
郷里の「男の隠れ家 その4」の改修工事は少しずつですが進んでいます。

3階から仕上げていますが、天井は木貼工事中です。

新規に階段を設置した吹き抜け部分も仕上がってきました。

廊下の作品整理用に棚が形になってきました。設備を絡めた収まりはなかなか難しい・・。

上には神棚を設置します。

ここの仕切りは保管してあった実家で使っていた夏障子を使う予定です。

収納庫の工事も順調です。

屋根裏は広いと思っていましたが、仕上げると意外に狭くなりました。

本日紹介する作品は、寺崎廣業が双福仕立てにて描いた「寒山拾得図」の2作品目となります。寺崎廣業に限らずこの時期の画家の多くが「寒山拾得図」を描いています。

寒山拾得図 双幅 その2 寺崎廣業筆 その146
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 共箱
全体サイズ:横455*縦1970 画サイズ:横310*縦1155

寒山拾得とは中国唐代中期の寒山と拾得の二人の高僧のことです。二人とも奇行が多く、詩人としても有名ですが、実際はその実在すら疑われています。拾得は天台山国清寺(臨済宗)の食事係をしていましたが、近くの寒巌に隠れ住み乞食のような格好をした寒山と仲がよく、寺の残飯をとっておいては寒山に持たせてやったと伝わっています。また、この二人は文殊菩薩、普賢菩薩の生まれ変わりとされ、禅画の画題としてもよく用いらています。
寺崎廣業の作品で双幅の作品は意外に少ないですね。

基本的な構図としては、寒山が経巻を開き、拾得がほうきを持つ図となっています。

寒山は拾得と交わったとされていますが,本来は拾得は寒山伝説がふくらむ過程で付加された分身と認めらています。

二人の奇行ぶりが強調されていますが,仏教の哲理に通じ,その脱俗の境地は中国・日本とも伝統的な画題として評価されています。

古来より多くの画家が画題としていますが、国宝や重要文化財に指定されている主な作品は下記のとおりです。
国宝 寒山拾得図(禅機図断簡) 因陀羅筆、楚石梵琦賛 中国 元時代・14世紀
重要美術品 寒山拾得図 伝因陀羅筆、慈覚賛 中国 元時代・14世紀
重要文化財 寒山拾得図 伝顔輝筆 中国 元時代・14世紀
重要文化財 四睡図 平石如砥、華国子文、夢堂曇噩賛 中国 元時代・14世紀
重要文化財 寒山拾得図 伝周文筆、春屋宗園賛 室町時代・15世紀

また画題以外でも森鷗外の短編小説に『寒山拾得』があり、1916年(大正5年)1月、『新小説』に発表されています。
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あらすじ:貞観の頃、台州の知事職に相当する主簿を務めることとなった閭丘 胤(りょきゅう いん)は、求道者でもなければ、反対に無頓着な人でもなく、道を求めている他者に「盲目の尊敬」をもって接する人間であった。赴任の当日、リュウマチ性の頭痛に悩まされていた彼の元に一人の乞食坊主が訪れる。閭の頭痛をまじないによって見事に治癒したこの男は台州・天台山国清寺の豊干(ぶかん)と名乗り、これから同地へ赴く閭丘が会いに行くべき偉い人はいないかと尋ねると、それぞれ文殊菩薩と普賢菩薩の化身だという寒山と拾得の名を挙げて去っていった。この出来事のために、閭丘は台州につくと間も無く二人が暮らしている国清寺を目指したのであった。丸二日かけてやってきた閭丘は道翹(どうぎょう)と言う僧に案内されるかたわら、豊干や拾得についての話を聞く。実際に二人と対面するため台所へ通されると、みすぼらしい身なりをした二人の小男が火に当たっていた。閭丘は聖人に接する意識で自らの官職を述べる拝礼をしたが、寒山と拾得は大声で笑ったかと思うとその場から逃げ去ってしまった。
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禅については話ですので、この小説のラストは解りにくいですね。「寒山、拾得が笑ったのは、自分たちのような乞食のような格好をした僧侶に、偉い官吏が正式名称を名乗って挨拶をしている、自分たちがどう凄いのかを理解してもいないくせに…。」とでもという感じかな??

ともかく俗世を捨て隠れ住む寒山拾得の姿に、宋代以降の禅僧たちは憧れたようであり、その姿には現在でも理想とするものがあるのでしょう。

共箱の誂えで、落款や印章から明治末期から大正期にかけての作と推定されます。



同時期に描かれた寺崎廣業が描いた双幅のもう1点の作品は下記の作品です。
寒山拾得図 双幅 その1 寺崎廣業筆
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 共箱
全体サイズ:横500*縦2190 画サイズ:横320*縦1280

下記の作品は寺崎廣業が画家として早期の頃の作品です。
寒山拾得図 寺崎廣業筆 明治30年(1897年)頃
紙本水墨淡彩軸装 軸先塗 鑑定二重箱
全体サイズ:縦1960*横700 画サイズ:縦1230*横500

紙本水墨淡彩軸装 軸先塗 鑑定二重箱
全体サイズ:縦1960*横700 画サイズ:縦1230*横500

同じ画題の作品を比較すると画風の変遷が良くわかりますね。
さて私は郷里で寒山拾得のような生活ををするのかな・・・・??