続・エヌ氏の私設法学部社会学科

無理、矛盾、不条理、不公平、牽強付会、我田引水、頽廃、犯罪、戦争。
世間とは斯くも住み難き処なりや?

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律

2006-05-23 | 法学講座
 どこかでお聞きになったことがあるかもしれませんね。刑事裁判に一般市民が参加して、有罪・無罪の判定や、有罪の場合には量刑を審理する、「裁判員制度」について定めた法律で、この制度は2009年に始まります。裁判員が関与するのは、殺人、強盗、現住建造物放火など、死刑や無期懲役に該当する、重大な犯罪の裁判です。
 裁判員を務めることは義務となっており、裁判所から任命された場合、原則、拒否することはできません。ところが意識調査では、「やりたくない」という人が約70%を占めます。まあ、面倒なことは誰でも嫌ですし、仕事を休まなくてはならないとか、法律の知識がないから自信がないとか、いろいろな理由が挙げられています。

 中でも、裁判員をすることで、被告や被告の協力者から、裁判員やその家族が脅迫されたり危害を加えられるのではないか、という懸念は、払拭できていません。
 しかし、匿名である裁判員の氏名を漏洩すれば、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、また裁判員やその関係者などを脅迫すれば、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金(同法第78条)が科せられることになっており、この罰則を以って、被告や被告の協力者の、そうした行為を制することができる、と、国は説明しています。

 ・・・アホか・・・

 冒頭述べましたように、対象となる刑事事件は、殺人など被告が死刑や無期懲役になる事件です。殺人をするような悪党が、自分が死刑になるかもしれないという瀬戸際に、2年の懲役ぐらい何とも思うはずがありません。
 また、ヤクザの組長が被告だったらその組員が、カルト教団の教祖が被告だったらその信者が、あの手この手を使って裁判員に働きかけるのは目に見えています。オウム真理教が、敵対する弁護士一家を殺害した事件は、記憶に新しいでしょう。
 実際、外国では、裁判員(陪審員)が被害に遭う事件も発生していますが、わが国では、「そのような事例は非常に稀であり、心配はない」と言っています。しかし、一般の人は、その「稀」な事例がわが身に降りかかることを、恐れているのです。

 普通の脅迫罪は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金(刑法第222条)となっていますから、それをそのまま流用したであろうとは想像がつきます。しかし、裁判員を脅すのは、単なる脅迫とはわけが違い、司法に対する挑戦であり、言ってみれば、最高裁判所に爆弾を仕掛けるようなもので、国の根幹を揺るがしかねない重大犯罪です。
 また、裁判員自身にしても、国からの要請にしたがって義務を果たしたことで、自分や家族に危害が及ぶとしたら、義務を忌避したくなるのも当然です。

 国が、裁判員の氏名や顔が外部に漏れないようにしたり、裁判員と被告(またはそのシンパ)が接触する可能性を排除したりする措置をとるのは当然のこととして、そのような卑劣極まりない行為を牽制するには、やはり罰則を強化する他ないと思います。
 被告やシンパが、死刑を免れようとして脅迫などを行ったのなら、そのような行為を無に帰さしめる、すなわち、本件裁判の量刑が、実は死刑にまで至らぬものであったとしても、その時点で、本件の判決を死刑としてもいいと思います。むろん、シンパも同罪です。

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