大関暁夫の“ヒマネタ”日記~70年代大好きオヤジのひとりごと

「日本一“熱い街”熊谷発コンサルタント兼実業家の社長日記」でおなじみ大関暁夫が、ビジネスから離れて趣味や昔話を語ります

私の名盤コレクション23~Leon Russellとスワンプ名盤(9-1)「The Concert For Bangla Desh」

2012-06-03 | 洋楽
身辺ゴタゴタしてしまい、このシリーズまたすっかり間があいてしまいました。前回までに3回で英米融合のスワンプ的大名盤「レイラ」を語りつくしたので、とりあえずレオンをとりまくスワンプの流れは一段落ではあるかなとは思っています。

私がなぜここまでスワンプロックにこだわるのか、この機会に少し書きとめておきます。これには明確な理由があります。個人的にはスワンプロックこそが70年代の洋楽シーンを大きく方向づけたと思うからです。音楽シーンを振り返ってみれば、50年代に生まれたロックはチャック・ベリーもリトル・リチャードもアメリカが生んだロックンローラーであり、アメリカが主導した新しい音楽はエルビス・プレスリーの登場によっていよいよ全国制覇を迎えたと言っていいでしょう。チャック・ベリーやリトル・リチャードは、日本史で例えるなら信長、秀吉であり、エルビスの登場は徳川家康の天下統一なのです。

ところが60年代に入ると流れは大きく変わります。イギリスからチャックやリトルの影響を受けながら、全く新しい音楽の流れを導き出し一大センセーションを巻き起こした連中が登場します。それがビートルズでした。そしてまた同時期に登場し60年代以降長きにわたって音楽シーンで多大なる影響力を持つことになるローリング・ストーンズも、チャックやリトルをルーツとした英国勢であったのです。すなわち、60年代はアメリカ覇権からイギリス覇権への移行の時代でした。こちらは日本史に例えるなら明治維新にあたるでしょう。

もちろん、アメリカでも英国勢が旋風を巻き起こす中、次の時代に向けた新たな動きは出始めていました。例えばボブ・ディラン。60年代半ばのアメリカの伝統音楽フォークとロックをミックスした動きは、多くのアメリカ・ミュージシャンに影響を与え、ビートルズやストーンズのマネではないアメリカ勢が世界に胸を張れる音楽の存在を意識させるに十分すぎる動きでありました。ディランは60年代後半にはさらに一歩進んで、アメリカ南部に根差したルーツロック的な展開を世に示しました。ディランの「ベースメント・テープス」はこの段階ではまだ海賊盤「グレート・ホワイト・ワンダー」での流布にとどまっていましたが、ザ・バンドを通じて発表された作品は英国勢に衝撃を与えるに十分でありました。

そして、ビートルズが先導しサイケデリックな流れに至ったあたりで停滞感が生まれつつあった60年代末期の音楽シーンは、急速に英国からアメリカへその主戦場が移っていくのです。この70年代突入を控えた重要な段階で、その役割を大きくしたのがアメリカンルーツに根差したスワンプロックだったのです。解散に向かうビートルズに対して、アメリカ的なものを積極的に取り入れることで70年代に向けた新たなスタイルを見出そうとしたストーンズはディランのバックで活躍していたアル・クーパー、ルーツ探訪者として注目されつつあったライ・クーダー、そしてスワンプをコーディネートしていたレオン・ラッセルらに近づくことで、ビートルズなきあとの70年代のリーダーとしての地位固めをアメリカ傾倒スタイルで果たすわけです。

スワンプロックは、アメリカ内部ではディランの影響力下で育ってきたフォークロックやルーツロックと密接に関連しながら来るべき70年代のイーグルスやドゥービーブラザースの登場につなげ、英国勢に対しては新しい時代の音楽シーンのキーワードとしてストーンズはもとより解散後のFAB4(ビートルズの各メンバー)やエリック・クラプトンらを通じて、英国ミュージシャンの70年代音楽シーンを陰で支配する役割を担った訳なのです。もちろん、スワンプロックが単独で70年代の音楽シーンを動かしたということでは決してありませんし、純度の高いスワンプはこれらの流れとはややかい離してしていることも事実です。

そんな中で上記のような流れを上手に振り分け、スワンプが時代を動かす役割をオフィサー的存在として果たしたのが、レオン・ラッセルであったのです(本人の意識の中で、この役割に関してどれほどのものがあったのかは定かではありませんが)。そんな、レオン・ラッセルがデラニー&ボニーやジョー・コッカーのコンダクター役を経て、その役柄としての最後の晴れ舞台を演じスワンプブームの大団円公演ともなったのが、スワンプに傾倒した元ビートルズ、ジョージ・ハリスンの声かけにより実現した世界初のチャリティーロックイベント「バングラディシュのコンサート」でした。(以下続く)