夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

明末呉須赤絵 天下一大皿 その2

2018-04-25 00:01:00 | 陶磁器
庭のボタンが真っ盛りですが、何とはなしに今年は開花が早いような気がします。



陰になっていた樹木が枯れ、心配されていたクマガイソウは今年も咲きました。



さて本日は明末呉須赤絵の作品群から紹介です。

行政側の指導の下で製作された中国の官窯の陶磁器群は精緻さや綺麗さでは群を抜いているものですが、そもそもの生命力ある力強さという点では民窯に及ばないと評価されています。官窯では中国の清朝、日本では鍋島焼などが代表例で挙げられますが、小生の好むところではありません。政治体制の崩れた時代に優れた芸術は生まれるもので、中国陶磁器もまた明末にまさしくそのような陶磁器が生まれたと言えるでしょう。

官窯の作品はその時代の評価されるように作れられますが、民窯はその時代背景で実用性、汎用性を主としてモノ作りは行われるので、美術的価値は後世によって評価されることになります。

骨董の世界でも「ミネルバの梟(ふくろう)は黄昏に飛び立つ」と言えるのでしょうか。これを捩って小生は「政治の終わりに(混乱期に)優れたものは作られると・・」

中国では明末にかけて呉須赤絵、古染付、天啓・南京赤絵という優れた陶磁器群が生まれています。共産体制の現代の中国では評価されていませんし、当時から日本で評価され、日本が注文し、日本に輸出された作品群です。現在の中国には皆無といっていいほど作品は遺っていません。現代中国の評価の限界というより、中国の歴史的限界かもしれませんね。これらの陶磁器群(他に古染付、明末赤絵、天啓赤絵、南京赤絵のなど)を高く評価したのは日本人の優れた感性だと思います。

本日紹介する作品は「五彩天下一魚文盤」とも称される作品で日本からの注文品です。

明末呉須赤絵 天下一大皿 その2
合箱入
口径370*高台径*高さ85



以前に紹介した「その1」は破損の跡などはありませんが、残念ながら見込み中央の文字が不鮮明になっています。中央の文字が不鮮明になっていることはこの系統の作品にはよくある事象で、作品を重ねて船で運搬されたり、保存したことによる擦れによるものでしょう。また中央周辺の文字は簡略化されて記号のようになっています。

明末呉須赤絵 天下一大皿 その1
合箱入 
口径350*高台径180*高さ75



両方の作品を並べてみました。大きさに若干の違いがあり、本日紹介する「その2」の方が大きくなっています。この頃の大きな作品には決まった大きさはなく、各種の作品で微妙に異なるようです。



裏側の高台などの比較は下記の写真のとおりです。



「その2」では「天下一」の文字、周囲の文字も鮮明で貴重な作品となっていますが、残念ながら割れた破損の跡があります。



魚の描き方などは「その1」、「その2」ともにのびのびと描かれ、秀逸な作品となっています。「登り鯉(登竜門)」が表現され吉祥の図柄です。

砂高台、口縁などの釉薬の剥離(虫喰)の特徴を備えています。「天下一」は桃山時代以降の和製語ですので日本からの注文品であったことにまず間違いはないでしょう。

現在ではこの図柄の作品は非常に少なくなっており、見込みの字が明確である本作品は貴重かもしれません。



明末赤絵と赤絵を主体として作品に比した全体が青みを帯びた釉薬が施されていることから安南焼と勘違いされている場合もあるようですが、一連の明末呉須赤絵と同じく明時代の漳州窯(漳州地域 福建省南端部)で焼成された作品に相違ないでしょう。



この手の作品と同様な作品が「平凡社陶磁大系45 P45」に所載されていますが、天下一とは明らかに和語(安土桃山時代の流行した)で有り、前述のように日本向けに制作された事は疑いがありません。



民窯の豪放な絵付等、江戸時代より日本人の感覚にマッチし珍重された事もうなずけます。



歪んだ作り、虫喰いの味わいある自由な作り、これこそ自然のままであり芸術そのものなの根源と評価されるのでしょう。



本作品は割れた補修の跡をものともしない雰囲気があります。



砂付き高台、高台内に砂や釉薬が通常あるものですが、きちんとしていることから注文品であることがうかがえます。



この高台もまた魅力的なのです。人によってはただの汚らしい皿や鉢と言われそうですね。



高台は内側に反り返っているのも特徴です。



金繕いも丁寧に施されています。



赤く焼けた胎土に当時の陶工の生き生きとした様子が思い浮かびます。



参考作品
呉州手赤絵天下一大皿(明末時代、AD1621~1661)
高さ8cm、口径36cm、底径18cm



上記の作品の説明には「代表的な呉州赤絵の大皿である。中央見込みの文字は全くかせているが、「天下一」の文字が有った事は明白である。本品は紅彩と青釉とで構成されているが、残念にも一カ所青釉の入れ忘れ(画像下部)が有る。」とあります。

呉須赤絵の作品は人気が高いですが、作品は数多くあるようですが、五彩天下一魚文盤」とも称される本作品は非常に数が少ないと思います。



本作品は端午の節句に向けて展示しておくことにしました。



天下一に鯉の絵柄・・・、端午の節句の吉祥文の作品です。



どちらかというと下手な作品と思われがちな作品群ですが、吉祥文ですので端午の節句を迎えるにあたって飾ってみたい方と思いませんか?

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