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唐土、斉の景公(?-前490)という王が病にかかって、既に10日に及んでいた。
ある夜、景公は、二つの太陽と戦って負ける夢を見た。
そのあくる日、臣下の晏子が来たので、景公は晏子に問うた。
「朕は昨夜、二つの太陽と戦って負ける夢を見た。甚だ不吉な夢だ。朕は間もなく死ぬに違いない」
と言ったので、晏子は答えて、
「その夢を占う博士を召して、占わせてみましょう」
と言って、夢占い師を呼んだ。
夢占い師はすぐに晏子のもとへ来て、
「何のご用でしょうか」
と訊ね、晏子が、
「しかじかの次第だ」
と語れば、夢占い師は大いに驚き、
「これは、書物を調べて、よく考えて占わなければなりません」
と言えば、晏子はこれを聞いて、
「いや、書物を調べる必要はない。景公の病は必ず癒る。なぜなら、病は陰で太陽は陽であるが、病身である景公が、2つの太陽と戦って負けた夢を見た。つまり1つの陰である病が、2つの陽である太陽に負けたということは、病が癒る兆しである。だからこれを夢占いすれば、景公の病は、速やかに癒るに違いない。お前は、このことを景公へ申し上げよ」
と教えたので、夢占い師が、晏子の言ったとおり景公へ申し上げたところ、その後三日ほどして、景公の病は完全に癒ってしまった。
景公は大いに喜び、夢占い師に厚く俸禄を遣わしたが、夢占い師は辞退して、
「今回、夢を占ったのは、私の功績ではありません。晏子様が私に指示したとおりに申し上げただけです。であれば、これは晏子様の功績ですから、私の功績として俸禄を受けるわけにはいきません」
と言う。そこで景公は晏子を召して、この俸禄を賜ろうとすると、晏子が言うには、
「かの夢占い師が、私が教えたとおりのことを王へ申し上げたから、王の病は速やかに癒えたのです。もし夢占い師が私の言うことを聞かずに、邪説で占っていたならば、不吉な占いが現れたかもしれず、そうなれば王の病は治らなかったでしょう。ですから、私の言うとおりにしたのは、夢占い師の功績です。それに、この占いを私自身が申し上げたならば、王は信じなかったかもしれず、夢占い師の名があったから王も信じられ、その信ずる心に引かされて、病も早く治ったのです。これもまた、夢占い師の功績であって、私ではできなかったことです。そうだとすると私は、どうして功績もないのに俸禄をうけることができましょうか」
と言って、ついに受け取らなかったので、景公は仕方なく、両人に俸禄を賜った。
晏子は他人の功績を奪わず、夢占い師は他人の能力を覆えず、世の人もみな、これを模範として、自ら功績を自慢するべきではない。
唐土、斉の景公(?-前490)という王が病にかかって、既に10日に及んでいた。
ある夜、景公は、二つの太陽と戦って負ける夢を見た。
そのあくる日、臣下の晏子が来たので、景公は晏子に問うた。
「朕は昨夜、二つの太陽と戦って負ける夢を見た。甚だ不吉な夢だ。朕は間もなく死ぬに違いない」
と言ったので、晏子は答えて、
「その夢を占う博士を召して、占わせてみましょう」
と言って、夢占い師を呼んだ。
夢占い師はすぐに晏子のもとへ来て、
「何のご用でしょうか」
と訊ね、晏子が、
「しかじかの次第だ」
と語れば、夢占い師は大いに驚き、
「これは、書物を調べて、よく考えて占わなければなりません」
と言えば、晏子はこれを聞いて、
「いや、書物を調べる必要はない。景公の病は必ず癒る。なぜなら、病は陰で太陽は陽であるが、病身である景公が、2つの太陽と戦って負けた夢を見た。つまり1つの陰である病が、2つの陽である太陽に負けたということは、病が癒る兆しである。だからこれを夢占いすれば、景公の病は、速やかに癒るに違いない。お前は、このことを景公へ申し上げよ」
と教えたので、夢占い師が、晏子の言ったとおり景公へ申し上げたところ、その後三日ほどして、景公の病は完全に癒ってしまった。
景公は大いに喜び、夢占い師に厚く俸禄を遣わしたが、夢占い師は辞退して、
「今回、夢を占ったのは、私の功績ではありません。晏子様が私に指示したとおりに申し上げただけです。であれば、これは晏子様の功績ですから、私の功績として俸禄を受けるわけにはいきません」
と言う。そこで景公は晏子を召して、この俸禄を賜ろうとすると、晏子が言うには、
「かの夢占い師が、私が教えたとおりのことを王へ申し上げたから、王の病は速やかに癒えたのです。もし夢占い師が私の言うことを聞かずに、邪説で占っていたならば、不吉な占いが現れたかもしれず、そうなれば王の病は治らなかったでしょう。ですから、私の言うとおりにしたのは、夢占い師の功績です。それに、この占いを私自身が申し上げたならば、王は信じなかったかもしれず、夢占い師の名があったから王も信じられ、その信ずる心に引かされて、病も早く治ったのです。これもまた、夢占い師の功績であって、私ではできなかったことです。そうだとすると私は、どうして功績もないのに俸禄をうけることができましょうか」
と言って、ついに受け取らなかったので、景公は仕方なく、両人に俸禄を賜った。
晏子は他人の功績を奪わず、夢占い師は他人の能力を覆えず、世の人もみな、これを模範として、自ら功績を自慢するべきではない。