続・エヌ氏の私設法学部社会学科

無理、矛盾、不条理、不公平、牽強付会、我田引水、頽廃、犯罪、戦争。
世間とは斯くも住み難き処なりや?

「子どもの誕生日に有休とっちゃう。これって、アリ?」という質問自体、あり得べからざること

2010-11-29 | 法学講座
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 最初にこのCMを見たとき、呆れて物も言えませんでした。


 駄文「労働基準法第24条(賃金)、第39条(有給休暇)、権利を放棄するんじゃない!!」で、有給休暇の完全消化については、一度取り上げましたが、取得の時季については、

労働基準法第39条第5項
 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。


という規定があります。
 判例でも、理由を会社に告げる必要などなく、まして、理由によっては有給休暇を与えないなどということは許されない、となっています。

 つまり、有給休暇の取得に理由など必要ありません。(→法、納得!どっとこむ)

 だから、標記の質問自体、「あってはならない」質問なのです。

 同項の「ただし・・・」の部分においても、その日にその人がいないと、重大な損失が出てしまうような場合のみに限られ、単に「困るから」ぐらいの理由では、会社は、有給休暇の請求を拒否できません。

 それに、そもそも「その日にその人がいないと、重大な損失が出てしまう」ほどの重責を担っているような社員は、長年勤務して、大層な肩書きが付いているはずです。
 したがって、そうでない社員、つまり、「子どもの誕生日に有休とっちゃう」ような若い方なら、たいていの場合は、「その日にその人がいないと、重大な損失が出てしまう」ほどの地位にはいないでしょう。

 ですから、子どもの誕生日に有給休暇をとって、大いにお祝いしたいお父さんお母さんは、誰憚ることなく、堂々と休んでいいのです。

 ただ、CMでは、法的なことだけではなく、心情的なことも問うているのだ、ということは分かります。
 しかし、心情的に、私的な理由で有給休暇が取りづらいとしたら、一体、いつ、どんな理由で有給休暇を取ったらいいのでしょうか?

 職場の同僚も、
「お子さんが5歳の誕生日?それはおめでとう。5歳の誕生日は一生に一度しかないからね。十分、楽しい思い出を作ってあげてね」
ぐらいのことを言う鷹揚さがなければ、人間と人間が働く職場に潤滑油はなく、潤滑油がなければ、そこに生じるのは軋轢だけです。

 それにしても、こういう質問をするという発想そのものが、一体全体、どこから出てきたのでしょうか?

 きっと、会社で働いているのは、泣きもすれば笑いもする生身の人間なんだということなど、きれいさっぱり忘れ去り、労働基準法はおろか、労働者の権利とか福祉とか、そういったものを蔑ろにし、社員や派遣や季節労働者の首を切り、下請けを散々泣かせている会社なんでしょうね。

 少なくとも私は、このようなCMを平気で流すこの会社に対して、即座に、そういう印象を持ちました。

 この会社では、「子どもの誕生日に有休とっちゃう」のは、「アリ」なのでしょうか、それとも「ナシ」なのでしょうか?
 こういう質問の発想をすること自体からして、推して知るべしかもしれません。

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