月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『ゆれる』@伏見ミリオン座・8/28(9/11 23:25追記あり)

2006-09-11 03:33:49 | Movie
珍しく前売券を買ったのになかなか観に行けなくって、公開から既に1ヵ月
仕事がヒマで早退できたので、職場から歩いて5分の映画館へダッシュ
そんなに上映館が近いんならアフター5に行けよって感じですが、一応主婦なので仕事が終わったら真っ直ぐウチに帰ってオットに晩御飯食わせないとね。だから、観劇も平日の休日のマチネがほとんどで(ソワレしかないときは仕事帰りに行くけどさ)映画も同様。
休日の隠密行動が多いので(汗)普段は結構真面目だったりします
平日の昼間なのに観客が50人くらいいてビックリ(名古屋でこういうのって珍しいと思う)
公開から1ヵ月以上経ってるのに、さすがオダギリ……と思いきや、少々ご年配のおばさま、おばあさま方が多くて更にビックリ 
ま、オダギリ観にきたわけじゃなく、純粋にこの“作品”を観にきたんでしょうが(そりゃ中にはオダギリファンがいるかもしれないけど
隣の席のキャピキャピぴちぴちお嬢さん2人組は、どこをどー見ても聞いてもオダギリファン。映画始まるまでずーーーーっと喋っててがさごそばたばたしてて、上映中の動向が気になったんだけど、始まったらピタリと微動だにしなくなったので一安心なのでした
チラシクリックで公式サイトへ飛びます。興味のある方はどぞ。


全てをもっている弟、猛。
何ももっていない兄、稔。

猛は金も女も才能もルックスも全てをもちながら、形あるものを何ももってないけど誠実で周囲の信頼のあつい兄を愛し、そしてそんな兄にかなわないというコンプレックスを抱いているように見えました。
だから、自分に欠けているものを補うかのように兄のものを奪う。
おそらく過去も、現在も。智恵子が死ななければ未来も。

そんな弟の少し歪んだ愛情を兄はどう受け止めていたのか。
自分が一番奪われたくないものを奪われた時、あるいはその予感がした時、「弟の奪われたくない大切なものを奪ってやろう」と思ったのか……。
じゃあ、猛にとって“大切なもの”とは何か。
猛がもっていないもの全てをもっている、稔?

稔が猛に投げかけたひとこと。これが嘘だとは猛は知りません。
そのひとことに対する返事は真実でなければならないのに、猛は軽い気持ちで嘘をつく。
これがきっかけで稔は少しずつ壊れていき、稔が稔でなくなっていく。

でも、周囲が見ていた稔が本当の稔かどうかはわからないんですよね。
自分とあまりにも違う弟に対する嫉妬心を心の奥底深くしまいこんで、周囲の求める自分を演じてきたのかもしれません。
稔の中で何かが弾け逮捕されてからの彼の姿も、それが素なのか装っているのか全くわかりません。
稔の様子に、父も叔父ももちろん猛もとまどいを隠せない。

妙に冷静な兄の姿に腹を立てる猛。こんなときにも自分を何故頼ってくれないのかと、まだ自分は子ども扱いなのかと。大金を積んで弁護を頼むこともできる。兄ができないことは全てできるのに、兄の前では何もできない自分。

ある日、兄が自分に投げたひとことが嘘だったことを知る猛。
その意味に呆然とし、自分が知らない兄がそこにいることに気がつく。

最終的に彼は証言台に立ちます。
この証言が正しいか嘘かというのではなく「自分の兄をとりもどすために証言する」
でもそれは、結局自分の都合のいい兄像を稔に押し付けていたような気がしてなりません。
彼の思う兄は初めから存在しなかったのでは?

猛の証言で稔は有罪となりますが、それは稔にとっては“解放”
自分の偽りの心からと、猛の求める自分からの。
猛は猛で、自分がいつも追いかけていた兄はもういないと思い、兄と訣別する。

弟は兄から離れてひとり立ちし、兄は弟を手放す。ものごころついたときから心の中にわだかまっていた想いを昇華させる儀式が、この証言台だったのかもかもしれません。

7年後、猛は子供の頃の8ミリを観る。
兄が猛へさしのべる手が、智恵子を助けようと手を伸ばした兄の姿と重なる。
手を伸ばして、智恵子の手を掴んだがすりぬけて落ちていく映像と。兄の腕にくっきり残った傷は(智恵子の爪の引っ掻き痕)はこの時ついた。

猛は、8ミリを観て兄がいつも自分にしてくれてきたことの意味に気づいたのか。
自立した人間になるということは、いつも自分の手を引いてくれた兄を遠ざけることではなく、兄の手を引くことではないだろうか?
子供の頃いつも兄が自分の手を引いてくれたのは真実。様々なものが揺れて定かでない猛の周りで、たったひとつの真実。兄がどんな人間であろうとも、自分の思い描く兄ではなくても、今、自分がそんな兄を欲していることに気づいただろうか?

だからこそ、8ミリを観ながら溢れてくる涙。
だからこそ、兄が歩く通りの反対側から目を赤くして、激しく行き交う車越しに「兄ちゃん!」と素直に呼べたのかも。

ただ、「兄ちゃん!」と必死で自分を呼ぶ弟に向けた兄の微かな微笑みには、どんな想いが詰まってるのかはわかりません。確かに“微笑み”だけど、シニカルなものにも見えるし、安堵や単純な嬉しさに見えないこともない。結局、観客にわかるの稔の真実は“弟の手を引く兄”の部分だけ………。



うわー、すごい散文的になっちゃった。そして長いし
なんか行間を読んでしまう作品でしたね。
ここんとこ、心にとってもいい余韻が残る作品を観てたのでその影響もあるんでしょうが、この作品は好きになれない(駄作とかいうのではありませんよ。素晴らしい作品だと思ってます)
皆、あまりにも人間臭く好きになれるキャラがひとりもいない(笑)……まあ、それがこの映画のいいとこなのかもしれないけど 兄はともかく、あんな弟はいくらイイ男でもイヤですねー。ぶっちゃけ、子供っぽくって独りよがりでいい年こいてブラコンで(笑)

演技は文句なし!
この辺については、夜追記します。
今日も仕事。昨日も仕事。昨日は残業で帰宅が10時
今日は定時で帰ってやる


《追記》
定時とはいかなかったけど、30分残業して7時半に帰宅。胃腸風邪でグダグダなオットがたまご雑炊を食いたいっつーので、さっさと作ってさっさと食べさせ、さっさと寝室に追い遣って追記開始。

この映画、決定的な場面は、猛の目を通して描かれていてそれが断片的に出てきて、それが猛が見ている現実なのか夢なのかわからないことも………こういう手法を取るからにはオダギリが主演ということなのだろうけど、演技では完全に香川照之に軍配。
なーんかますます磨きがかかっちゃって、真の姿を見せないというか、正気と狂気の挟間を演じるというか、表情が無いようで、でもそれは内にある底知れない何かを隠すためであって………えーと、とにかく困難な役どころを見事に演じきってます。
だからってオダギリがヘタなわけもなく、むしろ香川照之相手によくやったよ、すげーよオダギリって拍手喝采。

あとの俳優陣は安心して見てられた方ばっかりなんで放置(笑)

智恵子役の真木よう子さんはよかったです(『東京フレンズ』出てますね。観てないけど
女の描く女の嫌なとこをこれでもかって全部見せてくれて、真木さん自身をどうしようもない女って思えるくらいでした。

あ、そうそう、キム兄ーーーーーーーー
検察官役カッコよかったーーーーーーー
あの顔にスーツなんで一歩間違えばヤ○ザなんだけど(失礼)なんのなんの、冷徹で優秀な検察官っぷりがハマってました。

オダギリのファン的にはオイシイ映画だったかな。
ビジュアル的のどっから見てもイイ男だし、キスもH(これはファン的にオイシイのか?/笑)もシャワーもあるし、涙うるうる顔もあるし
私としては「舌出せよ」ってのが一番のツボでしたが(笑)
これをオダギリに言わせた、西川監督ってやっぱ只者じゃないっす
彼女は『ユメ十夜』の第九夜の脚本・監督。両方ってのがいいですね。楽しみ


パンフがポストカードくらいの大きさで、ポストカードが何枚か付いてました。
オダギリ2枚と他のキャストとロケ地が数枚。
キム兄のどアップ写真もあります(笑)
お好きな方にはたまらないかも(ってそれ私)
 
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