英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

「老い」は楽しくもある

2010-07-05 | イギリス

デイヴィッド ロッジ「ベイツ教授の受難」


ベイツ教授は「言語学」の先生。極度の難聴で大学は早期退職。悠々自適の生活と思いきや、やり手の奥さんに少々遠慮した毎日を送っています。高性能の補聴器を両耳に付けてはいるが、反響の大きい場所では使い物にならないし、電池を買い忘れて肝心な時には聴こえないなど失敗談が自嘲気味に語られていきます。自身の「老い」も相当ですが、ベイツ先生のお父さんの「老い」もなかなかなもの。おしっこも近いし、ボケもかなり深刻です。なんとか環境の良い介護施設に入ってもらおうとベイツ先生、お父さんを説得しているのですが・・・。
これだけですとただの「老い」小説なのですが、ここに不思議な女子学生が絡んできます。うーん、このアレックスという女子学生、「遺書」をテーマに論文を書くのだと近づいてくるのですが、どうも最初から存在がイラつきます。よせばいいのにベイツ先生、このアレックスに押し切られる形で彼女の自宅を訪問するはめになっちゃうのですが。
読み始めのコミカルさ、アレックス登場後のやばさ、後半のシリアスな場面などなど、展開はけっこう面白いのですが。どこかバランスが欠けた印象が拭いきれません。何かがじゃまをしているのです。何かというと・・・・。そうだ、アレックスだ。彼女のエピソードが中途半端で全体の調和を乱しているように思えます。もっと彼女の「悪女」さを強く出すか、逆に徹底的に彼女に仕返しをするかすれば、もっと違った印象にもなったでしょうに・・・。そもそも彼女を登場させないほうが良かったかも。
家族が集うキリスト降誕日とボクシングデイの過ごし方は、日本のお正月とそれほど変わりませんね。
それと、言語学の知識(もちろん英語も)があれば、もっと笑えたのかも。
色々といちゃもん付けましたが、ちゃんと面白く、考えさせられるお話でした。







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