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猫に腕枕

腎不全の猫と暮らした日々+

腎不全による石灰化について

2005年10月07日 | 腎不全猫(石灰化治療)
【はじめに】
9月10日にゆずが『石灰化している』と診断されて以来、いろいろネットで検索し、石灰化について調べてみました。
しかし、腎不全猫の石灰化について詳しく書かれたページは、残念ながらほとんどありませんでした。
ヒトに関してならば見つけられたのですが、病の基本構造は同じでもヒトとネコでは治療についての細部が違っているかもしれません。
そこで、よくブログに情報を頂くアメリカ在住のyodaさんが海外のHPで調べてくれたことを元に、ネットで医療相談をしてくれる動物病院のHPでも質問してみました。
治療の大部分は同じでも、海外と日本では微妙に差があるようで、わからないままのこともありました。
下記は、yodaさんが調べてくれたことと、医療相談HPの回答、ヒトの石灰化についてのHPの情報を元に、かなり大まかに(汗)まとめたものです。
まとめたのは素人の私reiであるため、間違っている記述などがあるかもしれません(大汗)。
その際は、訂正していただけると助かります

【石灰化が起こるのは】
簡単にいうと、腎機能の低下によって、血中のカルシウムとリンのバランスが崩れ
リンが高くなると石灰化が起きます。

腎機能が低下すると、カルシウム吸収を促す活性化ビタミンDが腎臓で作られなくなり、食物中のカルシウムを腸でうまく吸収できず、血液中のカルシウム値が低下してきます(低カルシウム血症)。
また、腎臓から尿中に排泄されるリンが少なくなり血液中にリンが蓄積されリン値が高くなります(高リン血症)。
カルシウムとリンには密接な関係があり、血液中では互いの積が一定になるようふるまうため、こうしたリンの上昇もまたカルシウムの低下をもたらします。
しかし、通常カルシウムとリンの比率は1~2:1となっているため、カルシウム値が下がると、体はこの比率を保とうと、カルシウムの貯蔵庫である骨を溶かしてカルシウムを血中に送り、カルシウム値を上昇させます。
その骨から血中に送り出された余分なカルシウムがリンと結合し、柔らかい組織に沈着すると石灰化が起きるのです。
特に、血清カルシウム値 × 血清リン値 > 70 になると
四肢末端、肺や心臓、血管など、体の軟部組織に石灰化沈着を起こすと言われています。
そしてこの状態が続くとカルシウム値は上昇し、高カルシウム血症を伴うようになります。

ゆずも前足の先と肺と大動脈に沿って石灰沈着が起きたわけですが
ネットの医療相談の先生によれば、腎性の上皮小体(副甲状腺)機能亢進症になってしまっている状態だそうです。
上皮小体(副甲状腺)は、体内のカルシウムとリンを調節する重要な臓器です。
上皮小体からは上皮小体ホルモン(PTH)が分泌されますが
このPTHに骨を溶かしてカルシウムを血液の中に導く働きがあります。
上皮小体(副甲状腺)機能亢進症については、説明すると長~くなるので省略します。

【石灰化が進むと】
骨・関節痛や骨折を起こしやすくなります。
また血管に石灰沈着することによって動脈のしなやかさが失われ(動脈硬化)、
心筋梗塞や脳梗塞などの心臓や血管系の重篤な合併症をひきおこします。

【石灰化を防ぐには】
1度石灰化してしまった部分を溶かすことはできません。
これ以上石灰化しないよう防ぐことしかできないのです。

石灰化を防ぐには、一般的には低リン食にし、新鮮な水を十分に飲めるようにしてあげることが大事です。
また、脂溶性のビタミンAとビタミンDの過剰摂取も、石灰化を促進させるので気をつけなければなりません。

内科的治療としては、リン吸着剤(リン酸結合薬)を服用し、血清中のリンを正常に保つことがあげられます。
リン酸結合薬には、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウムなどがあります。

アメリカで猫と犬の腎不全の権威であるキャサリン・ジェームス博士は
リン値が6mg/dlを越えたら4mg/dlまで下げるようにコントロールすることを強く勧めています。
通常アメリカでは、リン値6mg/dlになると
獣医さんからリン吸着剤のOKが出るそうですが
アメリカでのリンの正常値は2.5~7.50mg/dlで
「腎不全の6mg/dlを越えたら」という部分と正常値の上限がダブっているため
飼い主と獣医さんの間で、吸着剤を出せ・出さないでよくもめるそうです。
研究によると、リン値を厳しくコントロールした腎不全猫は
しなかった猫の2倍も寿命が延びると言われています。

ゆずがリン吸着剤として使っているのはアルサルミンです。
本来、リン吸着剤ではなく、胃薬として使われるものです。
ゆずの主治医によれば、アルサルミン以外にダイレクトにカルシウムに関与してもっとリンを下げる薬があるそうですが、それは副作用が強く、安全域が狭いため量の調整が難しく、使いたくないということでした。
アルサルミンには副作用がほとんどありません。
しかし、長期服用時には腎臓が悪いとアルミニウム中毒になってしまうことがあるようなので、投薬にはやや注意が必要かという指摘をネットの医療相談の先生から頂きました。
ちなみに長期というのがどのくらいの期間のことを指すのかも質問しましたが、
具体的な日数を記述している本などがないため不明だそうですが、
1,2週間であれば大丈夫ではないかと、同じくネットの医療相談の先生から回答いただきました。
主治医からは、アルサルミンはそんなに体に吸収されないので、アルミニウム中毒についてそれ程心配することはないと言われています。
どの薬を選ぶかは、先生によっても、猫さんの状態によっても違ってくるかと思います。

それから、リンだけではなくカルシウムも正常値より高くなってくると(高カルシウム血症の場合)、海外では、輸液はカルシウムの入っている「乳酸リンゲル液(ソルラクトなど)」ではなく、カルシウムなしの「Saline Solution」や「Normosol-R」を使うそうです。
「Normosol-R」はマグネシウムを含むので、マグネシウム値の高い猫さんには不向きであり、また猫さんによっては輸液時に痛みを感じたり輸液後に吐いたりすることがあるそうです。
「Saline Solution」も同じように輸液時に痛みを感じたり、腎不全猫に必要なカリウムが添加されたなかったり、体内の酸性化を治す働きがある乳酸も入ってなかったりと、一長一短があるようです。
この海外で使われている輸液についても、医療相談掲示板で訊いてみましたが、輸液中のカルシウムについては日本ではあまり言われてない事項なのでわからないということでした。
ゆずの場合、カルシウム値はまだ正常値内(といっても高めなんですが)だったからかもしれませんが、主治医からはソルラクトに入っているカルシウムは微々たるものなのでそれ程心配しないでよいと言われ、現在もソルラクトを使っています。

【参考サイト】
* ノア動物病院の猫の医療相談のページ

* 猫の栄養、リンについて詳しいのは、わんにゃんごはんというサイト様のこちらのページ

* US Yahoo の腎不全猫のリン・マネージメント・グループ(リンが高く石灰化してしまった猫のためのメーリングリスト)はこちら
簡単にメンバーになれるそうです。英語OKの方は1度覗いてみると良いかもです。

ヒトについてですが参考になったのは↓
* 名古屋第二赤十字病院腎臓病総合医療センターの二次性上皮小体亢進症のページ

* 日本血液浄化技術研究会のHP

【2008.11.17 追記】
現在、動物用のリン吸着剤には、レナジェル(塩酸セベラマー)とレナルガード(炭酸ランタン)があるようですが
レナルガードは2008年10月に予定されていた発売が延期されたそうです。
腎不全に苦しむ動物達のために早期の発売を切に望みます。

* レナジェル(塩酸セベラマー):カルシウムを含まないリン吸着剤です。
炭酸カルシウム(CaCO3)と異なりカルシウムを与えてしまうことがないため、高カルシウム血症や異所性石灰化の危険のある場合に処方されます。
胃や腸のなかでリンと結合して食べ物に含まれるリンを吸着し排泄します。
副作用として、便秘、消化不良、吐き気、食欲不振などあるようです。

* レナルガード(炭酸ランタン):食事によって摂取されるリン酸に対し高い親和性を持つ非アルミニウム・非カルシウム性のリン吸着剤です。
リン酸と結合して生成されたリン酸ランタンは消化管を通過して排泄されるため、効果的に血清リン濃度を下げることができます。
海外では既に使われています。
またヒト用は医薬品として実用化されているようです。製品名はフォスレノール。


動物用として使えるかどうかは不明ですが(副作用を読むと難しいかも?)、↓レグパラ錠という吸着剤もあるようです。
* レグパラ錠(シナカルセト塩酸塩):副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑える薬で,同時にカルシウムやリンも下がります。
この薬は血中濃度を一定に保つ必要があるため、一日一回決められた時間に内服する必要があります。
副作用に吐き気、嘔吐、胃不快感、食欲不振などがあるようです。

追記で参考にさせていただいたのは、日本腎不全看護学会のセミナーレポートです。
コメント (2)
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