笑)
でも、お水のカッコするとやっぱり綺麗です(いや割ぽう着でも美人さんだけどさ)
ツボは、厩舎の外で威夫の髪をカットするシーン。いいもの見せてもらいました

吹石さんが頑張ってました。
おそらく吹き替えなしの馬とのシーン。
練習やレースでちゃんと手綱と鞭を手にして坂越えてたのには拍手
気の強いちょと荒っぽい感じの役も巧いです。


以下、余話。
・凍ったダムに積もった雪の中にそびえ立つタウシュベツ・アーチ橋が、古代ローマの遺跡の
 ようで墓標のようにも見えました。
・生き物が死ぬ場面はどんな形でも嫌ですね。
 特に馬の場合はイヤ。
 ダビスタでイヤというほど経験したわ。
 たかがゲームだけど、ホントに悲しいのよ。くやしいの。
 何にもしてやれなかった……こみ上げてくるものを抑えて震える威夫の横顔が印象的でした。
・みんなでご飯のシーンが楽しそうで美味しそうで(笑)
 最近、そんな映画ばっか観てる気がする。
 どんぶり飯をめいっぱい食うオトコ共が好き
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