「謎の高額引き落とし事件 通帳ミステリーの真相に脱力した件」
おかーさんのために奔走するはずが
埼玉滞在中、私は決めていた。
「今回はおかーさんのために何かしてあげよう!」
今回のミッションは以下の通り。
* 誕生日プレゼントとしてランチをごちそうする
* 壊れた携帯カバーを直す
* ベッドの棚部分にカーテンを設置する
* 眼鏡店に連れて行き、眼鏡の微調整
そして…
* 通帳の謎の引き落とし事件を解明する
そう、この日のメインイベントは 「消えたお金の謎を暴く」 ことだった。
高額引き落としのナゾを追え
おかーさんが通帳を見ながら困惑していた。
「1月26日に高額な引き落としがあるけど、全然覚えがないのよね…」
おかーさんは 「全く心当たりがない」 と云い張っていた。
そこで、通帳に記載されている 謎のアルファベット&記号
「KD◯I‐〇〇‐〇〇」 を手がかりに調査開始。
調べてみると…
・固定電話?
・a◯Pay?
・a◯じぶん銀行?
どれもおかーさんには無縁らしい。
「これはもう直接ショップに行くしかない」
ということで、買い物ついでに所沢のショップへ。
見間違い発覚!そして新たなナゾが…
店員さんに通帳を見せると、衝撃の事実が発覚。
「これ、KD〇Iじゃないですね」
… え!?
よく見たら、「7bk00…」
完全に見間違えたーーーー!!!(恥)
おかーさんは、老眼。
私は、弱視。
ふたりで見えないくせに、眼鏡もかけないから
こういうことになる。
そして、何よりも、先入観があったのだ。
おかーさんは、この謎の引き落とし前日に、
a〇ショップで機種変をしていた。
その翌日の異変だったから、てっきりa〇絡みだと信じこんだ。
しかし、よく見たら、「7bk00」。
「やらかした。しかしだ、これなら調べ上げれば真相が暴ける」
かえって、いい方向へ転んでくれたので、
希望が見えてきた。
気を取り直して、今度は 「7bk00」の正体を追え。
調査の結果…
「これ、セ◯ン銀行のATMだ…」
「おかーさん、コンビニでお金を下ろしたり、送金したりした?」
「そんなはずない。だってコンビニでお金とか、下ろさないわよ」
でも、よくよく考えれば、
息子の不祥事で、彼女が何度もコンビニでお金を下ろしている事実を
私は知っている。
…覚えていないか、混乱しているか、どっちかなのでは?
そして、通帳に記帳された記号から、操作した店舗が明らかになった。
それは――、家から一番近い、コンビニだった。
つまり、カードを持ってコンビニ行き、
暗唱番号まで知っている人物が、お金を下ろした(操作した)?
しかし、さらに記号を探って行くと、
お金を受け取った先が、
何故か、愛知県〇〇市。
ここで、私の思考は完全に停止した。
頭の中で、色んな仮説が乱立し、
最も可能性が高い、推論。
我が娘が、絡んでいる?
何故なら、おかーさんの近辺で、愛知県〇〇市に住んでいるのは、
娘しかしない。
それは、つまり。
何らかの事情でお金に困った娘が、
私には相談できず、おかーさんを頼った。
あの大金を受け取って、おかーさんは(何故か)その事実を忘れてしまっている。
それしか、考えられない。
だって、愛知県って。
〇〇市って。
確定やん…。
「――終わった」
身体が、震えはじめた。
ついに、我が娘まで、ばあちゃんに金銭の要求をするようになってしまったのか?
一体、何があったんだ?
でも、真面目に働いて、無駄遣いもしないはずのあの子が、
…信じられない。
しばらく震えていたが、意を決して、
私は、おかーさんに事実を伝えた。
結果報告。
1月26日、最寄りのコンビニより、カードを使って〇〇万を、
愛知県〇〇市在住の人間に送金。
「本当に、覚えがないの? 送った相手だけど、それって」
その時、おかーさんが、突然、主張を覆した。
「ああ、思い出したわ。それ、兄ちゃん(長男)よ!」
私は全く知らなかったのだが、
兄ちゃんこと、私の元旦那が、今、愛知県〇〇市に移住しているらしいのだ。
それは、以前私が、
「もう彼のことは聞きたくないので、話さないで欲しい」
とお願いしていたので、おかーさんは話さなかったことなので
仕方がないことだった。
真相。
あちらに引っ越した彼が、就職に行き詰まり、
おかーさんは、生活費を送金した。
そして、その事実を、すっかり忘れていた。
勝手にドラマチックな展開を想像した結果
私もおかーさんも、最悪のケースを色々考えてしまい、
「もしかして不正引き出し!?」
「誰かが暗証番号を知ってるのか!?」
と、無駄にサスペンスを繰り広げていたけど、
最終的に出てきた答えが 「息子への仕送り」。
…いや、記憶の片隅にもなかったんかい!!
そんなこんなで、無事に謎が解け、
おかーさんも私も 「なんだよ…」 と力が抜けた。
そして、もう最後は 笑うしかなかった。