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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

憲法記念日 解釈改憲による集団的自衛権行使の肯定は権力分立←立憲主義に反する

2014年05月03日 | 憲法9条改憲・安保法制・軍拡反対

 

今日は67回目の憲法記念日です。ところが、安倍首相は半世紀にわたって内閣法制局が憲法上行使できないとしてきた集団的自衛権を行使できるように解釈で改憲しようとしています。これは権力分立、ひいては立憲主義に反し許されません。

 現代憲法が依って立つ立憲主義が、権力の手を縛り、権力の濫用を抑制して、もって個人の人権を保障するものであることは今ではよく知られるようになりました。近代立憲主義憲法の目的は個人の基本的人権と自由を保障して、個人の尊厳を確保するところにあります。権力もその目的で各国家機関に憲法により授権されます。しかし、国家権力は強大であるがゆえに濫用されがちであり、いったん濫用されると個人の基本的人権が甚大な被害を受けることも歴史が証明するところです。 

 そこで、憲法の規定する統治機構の仕組みは、個人の自由・人権を保障することを目的とする手段となっています。民主主義は自由主義を目的とする手段であるというのはこのことを指します。

 民主主義は国民の人権を保障するための原理なのです。選挙で選ばれる国民代表機関である国会に立法権を与えれば、国会議員と国民は同質ですから、国民の人権を侵害するような立法はしにくいだろうというのが、国会に立法権が与えられた趣旨です。これを治者と被治者の自同性の原理と言います。国会の多数から支持されるものが内閣総理大臣として内閣を組織し、行政権を担当するのもこの民意の反映により人権を保障しようと原理に基づくものです。

 しかし、統治機構の原理には民主主義以外に自由主義があります。ここでいう自由主義は、権力が分立して互いに抑制均衡しあうことで濫用を防ぎ、もって個人の自由・人権を保障しようとする原理です。一番有名なのが立法権、行政権、司法権をそれぞれ別の国家機関である国会、内閣、裁判所が担い、互いに抑制均衡し合って権力の濫用を防ごうという三権分立ですが、権力分立は三権それぞれの内部でも細かく認められるものです。たとえば、国会には衆議院と参議院があり、抑制均衡し合っているのがその良い例です。

 政府の中に内閣法制局があり、時の政権から独立性を保ちながら、政府の有権的解釈を担っているのも、この憲法の自由主義の現われである権力分立の制度の一つです(内閣法制局は内閣の一部で裁判所ではないので、三権分立の制度と言ってしまうと間違いになる)。この権力分流によって、憲法解釈や法解釈を内閣(総理大臣)が恣意的に行えないようにして、個人の自由と人権を守っているのです。

 まして、集団的自衛権を行使できないという内閣法制局の解釈は半世紀もの間維持され、この間、何度も政府の答弁書でも行使することは憲法に反するとされてきた大事な憲法解釈です。安倍首相がこの解釈を変えようとするのに、歴代の内閣法制局長官が何人も反対の声を上げたのも無理はありません。

 安倍首相は、自分は内閣総理大臣だから、憲法解釈も最後は自分が決めると見えを切りましたが、それは内閣法制局に独自性を認めた権力分立、ひいてはそれによって人権保障をしようとする立憲主義に真っ向から反する考え方なのです。今回のように、内閣法制局長を都合のいい解釈をしてくれる人物に変更して、憲法解釈を変更しようとするのも、同様に権力分立に反する行為です。安倍首相がやろうとしている集団的自衛権の解釈変更はそれ自体が憲法から到底導き出せない解釈であるばかりでなく、手続きも権力分立違反という違憲の行為なのです。

 つくづく、日本国憲法の危機としか言いようがありません。それは、ひいては、集団的自衛権行使の肯定により、戦争の危機につながるのですから、今が個人の自由と人権保障のためにも、日本の平和のためにも、今が勝負どころと言えます。安倍内閣の集団的自衛権の解釈改憲には断固として反対しなければなりません。

 

みんなの日本国憲法、大事にしたいですね。

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75 コメント

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Unknown (12434)
2014-05-04 04:59:25
大事にしたいというか、そもそも憲法なんて我々国民が政府に対して「お前らこれを守れ!」と命令するものですからね。
解釈改憲が許されるなら、内閣や政権政党が変わる度に解釈が変わってしまう可能がある。こんな状態は立憲主義が崩壊したとしか思えません。

だいだい去年あんなに96条改正(憲法改正要件の緩和)を強く主張していたにも関わらず、今年になって解釈改憲を求めるのはおかしいですよ。
めんどくさいから解釈を変更しよういうつもりでしょう。とんでもない総理ですよ安倍さんは。
返信する
分かりやすく教えてください (化け鯨)
2014-05-05 00:28:03
12434さんの仰りようだと憲法の解釈を変えると立憲主義が崩壊するとなっていると思います。

しかし、それならば世界の憲法の意識とはどういうものなのでしょう。世界で最多の憲法改正を行ったメキシコは約400回以上、永世中立で知られるスイスも約160回以上、威張っているアメリカも約25回以上、お隣韓国も約6回の改正を行っています。韓国に至っては国の体制や方針が大きく変わるような改正の仕方をしています。これらの国が立憲主義を旨としていないのならば別にいいのですが、それだと憲法の意味がないような気がします。
「憲法は権力者を縛り国民から政府への命令」がなければ国は成り立つのでしょうか?

憲法は一体何なのでしょうか?
日本のように約60年も同じ憲法でいる国もあればメキシコのように約400回も改正をしている国もある。

メキシコのような国は国民が立憲主義を放棄したのでしょうか?そうでないとするならば日本人の憲法に対する考え方が違うのでしょうか?

阿呆な質問ですが何卒よろしくお願いします。
返信する
解釈変えたっていいじゃない! (吏卒)
2014-05-05 01:51:53
日本国憲法は、改正にあたり通常の法律の立法手続よりも厳格な手続を必要とする硬性憲法で、メキシコは通常の法律の立法手続レベルで改正できる軟性憲法だからでしょ!
自衛隊はどう見ても違憲以外の何ものでもでもないと思うけど、最高裁は、統治行為で逃げ、国民や政治家は必要と認めつつ・・・改正手続から逃げ・・・。
 憲法の解釈を内閣法制局に依存していること自体がそもそも日本が立憲主義の道を踏み外しているって証明なんだから、今に始まったことじゃないんだから、今さら、内閣法制局がどう解釈を変えたってどうでもいいじゃない!
 それより、米国が攻撃された場合、日本も自動的に戦争に巻き込まれるっていっているけど、現実的に、「太平洋を米国と中国で山分けしよう」とか、「日本を攻撃するぞ」とか「沖縄は中国の属国だった」とか、国の幹部がマジでの賜っている中国と対峙している現在、第一番に交戦状態になるのは米国でなくて日本だよ!
 集団的自衛権に反対している人たちは、その時、どうすべきと考えているの?素直に無抵抗で、されるままと考えているの?
 
返信する
Unknown (12434)
2014-05-05 03:28:34
>化け鯨様

憲法の改正は、憲法の条文の規定に基づいて行うのなら問題はまずありません。それらの国はそうした公平な改憲をしてきたはずです。それは立憲主義が崩壊しているとはいえないでしょう。

しかし安倍総理が今やろうとしているのは、憲法破壊の試みになると思います。どう考えても、今の9条が集団的自衛権の行使を容認していると解釈はできません。内閣がその解釈を都合良く変更できるのなら、憲法で改正要件を規定する意味がないですよ。
去年の96条の改悪狙いもひどかったですが、今回はさらに悪質です。「改正要件を緩和して憲法を国民側に取り戻す」と強く主張していたにも関わらず、反発が高まって実現が無理だと思ったから、今度は解釈を変更というのですからね。

あと、これも参考なると思いますのでどうぞ。http://www.kanaloco.jp/article/63143/cms_id/62934
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Unknown (12434)
2014-05-05 06:54:47
ちなみに厳密にいうと、憲法の解釈変更自体が全く許されないということはないと思います。
例えば「公共の福祉」の解釈とかね。これは人権同士の衝突の調整だけでは説明できないようです。実際公正な選挙や裁判を実現するために、人権を制限するものありでしょう。もっとも、「人権同士の衝突の調整以外による人権制約」については、より慎重な姿勢が求められます。公益という理論を濫用させてはいけませんから。
日本の憲法学者には、公共の福祉を前者だけに限定しようという方が多いようですが、後者なども含めるべきだという方もいるわけです。恐らくは、昔から憲法学者や弁護士などの間では議論の対称になっていたのでしょう。

こう考えると、憲法の解釈変更自体が例外なく全く許されないことは、まあないですね。公共の福祉については客観的に見て、そうした解釈もできた概念だからでしょう。
しかし、今の9条で集団的自衛権の行使の容認はどうやっても解釈できません。客観的に見たらアウトです。
返信する
なるほど (化け鯨)
2014-05-05 10:24:30
個人的な質問に真摯に返答していただいてありがとうございます。
参考サイト見せていただきました。とても参考になりました。「護憲的改憲派」良い響きです。
「憲法は権力者を縛り国民から政府への命令」というスタンスである憲法を民意を問わずに改憲するのは反則かもしれません。
参考サイトにも書いてあったようなしっかりとした手続を踏んだ上で改憲なり解釈変更を行った方がいいですね。
しかし、つくづく思ったのはアメリカって嫌な国だということです。確かにいい所もありますが、あの国のせいで日本はこんなにも悩まされるだと思いました。

返信する
Unknown (12434)
2014-05-05 13:22:06
>吏卒様

日本人は今まで憲法について無関心でした。だから反省すべき点は多いです。今の日本が立憲主義の崩壊した状態なら、これから一緒に立て直していきましょう。

アメリカとはしたたかに付き合わないといけません。集団的自衛権の行使を日本が認めなくたって、アメリカは日本列島を守ってくれますよ。日本が中国にとられたら、太平洋はアメリカのものじゃなくなってしまう。我々がもし仮に無抵抗だったら(もちろんそんなことはありえませんが)、彼らは日本を占領してでも日本を中国から守ろうするでしょう。
それでもアメリカが、「日本は集団的自衛権を認めないと中国から守ってやらないぞ!」みたいな態度をとるのはあたりまえです。その方が自分たちに利益になるからです。

だいたい外国との関係なんてどこもドライです。アメリカに簡単に譲歩することは、中国や北朝鮮に簡単に譲歩するのと変わりません。
ホワイトハウスの高官などが、日本の憲法学者に会うと「日本はいつになったら米国と一緒に戦争に参加してくれるのですか?」とか話してくるようですし、同盟国とはいえあまり信用しすぎてはいけませんよ。

海外派兵は国家の命運に関わる大問題です。かつて小泉政権下では自衛隊がイラクに派兵したことがありましたが、その後報復として日本人が海外で殺された事例もあります。ならば簡単に海外派兵できない条件を憲法に定めるべきです。
だから今回の解釈改憲は断固反対です。
返信する
Unknown (平和に生きたい)
2014-05-05 19:43:49
アメリカより日本が中国から攻撃されるって。
その時に無抵抗と言うのが集団的自衛権を行使しないとと言う意見はおかしいですね。
日本が直接攻撃されたら個別自衛権で戦うのでしょう。
最も日本を直接中国が攻撃するとは思えません。
中国がもし日本を攻撃した時にアメリカが日本を守るというのも幻想でしょう。
アメリカに一番金を貸しているのは中国です。
金ずると戦争を行ってアメリカに何の利益があるのでしょう。
もう、国家同士の戦争と言うより
巨大企業の利益争いが戦争のもとになっている時代です。
昔だったらトヨタの利益は日本の?利益に直結していましたが
今やトヨタは700万台日本以外で生産し日本では300万台になっています。
日本の(?)経団連会長だった御手洗さんキャノンの株主は日本人が50%切っていて日本の政治家、政党の政治献金ができなかった。(笑)
アメリカの大企業もそうでしょう。
アップルのスマートホンだってアメリカでは作っていません。
エナルギーの巨大企業のセブンシスターズだってどこに生産拠点があるの
アメリカの軍事産業は何処が顧客ですか。
そこを考えないで
いつまでも領土だとか言っていると
自分が何をしているか分からなくなりますよ。
通貨の発行権だってビットコイン等発行国が無い通貨があちこちにできてきている。
昔みたいな形の戦争は起きない。

日本がアメリカの言いなりで集団的自衛権をって言い出したら
アフリカや中東で海軍、空軍はアメリカ軍で地上軍は日本の自衛隊。
直接殺したり、殺されたりするのは日本人でしょう。
自民党の石破さんはその時に軍法会議を設けて
戦争に行きたくないと脱走兵になった人は最高刑の死刑だと言っています。
集団的自衛権を言っている人は殺す覚悟と殺される覚悟がありますか。
戦争しないという憲法があるから戦地に行きません。
中国ともアメリカとも上手く外交を行って手玉に取るのが日本政府、外務省の役割でしょう。
相手が強気にでたらこっちも強気でっていうのは
不慮の事故のもとです。
中国だって戦争はしたくはないのです。
戦争をしたいと思っているのはアメリカの軍事産業でしょう。
返信する
「積極的平和ぶち壊し主義」 (安晋 闇)
2014-05-09 19:54:32
集団的自衛権は、そもそも「自衛」ではない。日本を、アメリカと共に戦争が出来る国にするための口実、詐欺の言葉にすぎない。

憲法解釈で、集団的戦争権を容認することが可能だなんて、あまりにも国民をバカにしている。


【憲法九条】
 ・一項: 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
・二項:前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない


この条文を読んで、憲法解釈だけで集団的自衛権を認めて、アメリカと共に戦争を出来る国にするなんて、それは「解釈」とは言わない。憲法の「歪曲」だ。

それから安倍晋三の言う「積極的平和主義」の本当の意味するところは、アメリカが起こしたイラク戦争やベトナム戦争のような戦争に日本も参加すると云う事ではないか。これでは「積極的平和ぶち壊し主義」ではないのか。

こんな滅茶苦茶な「解釈」や「歪曲」が、この世の中でまかり通るのであれば、殺人や強盗、強姦などの凶悪犯罪だって、「解釈」で自衛だとか合意していたなどと、いくらでも理由をつけて無罪に出来る事になってしまうのではないのか。

先日の日赤医療センターの医師が起こした事件(下のリンク先)の供述を正当化するバカはいないのに、なぜ安倍晋三たちの憲法歪曲については、平気で正当化するバカが専門家として大手を振っていられるのだろうか。

【日赤医療センターの医師逮捕、性的暴行加えた疑い】
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20140509-00000006-jnn-soci

なぜ、このような狂った事が許されているのか。これを狂ってると思わない奴がいること自体が本当に不思議だ。
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例えが大間違い (時々拝見)
2014-05-10 17:04:05
 日本もしくは日本人が攻撃されたら…に対する自衛は、個別自衛であって集団自衛権とは全く別のものです。
権利と義務は表裏一体不可分の存在ですから、集団自衛権=集団被攻撃義務です。
 地球のどこかで、一方的に国家を名乗り、アメリカに宣戦布告した集団があったら、当然、海外の日本人も攻撃対象とするでしょう。軍事上の常識です。解らないのは、相当の平和ボケか権力ボケの人だけでしょう。
 戦後ですが、井上成美は、国軍の本質は日本の独立の擁護であり、他国との軍事同盟はこれに反し、まして、他国の戦いに自動的に馳せ参じるがごとき条約は絶対に不可とし、あの条約に反対したと述べています。
 米内光政に至っては、あの時代に国防も過ぎれば亡国と言ってます。予言は的中してしまいました。
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