作文小論文講座

苦手な作文を得意に。小学生から受験生まで、文章上達のコツを項目別に解説。作文検定試験にも対応。

作文コーチング ~作文の書けない生徒~

2009-07-02 | 作文
 作文は、他の勉強よりも心的要素が大きく関わっている勉強です。さらに、評価のむずかしい勉強でもあります。算数のように、「テストで100点を取れるようにがんばりましょう。」とか、「不正解だった問題は、しっかり復習しておきましょう。」という具合にはいかない勉強です。作文とは、一人一人の個性を表すもの、さらに言えば、大袈裟かもしれませんが、その人自身を反映するものです。だからこそ、細心の注意を払って、丁寧に指導していく必要があります。

 教室に体験学習に来る生徒の中には、ときどき、作文が全く書けない生徒がいます。文字は書けるのですから、作文を書けないわけはないのですが、作文用紙を前に、鉛筆を動かすことのできないのです。そのような生徒は、決まって、何を書けばいいのかわからないと言います。最初から何も書けなかったわけではないと思います。書いたものを何らかの形で否定されたために、自分は作文が下手なのだと思い込み、自信を失って、作文に拒絶反応を示してしまうことがほとんどです。

 このような場合は、「今日のこと」という題名で、とにかく文を書かせます。低学年であろうと高学年であろうと関係ありません。「先生が言うとおりに書いてね。」と言って、「ぼくは、今朝7時に起きました。顔を洗って、着替えてから、朝ごはんを食べました。」という具合にこちらで一つずつ文を言いながら書かせます。「朝ごはんは、パンと卵焼きでした。」と言った後、「卵焼きはどんな色だった?」と聞くと、「黄色。」と答えます。「ほかに黄色いものは何かあるかな?」と聞くと、「菜の花。」などと答えます。そこで、「卵焼きの色は、まるで菜の花のような黄色でした。」と書かせ、「ほら、まるで菜の花のようっていうたとえが使えたよ。すごい!」とほめます。

 生徒は驚きます。「え? こんなのでいいの?」という顔をします。そして、また文を言いながら、続きを書かせます。最初から長く書かせる必要はありません。数行でよいのです。最初は、何も書けないと言っていた生徒が数行も書けたのですから、これはすばらしいことです。「わあ、こんなに長く書けたよ。」とほめると、とてもうれしそうな顔をします。

 こういうことを何度か繰り返していると、生徒は、自分は作文が苦手ではないのかもしれないと思い始めます。そして、だんだんと自信をつけていくのです。作文指導は、最初が肝心です。作文に限ったことではないと思いますが、自信がつけば自力でがんばれるようになります。そこまでの過程は、焦ることなく、ていねいに進めていく必要があります。生徒の様子を見ながら、もう少し書けそうという手前でストップしてほめるのがコツだと思います。先生が言った文をただ書くだけというのは、生徒本人の作文にはならないのではないかなどと考える必要はありません。作文が苦手な生徒の場合、最初の目標は、自分の作文を書くことではなく、作文に対する敷居を低くすることなのです。

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