紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー」有栖川有栖編

2005年04月25日 | あ行の作家
同じく、今度は“鉄道ミステリ”を集めたアンソロジーです。
鉄道ミステリーというと、時刻表とにらめっこするアリバイものを
想像しますが、そういった作品は、実は少なかったのです。
しかも、先の作品が“本格”ならば、今回は“広義のミステリー”と
いった感じ。ホラーや怪談、幻想小説っぽいものも多いのです。
で、こっちはこっちですんごい面白い。印象に残る作品が多いのです。

中でも面白かったのが「高架殺人」ウィリアム・アイリッシュ。
疲れた体を引きずるようにして帰宅する刑事が、高架を走る電車の
中から、窓の外で繰り広げられている“人生ドラマ”を何気なく
見ているとき、反対側の座席に座っていた男性が何者かに撃たれる。
頭の回転は速いのに、動きは信じられないくらい遅い刑事が、
やりたくないのに、関わってしまったが最後、その事件解決に乗り出す。
というような話。登場人物たちがとても愛嬌があって、ついっと
物語に引き込まれていきます。しかも、とろいはずのこの刑事が、
むちゃくちゃカッコよく見えるから不思議さー(笑)。
作者の名前だけは聞いたことがありますが、作品は未読。
でも、こんな感じの作品ならば、長編も読んでみたいと思います。

ほかにも、江坂遊のショート・ショート3作がいい味を出してますし、
アリスと上田信彦が2人で書いて上演された舞台のシナリオ「箱の中の殺意」
も収録(なんだかどこかで聞いたことのあるタイトルですが(笑))。
私には犯人はサッパリ分かりませんでしたが、かなり楽しみました。


有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー」有栖川有栖編(角川文庫)

「有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー」有栖川有栖編

2005年04月25日 | あ行の作家
アリスの編むアンソロジーは私、とても好きなんですよね。
アリスはミステリ作家でありながら、当然ミステリ好きでもあります。
そして何より、いつも私のようなミステリー初心者の目線に立ってくれる、
というのが嬉しいじゃないですか(^-^)。解説は初心者にも分かりやすく
丁寧だし、親切にも自分の思いのたけを“書きっぱなし”にしない。
だから、いくら目次に知ってる作家がいなくても、安心して読めるのです。

実は、どの作家さんも知らない人ばかり(笑)。唯一、つのだじろうは
名前だけは知ってました。古い作品が多いのですが、これが面白い。
普通なら、どうしてもトリックはどこかで見た感が否めないものなのですが、
どれも新鮮! もちろん、読み終わった後で考えてみると、やっぱり
違う作品で見たことがある、とも思うのですが、ホント、見せ方一つで、
こうも面白くなるのか、ということがよく分かりますね。
そういった意味で面白かったのが「逃げる車」白峰良介と、
「「わたしく」は犯人…」海渡英祐。「五十一番目の密室」ロバート・
アーサーも楽しみました(^-^)。


有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー」有栖川有栖編(角川文庫)

「御手洗潔の挨拶」島田荘司

2005年04月25日 | さ行の作家
元祖・破天荒な探偵(笑)の、やっぱり破天荒な
4つの物語が収録されています。御手洗の短編は初めてでした。

以前から「数字鍵」はいい、という話は聞いていたのですが、
とてもシリアスな御手洗が拝めます。これまで(とはいっても、
占星術殺人事件」と「斜め屋敷の犯罪」しか読んでないのですが)
とは違った一面、正義感に溢れていたり、とても優しかったり。
最初の方は、やっぱり榎木津を彷彿とさせるのですが
(どっちが先だか^^;)、ちゃんと“推理する”ってところが違う(笑)。
そしてですね、実はここに、御手洗がコーヒーを飲まない理由が書かれて
あるのです。くぅー。切ないねえ(>_<)。

そして何より、短編なのに、トリックが壮大なところが
嬉しいじゃないですか(^-^)。やっぱり御手洗モノは
素晴らしく面白いなあ、と実感したのでした。

あと、最後に「新・御手洗潔の志」という島田さんの文が
載ってまして、ここに、なぜ御手洗作品が映像化されないのか、
ということについて書かれてありました。ひと言で言ってしまえば、
島田さんと製作者側の“日本人観の違い”だそうです。
御手洗潔がああいう態度・行動を取るのは何故か。そこの部分を
きちんと理解した上で映像化してもらえないと、御手洗は、
ただの尊大な人になってしまう。それを避けるために、
きちんと理解してくれる製作者が出てこない限り、OKしない。
というようなことが書かれてありました。納得ですね。
そういうことを踏まえた上で御手洗作品を読んでいくと、
これまでとはまた違った感じ方ができるんじゃないかと思います。


御手洗潔の挨拶」島田荘司(講談社文庫)