京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間

2014-12-01 09:13:41 | 時計修理

12月1日月曜日。
いよいよ待ちに待った12月に入りました!
時計業界の季節指数では通常月比2,5倍の売上見込み月になります。
この特別な月を見越してバイヤーは9月から用意をしてじ~っと売れ筋商品を確保しています。
我慢が足りないバイヤーは商品価格を下げて早くさばきたくなる。
その結果、月末の除夜の鐘を聞きながらの売上決算では売上高はなんとか前年並み、ところが肝心な利益率が15%程度の最悪の新年を迎えたこともある。
新年からのアパレル業界のバーゲンシーズンを目安にどこまで我慢できるかチキンレースの始まり。
気合が入りますね~!

問題は販売員だ。店長時代の10年間はほとんど新店でした。
繁忙期の12月を迎えるのが始めての販売員ばかりだ。頼りにしているとクリスマス当日にドロンと消える人もいる。
お客様と口論になるなど頻繁に起きる。
「店長を出せ!」と十分に怒るまで待って呼びつけられるのだからたまったものではない。

疲れていても閉店後食事に連れて行く。時計業界では食事の量と質のいいものを食べないと年末はもたない。「ブイヤベース」「チーズフォンデュ」「鳥鍋」などなど。
この食事のとり方を教えていないと風邪などで突然ダウンすることになりやすい。

簡単に見える時計のサイズ調整でも緊張のあまり指が震えて出来ない人は数時間かけても出来ない。
作業場所が限られているので邪魔な存在になってしまうのです。販売員同士トラブルになる「サイズ調整できない時計を売るな!」と理不尽に怒られる。

担当した店舗では一日1千万円程度の売上が普通でした。
体力が持たない人は集中力も途切れてミスを連発するので先ず食べさせる事だ。
仕事に慣れるまで食事会が続く。

時計はプレゼントユースが多い。特にお客様にカップルが集まる12月。
販売員もふつうの女性なので仲のいいカップルを見ると嫌だ。暖かく見守るほどの余裕がない。
みんなの食事中に爆発して過去を思い出して泣き出す人もいてハラハラする。人の別れ話は面白い!
「時計屋の店長はいいな!若い女性を毎晩引き連れて飲み歩いてるで~!」
商店会でうわさになるのです。とほほ~!

すぐに飛びかう万札を18歳の女子が平気で扱うようになる。
ところが「レジに入っている一万円札の札束をお客様に見せないでください!」と注意してもこれが難しい。
怖いのが強盗!年末の恒例行事のようにあちこちで事故がおきる。
バイヤーはそのたびに現地へ飛んでいって先ず店長に笑顔を見せて安心させる役目だ。

時計志望の人は美しいものにあこがれて入る。優秀な店長でも悪意のある人間に出遭った事がない人ばかりなので犯罪に巻き込まれると判断能力が低くなる。
早く行って寄り添ってあげることがコツ。

私は幸か不幸か警察官の息子だ。悪意のある人や事故を起こして怒りまくっている人がお客様だ。
そんな家庭に育った事がちょっと役に立った。瞬時に冷静になれる。
事故処理が続くと「あいつの血は不凍液で血も氷らないヤツだ!」こんな悪口にも耐えないといけない年末です。

事故を時系列で冷静に把握して適度に指示を出す。この場面では時計屋でよかったと思う。時間をアナログ、デジタルで使い分けができるようになります。
事件前後はデジタル、事件後の快復時間はアナログで考える。

お金がなくなったら財産を失う。勇気がなくなったらすべてを失う!
バイヤーを辞めて一番楽しいのが夜はゆっくりと眠れる事だ。
ただし事故当時の心配そうな顔の販売員の夢が良く出てきます。
夢の中でも「注文の多い時計屋」になっている。

「お客様には年間で1万円買ってもらえばいいのです!」
カルティエは30年、ロレックスは五十年。
それぞれ何年ほど使いたいのか想像して時計をお勧めしましょう!
あせる事はない。12月がやってきた!

待ちに待った12月がやってきました!「ゴッド ブレス ユ~!」なのじゃ~!










コメント
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