作文小論文講座

苦手な作文を得意に。小学生から受験生まで、文章上達のコツを項目別に解説。作文検定試験にも対応。

意外性と調和

2008-11-10 | 作文
 山場のない野球の試合を観戦するのが面白くないように、予想どおりに展開していくストーリーは、読む人を飽きさせます。意外な展開があるからこそ、人はそのストーリに引き込まれるのです。作文も同じです。もちろん、慣れるまでは、出来事を思い出して順番に書いていくだけで構いません。でも、少し余裕が出てきたら、「意外な展開」ということを念頭に置いて書いてみましょう。

 意外な展開と言っても、奇抜なことを書く必要はありません。流れを少し変えればよいのです。「前の話・聞いた話」を作文の中に取り入れるのがそのよい例です。最近の出来事を書いた後に、自分の幼いころの話や両親など自分以外の人の話を入れることによって、作文の次元を少し変えるのです。そうすると、今とは違う昔の話、筆者ではなく別の人を主人公にした話に流れが変わるので、読む人は視点を変えて読むことになります。これが作文における意外性です。「起承転結」という言葉を聞いたことがあると思いますが、「転」が、この作文における意外性に当たる部分です。

 このよう考えると、「前の話・聞いた話」をおろそかにすることはできません。この部分こそが作文の面白さを決めるキーポイントとも言えるからです。その前に書いた内容からは想像できないような話が書ければ成功です。そのためには、書き手自身が自分の視線を変えることも必要です。「たぶん、幼い自分はこう考えていたのだろう。」、「このとき、お父さんはこんな気持ちだったのではないだろうか。」など、昔の自分に戻って、また、お父さん、お母さんなど、別の人の立場に立って考え、感想を書いてみるのもよいでしょう。

 「転」の部分で大いに盛り上げたからと言って安心してはいけません。最後の「結」でこれまでの話をうまく総括することが大事です。これまで書いてきた内容をここでうまく調和できるかどうかが最後の腕の見せどころです。最後に意外性の正体を突き止め、今と昔の違い、あるいは共通点、自分と他の人との違い、または共通点を探り出し、まとめることができれば、一つの作品として調和した、説得力のあるものに仕上がるはずです。案ずるより産むが易し。面白い話を取材して、意外性と調和のある作文に挑戦してみてください。

長文暗唱の仕方と効用

2008-11-02 | 音読・暗唱
 言葉の森の通学教室では、10月から、授業の最初に長文暗唱のチェックをしています。最初は、課題集の3行分ぐらい、約100字の文章を暗唱します。たった3行の文章なのですが、細かい言い回しまで長文どおりに正確に覚えなくてはなりません。ですから、最初のうちは、覚えるのに苦労する生徒も少なくありません。

 早く覚えるためには、声を出して読むことが重要です。目で読むだけではなく、文字を目で追いながら、声を出し、自分の声を耳で聞きながら覚えます。このとき、文章の意味をとらえようとする必要はありません。最初の段階で、意味を考えてしまうと、かえって覚えにくくなるようです。

 もう一つ大事なことは、途切れ途切れではなく、すらすらと音読するということです。もちろん、初めて読むときは、どこで区切るかわかりにいこともあるでしょう。そんなときは、まずゆっくり読んで、文の区切りや流れを把握します。

 100字ぐらいの文章なら、だいたい20回の音読で暗唱することが目標です。覚えることに慣れたら、なるべく少ない音読回数で暗唱することを目標にすると、集中力を高める訓練にもなります。

 その一方で、一度覚えた文章を繰り返し空で言ってみるということも重要です。一度覚えてしまった文章なので、机に向かってする必要はありません。学校に行く支度をしながらでも、お風呂に入りながらでも、いつでもどこでも気楽にすることができます。

 こうして、毎日、3行ぐらいずつ暗唱すれば4日で400字の文章を覚えられる計算になります。そして、残りの3日で、4日間で覚えたそれぞれの文章の流れを復習します。そうすると、1週間で400字の文章を無理なく完璧に暗唱することができます。

 100字の文章の暗唱を繰り返していると、だんだん100字では物足りなくなってくるはずです。そんなときは、一度に覚える量を少しずつ増やしていきましょう。もちろん、最初から欲張る必要はありませんが、一日に覚える量を、150字、200字というように増やしていけば、1週間で覚える長文の量もぐんと増えていきます。

 長文暗唱は、国語的な能力を高めるために非常に有用です。むずかしい語句の使い方や高度な言い回しを自然に身につけることができます。同じぐらいのレベルの他の文章も抵抗なく読み取れるようになるでしょう。また、適切な語彙を使ったリズム感のよい文章が自然に書けるようになります。

 しかし、長文暗唱の効果はそれだけではありません。長文暗唱を繰り返すことによって、教科の枠を超えた潜在能力を高めることができるのです。まず、覚えることが苦にならなくなります。暗記のコツが身につくので、当然、記憶力がよくなります。さらに、記憶したものを材料として、創造的思考の幅が広がります。

 確かに、地道な作業の繰り返しは、決して楽ではないかもしれません。でも、一日のうち約10分間を費やすだけで、眠っている能力を開発できるとしたら、やってみる価値は十分にあると思います。興味のある方は、是非挑戦してみてください。