多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

許すな!環境破壊と歴史偽造

2008年05月05日 | 集会案内
4月29日午後、恒例の反「昭和の日」4.29行動が文京区民センターで開催された(主催 反天皇制運動連絡会など8団体)。2006年まで4月29日は「みどりの日」(現在は5月4日)、昭和天皇が死んだ89年まで天皇誕生日だった。そこで、7月の北海道洞爺湖サミットを前にした今回のテーマは「許すな!環境破壊と歴史偽造」、日本の戦争責任とグローバリズムが破壊する地球環境や食品の安全性について2人の講師からお話があった。

●日本の戦争責任・歴史認識問題と「過去の克服」――沖縄戦・「慰安婦」をてがかりに 林 博史さん(関東学院大学経済学部教授)
敗戦直後の8月17日から21日にかけ、海軍の方面艦隊司令長官や通信隊が発信した重要文書焼却命令を、連合国が傍受した記録を英国立公文書館で見つけた。通達には「すべての兵器などから(菊花)紋章をはずせ」「御真影、勅命、紋章などは最大限の敬意を払い、箱の中に安置せよ。敵に渡る恐れがある場合は処分せよ」「厳粛に火にささげよ」という文言がある。天皇と軍の関係を可能な限り隠し、天皇の責任が追求されるのを避けようとしたもので、「歴史偽造」そのものである。
沖縄戦教科書検定でいまも文科省は「軍の強制」を認めない。昨年12月27日の沖縄の新聞の見出しは「強制認めず」だったが、本土のメディアは「軍の関与が復活した」とごまかした。
しかしこの問題は沖縄だけの問題ではなく、日本の侵略戦争全体に共通する問題を多く含んでいる。
「集団自決」問題は「特攻隊」をめぐる議論と似ている。特攻隊は尊い命を捧げたと賛美されるが、志願せざるをえない状況に追い込んだ結果だった。また捕虜を許さない思想が、バンザイ攻撃(玉砕)や南京戦の捕虜処刑を生み、230万人の軍人の死者のうち半数を餓死させた。また沖縄戦に参加した部隊は中国戦線から移動した部隊も多く、「女なんてやりたい放題」「こうやって首をはねた」という体験談は沖縄の人に「皇軍でもそんなひどいことをするのなら、鬼畜米英はどんな恐ろしいことをするのか」と恐怖心を植えつけた。つまり日本が行った侵略戦争全体をどう考えるのかという問題なのである。
日本軍「慰安婦」正当化論との共通性もみえる。「つくる会」は慰安婦、南京大虐殺、「集団自決」を3点セットと呼び、被害者や住民の証言は信用できない、「県史は一級資料ではない」などと主張する。「軍の命令がない、したがって強制ではない」と全体の状況から切り離し一点のみからすべてを否定する論法を取る。また元「慰安婦」は金ほしさにウソを証言している、沖縄の人は援護の金ほしさに軍命令をデッチあげたという。
なぜ敗戦後60年もたったいま日本の戦争責任が問題になるのだろう。
「慰安婦」に関し、昨年7月30日米議会が、12月13日EU議会が決議をあげた。90年代にユーゴ内戦での性暴力が問題になった。それ以前は賠償は国家間の問題だったが、以降は女性の人権、人間の尊厳の問題へと世界の認識が転換した。戦時性暴力はいつも起こる。なぜ防げないのか、性暴力をはびこらせるのは国際社会の責任という考えのもと、最も組織的に性暴力を行使した日本軍に焦点が当てられた。
日本人は、戦争が人を狂わせる、戦争が悪いと考え、個人の責任、とりわけ加害責任を追及しない。戦後日本人の平和意識がこうさせている。9条の功罪ともいえる深刻な問題だ。2000年10月の国連安保理決議には「すべての国家には(略)性的その他の女性・少女に対する暴力を含む戦争犯罪の責任者への不処罰を断ち切り、訴追する責任があることを強調する」という文言がある。これを発展させたのが2000年12月の女性国際戦犯法廷だった。
またEU決議は戦時だけでなく平時の性暴力・人身売買も問題にする。「『慰安婦』制度は輪姦、強制堕胎、屈辱及び性暴力を含み、傷害、死や自殺を結果し、20世紀の人身売買の最も大きなケースのひとつ」と断罪している。1940年前後に発生した事件が現代につながる問題として取り上げられているのである。
一方、戦後冷戦構造下の東アジアの軍事政権・独裁政権のパク・チョンヒやマルコスが退陣し、90年代に民主化した韓国やフィリピンで、やっと被害者が声をあげられるようになった側面もある。
しかし日本の支配層は連続性を保っている。1938年11月内務省警保局長は慰安婦を手配させた4府県知事宛ての文書で「何処迄も経営者の自発的希望に基づく様取運び」と実態を偽造するよう通知している。この通知を発出した町村金五警務課長(元・北海道知事)の息子が町村信孝・現官房長官である。小林興起代議士は97年に「戦争だったから当然のことなんですね(略)この程度のことを外国に向けて本当にそんなに謝らなきゃならんのか」と述べ、松原仁代議士は2007年に「(売春婦のなかには)自分の意に反して働いている人がいます。しかし、残念なことにそれは必要なことです。それは米兵にとっても同じことではないですか、と安倍首相が言えばよかった」と発言している。
2004年米国務省の「人身売買に対する報告書」で日本は「監視対象国」に指定され、あわてて2005年人身売買禁止議定書に批准し、刑法に人身売買罪を新設した。驚くべきことにそれまで日本では人身売買は罪ではなかったのだ。
韓国では2000年金大中政権が過去の真相究明・犠牲者名誉回復を行った。オーストラリアでは2008年2月ケビン・ラッド首相が、先住民アボリジニーに対する過去の非人道的行為を議会で謝罪した。スペインでは祖父がフランコ独裁政権に銃殺されたサバテロ首相が2006年を「歴史的記憶の年」と宣言し、2007年に「歴史的記憶の法」を制定した。今年3月最高裁が横浜事件の再審請求を却下したが、まさに日本とは対照的な動きだ。
支配層が連続している日本では、お上(権力・権威)に認めてもうらうことによってしか自分を正当化する拠りどころを作ることができない。たとえば自分が教える経済学部の学生は低賃金のアルバイトをしており、わたしが「それはおかしい」というと「そうしなければ経営が成り立たない」と猛烈に反発する。権力を握っているものの目で世の中をみているのである。
政権交代が常態化している台湾、韓国と比較すると取り残されている日本の有り様は際立っている。

●地球環境破壊・食料・エネルギー問題を考える      天笠啓祐さん(市民バイオテクノロジー情報室
いまは環境・エコロジーブームで、だれが何を言っても通ってしまう雰囲気だ。現在、地球規模で石油価格高騰、穀物価格高騰、格差社会、温暖化などの地球環境問題、食品偽装や冷凍ギョーザ中毒事件など異常な事態が起きている。根っこにあるのはただ一つ、グローバリズムをベースにした自由競争、弱肉強食の闘いである。
ガソリン価格は、かつては20-30ドル/バレルで安定していたが2003年のイラク戦争を契機に値上がりしいまでは110ドルになった。利益を得ているのは、かつてはメジャー、いまは石油産出国だ。2005年米国の新エネルギー戦略が発動されバイオ燃料推進を掲げたことからトウモロコシを軸に、穀物価格の高騰が始まった。大豆は中国の国内消費用輸入のため、小麦はオーストラリアの旱魃のため高騰した。そこに投機のためのオイルマネーが流入し史上最高値になったわけである。価格高騰でカーギル、ADMなど穀物メジャーは売上げを大きく伸ばした。今後は排出権取引市場に投機マネーが向かうことが予想される。
一方、OECD加盟国の平均寿命は77歳、乳児死亡率は10/1000人に対し、飢餓に苦しむサハラ以南のアフリカでは47歳、107人/1000人と地球規模で格差が拡大している。1995年WTO(世界貿易機関)が設立されたたころ、フィリピンの米自給率は100%だったが、いまでは20%台に下がった。原因は貿易自由化で中国の安いコメを輸入するようになったからだ。中国の賃金は時給20-30円という極端な安さだ。もちろん中国国内の格差は大きい。日本の畜産農家は、原油や飼料の高騰と畜産価格低下で壊滅的な打撃を蒙っている。
「乾いた雑巾をさらに絞る」トヨタ生産方式の特徴は在庫をもたないジャスト・イン・タイム方式だ。これをコンビニなど流通業界が導入し、しわ寄せは2000年の雪印事件にみられるように工場の現場に現れた。365日24時間稼働するため休めない非人間的な職場になり、一方では防虫・防鼠や清掃の時間を奪い、食品の安全性にも影響が出ている。
環境破壊と地球温暖化の元凶は、拡大基調を前提にした大量生産・大量流通・大量廃棄の市場経済である。米国は世界の二酸化炭素排出量の22%を占め、日本の二酸化炭素排出量の41%は電力会社と鉄鋼会社だ。しかし政府はけして解決策として経済規模の縮小をいわない。そこで解決策は破滅の先送りしかなくなる。
先送りのひとつが代替エネルギーである原発の推進、もうひとつが最後の資源、生命体そのものの利用である。ES細胞の開発や遺伝子組換え作物の栽培はさらなる危険を生む。たとえばトウモロコシは大豆と交互に連作するのが通常だったが、トウモロコシが高騰しトウモロコシだけ栽培するようになった。そのため害虫が発生したので遺伝子組換えでつくった殺虫性トウモロコシを使うようになった。しかしその栽培が広がると耐性害虫が発生しやすくなる。米国の農業は非常に危険な状態に近づいている。しかし遺伝子組換えでモンサント社は空前の利益を上げた。バイオは内側から生命を破壊する。このように資源と環境、子孫といった未来を奪い続けると地球は破滅するしかない。
洞爺湖サミットは経済拡大を前提にした、勝ち組のさらなる勝利のための会議であり、地球環境問題を解決することはできない。これに対抗する論理は、経済規模を縮小すること、代替エネルギーでなく地域循環型社会にすること、有機農業や農業多様性を推進すること、輸入食品でなく地産地消すること、すなわち地域性、多様性、小さいものを大事にすることだ。そうした運動を広げていきたい。

☆この集会には、いつものように右翼の街宣車と公安が大量に押しかけていた。

会場周辺には機動隊車両が行列していた


正面玄関付近には公安警察の集団がたむろしていた
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 08年卒業式・入学式闘争を終えて | トップ | 憲法9条とメディア »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

集会案内」カテゴリの最新記事