元自宅前に立つと、思い出は次々と蘇ってきます。
介護施設になっているビルの下には、
かってわが家があり、そこそこの庭がありました。
庭には結構高い塀があり、子供たちはよくそこに登って遊んでいました。
その庭に面して、昔ながらの長い縁側がありました。
次男は近所の友達と、庭でよくどろまんじゅう作りをしていました。
それはそれは熱心で、砂をかけては磨き、またかけては磨き、
ボーリングの玉のように硬く磨き上げ、縁側の下にづらりと並べていました。
大から小へとどろまんじゅうが一列に整列し、ピカピカに光っていた光景を
今も楽しく思い出します。
長男はセミとり名人でした。
虫かごを左右に交差してかけ、セミとりに行きます。
ある日二つの虫かごにぎゅうぎゅうづめに、セミを捕ってきました。
私はびっくり仰天、
「セミが息ができないよ~ 放してやりなさい!」
と叫びました。
息子は縁側に立って、庭に向け二つの虫かごを開け放ちました。
数十匹のセミが一斉に飛び立ったあの日の光景も忘れられません。
大分の4年が過ぎたころ、長崎に転勤が決まりました。
庭のぼたんは、Aさん宅にお嫁入りしました。
介護施設となったビルの下の庭には、たくさんの思い出が眠っています。
私は灌漑深くビルを眺めました。