茫庵

万書きつらね

2012年09月09日 - 詩人との対話 9

2012年09月09日 07時48分47秒 | 名句、名言

 九月九日は菊(重陽)の節句。
 易経ではお馴染み、陽を代表する数字である九が2つ重なるからこう呼ばれる。
 今では余り聞かないが、この日には、日本でも中国から伝来した風習が行われていた。家族親戚揃って高い場所を目指して遠足に行く、というものだ。中国では須臾の実を頭につけたという。更に、菊の花びらを浮かべて酒を飲み、邪氣を払い、長寿を祈願したという。

 酒といえば陶潛。このおっちゃんは、何かというと酒、酒、という印象が強いが、きっちりそのものの詩を残している。

饮酒其七

秋菊有佳色
裛露掇其英
泛此忘忧物
远我遗世情
一觞虽独进
杯尽壶自倾
日入群动息
归鸟趋林鸣
啸傲东轩下
聊复得此生

(陶潜 饮酒其七より)

 私自身は滅多に酒を飲む事はないのでこの気持ちは少しも理解出来ないが、少なくともこの詩を見る限りでは、私が大嫌いな、何人かでつるんで酩酊し、醜態をさらす醉っぱらいの類いではないらしい。まあ、好きな酒を飲みながら感慨に浸る、私が日頃お茶でやってる様なものなのだろう。

「何言ってんの、あーた」
淵明さん?」
「好きなのに饮めないこと辛さ、酒を解さないあーたにゃわからんでしょ」
「それは、まあ」
「読んでくれた?挽歌诗」
「なんで晉代の淵明さんが簡体字で話すかなぁ。。。」
「生きてる时はろくに饮ましてもらえなかったのに、
 死んでからなみなみと杯やら利やらお供えされてもさぁ、
 嫌味じゃないの、これ?」
「あれは詩の中の話でしょ?」
「それが案外そうでもなかったのよ、これが。。。」

 それから何十分つき合わされたか。陶潛は酒がどんなに素晴らしい物であるかを説き、自分が本当に生前ろくに飲めなかった酒を死後に供えられて閉口している事をさんざん愚痴っていった。

やっぱり酒呑みは嫌いだ。



最新の画像もっと見る