年末は、金を遣うべき時期。
普段はオタのくせに死ぬほどみみっちくせちっこい俺も、この時期だけは財布の紐を緩める。
ならば今年のターゲットは、今最も面白い作品「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の大人買い以外にあるまい!
つーわけで原作の既巻7巻、購入ナリ。全部で4130円!! ……威張るような数字かよ。貧乏性治らん。はぁ。
しかし大枚叩いた(アホか)甲斐はあった。アニメ版に劣らず、いやアニメ版以上に面白かったよ。
アニメで知ってたエピソードも原作ではより緻密に描かれていたし、どんどん新展開が発生するので飽きさせない。
各巻4章で大きな動きがあるという作りは何気に新鮮だった。次巻へのこの上ない「引き」になっている。
キャラの魅力やギャグ描写も違和感なく楽しむことができる。面白い、としか言い様がない。
それでいて娯楽一辺倒ではなく(娯楽一辺倒も悪い事じゃないが)、思わず唸らされる深い面もある。
……いや別に、無理に高尚な作品だとしてるわけじゃないよ? ラノベが深くたって別にいいじゃねーか。
端から馬鹿にしてかかるその態度こそ恥としれよ。ケータイ小説も真面目に読めよ。俺は無理だが。
特に、作品の核である「京介と桐乃の兄妹関係」はひとことで言い表せない複雑さであり、色々考えさせられる。
糞生意気で我侭で兄を人とも思わない桐乃と、そんな妹に唯々諾々と従う兄・京介。
一見単純なようで、これが実に複雑だ。仲が悪く、相思相萌で、お互い大嫌いで、大切な家族。
矛盾しているようでどれも真実として二人の胸中に共存しているのだろう。それが読んでてよく分かる。
別に妹がいなくても、「家族に対する複雑な感情」は誰にでもあるものだと思う。俺にもある。
キモいまでに桐乃の世話を焼く京介の気持ちが、読んでくうちに分からないようで分かるようになってきた。逆も然り。そんな感じだ。
桐乃は簡単に言えばツンデレキャラであり、普段は殺したくなるほどツンで、たまにデレる。
だがこんな二極表現では到底表現できないくらい、そのデレは解釈がややこしい。
何せ「兄のことは大嫌い」というのも間違いなく事実だから、本来はデレなどあるはずがないのだ。
ある意味では普段のツンこそが愛情表現とも言えなくもないだろうし。作者以外誰にも分からん次元だな。
幾つかある露骨なデレ描写ですら、「額面通りに受け取っちゃならないんだろうな」と思ってしまう。
そんくらいややこしい。「べ、別にアンタのことなんか……!」てなツンデレテンプレ(略してツンテレ)に慣れきってしまい、
キャラの心情を読むことがすっかり苦手になってしまっていた俺には、そういう意味でも良い作品だった。
そのキャラが何を考えて何故そう行動しているのか、ちゃんと考えないと創作物は楽しめない。
解釈が間違ってても、それはそれでいいのだ。正解なんて結局分からないだから。ただその姿勢は大切だ。
作り物の2次元キャラも、その世界では意思ある生物なのだ。よく見て考え、感じてやらないと。
それがオタとしての誠意ってもんだよな。
この作品、全体的に作者が非常に丁寧に書いてることが伝わってくる。
各巻の後書きでしつこく「本作は担当編集者ら4人で作り上げたものです」と述べていて、他の作品なら謙遜混じりのお礼と思う所だが、
この作品の場合は本当にそうなのだろう。作家と担当編集者、イラストレーターの見事な調和を感じる。
もちろんただ仲良く作ってるわけではなかろう。意見の衝突もまた相当なものになるはずだ。
そういった苦労の末完成した入魂の作品、それがこんだけ面白いんだからもう最高だね。
伏見つかさ氏の更なる活躍を願う。
そういや驚いたのが、作中アニメ「メルル」の設定だ。
こういうのは大抵当初は割といい加減なもので、アニメ化やらを機会に設定を練り直すもんだと思っていたが、
メルルはキャラも内容も、アニメ(アニメ俺妹)にほぼそのまま登場している。
つまりまだ人気なんてまるでなかった1巻の時点で、メルルの設定はキッチリ作りこまれていたのだ。
恐らくもう一つの劇中アニメ「マスケラ」も同様だろう。こっちは登場するかどうか微妙だけど。不人気だし。黒猫さん無念。
黒猫の同人誌じゃあるまいに、最初から劇中劇までしっかり作る姿勢には驚かされた。やっぱ丁寧な作品だわ。
メルルの主題歌の歌詞もそのままだったもんなぁ。多分メロディもあの時点で出来上がっていたのだろう。
初期から自然な裏設定を感じるので、続巻を読んでいくのが心地よいのである。無理が生じていない。
黒猫さん、設定ってのはこういうもんだと思うんスよ。別冊資料集とか勘弁っスよ。
もう一つ驚いたのが、作中で固有名詞を平然と使用していること。
「google」「2ちゃんねる」「カプコン」「真・三国無双」「PSP」「ウメハラ」などの単語が、そのまま登場するのである。
他の作品なら確実に伏字にするか、【モンハン→ポケハン】などのベタ改変名称を採用するだろう。
どうでもいい事のようだが、個人的には驚きの表現だった。この作品の売りの一つ、は言い過ぎか。
もちろんどの名詞もただ出してるだけで、批判や中傷しているわけではない。よってまさか著作権云々の問題にはなるまい。
他の作品でもこの程度のことやっても誰も怒らんと思うんだが、やっぱ無駄に爆弾背負うことはないという判断なのかな。
ただ、この作品の固有名詞使用方針(?)が、世界設定への親しみやすさに寄与していることは間違いない。少なくとも俺には。
つまり有効な手段なのである。やっぱ、他作品でもやるべきだと思うよ。
……つっても「カ●ビアンコム」等は伏せてあったけどな。気持ちは分からんでもない。
あと「サザビー」等は出してるのに、「ガ●ダム」は伏せてあった。
やっぱ怒られそうな部分は避けているのか。うーん。
ケータイ小説を糞味噌にディスっているのも凄かったな。
3巻の内容にはケータイ小説が深く絡んでおり、それだけに作中キャラは正面から評価していて、その内容は辛辣だ。
もしケータイ小説大好きって人が3巻を読んだら、不愉快に思うのは間違いない。
しかもこれ、実際ケータイ小説業界の人に取材しながら書いたらしいので、下手すりゃ世話になった人に
後ろ足で砂をかける行為になるかもしれない。いや実際そうなってると思う。
ましてラノベという、同業と言えなくもない作品の中で、である。
何気に男を感じた。仁義に背こうとも、書かねばならぬなら、書く。その作家性はイカスと思った。
まぁそれでも「結局は面白いが正義」である事は作中で結論として語られてるから、「負け」を認めてもいるんだけどな。
個人の主観は絶対に尊重されるべきだが、何よりも強いのは世間の評価。
ワナビは結構として、そこだけは忘れちゃいけないんだ。
ケータイ小説も、ケータイゲームも。
……ケータイ小説はともかく、生粋のゲーオタたる俺には、グリーとかモバゲーとか……それが売れてる現状とか……嗚呼っ!
半端キャラ評。
・高坂京介
主人公様。基本的に良い奴と言っていいだろう。
「他人の為に動いてやれる」、これが出来るかどうかで、その人の器が知れるよな。はぁ……。
持ち前の優しさと意外なまでの行動力で、桐乃を始め様々な人物(ほぼ女)の信頼を勝ち取り、フラグを立てていく。
美形でないことは自他共に認めてるが、もちろん不細工でもないのだろう。あと成績は良い方であるらしい。
「平凡」を信条としているが、それを「怠惰」とやや混同していたことに反省し、平凡を保つ努力を心掛けるようになった。
これを「普通」と呼ぶには眩し過ぎる。立派な少年だと思う。さすが2次元だ真似できん。畜生……。
妹・桐乃への複雑すぎる感情は上記の通り、簡単に言い表せるもんじゃない。
……のだが、最新巻辺りで見せる態度は最早どこに出してもドン引きされるシスコンだ。
「俺は桐乃が大嫌いだ」と言われても、もう誰も信用しないだろう。
京介の「複雑な心境」が、最近単純化されてるのは今作への不満点である。
だが「女として見てる」だけは100%ない。これは本人・作者・読者に共通する見解だと思う。
どんなに可愛くても、妹だ。欲情はない。エロゲじゃないんだから。……だよな?
最初はゲーム機すら持ってない、本当にアッチ要素皆無の人物だったのに、話が進むにつれどんどん深化し、今じゃ立派なオタクさんだ。
他のキャラが年齢の割に濃すぎるので、京介レベルこそリアルな若オタと言えなくもない。
そりゃ京介がオタキャラと絡んでいく作品なんだからある程度詳しくなるのは当然だが、もう少し引いた立場で居てほしかったと個人的に思う。
オタ化に合わせて言動もやや痛いというか調子に乗った言い回しが増えているのも気になるっちゃ気になる。
あやせへの発言は、ト書き含めて初期では考えられないほどオタ臭くなっているもんなぁ。
まぁこれからも作品の為頑張ってくれ。
単純に8巻がどうなるのか気になって仕方がない。
・高坂桐乃
序盤はただムカつく糞ガキでしかなかったが、態度が軟化するにつれ、印象は随分変わった。
つっても萌えや欲情は無理だな。俺心狭いねん。でもこの作品を読むにはこれでいいと思う。
誇り高く、大変な努力家であるという設定は、京介でなくても嫉妬心を煽られる。怠惰で悪かったな畜生。はぁ。
でもそんな奴が重度のオタってのは、実は未だに強い違和感がある。全然しっくり来ない。
まぁオタであるのはアリとしても、「妹モノエロゲ大好き」ってのはどうなのか。
インパクト重視で作られた設定に思えてならない。今更ではあるが。
・†千葉の堕天聖 黒猫†
ダメだ、笑いを堪えられん。面白すぎる。アニメ9話の一人電話芝居シーン、何十回も観直してるほどだ。
いやぁ、この子、いいわ。死ぬほど邪気眼で痛いけど、一方でとても常識的でもあり、相殺されて普通の子って感じ。
……ちなみに俺、邪気眼を通して見ても「千葉の堕天聖」て通り名はイマイチだと思う。
「せんよう」と「だてんせい」で「せ」が被っているので、語感が悪く感じてしまうのだ。
千葉をアメリカ語にして「堕天聖サウザンド・リーフ黒猫」とかどうですかね。俺のセンス、駄目かな?
あんまこっちの方向には進まなかったから、未だこの世界のカッコ良さの何たるかがよう分からん。
ぼっちであっても周囲が心配し動いてくれるのは、これがお話であり黒猫が美少女だから。
そうでなければ? 言わせんな情けない。はぁ……。
・沙織
京介以上の良い人。現実にゃまずいないね。
京介の相手として適任だと思うんだが、残念ながら当人にその意思がなかったか。
「友人関係が消えていくこと」の寂しさとやるせなさは非常によく分かる。誰にでもある経験だと思う。
そこをドライに受け止めるか、ネチネチ執着するかで、大袈裟に言えば人生に差が出てくると思う。
さて、どっちが正しいのだろう。分からない。はぁ。
・あやせ
なかなか新鮮なヤンデレだ。ギャグ担当としてこれからも活躍してほしい。
・麻奈美
……この作品は、麻奈美の失恋物語でもあると思う。
序盤から明確な好意を示しているのに、京介も満更でもないはずなのに、色んな意味で扱いが酷い。
なんかホンマ読んでて居た堪れなくなるキャラだ。こんなに扱いの悪い幼馴染み見たことない。
残念ながら逆転の可能性ももうゼロだろう。ま、積極的に手を打たなかったのも悪いしな。
せめて高校生活が終わるまでは、きょうちゃんとの日常が続くことを願うばかりだ。
この辺で。
正直、途中から登場したキャラは、序盤からのキャラに比べて魅力が格段に劣っていると思う。
物語を彩る事には成功しているが、メインキャラを食う勢いのキャラが一人もいない。
この辺ちょっと失敗してるかなと思う。内容は面白いからまぁいいんだが。
この作品、今は乗りに乗ってるが、ちゃんと完結させることを念頭に続いていってほしい。
最後まで面白かったと思っていたい。期待してますぜ。
ところで作品内容とは全然関係ないんだけど、今回の既巻7冊一挙購入、実は4+2+1で別々に購入したんよ。
最初の4冊は近所の本屋、後の3冊はamazon。7巻が品切れで入手までに時間がかかった。
……で、本屋で買った4冊の方なんだけどね。その4冊全てに、小さく痛んでる箇所があったんだよ。
端っこが折れていたり、床に落としたかのように角が凹んでいたり。
もちろん本を読む分には何の支障もない。だがせっかく新品で購入したのに、ハッキリ言って非常に気分が悪かった。
俺は本やゲームの中古品を平気で購入する。と言うより手持ちの品は中古購入の方が多いくらいだ。
そういう意味では多少の傷や汚れ、誰が使ったか分からんという感覚も殆ど気にしない、気にならない性質だ。
だがそれと「新品で買った商品の質にうるさい」のは矛盾しない。せっかく新品で買うんだから、生まれたてのように綺麗な物が欲しい。
だが今回、久々にラノベを新品で買ってみれば、この仕打ちである。気分が萎えることこの上ない。
これからも俺妹を読み返す度に痛んだ箇所に目を留め、嫌な気分になることだろう。はぁ……。
最初から全部amazonで買っても良かったし、実際当初はそのつもりだった。
だが最近「町の本屋の経営は極めて厳しい」という声をよく聞くし、それは事実だと思うから、
たまには地元経済に貢献してやるかと思って前半だけはそこで買ったのである。
しかし俺様の比類なき地元愛は完膚なきまでに裏切られてしまった。
残念ながら地元本屋で新品本を買うことはもう2度とあるまい。amazonでなくても、ネットで楽に注文できるんだから。はぁ。
その後amazonから届いた残り3冊はほぼ完璧な新品だったので、ますます先の4冊の件で気分を害してしまった。
もちろんamazonだって人の手を介してるのは変わらんし、運送を経ているんだから、痛むリスクがないわけではない。
だが少なくとも有象無象の人間が立ち読みすることはまずない。それだけで本に対する安心感が全然違う。
これが漫画なら、ビニールによる完全防備を施してる本屋は珍しくないから、もっと気楽に買えるんだけどな。
なんで漫画以外の本でもビニール防御をしないのか不思議でならない。
試し読みが必要と言うなら、序盤だけを印刷した冊子を出版社が用意するとか、方法はあるだろう。
努力が足りねーよ。俺はもう行かないぞ。来なくていいって? 了解。はぁ。
俺妹と全然関係ない愚痴で締めちまったな。思いつくままダラダラ書いたけど、まぁ年末だからいいや。
今年は電子書籍元年と言えそうな年だったし、今後「本」を巡る環境はますます厳しく、どんどん変化していくだろう。
だが結局、モノを言うのは中身。質が悪けりゃ誰も買わない。前提はこれ。基本はそれ。この事実だけは絶対変わらない。
これからも面白いと思えるものはキッチリ買っていこう。
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」、久々に「強く欲しい」と「凄く面白い」が両立した作品だった。
いや過去形にするにはまだ早いな。もちろん完結まで付き合う。続巻が楽しみだ。PSPのゲーム版はどうすっかな。
妹いないけどそれなりに楽しいオタクライフに乾杯。了。
……で、これを書いた日に、3年以上を待ち続けた「涼宮ハルヒの驚愕」の発売日が発表された。
なんだかとても複雑な気分である。うーん……。
拍手を送る
普段はオタのくせに死ぬほどみみっちくせちっこい俺も、この時期だけは財布の紐を緩める。
ならば今年のターゲットは、今最も面白い作品「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の大人買い以外にあるまい!
つーわけで原作の既巻7巻、購入ナリ。全部で4130円!! ……威張るような数字かよ。貧乏性治らん。はぁ。
しかし大枚叩いた(アホか)甲斐はあった。アニメ版に劣らず、いやアニメ版以上に面白かったよ。
アニメで知ってたエピソードも原作ではより緻密に描かれていたし、どんどん新展開が発生するので飽きさせない。
各巻4章で大きな動きがあるという作りは何気に新鮮だった。次巻へのこの上ない「引き」になっている。
キャラの魅力やギャグ描写も違和感なく楽しむことができる。面白い、としか言い様がない。
それでいて娯楽一辺倒ではなく(娯楽一辺倒も悪い事じゃないが)、思わず唸らされる深い面もある。
……いや別に、無理に高尚な作品だとしてるわけじゃないよ? ラノベが深くたって別にいいじゃねーか。
端から馬鹿にしてかかるその態度こそ恥としれよ。ケータイ小説も真面目に読めよ。俺は無理だが。
特に、作品の核である「京介と桐乃の兄妹関係」はひとことで言い表せない複雑さであり、色々考えさせられる。
糞生意気で我侭で兄を人とも思わない桐乃と、そんな妹に唯々諾々と従う兄・京介。
一見単純なようで、これが実に複雑だ。仲が悪く、相思相萌で、お互い大嫌いで、大切な家族。
矛盾しているようでどれも真実として二人の胸中に共存しているのだろう。それが読んでてよく分かる。
別に妹がいなくても、「家族に対する複雑な感情」は誰にでもあるものだと思う。俺にもある。
キモいまでに桐乃の世話を焼く京介の気持ちが、読んでくうちに分からないようで分かるようになってきた。逆も然り。そんな感じだ。
桐乃は簡単に言えばツンデレキャラであり、普段は殺したくなるほどツンで、たまにデレる。
だがこんな二極表現では到底表現できないくらい、そのデレは解釈がややこしい。
何せ「兄のことは大嫌い」というのも間違いなく事実だから、本来はデレなどあるはずがないのだ。
ある意味では普段のツンこそが愛情表現とも言えなくもないだろうし。作者以外誰にも分からん次元だな。
幾つかある露骨なデレ描写ですら、「額面通りに受け取っちゃならないんだろうな」と思ってしまう。
そんくらいややこしい。「べ、別にアンタのことなんか……!」てなツンデレテンプレ(略してツンテレ)に慣れきってしまい、
キャラの心情を読むことがすっかり苦手になってしまっていた俺には、そういう意味でも良い作品だった。
そのキャラが何を考えて何故そう行動しているのか、ちゃんと考えないと創作物は楽しめない。
解釈が間違ってても、それはそれでいいのだ。正解なんて結局分からないだから。ただその姿勢は大切だ。
作り物の2次元キャラも、その世界では意思ある生物なのだ。よく見て考え、感じてやらないと。
それがオタとしての誠意ってもんだよな。
この作品、全体的に作者が非常に丁寧に書いてることが伝わってくる。
各巻の後書きでしつこく「本作は担当編集者ら4人で作り上げたものです」と述べていて、他の作品なら謙遜混じりのお礼と思う所だが、
この作品の場合は本当にそうなのだろう。作家と担当編集者、イラストレーターの見事な調和を感じる。
もちろんただ仲良く作ってるわけではなかろう。意見の衝突もまた相当なものになるはずだ。
そういった苦労の末完成した入魂の作品、それがこんだけ面白いんだからもう最高だね。
伏見つかさ氏の更なる活躍を願う。
そういや驚いたのが、作中アニメ「メルル」の設定だ。
こういうのは大抵当初は割といい加減なもので、アニメ化やらを機会に設定を練り直すもんだと思っていたが、
メルルはキャラも内容も、アニメ(アニメ俺妹)にほぼそのまま登場している。
つまりまだ人気なんてまるでなかった1巻の時点で、メルルの設定はキッチリ作りこまれていたのだ。
恐らくもう一つの劇中アニメ「マスケラ」も同様だろう。こっちは登場するかどうか微妙だけど。不人気だし。黒猫さん無念。
黒猫の同人誌じゃあるまいに、最初から劇中劇までしっかり作る姿勢には驚かされた。やっぱ丁寧な作品だわ。
メルルの主題歌の歌詞もそのままだったもんなぁ。多分メロディもあの時点で出来上がっていたのだろう。
初期から自然な裏設定を感じるので、続巻を読んでいくのが心地よいのである。無理が生じていない。
黒猫さん、設定ってのはこういうもんだと思うんスよ。別冊資料集とか勘弁っスよ。
もう一つ驚いたのが、作中で固有名詞を平然と使用していること。
「google」「2ちゃんねる」「カプコン」「真・三国無双」「PSP」「ウメハラ」などの単語が、そのまま登場するのである。
他の作品なら確実に伏字にするか、【モンハン→ポケハン】などのベタ改変名称を採用するだろう。
どうでもいい事のようだが、個人的には驚きの表現だった。この作品の売りの一つ、は言い過ぎか。
もちろんどの名詞もただ出してるだけで、批判や中傷しているわけではない。よってまさか著作権云々の問題にはなるまい。
他の作品でもこの程度のことやっても誰も怒らんと思うんだが、やっぱ無駄に爆弾背負うことはないという判断なのかな。
ただ、この作品の固有名詞使用方針(?)が、世界設定への親しみやすさに寄与していることは間違いない。少なくとも俺には。
つまり有効な手段なのである。やっぱ、他作品でもやるべきだと思うよ。
……つっても「カ●ビアンコム」等は伏せてあったけどな。気持ちは分からんでもない。
あと「サザビー」等は出してるのに、「ガ●ダム」は伏せてあった。
やっぱ怒られそうな部分は避けているのか。うーん。
ケータイ小説を糞味噌にディスっているのも凄かったな。
3巻の内容にはケータイ小説が深く絡んでおり、それだけに作中キャラは正面から評価していて、その内容は辛辣だ。
もしケータイ小説大好きって人が3巻を読んだら、不愉快に思うのは間違いない。
しかもこれ、実際ケータイ小説業界の人に取材しながら書いたらしいので、下手すりゃ世話になった人に
後ろ足で砂をかける行為になるかもしれない。いや実際そうなってると思う。
ましてラノベという、同業と言えなくもない作品の中で、である。
何気に男を感じた。仁義に背こうとも、書かねばならぬなら、書く。その作家性はイカスと思った。
まぁそれでも「結局は面白いが正義」である事は作中で結論として語られてるから、「負け」を認めてもいるんだけどな。
個人の主観は絶対に尊重されるべきだが、何よりも強いのは世間の評価。
ワナビは結構として、そこだけは忘れちゃいけないんだ。
ケータイ小説も、ケータイゲームも。
……ケータイ小説はともかく、生粋のゲーオタたる俺には、グリーとかモバゲーとか……それが売れてる現状とか……嗚呼っ!
半端キャラ評。
・高坂京介
主人公様。基本的に良い奴と言っていいだろう。
「他人の為に動いてやれる」、これが出来るかどうかで、その人の器が知れるよな。はぁ……。
持ち前の優しさと意外なまでの行動力で、桐乃を始め様々な人物(ほぼ女)の信頼を勝ち取り、フラグを立てていく。
美形でないことは自他共に認めてるが、もちろん不細工でもないのだろう。あと成績は良い方であるらしい。
「平凡」を信条としているが、それを「怠惰」とやや混同していたことに反省し、平凡を保つ努力を心掛けるようになった。
これを「普通」と呼ぶには眩し過ぎる。立派な少年だと思う。さすが2次元だ真似できん。畜生……。
妹・桐乃への複雑すぎる感情は上記の通り、簡単に言い表せるもんじゃない。
……のだが、最新巻辺りで見せる態度は最早どこに出してもドン引きされるシスコンだ。
「俺は桐乃が大嫌いだ」と言われても、もう誰も信用しないだろう。
京介の「複雑な心境」が、最近単純化されてるのは今作への不満点である。
だが「女として見てる」だけは100%ない。これは本人・作者・読者に共通する見解だと思う。
どんなに可愛くても、妹だ。欲情はない。エロゲじゃないんだから。……だよな?
最初はゲーム機すら持ってない、本当にアッチ要素皆無の人物だったのに、話が進むにつれどんどん深化し、今じゃ立派なオタクさんだ。
他のキャラが年齢の割に濃すぎるので、京介レベルこそリアルな若オタと言えなくもない。
そりゃ京介がオタキャラと絡んでいく作品なんだからある程度詳しくなるのは当然だが、もう少し引いた立場で居てほしかったと個人的に思う。
オタ化に合わせて言動もやや痛いというか調子に乗った言い回しが増えているのも気になるっちゃ気になる。
あやせへの発言は、ト書き含めて初期では考えられないほどオタ臭くなっているもんなぁ。
まぁこれからも作品の為頑張ってくれ。
単純に8巻がどうなるのか気になって仕方がない。
・高坂桐乃
序盤はただムカつく糞ガキでしかなかったが、態度が軟化するにつれ、印象は随分変わった。
つっても萌えや欲情は無理だな。俺心狭いねん。でもこの作品を読むにはこれでいいと思う。
誇り高く、大変な努力家であるという設定は、京介でなくても嫉妬心を煽られる。怠惰で悪かったな畜生。はぁ。
でもそんな奴が重度のオタってのは、実は未だに強い違和感がある。全然しっくり来ない。
まぁオタであるのはアリとしても、「妹モノエロゲ大好き」ってのはどうなのか。
インパクト重視で作られた設定に思えてならない。今更ではあるが。
・†千葉の堕天聖 黒猫†
ダメだ、笑いを堪えられん。面白すぎる。アニメ9話の一人電話芝居シーン、何十回も観直してるほどだ。
いやぁ、この子、いいわ。死ぬほど邪気眼で痛いけど、一方でとても常識的でもあり、相殺されて普通の子って感じ。
……ちなみに俺、邪気眼を通して見ても「千葉の堕天聖」て通り名はイマイチだと思う。
「せんよう」と「だてんせい」で「せ」が被っているので、語感が悪く感じてしまうのだ。
千葉をアメリカ語にして「堕天聖サウザンド・リーフ黒猫」とかどうですかね。俺のセンス、駄目かな?
あんまこっちの方向には進まなかったから、未だこの世界のカッコ良さの何たるかがよう分からん。
ぼっちであっても周囲が心配し動いてくれるのは、これがお話であり黒猫が美少女だから。
そうでなければ? 言わせんな情けない。はぁ……。
・沙織
京介以上の良い人。現実にゃまずいないね。
京介の相手として適任だと思うんだが、残念ながら当人にその意思がなかったか。
「友人関係が消えていくこと」の寂しさとやるせなさは非常によく分かる。誰にでもある経験だと思う。
そこをドライに受け止めるか、ネチネチ執着するかで、大袈裟に言えば人生に差が出てくると思う。
さて、どっちが正しいのだろう。分からない。はぁ。
・あやせ
なかなか新鮮なヤンデレだ。ギャグ担当としてこれからも活躍してほしい。
・麻奈美
……この作品は、麻奈美の失恋物語でもあると思う。
序盤から明確な好意を示しているのに、京介も満更でもないはずなのに、色んな意味で扱いが酷い。
なんかホンマ読んでて居た堪れなくなるキャラだ。こんなに扱いの悪い幼馴染み見たことない。
残念ながら逆転の可能性ももうゼロだろう。ま、積極的に手を打たなかったのも悪いしな。
せめて高校生活が終わるまでは、きょうちゃんとの日常が続くことを願うばかりだ。
この辺で。
正直、途中から登場したキャラは、序盤からのキャラに比べて魅力が格段に劣っていると思う。
物語を彩る事には成功しているが、メインキャラを食う勢いのキャラが一人もいない。
この辺ちょっと失敗してるかなと思う。内容は面白いからまぁいいんだが。
この作品、今は乗りに乗ってるが、ちゃんと完結させることを念頭に続いていってほしい。
最後まで面白かったと思っていたい。期待してますぜ。
ところで作品内容とは全然関係ないんだけど、今回の既巻7冊一挙購入、実は4+2+1で別々に購入したんよ。
最初の4冊は近所の本屋、後の3冊はamazon。7巻が品切れで入手までに時間がかかった。
……で、本屋で買った4冊の方なんだけどね。その4冊全てに、小さく痛んでる箇所があったんだよ。
端っこが折れていたり、床に落としたかのように角が凹んでいたり。
もちろん本を読む分には何の支障もない。だがせっかく新品で購入したのに、ハッキリ言って非常に気分が悪かった。
俺は本やゲームの中古品を平気で購入する。と言うより手持ちの品は中古購入の方が多いくらいだ。
そういう意味では多少の傷や汚れ、誰が使ったか分からんという感覚も殆ど気にしない、気にならない性質だ。
だがそれと「新品で買った商品の質にうるさい」のは矛盾しない。せっかく新品で買うんだから、生まれたてのように綺麗な物が欲しい。
だが今回、久々にラノベを新品で買ってみれば、この仕打ちである。気分が萎えることこの上ない。
これからも俺妹を読み返す度に痛んだ箇所に目を留め、嫌な気分になることだろう。はぁ……。
最初から全部amazonで買っても良かったし、実際当初はそのつもりだった。
だが最近「町の本屋の経営は極めて厳しい」という声をよく聞くし、それは事実だと思うから、
たまには地元経済に貢献してやるかと思って前半だけはそこで買ったのである。
しかし俺様の比類なき地元愛は完膚なきまでに裏切られてしまった。
残念ながら地元本屋で新品本を買うことはもう2度とあるまい。amazonでなくても、ネットで楽に注文できるんだから。はぁ。
その後amazonから届いた残り3冊はほぼ完璧な新品だったので、ますます先の4冊の件で気分を害してしまった。
もちろんamazonだって人の手を介してるのは変わらんし、運送を経ているんだから、痛むリスクがないわけではない。
だが少なくとも有象無象の人間が立ち読みすることはまずない。それだけで本に対する安心感が全然違う。
これが漫画なら、ビニールによる完全防備を施してる本屋は珍しくないから、もっと気楽に買えるんだけどな。
なんで漫画以外の本でもビニール防御をしないのか不思議でならない。
試し読みが必要と言うなら、序盤だけを印刷した冊子を出版社が用意するとか、方法はあるだろう。
努力が足りねーよ。俺はもう行かないぞ。来なくていいって? 了解。はぁ。
俺妹と全然関係ない愚痴で締めちまったな。思いつくままダラダラ書いたけど、まぁ年末だからいいや。
今年は電子書籍元年と言えそうな年だったし、今後「本」を巡る環境はますます厳しく、どんどん変化していくだろう。
だが結局、モノを言うのは中身。質が悪けりゃ誰も買わない。前提はこれ。基本はそれ。この事実だけは絶対変わらない。
これからも面白いと思えるものはキッチリ買っていこう。
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」、久々に「強く欲しい」と「凄く面白い」が両立した作品だった。
いや過去形にするにはまだ早いな。もちろん完結まで付き合う。続巻が楽しみだ。PSPのゲーム版はどうすっかな。
妹いないけどそれなりに楽しいオタクライフに乾杯。了。
……で、これを書いた日に、3年以上を待ち続けた「涼宮ハルヒの驚愕」の発売日が発表された。
なんだかとても複雑な気分である。うーん……。
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