月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『アダン』@シルバー劇場・7/5

2006-07-15 19:33:45 | Movie
田中一村との出会いは『開運なんでも鑑定団』でした。出品されたお宝のこの絵に一目惚れ。田中一村19歳の時の作品です。(“米邨(べいそん)”は39歳までの画号)

幼少の頃から絵の天才として期待されながら、画壇から遥か遠くに身を置き、信じる道をひたすらつき進んだ日本画家がいた。その名は、田中一村。 昭和33年、50歳で奄美大島に渡った一村は、極彩色の自然に包まれて、画家として最高の、最後の一枚を描こうと決意する…。
映画『アダン』は、芸術との壮絶な闘いに魂をかけた彼の半生を描いた感動の物語。富や名誉を追い求めるのではなく、ただ真摯に、いのちをかけて絵を描くこと。己を極限までそぎおとしたその執念が、この映画にほとばしる。絵を描くために生まれ、絵を描くときだけが幸福だった一人の人間の生き方とは----。
                               『アダン』公式より


一村の内にあるものを全て外に出し切ったような映画でした。
もっとドキュメンタリーっぽいものを想像してたんですが、こういった実在の人物を扱う映画にしては、不親切なほど一村という人物の説明的なエピソードは描かれていません。
“ドキュメンタリーではなく一村という人物のフィクション映画だ”と解説にありましたが、よけいなエピソードは除き、一村だけに見える架空の少女“アダン”を登場させたのはよかったのではないでしょうか。
枝葉にこだわらず“一村の絵に対する情熱”のみを描くことで一村の創作への魂の叫びがストレートに伝わってきて、それがスクリーンから迸っていたように感じました。

写真と絵から想像するに、一村には、内に熱いものを抱えているものの外に対しては言葉少なく静か、というイメージを抱いていましたが、榎木さんは、意外にも(実際はそうなのかもしれませんが)時にはただの駄々っ子じゃないかと(榎木さんすんません)思うほど、感情の激しい一村として演じてました。
最初は戸惑ったものの観ているうちになじんできたけどね榎木さんの演技力もあって、最後には「これが一村だ」と思うようになりました(なんて単純なわたし/汗)
榎木さんは98年に奄美を訪れ、一村の描いた“アダン”をスケッチする内、一村を演じてみたいと思ったそうです。彼は画家でもあるので、一村に対する想いも格別なものがあるんでしょうね。
写真の一村は長身痩躯。そのため榎木さんは13kgも減量(ひーー)したとかで晩年の頃はイメージ通りでした。

想像していた一村像とは違ったものの、この映画は、田中一村の物語として、彼の絵に対する溢れる情念を描くのに成功していると思います。

映画の中で、榎木さんが、実際に一村の絵を描いているシーンが何ヶ所かあります。
創作途中でどの絵を描いているのかわかるのが、ファンとしては嬉しかったですね。
さすがに筆遣いが非常に巧いです。
私は書道歴が長いので(ここんとこ書いてないけど/汗)こういうとこにはすぐ反応。
筆を使い慣れていない人は妙に力はいっちゃうんですが、榎木さんは実に自然。筆を支える肘から手首までは力を入れて、その先は筆先が自由に動くように力を散らす………中々難しいこの力加減を、彼は難なくこなしていました(画家だからあたりまえといわれればそれまでだけど


田中一村作品集

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こちらの作品集は下の85年版の新版です。
表紙が、作品名『アダンの木』です。
アダンは奄美特有の植物で、パイナップルに似た大きな実をつけます。


田中一村作品集―NHK日曜美術館「黒潮の画譜」

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この表紙は、作品名『クワズイモとソテツ』
映画の最後のほうで一村がこの作品を完成させるんですが、完成した絵を真正面から映してくれないんですよねー意地悪というか、ニクイというか、ヤラレたというか(笑)………どんな絵か知ってるからいいけどさ

アダンの実の先にに広がる灰色の海や奄美の花々や木々や鳥に、南国の強烈な明るさや躍動感はなく、まるで音の止まった風景の一瞬が凝縮されてそこにある感じがします。
作品だけで一村の心の内を押しはかることはできませんが、表面的には意志強固な一村にも、厳しい自然環境の中での孤独感や不安感を抱かざるをえないこともあったのかもしれません。奄美で描かれた作品には、そういった心情が反映されているのでは、と思われる作品が多いように思われます。

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