続・エヌ氏の私設法学部社会学科

無理、矛盾、不条理、不公平、牽強付会、我田引水、頽廃、犯罪、戦争。
世間とは斯くも住み難き処なりや?

ウソップ物語:狼少年

2018-07-08 | 自作
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 昔、ある村に羊飼いの少年がいた。
 少年は、自分が飼っている羊をとても大切にしていて、狼に狙われては大変だと、いつも気をつけていた。

 ある日、少年は森の中で、木の枝に狼の毛が付いているのを見つけた。
 少年は、狼が近くまで来ていると思い、すぐに村へ帰って、
 「狼が来た。狼が来た」
と、村人たちに知らせて回った。
 驚いた村人たちが、少年と共に森の中へ入ってみたが、狼の姿は発見できず、少年が見かけたという狼の毛も、風で飛ばされてしまったのか、見つけることはできなかった。

 それからしばらくしたある日、少年はまた森の中で、狼の糞を見つけた。
 少年は、やはり狼がいると思い、すぐに村へ帰って、
 「狼が来た。狼が来た」
と、村人たちに知らせて回った。
 驚いた村人たちが、少年と共に森の中へ入ってみたが、やはり狼の姿はなく、少年が言っていた狼の糞も、折から降り出した雨に流されたのか、もう、そこにはなかった。

 またそれからしばらくして、少年は森の中で、狼に食い殺された兎の死骸を見つけた。
 今度こそ少年は、狼がいると確信し、村へ取って返し、
 「狼が来た。狼が来た」
と、村人たちに知らせて回った。
 村人たちは、またかと思ったが、万一のこともあるので、少年と共に森の中へ入ってみたが、狼はおらず、狐が運び去ったものか、兎の死骸も、少年が案内した場所にはなかった。

 それから2・3日して、どうしても納得できない少年は、狼を見つけようと、森の中へ入って行った。
 すると思いがけず、大きな狼が少年の前に現れた。
 少年は肝を潰し、転げるように村へ帰って、
 「狼が来た。狼が来た」
と、村人たちに知らせて回った。
 しかし村人たちは、もう3度も少年に振り回されていたので、少年を嘘つき呼ばわりして信用せず、今度は森へ向かおうとはしなかった。

 仕方なく少年は、自分が飼っている羊の様子を見に行ったところ、まさに狼が羊を襲おうとしているところであった。
 少年は羊を守るため、狼を追い払おうとしたが、腹をすかせた狼は逃げるどころか、少年に襲い掛かって食い殺してしまった。

 それがきっかけとなって、大きな狼は、自分の家族であろうか、群れを率いて村に現れ、家畜はもちろん、村の人間たちにも襲い掛かり、村は壊滅的な打撃を被った。

自作ー金のなる木

2015-01-11 | 自作
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 金のなる木が売りに出された。
 何せ、なる実が実だから、苗木の値段は非常に高価であったが、ごく普通のサラリーマンであっても、コツコツと頭金を貯め、長期のローンを組めば、手に入れることが全くの夢物語というわけでもなかった。
 しかし、どれだけ長期のローンを組んでも、一旦手に入れてしまい、実をつけるようになれば、そこから先、ローンの心配はない。
 だから、皆、競って木を手に入れようとした。

 ある男が、爪に火を点すような思いを何年も続け、男の年齢では不可能と思われるほどの貯金を成し、ようやく金のなる木を手に入れた。
 男は、来る日も来る日も、愛情込めて木を育て、その甲斐あって、木は実を結んだ。
 これで男は、結婚もできるだろう。家も建てられるだろう。高級車にも乗れるだろう。美味しいものも好きなだけ食べられるし、世界中、旅行に行けないところはない。皆、男を羨んだ。
 しかし男は、ちっとも贅沢な暮らしをしようとはしなかった。それどころか以前にも増して節約に励み、木を買うためにはたいてしまった貯金の額も、かつてより速い勢いで、その数字を増やしていった。
 皆は不思議に思った。せっかく金のなる木を買ったのだから、あとは遊んで暮らせばいいのに。誰かが、お節介な好奇心を抑えきれず、男に尋ねた。
「そんなに金を貯めて、どうするつもりだい?」
 男は答えた。
「金のなる木を、もう一本、買おうと思う」