続・エヌ氏の私設法学部社会学科

無理、矛盾、不条理、不公平、牽強付会、我田引水、頽廃、犯罪、戦争。
世間とは斯くも住み難き処なりや?

国の利益、国の損失、国は頼りになるか、ならないか。この国に安心して住めるのか

2010-12-02 | 社会学講座
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 損失を防ぐことは、利益を守ることと同じ意味です。

 国に責任があるとして提訴された事件の裁判では、法務省のお役人さんが、「国」として法廷に立ちます。
 そして、責任の有無、責任がある場合は賠償金額などについて、できるだけ国の損失を防ぐため、言い換えれば、国の利益を守るために奮闘します。
 その結果、賠償責任がない、ないしは賠償金額を少なく抑えられれば、国の利益が守られたことになります。

 このような裁判では、基本的に、科学的に検証して「間違いない」とされるものに限って、国側の責任を認め、「疑わしい」ものは、却下される仕組みになっています。

 そして、国に責任があるかどうかは、その事件について、国がどの程度関わり、事件の発生ないし被害の拡大について、阻止しうる立場であったかどうか、が問題になってきます。

 ところが現実的には、公害病の認定、原爆被害者の認定、そのほかの裁判で、国に責任がないとして、原告の訴えが退けられる事例は、枚挙に暇がありません。
 さらに、責任が疑われる場合でも、時効その他の法理(一般的には屁理屈とも言われます)によって、「被害者」が「泣き」をみる結果になっています。

 お役人さんは、国の利益を守るべき立場の方ですから、なるべく責任を認めず、認める場合でも、個々の認定については、「真っ黒」でない限り認定しないという姿勢が出来上がってしまいました。
 こうしたお役人さんの努力により、国は損失を免れ、言い換えれば、国は利益を守ることができるのです。

 しかし、ここでよく考えてみてください。
 国の利益とは何でしょう?

 国は国民がいて存在するものです。
 したがって、国の利益とは、国民の利益を意味します。
 では、上のような事例の場合、本当に国民の利益が守られたのでしょうか?

 賠償金額を抑えることは、税金の支出を抑え、たしかに国民の利益を守ることです。
 しかし、個人の力では避けようのなかった公害や戦争、国の失策、また、因果関係の立証は困難だが、蓋然性や相関性のある事例などについてまで、被害者に、非常に厳しい態度で臨むのが、「国民の利益」でしょうか。

 ましてや、最近の福祉行政のように、予算に限りがあるからなどという本末転倒な理由で、個々人への賠償額や支給額を低く抑える、さらには認定そのものの基準を厳しくしたり、あまつさえ認定の申請そのものを門前払いにするなどとは、言語道断、あまりの無責任さに怒りさえ覚えます。

 国家賠償請求訴訟などのニュースで、「不当判決」と書かれた垂れ幕を掲げながら裁判所から出てくる原告団の映像を見れば、誰しも、
「理屈ではそうかもしれないが、もう少し何とかならないのか」と思い、
「じゃあこの事件、一体誰が悪いんだ」となり、
「もし自分が同じような被害にあっても、国は、何もしてくれないんだなあ」
「国なんか、ちっとも頼りにならないや」
と思うでしょう。

 この、国に対する「頼りにならない」という不信感は、国にとって計り知れない損失です。
 国民が国を信用しないのですから。

 それは、わずかな金銭を抑えたぐらいで引き合うようなものではありません。
 国への不信感が増せば、国民に愛国心などなくなって当然でしょう。
 だからこそ、「国旗及び国歌に関する法律」などというものまで制定し、学校で、愛国心を「強制」しなければならないところまで来ているのです。

 なるほど、訴訟を起こす者の中には、「言いがかり」に等しい提訴や、便乗したと思われるような被害救済を訴える者、一部の訴訟マニアと呼ばれる暇人もいて、そうした詐欺師まがいの者や、濡れ手に粟を狙う者を排除するのは大切なことです。

 しかし、因果関係が疑わしかったり、責任の所在に多少不明確な点があっても、全くの「シロ」でない限り、
「困ったときは、国が何とかしてくれるんだ。ああ、やっぱり国は頼りになる」という安心感、それが
「この国に生まれてよかった」
と、国を栄えさせる原動力になり、わずかな賠償費用を抑えるような目先の利益より、将来に亘って、はるかに大きな利益になることは、多言を要しません。

 納税者の皆さん。
 避けようのなかった事態で、損害を被った気の毒な方々に、我々の税金が使われることに反対ですか?

 私は、そうした方々を救済するための税金なら、どうぞ使って下さいと、喜んで納めます。

 少なくとも、下らない無駄遣いをされるより、はるかに「国民の利益」すなわち「国の利益」になると思いませんか?

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