腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

ラストストーリー

2014年06月15日 17時19分36秒 | Wiiゲーム感想文
んー……。

比類なき90年代ゲーム業界最高の成功者(多分)、「ファイナルファンタジー」の生みの親、元スクウェア副社長、坂口博信氏。
FFの登場からスクウェアは「RPGと言えばスクウェア」のブランドを確立し、やがてPSにて黄金時代を築くに至った。
その最大の貢献者は坂口氏であろう。ゲーム制作だけでなく、経営や人心掌握にも長けていたのだろうなぁ。凄い。
……が、盛者必衰と言うべきか、映画FFの失敗の責任を取り、氏はスクウェアを退社した。これは責任の取り方としてはキッチリしてたと思う。
ある意味、坂口氏はここからが本領発揮だった。でかい栄光と挫折を経験してからの、再出発。全てを一から作り直さねばならない。
新会社「ミストウォーカー」を設立した坂口氏は、精力的に新ゲームを製作し始めた。
それは新ハードの登場とも重なり、注目され、ユーザーの期待を集めていた。と思う。……。

……氏がミストウォーカー設立後に発売した中でも代表的な三本「ブルードラゴン」「ロストオデッセイ」「アルカイックシールドヒート」を、
俺は勝手に「ヒゲ復活三部作」と呼んでいた。で、時期はバラバラだが、3本ともプレーした。どれも盛大に値崩れしてたなぁ。
んで感想としては、それぞれ「普通」「良作」「駄作」だった。残念ながらFFのような記憶に残る作品には会えなかった。
ダントツ最悪はASHで、様々な面での調整は腹が立つほど酷かった。あれが90年代に多くのRPGを手掛けた男のする仕事なのか。
ブルドラとロスオデも、悪くはないが、中身はFF等過去のRPGを焼き直したって感じで、「ヒゲの、新たなる挑戦」という気はしなかった。
結局ヒゲ氏はスクウェア時代で「出しきって」しまったのかなぁ。お気楽無責任な一般人特権で、俺はそんな風に感じていた。

そんな坂口ヒゲ氏による、現状の最新作(多分)が、「ラストストーリー」である。3年前、Wii末期に発売された。only on Wii.
タイトルからしてFFを忘れられず便乗しているかのようだが、そうではないらしい。
「これが最後に手掛けるゲームになるかも」という覚悟を込めてこのタイトルにしたという。なるほど、言ってることは立派だ。
個人的にはもう復活三部作でヒゲ氏はいいや……という思いもあったのだが……例によって値崩れがあったんで、喜んで購入。
2年前に新品1480円だった。クラニンポイントも貰えて嬉しかった。ヒゲゲーは値崩れを避けられないのか。
初回特典だった画集とサントラも別ルートで入手した。オマケにしては豪華で、任天堂の金を感じられる質である。
ともかく、やってみるべさ。ヒゲ氏の覚悟を、見届けてみるべや。今回はWii UのWii互換機能を使い、プレーした。
これはソフトじゃなくWii自体(メニュー画面から)を再現しているので、当然ソフト的にもWiiと全く変わらず遊べる。
ちなみにゲームパッドに画面を映してプレーすることも可能だが……今作の場合、迫力が落ちてちっと合わなかったな。はは。


まず、開始直後に思ったのが……こればっかりは仕方ないのは重々承知だが……「グラフィック、汚なっ!」である。はぁ。
いや、そうじゃない。綺麗なんだよ。矛盾しまくってるが、グラフィックは美しいんだよ。……「Wiiにしては」。これなんだよなぁ。
俺は既にPS3もXBOX360も、PS4まで体験している身である。そんなに品質に煩い方ではないと思うが、より上の絵を「知ってしまって」いる。
そんな俺に、今、Wii。任天堂的デフォルメキャラなら目立たないその差が、この手のリアル等身ゲームだと、公開処刑執行である。
繰り返すが、仕方ない、やむを得ない。誰が作ってもWiiでこれ以上の絵は出せないはずだ。それは分かっているんだ!!
……でも、な。まぁ背景はそんなに気にならないが、人物の、特にアップになると、髪なんかが……非常に荒く見えた。非常に惜しい。
今作のキャラデザインは、個人的にはかなり気に入った方だ。ヒロイン・カナンの正統派美女っぷりに萌え萌えである。ついでに声も。
これを「上位」機種で見られればなぁ……と何度も思った。しかしそれは絶対にない。Wii UでHD版でも出れば話は別だが。
慣れれば気にならなくなった……と言えればいいんだが、残念ながら最後まで気になる欠点だった。やむを得ないのを承知でそう言う。
不思議なもんで、PS2やサターンだとあまり気にならないんだよな。Wiiが「同世代」内で劣っていることを知ってしまっているから。
いつかWii Uのゲームを数年遅れでプレーする際にも、同じことを感じるんだろうか。まぁHD機になればそこまで差は目立たんと思うが。
Wiiは大成功ハードである。それは間違いない。……思い返す時に、ネガティブになりたくはないよね。はぁ。

グラフィックは置いておいて。ゲームはいきなり今作のメインとなる戦闘から始まり、そのシステムの説明から入る。
これが……予備知識ゼロだったんで、驚いたね。今作の戦闘、実はアクションである。コマンド要素もあるが、比重はアクションに大きい。
フィールドを歩き回り、敵を攻撃。これも結構驚いたんだが、攻撃はキーを入れるだけで自動でやってくれる。マニュアルにも出来るけど。
他に、ガードや前転回避、更に障害物に隠れるカバー動作など様々なアクションがある。カバーは「ギアーズオブウォー」に似てるな。
仲間は自動行動だが、コマンド入力で指示を与える事も可能。つーかこれをしないと的確な行動は取ってくれない。基本仲間は馬鹿。はぁ。

更に今作の戦闘の肝として「ギャザリング」というものがある。Lボタンで発動し、「主人公が敵の攻撃を一身に引き受ける」という効果がある。
何故そうなるのかは不思議パワーなんで割愛。ともかくこれで敵の注意を引き付け、自分以外のをフリーにし、色々とやってもらうのだ。
代表的なのが、「味方の魔法詠唱時間を稼ぐ」だ。素だと敵の弓矢攻撃やらで詠唱を邪魔されるので、ギャザリングで主人公を囮にするわけだ。
製作者曰く、「秩序(隊列が組まれた敵軍)」を、ギャザリングを中心に「混沌」へ導き、勝利するのが今作の戦闘のテーマであるらしい。
なるほど、カッコ良い。取り敢えず斬新なシステムである。これは立派に今作の独自要素として誇ってもいい。うむ。……多分。

……で、実際にやってみると……予想外に高いアクション性も含め、なかなか意欲的だなと感じた。
ギャザリングで敵を引き付け、その間に味方に行動させる。首尾よく作戦が成功した時は気持ち良く、独特の快感を味わえる。
無論囮一辺倒ではなく、主人公も攻撃する。普通の攻撃以外にも特殊技や必殺技があり、やるべき仕事はかなり多い。
自分と仲間、敵側の状況それぞれを俯瞰的に意識し、行動する。もしかしたらシミュレーション性が一番高いのかもしれんな。
攻撃をボコボコ当てる感触もよく出来ていて、タコ殴りには強い快感があった。剣で切ってるとするとおかしな音ではあるが。
新要素が出てくる度に始まるチュートリアルも分り易い。ギリギリ複雑ではない、良いバランスのシステム量だと思う。

……しかしやり続けていると、やっぱ不満は出てきた。一番は、簡単なことかなぁ。今作、難度が低い。正直ちょっと物足りなかった。はぁ。
んで簡単となると、「テキトーにやっても行ける」になる。ギャザリングや何やで戦略的なことをしなくても、力押しで勝ててしまう。
無論全てがそんな単純ではないが、今作はシステムと難度が釣り合ってないと感じた。やれることを持て余してしまう。
まぁこうなった理由も何となく分かる。調整し切れなかったんだろう。システムを使いこなさないと勝てないようでは、難度が高過ぎる。
本来はもっと複雑にも難しくも出来たんだろうが、それはWiiの大作RPGという今作の立場にそぐわない、という判断だったのではないか。
結果として、緻密にやらなくても、力押しでも何となくやれてしまう、何だか緊張感のない戦闘が出来上がってしまった。
まぁボス戦なら少しは歯応えも出るが、雑魚戦は酷いもんだ。負ける要素がないので、戦略を考える気もおきない。
ちなみに今作には使用アイテムの概念がなく、魔法は使い放題、戦闘が終わればステータスやHPは完全回復する。
つまり後のことを考える必要がなく、その戦闘に勝てば万事OKなのである。これも難度を下げ、テキトー感を増す要因になっていたかもしれん。
やってることは意欲的で見所があるが、ゲームの要は調整だ。せっかくのシステムも、宝の持ち腐れ……は言い過ぎか。はぁ。

仲間がいる場合、戦闘前や戦闘中に助言を貰えることあるんだが、これが的確過ぎるのも不満だった。こちらに考える余地がない。
例えば「あの橋を壊して敵の上に落とそう」と言われた場合、それが完全に正解で、それ以外の大正解ルートなんてありゃしない。
製作者の用意した正解を、製作者の用意したメッセージに従ってなぞるだけ。やらされているの極みである。
まぁ力押しでも行ける事が多いから、必ずしも一本道でもないのか。……多彩な選択肢を用意したら、管理しきれないからなだろうなぁ。
身を隠す「カバー」動作がどんな風に戦闘に活かされるか期待したが、これは「スラッシュ」という不意討ち技に使われるだけだった。
矢鱈と多く隠れ場所が用意されているのに、使い道がほぼこれだけなんて。これも色々できたら管理しきれないからだろう。
またこのカバー不意討ち、目の前で岩陰に隠れただけなのに敵キャラが「見失ってくれて」、不自然極まりない。機械の敵だなぁ。
多彩で面白そうな要素が色々あるのに、それを全解放すればバランス調整をし切れないから、製作者の目が届く範囲に遊び場を狭める。
ゲーム制作とは「お釈迦様の掌の上」を作ることだから、方針はそれでいいだろう。でもそれがプレーヤーに伝わっちゃいかん。
今作の戦闘は、ネタは良いけど調整が……の典型だと感じた。せっかく意欲的な挑戦をしているのに、勿体無い話である。

調整に関する不満は装備品周りにもある。今作にも当然武器や防具が色々登場する。更に「強化」、果ては「彩色」要素まである。
彩色はお遊びだからいいとして、強化である。数段階可能で、武器(防具)性能が上がり、特殊効果が付随することもある。
俺は開始当初、これが「不安」だった。手に入れた武器を強化すればいいのか、それとも別武器を購入すべきなのか、全く分からん。
強化要素は最初から登場するので、どうするかもプレーヤーの自由。しかし限られた金で好きなようにして、行き詰まったらどうする?
最初からこんなん解放されても勘が掴めん。後戻りできないのは不安感を煽る。そしてゲームを進めれば武器防具はどんどん増える。
「試行錯誤」はゲームの面白さの一つだが、後戻りができないから、色々と試せない。まさかセーブロードを駆使しろとは言わんだろう。
んでまぁ、結局は開き直って極めてテキトーにやった。目に付いた武器、強そうな武器を強化し、防具は殆ど考えず更にテキトーに。
……で、それでもクリアーできたんだよ。これはこれで、あんなテキトーでやれてしまうってどうなのよと思わざるを得なかった。
これも、厳しく調整したらクリア不能者が続出するからどうやってもイケるよう調整したのだろう。でもそれは、システムの自殺じゃないか?
こんなんだったら素直に段階的に強い武器が手に入る「普通の」RPGの方が気持ち良くていいよ。それじゃダメなのか? はぁ。
どんなに絵が綺麗になっても、スケールが大きくなっても、ゲームは調整である。人の手による数字の書き換えである。
管理しきれないならあまり大きな掌にしないでほしい。それか洋オープンワールドRPGみたいに、難度選択制にした方がよかったかもな……。


戦闘システムから分かるが、今作は色々実験的……と言うか「旧ヒゲ作からの脱却」を目指していると思う。
ゲームの舞台も、「普通のRPG」と違い、意図的にかなり狭くなっている。大半は「ルリ島」という島で展開され、あまり外へ向かわない。
ルリ島は帝国の要所というだけで、帝国本体ではない。しかし帝国本体は出てこず、皇帝やらも一切登場しない。
話のスケールは小さくなってるかもしれんが、これはその分濃密に描こうという意図なのだろう。別に常に世界崩壊を描かんでもいいよな。
登場する街も、何と「ルリの街」ただ一つ。その分この街に全てを注ぎ込んでいるようだが……思い切った作りだなぁ。

このルリの街、一つだけだからか非常に広い。相当慣れないと迷いに迷いまくって気が滅入るほどだ。
なのに……ゲーム開始当初から、ほぼどこへでも行ける。行けてしまう。幾らなんでも解放しすぎだろう。徐々に慣れさせろや。
俺は「街に着いたら取り敢えず全町人から話を聞いて回る」タイプなので、開始30分ほどで相当嫌になった。もう止めようかと。
無論最初から全ての場所に行く必要などないんだが……道路工事や警備封鎖といった理由を作って自由を奪ってほしかったのう。
これもまた調整不足か。ちなみに「最初から巨大な街に放り込まれて困惑」するのは、あの「オプーナ」を思い出させるものがあったな。

ルリの街は路地が複雑に入り乱れている。これはそうして雑然とした雰囲気を出したかったらしい。……成功してたとは思わんな。
んで広い割に、入れる建物は非常に少ない。つーかほぼ店や酒場だけだ。これは拍子抜けした。全部に入れろとは言わんが、少なすぎるだろう。
会話可能な住人もかなり限られていて、道行く人は多いものの、大半は言葉の通じないモブ。これもまぁ仕方ないのは分かるが……。
製作者は「生きた街」の感覚を出すのに非常に注力したらしい。それは伝わってきたが、上手く行っていたとは思わなかった。
どだいゲームでそんなの表現できないという壁を感じさせるだけだった。モーションはリアルでも、人形は人形なんだよなぁ。

街で面白いのが、「通行人との接触」。歩いてる人に主人公がぶつかると、かなりリアルに衝突し、「気をつけろ!」と怒られる。
つってもゲーム的なペナルティは何もない。どころか衝突回数次第である人からアイテムを貰えたりする。まぁオマケ要素だ。
これが下らないなりに面白かった。怖いオッサンだろうと女子供だろうと、正面からドーンと当たり、よろけさせる。
こんな事現実では絶対にできない。しかしこのゲームならやり放題。歪んだ爽快感のある行為だった。モブはこの為に存在してたな。

街にはお約束のサブイベントが色々用意されている。これには期待してたんだが……意外と数が少なく、質もイマイチだった。
お使いは別にいいんだけど、材料が妙に入手し辛かったり、多彩さがなかったり。あんなん幾らでも作れると思うんだが。
何より「現状リスト」的なものがなく、今どんなサブイベントを受けているのか、進捗状況はどうなのか、その辺が全然分からん。
まぁ自分でメモ取る楽しみもあるだろうが(実際そうした)……これくらい搭載しておいてくれよと思った。
ロッタというサブキャラが異様に重用され、何度もサブイベントが用意されていることにも違和感があった。
あんだけロッタに割くなら、描写の足らんメインキャラに回してやればいいのに。別に魅力的なキャラでもなかったのになぁ……。


メインキャラクターは、絵も性格も声もなかなか魅力的な奴らが揃っていた。こういうのは単純ながら嬉しくなる。
今作は「仲間」の描写にもかなり拘っているらしい。確かに頑張っていた。二次元的「傭兵団」の雰囲気を十二分に味わえた。
……問題は、仲間の存在が最も輝くはずの、戦闘シーン。さっきも書いたが、仲間がかなり馬鹿なんだよ。AIが。
敵に吸収される反属性の攻撃をガンガン仕掛けたり、「水の中じゃHPを回復しやがる!」と言いつつ水の中で攻撃し続けたり……。
戦闘前の助言等、台詞では的確で頼りになることを言う。しかし「ゲーム」として動くと、馬鹿丸出し、機械丸出し。人形と化す。
せっかくの仲間の存在感が、戦闘の馬鹿げた行動一つで途端に「ああ、コイツら作りもんなんだ」という白けに転じてしまう。
残念ながら今作はそういうシーンが非常に多い。狭い通路でキャラが詰まっていたら「お前ら虫か」と思ってしまった。
造形が幾らリアルでも、ゲームキャラはゲームとして動いてこそだ。これは高望みし過ぎなのだろうか。
2Dドット絵なら想像で補えた部分も、現行リアルキャラはキッチリ動きで見せねばならない。しかし「リアル」なそれには程遠い。
結果として、アホほど進化したグラフィックで、大昔のゲームに劣るリアリティが展開される。皮肉というか何と言うか……でも事実だ。
これは今作に限ったこっちゃない。見た目だけ進化しすぎたのか、「キャラに命を吹き込む」技術が未熟なのか、俺には分からん。
映画と違ってゲームはプレーヤーがキャラを動かす。だから「想定外」のことをされると、途端に粗が目立ちまくる。はぁ。
ゲーム中のNPCにリアリティを感じ、本当に仲間意識を持てたら、こんなスゲー事はないが……まだ時代はそこまで来てないんか。

あと仲間は全部で5人いるが、全員が常に戦闘参加するわけじゃなく、毎回勝手にメンバーが決められる。これが意味不明だった。
シナリオ上離れた場所にいるというなら分かるが、何の理由もなく「今回はこの3人」とゲームから振り分けられるのだ。馬鹿にしてんのか。
戦闘バランス的に全員参加にできないのなら、プレーヤーに選ばせろよ。そういうゲームは幾らでもあるし、それなら納得もするさ。
マジで理解不能のシステムだった。開発に時間かけた割に、痒い所が残りまくっててゲームに没頭しにくい……はぁ。

キャラボイスは非常に豊富に用意されており、戦闘中にも移動中にも喋りまくる。演技も良好で実にいい。
……が、移動中ボイスは「目的地に着くと中断になる→全部聴くには目的地前で足踏みする必要がある」という困った事態が頻発する。
戦闘中ボイスは戦局に関係なく自動で流れるので、戦闘不能でぶっ倒れてるのに軽口を叩くといったアホシーンがこれまた頻発する。
またしても、優れた演出が「ゲーム」に足を引っ張られ、リアリティをぶち壊している。これは仕方ないのか? やむを得ないのか?
戦闘ボイスはともかく、移動ボイスは距離調整くらいしろよ。テストプレーしたら不自然さが目立つのは分かるだろうがよ。はぁ。
戦闘システム同様、ネタは良いのに調整が追いついてない。こっちは努力で解決できそうなのに、その痕跡が見られないのがなぁ……。


物語は……どうだろう。坂口ヒゲ氏渾身のシナリオ。「星の生命」といった氏らしさを残し、けど一応新しいことに挑戦していると思う。
テーマは幾つかあり、
・騎士と姫の恋物語
・不安定な生活に疲れている傭兵団の「騎士になって安定した生活をしたい」という夢
・グルグ族(別種族)との対立
・ルリ島(世界)の危機

てとこか。これらは渾然一体となってラストストーリーを奏でる。そのハーモニーは見事なもの……だったのだろうか?
これもネタはいいのに調整が……かな。まぁゲームシナリオでその辺がキッチリしているのはそうはないのが現実だが。

主人公エルザは、傭兵。家族同然の仲間達と仲良くやっているものの、自分たちの「使い捨て」っぷりにウンザリもしてきている。
そんな時ルリ島に仕事でやってきて、エルザはルリ島領主の姪・カナンと出会う。ちなみにカナンこそ領主正統の血筋である。
エルザはルリ島にきて「異邦の力(ゲーム的にはギャザリング能力)」を手に入れ、それが領主の目に止まり、戦いに参加し、一目置かれる。
やがて「騎士にしてやる。加えてカナンとの結婚も許そう」と、正に願ったり叶ったりの提案を領主から受けるのだが……?

まず、エルザとカナンの恋物語。これは描写不足かと。一目惚れと言えばそれまでだが、お互いさほど意識する機会があったとは見えなかった。
カナンはパーティ入りすることもあるが、立場的に離れていることも多く、絡みの多い仲間達と比べて描写が淡白に感じてしまう。
ちなみにカナン自身は非常に美しく、声もよく、萌え萌えである。エロさグンバツだったASHの主人公・アイシャを継ぐ魅力があった。
逆に主人公エルザはどうも骨がなく、こいつの頼りなさが恋愛劇の盛り上がらなさに繋がってたかもしれん。シナリオに引っ張られたかなぁ。
でも俺が一番気に入らなかったのは、「ED後どうするか」ときちんと描かなかったことだな。目出度く結婚はしたが、エルザはどうするのか。
まさかルリ島当主の座に就くのか。そんな仕事、傭兵風情に出来るのか。そこにはカナンが就いて、自分は騎士をやるのか。
結ばれてハッピーエンドじゃない。それくらいの「今後」は示してほしかったな。ゲームにそこまで求めても……かな。はぁ。

他のテーマも、個別にはともかく、シナリオ全体としては纏まっておらず、チグハグな印象を受けた。
ムービーやナレーションでの演出もこなれていなくて、様々な場面で突っ込みを入れてしまう。……それも楽しみの一つ、とすべきか?
一作で色々やるんじゃなく、恋愛物に特化した方がよかったかもしれんな。種族間対立なんてそう簡単に描けるもんじゃないよ。
EDではグルグ族と人間が仲良くやってる描写をしていたが、あれは不自然にもほどがある。作り物全開、白ける。
今作に限らず、最近は「二次元物語にどこまで求めていいのか」を悩むことがある。「最高の物語」を望んじゃ、いかんのか? うーん……。

ああそれと、ラスボス。衝撃の展開にしたかったんだろうが、バレバレ過ぎて笑えてしまった。
それまでの言動と、終盤全く姿を見せなくなったことから、寧ろあの展開しかあり得ないだろう。あれじゃなかったら衝撃的だったが。
ラスボス化する理由も何かよう分からんし、シナリオへの不満は最後に爆発してしまったのう。もっと狂気を見せてくれれば……。
あとこのゲーム、ラスボス倒してからも不自然な自由行動を与えられて、EDになかなか辿り着けずかなり困ってしまった。なんじゃこれは。
ED前にセーブポイントを作って自由行動させるくらいはいいけど、サブイベントやらはED後にやらせればいいだろうに。
それかEDへの道筋を明確にしておけ。カナンとの結婚式がそれかと思って頑張ったらまだゲーム続いて顎外れるかと思ったわ。
これも「新たな挑戦」の一つだったんかな。……新しかったら正しい、てわけじゃないんだぞ。はぁ。


坂口ヒゲ氏のゲームと言えば、音楽は植松伸夫氏。今作でもこの黄金コンビはガッチリとタッグを組んでいる。
……が、最初に上がった曲を聴いた坂口ヒゲ氏は、植松ヒゲ氏に全ボツを告げたらしい。25年の付き合いで初めてのことという。
知らず知らずのうちに曲作りが定型化、マンネリ化していたと。そして作り直した結果、想像を上回る品質のものが生まれたらしい。
……まぁ美しいエピソードだが、事実かどうかは分からん。俺にはどっちでもいい。曲が良いか悪いかそれだけだ。マンネリでも良ければいい。
FF5の大人気曲「ビッグブリッヂの死闘」も、植松氏は駄曲扱いしてるらしいし。そんなもんだよ。受け手次第だ。それでいい。

そして出来上がった渾身の曲は……普通に、良かったよ。気に入った。この感想で何の問題もあるまい。
特に頻繁に聴く戦闘曲と街のテーマは、特典ミニサントラにも入っていたから、今エンドレスで流している。いいね。いいよ。
よく分からんのが、今作にはカナンらが頻繁に口にする歌、「ラストストーリーのテーマ」と言えそうな曲があるんだが……
実際の「Theme of THE LAST STORY」は、全然違う曲なんだよ。プレーしたなら、どう考えてもあの歌の曲がテーマと思うんじゃないかなぁ。
まぁ品質には関係ないからいいや。植松ヒゲ氏は、FF15には関わらないんかね。全部はなくても一部には噛んでほしいが……。


ふぅ。
ちょっとボリューム不足との噂だったが、俺はこんなもんでよかったと思う。サブイベントにテキトーに回ってたら理想的なプレー時間だった。
ところで、今作にはオンライン共闘及び集団戦モードがあるんだが、これが面白いらしい。数百時間ハマったという人をネットで数人見た。
実は今になってプレーしたのは、Wi-Fiコネクション終了前にオンラインモードを体験しようかという理由もあったのだ。
……が、結局何かやる気になれず、サービスは終了してしまった。まぁしゃーない。いずれ別ゲームでサルベージされることを願おう。
要は、「TPSの剣と魔法版」であるようだ。実際戦闘システムはあの辺によく似てるから、対戦モードが作られるのも自明かもしれない。
それは、確かに面白そうだな。カバー動作も、対人戦なら生きてくるだろう。むむむ、実は今作の真骨頂はオンラインモードにあったのか……?
まぁもう遅い。今作のサービスは終わったが、種は蒔かれた。次のゲームでこのネタが芽吹けばいい。続編、になれば一番いいが……。

今のゲーム、それも大作に属するタイトルは、もう「一本で完結」させるのは難しい、いやすべきではないのかもしれないな。
今作は色々意欲的な面はあったが、詰めが甘いのも事実だ。でもそれはそれでいい、続編で改善されれば……それを「当然」とする。
もちろんユーザーはこの一本を買ってるだけなんだから、そんなのは甘えでしかないかもしれない。でもゲームの規模が。開発費が。ががが。
この辺、洋ゲーはよく出来ていると思う。極悪規模ゲーでも、それ一本じゃなく、続編を見越して作ってるように思う。推測に過ぎないが。
そして流れに乗れば、アサクリやCOD等、毎年のように新作を出して大儲けできる。あれらが毎回アホ売れするのもよう分からんが……。

今作は荒削りながらも色々入れて、頑張って纏めようとした。しかしそれが上手くいったとは思わん。
これなら寧ろ荒削り状態で、シナリオもまだ先がある感じにして発売し、続編の登場を当然としておいた方がよかったのではないか。
無論、作りとしては不誠実だろう。きちんと一本で纏まっていた方がいいに決まってる。でも、何度も言うが、規模が。肥大化ゲームが。
今作はWii末期発売だし、続編をWii Uとすれば、ハード購入予定者を増やせたのではないか。「ゼノブレイド」がそうであるように。
……つってももちろん、一作目で見切りをつけられるという可能性もある。どうすりゃいいのかね。俺が知るか。はぁ。

今作発表後、坂口ヒゲ氏は何をしているんだろう。ツイッタ覗いてみたけど、ゲームの仕事に動いてるようには見えなかった。
何か写真ばっか上げて……ゲーム、作るのもやるのも離れていそう。はぁ。
本当に今作が「ラストストーリー」になってしまったのか。お金に困ってるってこたないだろうが、意欲の方はどうなんかね。
それとも例によって、これからはスマホの時代だとそっちに流れていくのか。それが大正解っぽいから寂しいもんだよね。
日本製RPG、それも大作RPG。ドラクエの堀井氏と共に、この古きゲーオタの心を躍らせるワードを作り上げた男、坂口博信。
Wii Uで復活作「リバイブストーリー」、乞うご期待。なんてな。俺もええ加減、RPGを諦める時期に来たのかもしれんな。
はぁ……。







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8 コメント

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Unknown (ota)
2015-06-14 16:04:38
初めまして、コメントありがとうございます。
同意してもらえて嬉しいです。
返信する
同意です (くま)
2015-06-14 04:36:51
初めまして。(>_
返信する
Unknown (ota)
2014-06-20 01:45:22
坂口氏と言うよりデザイナーの勝利かもしれませんが、カナンのキャラは良かったです。
いっぺん重いテーマを離れて軽いラブコメRPGでもやってくれんかな。マルチEDで。

>どうしてもどれだけステージを用意できるか、みたいな物量戦になってしまうので、資本の足りない独立後ではまあ成功のしようも無かったですね。
それはありましたね。全戦闘がイベント戦にならざるを得ない。戦闘が面白くても、実は堪能しきれないんですよね。
RPGとしては意欲的なシステムでしたが、今作のままだとRPGに向いてないシステムなのかもしれません。
エンカウントでもっと暴れたいとは俺も思いました。「サモン」で呼び出すのは、ちょっとそれ無茶苦茶やろと突っ込みましたねw
返信する
Unknown (S・R)
2014-06-19 09:46:41
お姫様ヒロインとは良い趣味してますよねヒゲは。
正直、序盤の主人公ヒロインの声の演技は笑っちゃうくらいの下手さでしたが、後半は割りとマシになったかなという印象でした。

こういうRTSとアクションを混ぜたようなシステムはどうしてもどれだけステージを用意できるか、みたいな物量戦になってしまうので、資本の足りない独立後ではまあ成功のしようも無かったですね。
このシステムでシナリオ重視にしたら面クリアアクションにならざるを得ないし、そうするとRPGを期待する人たちは満足しないわけで。
クオリティ犠牲にしてでもエンカウントバトルかなんかでだらっと遊ばせてくれればよかったのにと思います。
返信する
Unknown (ota)
2014-06-18 02:17:07
>>名無しさん

これはどうも、ありがとうございます。
惜しいゲーム……でしたね、確かに。特に戦闘システムは、発展改良させた姿を見てみたいです。
今なら中古1000円以下で買えるでしょうし、グラフィックに目を瞑れば十分遊べるゲームだと思います。
返信する
Unknown (ota)
2014-06-18 02:16:41
>>ジャンさん

決して駄作ではないと思いますが……「ヒゲの意欲作」「かつてのFFのような品質」両方を求められ、どっちも満たされなかった感じですね。
街は広いけど確かに歩き甲斐があまりないと思いました。単純にサブイベントだけでももっと充実させてほしかったですね。
戦闘はシステムには光るものがあったと思いますが、活かしきれてませんでしたね。ゴリ押しも気持ち良くはあるんですがw

このゲーム一本で終わらず、続編を出せば色々改善されそうですが、制作費用や期間の問題で難しそうですね。
もう「大作RPG」が輝く時代は二度と来ないのか……。

>騎士道うんぬんのイベントやヒロインは髭っぽくて良かったよ。
カナンは俺も好きでした。ヒゲ氏、次はギャルゲとかどうっすか……っ!?
返信する
Unknown (名無し)
2014-06-17 20:57:32
良い点も悪い点も分かりやすいレビューですね
色々惜しいゲームなのが伝わってきました
安ければやる価値はあるゲームって感じですかね
返信する
Unknown (ジャン)
2014-06-17 18:41:46
このゲーム、イマイチでしたね。
発売前はついに髭のFFに代わる新しいのがくるのか?って期待されてたのに。

町は広いんだけど探索しても面白くないし。
戦闘もごり押しで進めて面白くない。
武器の数は多いがモーションはどれも同じで代わり映えしないし。
物語も打ち切りマンガみたく展開が早送りで終わる感じだし。

まあ、開発時間が全然足りなかったんでしょうね。
騎士道うんぬんのイベントやヒロインは髭っぽくて良かったよ。
返信する

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