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腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

ロストオデッセイ

2012年03月02日 02時12分54秒 | XBOX360ゲーム感想文


比類なきFFシリーズの生みの親・坂口博信氏。通称ヒゲ。スクウェアのヒゲ。ファミ通のヒゲと区別しないとな。
純粋な創作能力だけでなく、人集め・プロデュース力にも長けたヒゲ氏は、間違いなく90年代スクウェア全盛期の立役者であった。
あれは正に飛ぶ鳥を落とす勢いだった。個々のソフトでなく、「スクウェアだから」でゲームがバンバン売れていた。
ハードメーカー以外の純ソフトメーカーがあそこまで隆盛を誇ったことは、日本ゲーム史上においては他に例がないのではないだろか。
そう考えると、スクヒゲ氏は日本ゲーム史上最も成功を収めた人物と言えなくもない。……あくまで過去形になっちまうが。

その後、ゲームで栄華を極めたスクウェアが次に映画を極めんと(昔使った洒落)して大失敗し、低迷期に入ったのはよく知られている。
スクヒゲ氏はスクウェアの立役者だったはずが、何時の間にか会社をどん底に落とし込んだ戦犯になってしまったのだ。
ヒゲ氏はその責任を取り、登りつめた副社長の座を潔く辞任した。引き際に関しては見事だったと思う。

数年後、新会社「ミストウォーカー」を立ち上げ、坂口博信完全復活。
この時点では俺は喜んだ。俺だってかつてのFFには散々衝撃を受け、大いに楽しんだ世代である。有体に言えば氏のファンなのだ。
スクウェアの人間ではなくなっても、氏の能力は折り紙つきだ。はず。そしてMSを始め、金を出すメーカーもいる。
この頃に発表された「ブルードラゴン」「ロストオデッセイ」「ASH -アルカイックシールドヒート-」の三本を
個人的に「ヒゲ復活三部作」と呼んでいる。3本あれば、復活後のヒゲ氏の能力を存分に判断することができる。
ゲーオタとしてこれはやっておくべきだろう。例によっていつになるか分からんが、ヒゲ復活三部作は必ずプレーしよう。
まだXBOX360も出ていない頃、俺の中でひっそりとそんな決意が生まれたりした。

……なのに「もうヒゲゲーはいいよ」と見切りをつけたのは、ASHの時だったかな。
あれからもう4年か。早過ぎる。しかしそれは、見限ったはずのヒゲゲーに再び手を出す気持ちを作るに十分な時間でもあった。
まぁぶっちゃけ安かったからってのが一番大きいんだけどな。ぬはは。ヒゲははは。
前置きに飽きたんで本題に入るとする。俺的ヒゲ復活三部作最後の一本、オンリー・オン・XBOX360・超大作RPG!!!
「ロストオデッセイ」である。うああああ。はぁ。



ヒゲ復活三部作中プレー済み2本についての個人的感想は、ブルドラは良くも悪くも凡作、ASHはバランス糞の駄作、という感じだった。
ただASHのヒロイン・アイシャのエロさは今もたまに夢に見るほどだ。あれこそHD機で出してくれてれば……。
ブルドラとASHについては世間の評価も俺と似たようなものだったと思う。ちなみにブルドラは日本XBOX360ゲー最高売上だっけか。
ロスオデはその2作と比べると抜きん出て評価が高く、「今度こそは」というプレー前の期待感は何気に大きかった。
一方でゲーム内容については全く予備知識がなく、真っ白の状態で始められた。なかなか理想的なプレー形態だったと思う。


……で、感想を一言にすると「非常にオーソドックスな旧来のRPG」かな。良くも悪くも。
まぁ「良く」が7を占めると思う。つまり理想的な、何気に現代日本で切望されているかもしれない、超大作普通RPGであった。



いやホント、プレー開始後30分で、結構驚かされたよ。思えばブルドラの時もそうだったが、今作はあれ以上だった。
実に普通。エンカウントで突入する戦闘は、コマンド選択式花いちもんめ。一周回って新鮮ですらあった。
経験値レベルアップの成長システムに、スキル装着のカスタマイズ、装備は武器とアクセサリだけに簡略化。
進行はほぼ一本道で、時々挿入されるミニゲーム。行く先々で派手なムービーが挿入され、プレーを盛り上げる。
もうぶっちゃけよ、これFFじゃねーの? 具体的には「FF10」辺りと極めてプレー感覚が近いと思う。
まぁヒゲ氏はそもそもFFの生みの親なんだから、パクリ云々は筋違いかもしれない。
だがせっかく独立したってのに、こうもFFの影をチラつくとなぁ。ちなみにブルドラの影もかなりチラついた。

つってもオーソドックスなRPGという形態は、少なくとも失敗ではないと思う。
今作はもう4年以上前のゲームだが、ある意味現在こそ一番こういうゲームが求められているんじゃなかろうか。
とにかく最近は日本ゲーム業界の衰退が国内外あらゆる場所から言われまくっており、中でも「JRPG」はその象徴のように扱われている。
実際、かつてあれだけ業界を席巻したRPGは、現世代になって勢いを落としまくり、低迷しまくっている。
俺自身がプレーした限りでもこれは同感だ。RPGがダメなんだから、かつてのRPGの雄・スクエニが最近パッとしないのも当然だろう。

RPG衰退には色々な原因があるだろう。技術の進歩が追いついていないとか、アイデアの枯渇とか、開発費の高騰とか。
で、俺はRPG衰退の理由の一つに「無差別に新しさを追い求めたから」というのがあると思うのだ。
「新しさは、正しい。新しくない創作物などカス。昔と同じものを作って、そこに何の進歩がある?」。
こういった思考はどんな業界でもありがちだと思う。実際間違っちゃいないし。新しさを求めなくなったら人間おしまいだろう。
だが新しいのは正義として、古いものは悪なのか? それは全然違うと思うのだ。
今の時代に経験値レベルアップ。今の時代にエンカウントのコマンド選択戦闘。
確かに古いさ、見慣れているさ。じゃあ「つまらない」か? もちろんそうなるかもしれんが、作る前からそれは見えることか?
近年のJRPGは、色々挑戦していると思う。特に戦闘システムについては、旧来の手法を取っている作品は殆どないのではなかろうか。
でもそれが面白さという最終目的に向かっていたかは……正直、微妙と言うしかない。本当に正しかったのかと問いたくなる。
なら開き直って、旧来のRPGを今の技術で作る。豪華で派手に、しかし分かり易く遊び易く。
そう考える製作者が、現RPG市場の中心であるPS3において一人もいないのは、考えてみれば本当に不思議な話だ。
それで失敗したなら分かるんだが、誰も試してないんだもんなぁ。うーん。
あ、「二ノ国」はそうなのかな? ごめん知らない。


今作と、ついでにブルドラは、そんな「現世代機で旧来のRPGをやりたい」という層にピッタリのゲームである。
これが狙ってやったことなのか、単にヒゲ氏にこのタイプしか作れないのかどうかは分からんが、図らずも市場の隙間と突いているのは確かだ。
懐かしくも新鮮。飽きているようで実はこれがやりたかったと思うような、説明書不要のシステム。
ただしグラフィックだけはHD機の性能を生かして徹底的に豪華にする。ある意味誰もが思いつく単純な企画。
しかしヒゲ氏以外誰もやらなかった企画。結果的にはこれで正解だったと思う。喜んでいいことなんだろう……な。


そして単にオーソドックスなだけでなく、全体的な完成度もブルドラより上で、存分に旧来の雰囲気を味わうことが出来る。
システムは簡素だが戦闘バランスはややキツめに調整されているのも、今作には合っていたと思う。
何度も全滅し、その度セーブポイントからやり直した。理不尽なボスキャラもいたけど、そらすら古い雰囲気を思い出させてくれた。
今作、PS3で発売されてたらどれくらい売れたのか非常に興味深い。或いは日本XBOX360の普及があと5倍あれば。
……どちらも虚しい想像である。でも勿体ないなぁ。うーん……。


オーソドックスである事は今作の良い点だが、もちろん古いが故の退屈さ等の欠点もある。
美麗でリアルなキャラクターがいちいち花いちもんめで行儀良く戦うバトルは正直滑稽で、カッコ悪い。
陣形や位置取りなどの今風な要素はなく、あるの前衛後衛という「FF2」レベルの概念だけ。うーん。
古いRPGに飽きて今作に新しい刺激を求める人には、何の進歩もない駄作と映ることだろう。そう言われても仕方ない。
これも一つのやり方と解釈するしかないやな。ユーザー全員を満足させるなんて無理なんだから。

あと旧来のゲームでありながら現代級の豪華さで作られているので、ゲーム全体がかなり「重い」ことは大きな欠点だと思う。
プレー中の読み込み時間がかなり多く、また長い。終盤は敵の強さもあがり、戦闘に時間がかかり過ぎてウンザリした。
そういや今作が発売された頃は、まだXBOX360にHDDインストール機能が搭載されていなかったんだな。今じゃ考えられん話だ。
ただインストールしても読み込みが劇的に改善されるわけではない。もちろんシーク音は無くなるけどな。
読み込みが遅くて多くてキャラの挙動もやや鈍重。戦闘も町の探索も、楽しんでる半面面倒臭くもあった。

俺は先日ドラクエ1~3をWiiで再プレーしたが、あんだけ糞古い作品ながら「軽さ」のおかげで割とすんなり楽しめた。
戦闘が軽いから、何度敵と戦っても大して疲れない。町で人の話を聞いて回るのもさほど苦痛にならない。
今作に限らんが、最近の「リアル」なゲームが失った快適さである。話しかけた人がいちいち振り向いて手足を動かすのが、果たして正しいのか。
本来誰でも遊べるものだった日本RPGがどんどん重厚なものに、また頭痛のしそうなシステムお化けになっていった。
衰退の理由はこの辺にもあるんかもな。誰もが楽しめるRPG。オーソドックスな今作ですら、そうではないと思う。


戦闘バランスはややキツめながら良い感じなのだが、ゲームが終盤に入ると様々な面で綻びが出ていた。
今作には「不死者」と「通常者」という2種類のキャラが登場するのだが、終盤は不死者が強くなりすぎで、通常者の出番がない。
また入手するアクセサリやスキルが異常に増え、メニュー画面がゴチャゴチャに。もうちょっと整理できるように考えろよ。
そして後半の入手できるスキルには超強力なものがゴロゴロあり、これで戦闘難度が音を立てて低下した。
強くなる快感はあったが、どう考えてもやり過ぎだった。序盤のバランスからは考えられない調整だった。

ゲームの展開という点でも、終盤までは一本道なのに、ラスボス戦直前になって行ける範囲が一気に解放されるのはやり過ぎだと思った。
サブイベントの充実は結構なことだが、その出し方が極端なのである。もう少し散らして配置できなかったのか。
この、ラスト直前で一気に解放されるサブダンジョンで隠しボスを倒すと、前述の超強力スキルを入手できるので、
プレーヤーとしてはやりたくなる。レベルもガンガン上がり、ラストダンジョン突入前とは比較にならないほど強くなった。
……おかげで、ラスボスがアホほど弱かった。厳密には違うが、レベル99で挑んでいるようなものだった。
ラスト前に解放されるのは別に「隠し」のダンジョンやボスというほどではなく、乗り物で世界を回っていれば自然に発見できる要素だ。
それらをテキトーに埋めていくだけで、ゲームが大詰めになってからバランスが大崩壊。
これらの要素はエンディングを見たら解放されるようにすればいい。それだけでゲーム終盤の印象はガラッと変わっていただろう。
まぁサブダンジョンを回っていくのは楽しかったんだが、一方で本筋が終盤になって白けてしまったのは否めない。
ヒゲさん、RPG何本作ってんだよ。FF5のオメガや神竜を配備したあのセンスはどこ行ったんだ。



物語。
システムがごくオーソドックスなので、RPGのもう一つの柱・シナリオにかかる期待は大きい。
実際今作のシステムが簡素なのは、シナリオに没頭させる為という理由があったと思う。担当は、もちろんヒゲ氏である。

今作は、主人公・カイムを中心にした「不死者」の物語である。
不死者は文字通り不死、そして不老の存在で、作中ではそれを端的に「千年を生きる者」と表現している。
実際カイムらは大体1000歳であるらしい。つってもあくまで「永遠」を「千年」に置き換えてるだけで、寿命はない。
俺らパンピーがどんなに頑張っても、せいぜい100年が限度。その十倍を、若い姿のまま過ごし、これからも生き続ける。
不老不死は多くの人間が一度は憧れるものの、よくよく考えた後にその恐ろしさに気付き、人の世が良く出来ていることを悟る。
カイムもやはり己の特質に喜びはなく、寧ろ「死ねない」ことにもがき苦しみ、生きている。
それだけでなく、登場する4人の不死者は何故か30年前以前の皆記憶を失っている。不死者だということは覚えているみたいだが。
カイムは旅を通じて自分達の正体、記憶を奪った者の陰謀を知り、それを阻止する為に戦うのであった――。


……うーむ。掴みは悪くない。良いネタだと思う。
創作物の良い所は、長大・広大なものを簡単に表現できることだ。千年だろうと東京ドーム8個分だろうと、一行で書ける。
現実にそれを作ったり時間が流れたりするのは途方もなく大変なことだが、創作物にそんな枷は一切ない。妄想万歳である。
そういうぶっ飛んだ設定を採用できるのは創作物の特権であり、面白さを醸す為のコツの一つなんじゃないだろうか、と思う。
よって「千年を生きる者」というあり得ない、仮にあり得たとしても実証におぞましい時間がかかるネタは、良質だった。
このネタを軸に、普通の人間「通常者」も絡み、物語は展開していく。斬新とまでは言わんが、陳腐でもないと思う。

また、カイムのキャラクターと物語を深めるのに大いに役立っているのが、サブシナリオ「千年の夢」だ。
これは行く先々の町やダンジョンの風景や会話を見たカイムが突如思い出す過去の記憶で、それが短編小説の形で語られる。
小説だからビジュアルは殆どないが、ゲームらしく音楽で盛り上げ、文字表示に工夫をしている、要するにサウンドノベルだ。
千年の夢はヒゲ氏ではなく直木賞作家・重松清氏が担当している。ゲーム本編にはほぼ関係なく、読み飛ばしも可能だ。
ゲームを早く進めたければ後で読むこともできるので、進行の邪魔にもなっていない。コロンブスの卵的で、優れたサブシナリオだったと思う。

そしてこの千年の夢が……単純に、話の出来がとても良い。さすが直木賞作家と言うべきだろうか。正直本編よりもずっと良い。
ヒゲ氏だって当然プロだし、ゲームシナリオと短編小説を単純比較は出来ないのかもしれないが、それでも大きな差を感じた。
千年の夢の多くはカイムの不死設定を最大限に活かし、通常者とのやり取りにおける切なさ、悲しさ、儚さなどが描かれる。
死ねない自分。そんな自分を置いて先に死ぬ人々。絶え間なく続く殺し合い。それでも子を儲け、次代へ命を紡ぐ人々。
中には明らかに現代日本をモデルにした話などもあり、含蓄に富む。読んでて面白いし、色々考えさせられた。
まぁ全てが粒揃いとまでは行かなかったが、十分に高品質だった。最初に登場する「ハンナの旅立ち」でもう俺は半泣きになったよ。
千年の夢は単純ながら非常に斬新で、かつ質も高く、申し分のない出来だった。これだけで今作の価値は大きく上がっていると思う。
こういうちょっとしたアイデアの効果が大きいと、受け手としても嬉しくなる。後進のRPGも是非参考にしてほしいものだ。


……が、この千年の夢、品質とは別の意味で問題も孕んでいたと思う。
何より問題なのは、カイムの物語でありながら、本編とはまるで関係がないことだろうか。
過去の記憶と言っても間違いなくカイムと世界が歩んだ道なのに、その痕跡が本編のゲームにまるで登場しない。
千年の夢では多数の国や町村が登場し、戦争や独自の文化が描かれるが、本編で世界中を旅しても、それらしい場所はどこにもない。
もちろん千年間には国も町村も興っては滅んでいるのだろうが、史跡は残るだろうし、全滅しているのは不自然だろう。
そういう意味ではたった千年であり、文明が丸ごと跡形もなく消え去るほどの時間ではないはずなのだ。
ハッキリ言ってカイムの過去と言うより、カイムが別次元別世界で体験した物語という感じがした。
本来なら本編と整合性を取って双方の物語を構築しておくべきなのだろうが、そこまで摺り合わせる余裕はなかったのだろう。
単品としては高品質だが、今作のサブシナリオとしてはある意味失格なのかもしれない。厳しい言い方、になるのかもしれんが。

それともう一つ、ある話に登場する「カイムが千年の間に迎えた十数人の妻」という記述は、本編の根幹を揺るがしかねない大問題だと思う。
本編にはカイムの子と孫が登場し、重要人物となっている。無愛想なカイムも彼らには深い愛情を見せる。ちなみに子に不死は遺伝しない。
だが千年の夢により、カイムは千年間に十数人も妻を娶り、当然何十人も子を儲けたであろうことが判明するのだ。
おいおいおいおい、それでいいのか。多妻が問題と言うわけじゃないが、サラ以外の妻の存在は大問題だ。
子孫には愛情を持つカイムなら、本編に登場する子と孫以外の子孫にももっと関心を持ち、訪ねるなり調べるなりの描写があるべきだろう。
また、例えば「かつての娘とそっくりな女と出会ったら、実は子孫だった」とか、そういうイベントも幾らでも作れるはずだ。
なのにこの設定は本編では完全にスルーされ、カイムの子孫は現状の子と孫のみとしか見えない。非常に不自然である。
やはり坂口氏とヒゲ松……じゃない重松氏は、双方のシナリオ制作に当たり、もっともっと密に連携すべきだったと思う。
質はともかく非常に浮いている上、本編の内容にまで疑念を抱かせてしまった。これじゃサブシナリオとして本末転倒である。


千年の夢を離れても、本編の物語には意外なほど「千年の重み」が感じられず、殆どの事件が過去30年程度のスケールで描かれていた。
これには拍子抜けし、ガッカリした。設定は壮大なのに、シナリオの表現がそれに全然追い付いてない。看板に負けてしまっている。
そもそも「千年生きる者」の物語を本気で作るなら、そいつが生きた千年の歴史を史実として作るくらいの気合が必要なはずだ。
もちろんその全てをゲーム本編に使えるわけはないだろうが、それくらいのリアリティがないと千年なんてただの二文字に堕してしまう。
導入でこそ期待できた壮大さは、シナリオを進めるにつれ結局「それっぽい」だけという事が見えてきて実に残念だった。
上で書いたが、カイムが数百年前にやった事の因縁が今襲い掛かってくるとか、そういう仕掛けが本編に一切存在しないのだ。
一体何の為の千年、不死の設定なのだろう。所詮こんなものなのか。はぁ。

物語終盤で明かされるカイムらの不死の秘密も、個人的には期待ハズレだった。
何らかの不思議パワーが絡んでいるのは当然予想できたが、異世界からやって来たってなぁ。うーん。色んな意味で合わないと思う。
しかもカイムらは記憶を失っていただけで、「この世界を調査する」という自らの意思で千年生きたことも判明する。
重い宿命でも運命でもなく、調査員が自分で選んだ調査法だったのだ。これはちょっとどうなのか。
この辺、現FFの野村氏的な「カッコ付け」を見習えないのかと思う。野村氏なら痺れる設定を用意してくれただろうなぁ……。

そしてシナリオへの不満は、EDで極限に達した。
俺はこの物語の終わりは「カイムらの死」しかあり得ないと思っていた。生きる意味を見出しての死。人間らしい死。そういうものだと。
まぁ異世界設定が判明してからは「元の世界に戻る」が目的になっていたので、それでも構わないとも思っていた。
……が、実際には死に場所どころかラスボスとのゴタゴタで元の世界に戻る扉を破壊してしまい、そのままこの世界に残ることに。
もちろん不老不死もそのままだ。帰る手段がなくなったんだから、今度こそ本当に永遠の存在になってしまったと言える。
ハッキリ言って絶望的バッドエンドとしか思えないんだが、信じ難いことにこれが今作唯一のエンディングなのである。
カイムもEDムービーでは何故か矢鱈と幸せそうで、「もう千年生きてみるか。今度は悪い記憶ばかりじゃなさそうだ」とか言ってやがる。
いやいやいやいや、それ違うだろ。今は可愛いアンタの孫も、あっという間に年食ってアンタを残して死んで行くんだぞ?
そりゃ喜びもあるだろうが、今までと同じ悲劇がこれからも永遠に繰り返されるんだ。一体なんでそんなニコヤカなんだよ!?
全く理解も感情移入も出来ない、個人的に最低最悪のEDだった。バッドエンドでこれなら納得だが、そうではないんだから救えない。
ホント、一体何なんだろう。やはりヒゲ氏に期待したのが間違いだったのか。ヒゲ氏が伝えたかったこともこれでは何も分からない。
システムを極めてオーソドックスにしたのは、シナリオに浸ってほしいからであろう。なのに何故だ、何故こうなんだ。
俺が求めるハードルが高すぎるのだろうか。自分ではそうは思わない。普通に楽しませてくれればそれでいいんだ。
はぁ。結局「所詮ゲームのシナリオ」なのかな。千年の夢が高品質だったことも、それを際立たせてしまっているなぁ……。


そんな感じで整合性や終わり方には不満タラタラだが、徐々に真相が明かされる全体の流れやボリュームは良かったと思う。
今作もブルドラと同じく、悪役がラスボスとなる人物以外におらず、最初から最後までそいつを敵に戦い続けた。
黒幕が登場する展開もそれはそれで好きだが、こんな風にすっきりしている作りも良いものだ。ゲームがダレない。
このラスボス・ガンガラが、今時珍しい「世界征服を企む男」というのも、一周回って新鮮だった。悪役はこうでないとな。
だがこの古臭い野望も今作では安っぽくない。ガンガラも実は異世界からやってきた不死者であり、あちらの世界には「感情」がないのだ。
カイムもガンガラもこちらの世界に来て「人の感情」を知った。そしてガンガラはここで「欲望」といったものに魅せられてしまったのだ。
世界征服は俺らから見たらチンケでも、ガンガラにとっては新鮮で燃える野望なのである。ここは設定が上手く溶け込んでいたと思う。
千年なんて大風呂敷を広げず、この辺を軸にもう少し小さなスケールでシナリオを纏めれば良かったんじゃないかなぁ。
はぁ。


登場キャラについても、計9人も仲間になる割に、持て余し気味だったと思う。
特にサラが酷い。カイムの妻という美味しい役柄なのに、ハッキリ言ってシナリオ上殆ど見せ場がない。
一体何の為にいるのかさっぱり分からなかった。ヒゲ氏が当時眼鏡萌えでゴリ押ししたとかそういう理由を想像してしまう。
カイムの孫2人はまぁ可愛らしかったが、延々母親の影を追うのはウンザリした。お前らいい加減振り切れよ。はぁ。
不死者であるミンと通常者ヤンセンは今作では貴重なラブコメ要員だったが、不死の問題が全く解決していない以上、祝福できないよ。
ヤンセンが若いうちはいいけど、老いて死んだらどうすんのよ。今が楽しければいいのか? ガキみたいに刹那的だな。
そういやミンが「千年女王」として君臨している以上、一般人にも不死者の存在は広く知られているはずだ。
なんでこんなファンタジー極まる存在があっさり受け入れられているんだろう。その辺の描写も全然なかったなぁ……。


世界設定は、一応剣と魔法が軸だが、「魔導」で動く機械が多く登場し、非常に油臭い。悪口じゃないよ。
FFで言うと「6」に近いと思う。あの世界が好きだった人はすんなり馴染めるだろう。
非常に機械や魔法が発達した世界で、カイムらは剣を武器に戦う傭兵をやってるのは、冷静に見ると滑稽である。
RPG=剣が武器 という発想から抜けきれないヒゲ氏の限界か。そりゃ剣はカッコ良いけどさ。はぁ。


グラフィックは、4年前ながら十分美しいと思う。特に機械の描写が見事で、本気で画面から油の臭いが漂ってくるようだった。
町や自然の背景もきっちり描かれており、「美しいグラフィック」を堪能できた。超大作RPGにはこれがないとな。
反面人物は背景よりは粗さが目立ったように思う。つっても貶すほどではなく、十分ドラマを演じてくれていた。
今作のキャラクターデザインはあの井上雄彦氏が担当しているが、悪いわけではないものの、正直魅力的でもなかった。
特に女キャラがなぁ。4人登場して、一番マシだったのがロリ枠のクックってのが。セスはヒロイン枠ですらないし。
ちなみに俺は「スラムダンク」を「ドラゴンボール」と並んで聖典扱いしているほどのファンである。
あの作品はあらゆる創作の中で別格だ。名台詞の数々と共に、死ぬまで好きでいるのが決まっていると断言できる。嗚呼。

ヒゲゲーだから当然ムービーが多用されているが、大半はリアルタイムムービーで、プリレンダムービーは少ない。
これ何気に驚いた。ヒゲ氏なら品質に拘って、もっとプリレンダで占めたがると思っていたのに。
まぁこれは恐らくDVDの容量的な問題が大きいんだろうな。ただでさえディスク4枚もあるのに、これ以上増やせないよ。
ムービーは多いがゲームの邪魔になるほど長くもなく、割と理想的だったと思う。
ポーズボタンからいつでも飛ばせる親切仕様もある。かつての独りよがりが無くなってて何よりだ。


音楽は、今回も植松氏が良い仕事をしていたと思う。
言葉で表現するのは難しいが、町もダンジョンも戦闘も、良い曲が揃っていた。
少々迷ったが、サントラを買っちまったよ。3000円もした。ゲームソフトより遥かに高かったぞ畜生。
植松氏はFFを離れても、以前と何ら変わらぬ品質を保ち続けていると思う。名前だけの作曲家じゃなかった。
ちなみにブルドラもASH(植松氏無関係)も音楽は好きで、今もサントラ(レンタル屋で借りた)を聴いてる。
ゲーム音楽は良い。実に良い。妙な論評をせず、頭悪く、良い。それでいい。




ふぅ。シナリオの不満が長くなったな。
つっても60時間強、なかなかハマって楽しめた。RPGを自然にこんだけやったのは何気に久しぶりな気がする。
ヒゲゲーとしての感触も前2作よりずっと良かった。いい形で三部作の最後を締められたな。終わった……。

今作に続編はまずあり得ないが、MSの発売だから移植はもっとあり得ない。XBOX360でしか遊べないRPGだ。
これ、実は大きな売りなのではないかと思う。何だかんだ言って日本XBOX360は全然売れてない。今作を遊べる人は限られているのだ。
amazonでサントラのレビューを読んでいたら、「ゲームもやりたいけどXBOX360持っていないので断念した」という人が何人かいた。
坂口氏は有名人だから名を知ってるFFファンは多いが、濃いゲオタでなければXBOX360購入までは行かないのだろう。
そういう意味ではハード選択を間違っている気がするが、そもそもMSの金で作られている以上、それは的外れだ。
XBOX360でしか遊べない。だからプレーしたければXBOX360を買わなければならない。オンリー・オン・XBOX360。
これは本来当然のことだと思うのだが、最近はとにかくマルチハード展開のタイトルが多く、個人的には非常に気持ちが悪い。
多くのHDゲームがXBOX360とPS3で同時発売され、品質も大して変わらない。一見喜ばしいようで、こんなつまらん事態はないと思う。
特定ハードでしか遊べないからこそそのハードの価値が上がり、欲しくもなるというものだろう。
またそのハードに特化して作るからこそ、ハード性能を徹底的に活かし、より面白いゲームが作れるというものだろう。
まぁ今の化物のような性能を誇るゲーム機には最早そんな理屈は通用しないのかもしれんが、客として只管面白くないのである。
そんな中、こういうハードメーカー謹製のソフトは間違いなく独占供給だから、安心と優越感を持ってプレーできる。
今作のように、PS系の方がユーザー層が合っていそうな作品だと尚更だ。ふふふ、XBOX360を買わない君がいけないのさ。


今作の感触が割と良かったし、もうヒゲ氏のゲームを避ける気はない。と言うより、もうそんな事言ってられる状況じゃない。
こんだけ日本ゲーム業界が衰退した中で、一応世界的に知られ、RPGを作り続けているヒゲ氏は貴重な存在である。
氏の作風がどうあれ、日本RPGファンとしては氏に頑張ってもらうしかないのである。やや消極的だが、これからも応援したい。
んでヒゲ氏の最新作が、1年前に発売されたアレなわけだが……アレもまた、例によって派手に値崩れしたわけだが……。
まぁつまり、そのうちやるだろう。アレもまた独占だから、妙な迷いを持たずに挑戦できる。
比類なきRPGクリエイター・坂口博信氏の更なる活躍を祈って終わり。
アレが不評だったら引退するとか言ってたが、多分結果に拠らず何かやっていってくれるだろう。それでいい。

ゲーム業界がどんな状況になろうと、RPGが消えることはない。そんな事は許されない。
ゲーオタもまた、RPGに飽きるなんてことは許されない。少なくとも俺はな。初心忘るるべからず、だ。
作り手も受け手も、「たたかう」しかないんだ。いつまででもやってやるよ。千年だってやってやるよ。
テキトー。
はぁ。









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4 コメント

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Unknown (S・R)
2012-03-10 14:26:32
ロスオデですか。やっぱり小説部分は良いんですねwそれしか聞いたことないけど。

ラスストは結構面白かったですよ。ストーリーがクサいとか一本道どころか面選択アクションなのがアレですけど、隠れんぼ斬りはいい感じです。そんなにプレイ時間もかからないし。
返信する
Unknown (ota)
2012-03-10 20:49:49
「千年の夢」はとても良いアイデアでした。久々にコロンブスの卵を感じました。
小説部分は後に独立して単行本化されていますから、それだけ好評だったのでしょう。
……あくまでゲームの補完ノベルなので、ちょっと間違ってる気もしますが。

ラスストは何だかんだでやらなきゃいけないゲームですね。
どうやら今後海外版が出る(?)ようなので、そこで評価が上がればいいんですが。
返信する
Unknown (uboaa)
2012-03-11 06:04:08
更新お疲れ様です。
故ゲーム批評を彷彿とさせるような、辛口かつゲーム愛に溢れた文章を、いつも拝読させていただいています。

個人的には、ロスオデは外部から作家さんを招いたゲームの中では、(まだ)成功した方だった方だと思います。
明らかな失敗はEVE TLOでしょうか。

近年、プロ脚本家や作家を招けとの声が割と多く聞こえてきますが、やはり業界外との連携は色々な面で困難な気がします。

そもそも、そういった所に活路を見出さざるを得ないほど人材が不足しているという業界の構造自体(実力のある脚本家の不足、立場の弱さ)が問題であるように感じます。

何れにせよ、ソーシャルやDLCに縋るような姿勢は大嫌いなので、ここいらで何か一つ大きな技術的ブレイクスルーでもないかな、と他力本願に願ってやまない毎日ですw
返信する
Unknown (ota)
2012-03-11 16:26:49
コメントありがとうございます。
げ、ゲーム批評……ええ、俺も読んでましたよ。あの雑誌を思い出すと複雑な感情が溢れてきて止まりません。うひひぎゃぐあ。
よほど読者が少なかったのか、末期にアンケート葉書を送ったら何度か掲載されたりもしました。嬉しくも悲しかったなぁ。
隔月間という遅さがなければ今でも読みたいくらいなんですけどね。


娯楽作品において、絵はぶっちゃけ豪華さでどうとでも誤魔化せますし、音楽は大御所が作れば一定の質はほぼ保証されます。
しかし物語に関してはどこまでも作者の能力次第で、金や時間や人員を割けば解決する問題ではありません。
まぁ「お約束」を駆使すれば無難なものは量産可能ですが、そんなのは何の評価もされませんし、また使い減りが激しいものです。
娯楽作品の中でも、ゲームは進め方がプレーヤーに依存し、進行ペースはまさに人それぞれ、放置→忘却のことまで考慮しなくてはならない。
ゲームシナリオを作るってのは非常に難しいことだと素人でも想像できます。ヒゲ氏は寧ろよくやってる方……なのかな?
でもそろそろ、ゲームシナリオの専門家や方法論が出来上がってきてもいい頃だと思うんですよね。
昔は絵や音楽等、ガワの進歩だけでユーザーは喜び、シナリオは悪くてもあまり問題視されなかったように思います。
それらが頭打ちになってきている今こそ、シナリオの真価と進化が問われているのではないでしょうか。上手いこと言った、うへ。
外部プロを招いて質が上がるならそれでもいいと思いますが、恐らくそう単純な話でもないのでしょうね。
難しいなぁ……。


>ソーシャルやDLCに縋るような姿勢は大嫌いなので
全く同意ですが、ソーシャルはともかくDLCはそろそろ避けて通れなくなってきてますね。はぁ……。
メーカーは金を稼がなきゃ始まらない。それこそが彼らにとって一番大事な「物語」なんですから。
そのうち劇中でヒロイン死亡イベント→彼女を救いたければ500円必要だ! なんてのも出てくるかもしれませんね。
……ちょっと面白そうかも。あとドラクエ5でビアフロ両方ゲットシナリオ800円とか! それなら買う、買うぞ!
金を払う形が変わるなら、せめて気持ち良く払いたいもんです。はぁ。
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