〔ALSの夜〕
夜ってか、明け方。
3時に携帯が鳴る。父の部屋からだ。
トイレか…!
だが、眠薬がよく効いていて、意識は朦朧。
足はなんだかこんにゃくみたいで、
階段を下りるのに必死。
部屋に行くと「悪いな…かつはもう二回も起こしたから」
なんと夜中の三回目のお小水。
ベッドから車椅子に移動させるのに、
手足全く力が入らない。
父を床に落としてしまった。
もうどうにもこうにも、力が入らず、
意識は朦朧としたまま。
すまないと思いながら、妹を呼び、
二人がかりで移動に成功。
用が済んだらまたベッド。
私はそのまま七時まで寝なおしたが、
妹はもう一回呼ばれたそうだ。
流石に四回目となると父もきがとがめて、
もうベッドには移らなかった。
朝、車椅子の上で、ウトウトしていた。
今日はことさら手が重いらしく、
朝食も食べきれなかった。
私が手伝うっていうのに、「いらない」…
さぞ、辛かろうな。
今日が旗日で助かったと妹は言う。
午前中、眠りはとれたし、…、
でも、これが連日となったらどうしよう…。
午後、訪問リハの先生が来たので、
明け方の惨状を訴えた。
尿意はまだ止まらず、昼すぎまで16回くらい?
寝たまま用を足せる方法はあるものの、
父は受け入れがたい様子だった。
妹も今日一日のことでもう「限界」宣言しちゃったし、
本当、先のこと考えると胸が苦しくなる。
っていうか、本心を言うと、
妹が「自分は仕事あるから」って、夜の介護も私に投げてきたら、
どうしようって想いです。
ふたりで頑張るってなら勇気も持てるけど、
昼間のように、夜もお任せになってしまったら…!
どうしよう。
安定剤も、眠剤も飲めなくなってしまう。
というか、正常な眠りをとれなくなるという不安。
夜が何より恐ろしい! どうしよう!!
夜が恐い!!
ALSの患者さんの介護をしているひとの苦労というものは、
想像を絶するもの。
父はまだ尿意だからいいほうです。
失敗したところで、死んだりしない。
でも、呼吸器の痰の吸引、体位の調整にまで至ると、
生死に関わることだから、
間に合わなかったでは済まされない。
きっと、日常生活を送るのは困難…
家族の力だけでは不可能という言葉の意味が、
少し判ったような気がします。
これをひとりでこなすなんて、無理よ…(泣)
リハの先生が教えてくれた尿器は、
今使っている安楽尿器とちょっと違って、
「コンドームタイプなんです」と爽やかに言われた。
コンドっ…!
思わず言葉を飲みこんでしまった私でした。
「これをインケイにあらかじめはめておくんです」
自分でハメラレなかたらどうするんですか?!
私ができるかできないかにかかってきますよね!
無理だと言ったら?
無理だと言ったら?
結局、その尿器のサンプルは来週持ってきてもらうことに。
先生が去ったあと、
しばらく、放心状態でした(泣)。
〔こんな時に降臨〕
小説のネタというものは、
私の場合、ひねりだすものではなくて、
雷のように頭に落ちてくるものでして、
昨夜、夕飯を作っていたら急に、
「これは書かなくては」と強迫観念に駆られるようなネタがひらめき、
うわあああ、どうしよう、重すぎる!!!
と、頭をかかえたものの、
あっという間に、起承転結転が頭のなかで整理されていった。
この現象を、コウリンと呼んでいる。
そして、書かねばならないという、
激しい衝動。
父から眼をそらすようにPSを立ち上げ、
怒涛の勢いで調べものをして、
なんか、
そんなことしてたら、
ALSのこと知りたいと思って情報集めたときは知りえなかった事実、
ALSの厳しい現実が次々暴かれていって、
もうね、
私、父の病気ネタになにを書くつもりだ?って、
正気の沙汰じゃないって泣きたくなった。
書きたくない。
考えたくないのに、物語は構築され、
いろんな扉が次から次へと開かれてゆく感じ。
オカルトだ、まさに。
なんかとんでもないものにトリツカレたような、
この嫌な感じ。
ALSなんて、もういや!!
なんで家族がこんな目に遭わなくちゃならないの!?
哀しみと、恐れと絶望が、
それこそ父が味わっている絶望が、
今度こそ本当に、
介護の側から、見えたような気がした。
夜ってか、明け方。
3時に携帯が鳴る。父の部屋からだ。
トイレか…!
だが、眠薬がよく効いていて、意識は朦朧。
足はなんだかこんにゃくみたいで、
階段を下りるのに必死。
部屋に行くと「悪いな…かつはもう二回も起こしたから」
なんと夜中の三回目のお小水。
ベッドから車椅子に移動させるのに、
手足全く力が入らない。
父を床に落としてしまった。
もうどうにもこうにも、力が入らず、
意識は朦朧としたまま。
すまないと思いながら、妹を呼び、
二人がかりで移動に成功。
用が済んだらまたベッド。
私はそのまま七時まで寝なおしたが、
妹はもう一回呼ばれたそうだ。
流石に四回目となると父もきがとがめて、
もうベッドには移らなかった。
朝、車椅子の上で、ウトウトしていた。
今日はことさら手が重いらしく、
朝食も食べきれなかった。
私が手伝うっていうのに、「いらない」…
さぞ、辛かろうな。
今日が旗日で助かったと妹は言う。
午前中、眠りはとれたし、…、
でも、これが連日となったらどうしよう…。
午後、訪問リハの先生が来たので、
明け方の惨状を訴えた。
尿意はまだ止まらず、昼すぎまで16回くらい?
寝たまま用を足せる方法はあるものの、
父は受け入れがたい様子だった。
妹も今日一日のことでもう「限界」宣言しちゃったし、
本当、先のこと考えると胸が苦しくなる。
っていうか、本心を言うと、
妹が「自分は仕事あるから」って、夜の介護も私に投げてきたら、
どうしようって想いです。
ふたりで頑張るってなら勇気も持てるけど、
昼間のように、夜もお任せになってしまったら…!
どうしよう。
安定剤も、眠剤も飲めなくなってしまう。
というか、正常な眠りをとれなくなるという不安。
夜が何より恐ろしい! どうしよう!!
夜が恐い!!
ALSの患者さんの介護をしているひとの苦労というものは、
想像を絶するもの。
父はまだ尿意だからいいほうです。
失敗したところで、死んだりしない。
でも、呼吸器の痰の吸引、体位の調整にまで至ると、
生死に関わることだから、
間に合わなかったでは済まされない。
きっと、日常生活を送るのは困難…
家族の力だけでは不可能という言葉の意味が、
少し判ったような気がします。
これをひとりでこなすなんて、無理よ…(泣)
リハの先生が教えてくれた尿器は、
今使っている安楽尿器とちょっと違って、
「コンドームタイプなんです」と爽やかに言われた。
コンドっ…!
思わず言葉を飲みこんでしまった私でした。
「これをインケイにあらかじめはめておくんです」
自分でハメラレなかたらどうするんですか?!
私ができるかできないかにかかってきますよね!
無理だと言ったら?
無理だと言ったら?
結局、その尿器のサンプルは来週持ってきてもらうことに。
先生が去ったあと、
しばらく、放心状態でした(泣)。
〔こんな時に降臨〕
小説のネタというものは、
私の場合、ひねりだすものではなくて、
雷のように頭に落ちてくるものでして、
昨夜、夕飯を作っていたら急に、
「これは書かなくては」と強迫観念に駆られるようなネタがひらめき、
うわあああ、どうしよう、重すぎる!!!
と、頭をかかえたものの、
あっという間に、起承転結転が頭のなかで整理されていった。
この現象を、コウリンと呼んでいる。
そして、書かねばならないという、
激しい衝動。
父から眼をそらすようにPSを立ち上げ、
怒涛の勢いで調べものをして、
なんか、
そんなことしてたら、
ALSのこと知りたいと思って情報集めたときは知りえなかった事実、
ALSの厳しい現実が次々暴かれていって、
もうね、
私、父の病気ネタになにを書くつもりだ?って、
正気の沙汰じゃないって泣きたくなった。
書きたくない。
考えたくないのに、物語は構築され、
いろんな扉が次から次へと開かれてゆく感じ。
オカルトだ、まさに。
なんかとんでもないものにトリツカレたような、
この嫌な感じ。
ALSなんて、もういや!!
なんで家族がこんな目に遭わなくちゃならないの!?
哀しみと、恐れと絶望が、
それこそ父が味わっている絶望が、
今度こそ本当に、
介護の側から、見えたような気がした。