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バスは唐招提寺の目の前で降ろしてくれた。
意外だが参道もなく、いきなり正門と言うか山門が歩道に面していた。
回りもやってるかどうかわからない店が一軒。
道に迷ったら聞くところも無い感じ。
ただ、ほのぼのとした風景なので心は和む。
常々、思っていたのだが、お寺は門とかあって、時間によっては閉まってて入れない所も多い。
しかし、神社は鳥居はあるものの、よっぽどで無い限り境内は自由に出入り出来、子供たちのもっぱらの遊び場で、とても開放的だ。
この違いは何なんだろうか?
神社は日本古来の宗教で八百万の神といった自然万物に神様が宿ると考えた日本人独特の宗教観から隔たりを作っていないと言うことなのか?
そして、仏教は外来だから、若干の閉鎖性が生じるのか?
そんなことを思いながら、唐招提寺の南大門にある受付で拝観料を払い入門。
■唐招提寺 境内図
http://www.toshodaiji.jp/about_garan.html
そして、この南大門から金堂を臨んだこの風景が平成の大修理の棟梁が観た景色である。
なんとも言えぬ感慨深さである。
平成の大修理では熟練の棟梁達が若手を率いて施工に当たるが、機械に頼って測定をするのを叱りつけるシーンなどは印象的だ。
そこには伝統を伝えることの大切さと、古えの先人の知恵の深さがあった。
最新の測定器の方が正確にカーブを導き出すように思う若手大工達だが、棟梁が手渡した木枠の型の微妙さには敵わない。
やはり、先人の知恵と技術が優るのである。
そして、そんな唐招提寺の屋根裏には何時の時代かの先人達の型などが残されて、言葉は無いけれども修復についての多くを語っている。
そして、今回、新たに造られた型等も日にちなどが墨書きされ100年、1000年先の人達へのメッセージとして、屋根裏へこっそりと置かれた。
いつの日かその型を見つけた大工さん達が先人の思いを繋いでいくのだろう。
伝統を受け継ぐってすごいなぁと思った。
今回、屋根の鴟尾(しび)も新しくされる。
大きさも大きいし焼くと縮むので、製作はとても困難を要するそうだ。
大昔は現代でも難しいものをいったいどうやって造ったのであろうか?
現代の技術をもってしても再現出来ないものがあるというのは本当に不思議だし、その技術の伝承がされていないことが悔やまれる。
高度成長も大切だが、技術を伝えることはさらにたいせつである。
■唐招提寺 平成の大修理
http://www.toshodaiji.jp/shuri_gaiyou.html
http://www.takenaka.co.jp/solution_manage/purpose/traditional/service07/index.html
■BS TBS #1~15 唐招提寺 平成の大改修 4000日の全記録
http://www.bs-tbs.co.jp/smp/genre/detail/episode/?mid=KDT1004400
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平成の大修理で新しく造られた鴟尾。
1000年先までその姿が残るといいなぁ。
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金堂の美しい屋根の反り。
棟梁たちの技の結晶の賜物だ。
まさに天平の甍が再び命を吹き返えしたようだ。
調べていたら、そんな棟梁たちの奮闘のドキュメンタリーが番組紹介文としても残っていた。
まさにこれだ。
■BS TBS
#13 「唐招提寺金堂~天平の技に挑んだ男たち」
国宝・唐招提寺金堂。1250年の歴史を誇るこの建物が危機に瀕していた。柱が内側に倒れ込み、軒が下がり、非常に危ういバランスで立っていた。阪神大震災を機にその恐れは身近なものになった。今度大きな地震が来たら、崩壊してしまうのではないか。1998年。全国でも数えるほどしかない「文化財保存課」を有する奈良県が立ち上がった。「金堂を救えー」。10年前のことだった。
何が、難しいのか。
伝統建築を直すには、伝統の方法が一番ふさわしい。しかしその「伝統の方法」というのは、どこかで途絶えてしまって、ない。いま、天平の建物を直すには、平成の科学、それも「最先端科学」でもってしか、挑めないのだ。
しかし、最先端であればあるほど、古代が遠ざかっていく。
今回挑戦した、3人の男たちは、そこにぶつかり、悩み、苦闘した。
一.文化財初の構造解析に、近代建築のプロ竹中工務店。
一.技の途絶えた「再建」に、松井・奥田両棟梁と大工たち。
一.初めてのしび作り、1200年もつ瓦制作に、山本瓦店。
日本初の制振構造の超高層ビルを設計した竹中工務店・長瀬が、1200年の建物を前に頭を抱える。金堂の力の流れがわからないのだ。しかしこの構造解析をクリアしなければ、再建に進めない。近代建築の文法で解けない謎はなんなのか。そもそも金堂には近代建築ではありえないモノがあった。「大虹梁」という、屋根の重さを流し、かつ、金堂の命・仏様の空間を支える構造物。この金堂の「大虹梁」は、なんだか奇妙だった。構造物として働いていないのだ。これを働くようにすればー。近代建築のプロが見つけた答えは、「金堂」という性格の前にあっさり否定される。ならばどうしたらいいのか。大虹梁であって、大虹梁でないものを、大虹梁とするー。古建築から近代建築へー長瀬の翻訳作業が続く。解析モデルを作り上げるまでの1年の苦闘を追う。
力の流れがわかったら、「再建」だ。
奈良の寺社の再建を一手に引き受けてきた奥田棟梁の戦いは、「ずれ」との格闘だった。20000点にも及ぶ、時代も大きさも微妙に違う巨大な部材をどう組み上げていくのか。一ミリの「ずれ」をも見逃さないレーザーを使っての計測に走る大学出の新米大工に棟梁が言ったのはー。「型を使え」。なぜ正確なレーザーでなく、「型」なのか。
「宇宙に行く時代になんでこんなに悩まなきゃあかんのやろ」
瓦師・山本が悩む。「天平の甍」を彩る瓦には、「軽減」が求められていた。重さと強さの相関関係。軽くて、しかし1000年もつ瓦をどうやって作るのか。瓦一筋60年。古都の名刹、皇居の屋根瓦をも手がけた瓦師が出した答えとは、「古代に戻る」ことだった。
2007年秋。
完成した金堂にミリ単位で建物の変動を測る精密計測機がもちこまれた。男たちの出した答えに、機械はどんな数字をはじき出すのか?10年の格闘が問われるその瞬間まで、カメラは追いかけます。
http://www.bs-tbs.co.jp/smp/genre/detail/episode/?mid=KDT1004400
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