紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「作家の犯行現場」有栖川有栖

2005年04月05日 | あ行の作家
雑誌「ダ・ヴィンチ」で掲載されていたアリスのエッセイ
「ミステリー・ツアー」をまとめた単行本が文庫になりました。
(ややこしや(笑))
ミステリーの舞台となった場所を訪れる、という企画なのですが、
“この作品のここ”というピンポイントなものではなく
(場合によってはそれもあるけど)、ここを舞台とした作品には、
こんなものもありますよ、と思いっ切り間口を広げてくれている
あたりがなんともアリスらしい(^-^)。私のようなミステリー
初心者にとって、とても良いガイドとなる1冊ですね。
しかも、合間に短編が挟まれているのがまた嬉しい。
旅情を誘う、というと変ですが、エッセイを読んで気分が
盛り上がっている、その気分のままで読めるのがいい。
思うに、きっとアリス自身も盛り上がった気分のまま
書いた作品なんでしょうね(笑)。

今回、より嬉しく思ったのは、私の馴染みの場所が多かったこと。
中でも、横溝正史がよく使った瀬戸内の島々は私にとって、
故郷同然ですからね(^-^)。ただ、私は横溝正史とは反対側から
見てきたわけで、その瀬戸内の島々に対する“思い”にギャップが
感じられて、それがまた面白かった。ほかにも、乱歩ゆかりの地や、
明石大橋のアンカレイジ、「霧越邸」(これは未読)の舞台などを、
アリスの目で見て伝えてくれる、というのがアリスファンには
たまりません(笑)。いやいや。それにしたところで、やっぱり
アリスの解説はとても親切で適切で、しかもくすぐりが上手い。
…と思うのですが。


「作家の犯行現場」有栖川有栖(新潮文庫)