続・エヌ氏の私設法学部社会学科

無理、矛盾、不条理、不公平、牽強付会、我田引水、頽廃、犯罪、戦争。
世間とは斯くも住み難き処なりや?

竹の子

2018-01-14 | 江戸笑話
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 片田舎に、普段から仲の悪い隣同士があって、何かきっかけがあると、すぐに喧嘩ばかりしている。
 あるとき、こちらの畑へ、隣の藪の根が張って、筍が生えたのを取っていると、隣の亭主が見つけて、
「これこれ、その筍はこっちの藪から生えたのだから、こっちのものだ。断りなしに、なぜ取る」
「いやいや、そっちの藪から根は這っているが、生えた所が俺の畑だから、筍はこっちのものだ」
「そっちの畑に生えたからといって、その筍を取るなら、俺も、そっちから取るものがある」
「そりゃ、何を取る」
「いつぞや貴様の所の牛が、俺の所の牛部屋で子を生んだことがあったが、覚えているか」
「おお、覚えている」
「その時、その親牛も子も、そっちへ返したが、その筍を取るくらいなら、その子牛も、こっちの牛部屋で生まれたのだから、こっちへ寄越せ」
 この理詰めにぎっちり詰まって、畑主、
「そんなら、おいらも、まだ取るものがある」
「何を取るぞ」
「昨日、おいらがそちへ行った時、雪隠を借りたが、そのとき垂れたのを、寄越せ、寄越せ」

<蛇足>江戸時代、排泄物は畑の肥料になり、金銭で取引されるほど貴重な物であったから、これは単に汚いというだけでなく、切実な話である。

河童

2018-01-10 | 江戸笑話
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 河童がうろうろと陸へ上がり、まごついている所を、人が見つけて、ヤレ打ち殺せと大勢寄って、とうとう河童をひっ捕らえ、
「こいつは、よく人の尻子玉を抜く奴だから、見せしめのため、こいつの尻子玉を抜いてやれ」
と、寄ってたかって、河童の尻子玉を引っこ抜き、突き放せば、河童はひょろひょろして、命からがら川の中へ転げ込んだ。
 そこへ、友達の河童が来て、
「おや、どうかしたのか。顔色が悪い」
「いやいや、とんだ目に遭った。俺は人間どもに、尻子玉を抜かれた」
「どれどれ、見せや」
と、尻の穴を覗いて見て、
「ははあ、素人にしては、よく抜いた」

<蛇足>いや、そういう問題ではないと思うが

蛇蛙

2018-01-07 | 江戸笑話
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 往来の野道に、大勢の人だかりがあるので、何事ぞと見れば、大きな蛇と蛙が向かい合って、互いに狙い合っている。
 じりじりと詰め寄せては、又、じっとして見合っているので、大勢の見物人も目を離さず、
「今に蛙が呑まれるであろう」
「イヤイヤ、この蛙は一通りの蛙ではないから、蛇のほうが呑まれるであろう」
と評議とりどり。
 そうこうして見ているうちに夕刻となれば、蛙が見物人のほうへ手をついて、
「日も晩景に及びますれば、まず、今日はこれきり」

<蛇足>こいつはきっと、自来也が乗った蝦蟇蛙だろう

幽霊

2018-01-04 | 江戸笑話
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 なじみの女郎のから文が来た。
「故あって、二十両の金がなければ、生きていられなくなりました。死んでしまっては、かねて約束した、夫婦にもなられませんので、是非とも二十両の工面をお願いします」
との文言。男は、惚れた女郎の命づくと聞いて不憫に思い、何とか金の才覚をしてやりたいと思ったが、都合悪く、そのままにしてしまった。
 それからしばらく経って、男が、金がなければ死ぬとの事だから、今頃は、きっと死んでしまったのだろう、可哀想に、と思っている所へ、ヒュードロドロと女郎の幽霊が現れ、
「金を寄こしてくれぬゆえ、命を捨てました」
との恨み言。
 男は女郎を抱き寄せて
「やれやれ、懐かしかった。よく来てくれた。話がある。まあ、奥に入れ」
と言えば、幽霊、
「いえ、そうしてもおられませぬ」
「それは何故」
「まだ他に、出る所が、たんとあります」

<蛇足>傾城の恋は本当の恋ならず。金持って来いが、本当の「こい」

初雷

2018-01-01 | 江戸笑話
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 晴天にわかにかき曇り、雷が鳴りはためけば、家内の者ども皆恐れて、蚊帳を吊って静まり返っているところへ、ゴロゴロピッシャリとすさまじい音がして、雷様が庭先へどさっと落ち、手水鉢で手を洗っていた。
 亭主、恐る恐るさし覗いて、
「もしもし、どうなさりました」
「いや、今、あそこで、臍をつかみそこなった。ああ汚い」

<蛇足>では、何を掴んだのか。ああ汚い。

女惚れ

2017-12-29 | 江戸笑話
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 女郎が大勢で、
「何々さんが来なんした」
と、色男を取り巻いた。
 一人の女郎が、
「わっちは、ぬしの目つきに、どうも惚れんしす」
と言い、また一人は、
「口つきにさ」
また脇から、
「わっちは心意気に」
「わっちは声に」
と、そこら中から、
「惚れんしたよ、惚れんしたよ」
と、口々にわやわやわやわや。
 その中で、その色男に指名された女郎ひとりが、悲しい顔をしてめそめそ泣いて居るのを、仲間の女郎が見て、
「ぬしは、なぜ泣きなんすエ」
「みんなが、いいところを取んなんしたから、わっちの惚れるところが、おっせんから」

<蛇足>純情な女郎である。が、それも手練手管のうちか?

誕生日

2017-12-26 | 江戸笑話
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 勘定奉行が誕生日のお祝いをするというので、出入りの町人たちが皆、申し合い、進物をすることになった。勘定奉行の干支が子の年と聞いて、銀で拵えた白鼠の置物を進物にしたら、奉行は大変喜んで、皆に酒を振舞い、
「さてさて、心入れ千万、かたじけない。ところで、妻の誕生日も近いので、また、お祝いをしようと思う」
「それは、おめでとうござります。奥方の干支は何の年でござりますか」
「妻は、身どもより一つ下で、丑の年でござる」

<蛇足>さすがは勘定奉行、勘定が高い

かけとり

2017-12-23 | 江戸笑話
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 ある男の家に、掛取り(借金取り)が大勢詰めかけて催促していたが、なかなか払わないので、掛取りたちは座敷へ上がり、悠々と居催促をしていた。後から来た米屋は、居所のなさに、入り口にかがんで居たので、亭主がそっと呼んで、
「貴方は、明日早く来なされ」
と言う。
 米屋は、これは多分、俺一人に早く来いと言うから、俺だけに借金を済ませるつもりかと、喜んで立ち帰る。
 これを聞いた者たちは、互いに出し抜こうと、皆、翌朝は早く来て、亭主に詰め寄った。
「昨日、米屋に早く来いと言ったのは、大方、米屋ばかりへ借金を済ます事でござろう。わしら方へも、片をつけさっしゃれ」
と言えば、亭主、
「いえいえ、そうしたことではござらぬ。昨日、米屋殿は遅く来られて、入り口にいられましたので、今日は早く呼んで、ゆるりと座敷へお通ししようと思いまして」

<蛇足>借金取りには、これぐらい肝太く対応しなければ、やってられない

閻魔

2017-12-20 | 江戸笑話
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 閻魔様が御大病になって、地獄の医者たちがいろいろと思案し、娑婆の名医を連れて来ることになり、青鬼へ仰せつけられた。青鬼、
「ハッ、かしこまりましたが、娑婆へ参りましても、どれが名医か知れませぬ。どう、見分けましょう」
と言う。十王が、
「それは、門口に幽霊の居ない医者が名医じゃ」
と言いつけた。
 青鬼が娑婆へ出て、医者の門口を見ると、皆ことごとく、盛り殺された恨みの幽霊が、すさまじく詰め掛けている。ここではだめだと、他の所へ廻ってみれば、幽霊が一人も来ていない医者があった。
 これこそ名医と、様子を窺ってみれば、昨日、開業したばかりの医者。

<蛇足>で、この医者に閻魔様を診せるか?

婿二人

2017-12-17 | 江戸笑話
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 娘一人がいる家に、二人の男から、嫁に貰いたいと申し出があった。
 一人は大金持ちだが大ブ男。もう一人は貧乏だが頗る美男。両親も、どうしたらよかろうと娘に語れば、娘、
「両方ともへ嫁入りしましょう」
「おまえは、とんだ事を言いやる。両方へ嫁入りして、どうするつもりだ」
「昼のうちは金持ちの所で食べて、日が暮れたら美男の家で寝ましょう」

<蛇足>現代でも、実質的にそうしている話はある。

息子

2017-12-14 | 江戸笑話
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 親父が旅行に行くので、息子に、
「これ、俺の留守に、もし人が来て聞いたら、『旅行いたしました』と言え」
と申し渡し、息子は、忘れてはならぬと紙に書き付けて、袂に入れ置き、時々出してこれを見ていた。
 一日、二日経っても、誰も尋ねに来る人もなかったので、もはやこの書付も要らぬものと、袂から出して焼いてしまった。
 翌日、客が来て、
「親父様は」
と問う。息子は大慌てで袂を探したけれども、書付はない。仕方なしに、
「夕べ、亡くなりました」
と言えば、客は大いに驚き、
「それは、お力落としでござろう。そして、どうなされました」
「つい、焼きました」

<蛇足>土葬の時代である。念のため。

女郎

2017-12-11 | 江戸笑話
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 旅商人が宿場で女郎を買って、女郎に尋ねた。
「ぬしヤア、いくつになる」
「わっちかえ、十八になりやす」
 また次の年、旅商人は同じ女郎を買って遊ぶ。
「ぬしヤア、いくつだ」
「わっちは十七でござりやす」
 この旅商人は商売下手で、だんだん元手を無くして、とうとう国許へ引っ込む時、また、この女郎を買う。
「ぬしヤア、もう、いくつになる」
「十六でござりやす」
と言えば、急に、商人が大泣きを始めた。女郎は肝を潰し、
「おや、けしからぬ。ぬしヤア、何で泣きなんす」
「ぬしの歳と、俺の元手とが同じことで、どんどん年(ねん)が減ってくるから」

<蛇足>女郎は、たいていの場合、借金のカタに売られてきており、その金額に応じて、奉公の年限が定められており、年限が満了することを「年(ねん)が明ける」と言う。
 したがって、年数が経つほど借金の残額も減ってくるわけで、この話では、年月が経つにつれて女郎の年齢が減ってくるのを、旅商人の元手と女郎の借金、両方の年(ねん)が同じように減ってくる、というオチである。

媒人(なこうど)

2017-12-08 | 江戸笑話
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 貧を嘆く者あり。ある人、
「おまえ様は、貧乏をことのほか悲しがらっしゃるが、媒人を頼まっしゃい」
と言う。
「それは、どうした事でござります。媒人が貧乏を良くしますか」
「はてさて、媒人の口にかかれば、いけぬ女も美女と言われ、貧乏人も内福(見かけより裕福)と言われます」

<蛇足>貧乏は しても我が家に 風情あり 質の流れに 借金の山

家移り

2017-12-05 | 江戸笑話
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 医者が家を借りて引越し、両隣へ引っ越し祝いを配ろうとしたが、良さそうなものが何もないので、家伝の薬を一服ずつ配ろうとした。
 隣の亭主、
「かたじけのうござりますけれども、私は、病は持ちませぬから、お薬は申し請けますまい」
 医者、
「これはしたり。どうぞお上がりませ。病がないときに拙者の薬を呑むと、たちまち病が起こります」

<蛇足>で、病が起こったら、誰が治す?

医者

2017-12-02 | 江戸笑話
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 向こうから医者が歩いて来ていた。通りすがりに、酒屋の丁稚がぶつかったので、医者は大いに腹を立て、
「おのれ憎い奴め」
と手を上げて殴ろうとするのを、丁稚、
「もし、足で蹴ってもかまいませんが、絶対に手で打たないでください」
と言えば、医者、
「なぜ、そうぬかす」
「あなた様のお足で蹴られても、死ぬほどのことはござりませぬが、御手にかかりますと、生きてはおられませぬ」

<蛇足>丁稚までもが知っているとは、よほどの筍医者なのだろう