織内将男の山旅の記録

若かりし頃よりの山旅の記録です・・!!

立山・剱岳「天の記」(15) 「平蔵の頭」

2009年07月20日 | 立山・剣岳




写真:前剣頂上より本峰(手前のピークは平蔵の頭)
写真:前剣の門
写真:鎖場と平蔵の頭・・?


立山・剱岳「天の記」(15) 「平蔵の頭」

標高差250mの「前剣」を、やっとのおもいで這上がってきた・・!。
稜線は穏やかな地形であるが、吹きすさぶ風に煽られ、一服入れるのも束の間、早々に前剱を下りる。 下りるといっても下山するのではなく、本峰へ向かうため、一旦、ピークを降りるのである。 
下りはじめると又々、急峻な岩場が待ち受けている。
一般にそうであるが、登りの時は比較的安易に行うことが出来る。 それは上方を見ながら目線に近いホールドを探せばよく、確実性と安定性が得られる。 しかし、下りは谷底の恐怖と戦いながら、尚且つ、スタンスが目より遠いところにあって不確実になりやすい。 事故は登るときより下りの時に発生しやすく、より集中力が必要なのである。 尤も、一般道の下山時においても脚部や脚関節などの内傷に陥りやすく、やはり気を配らねばならない。

一先ず下りきった処に鉄のブリッジ、そしてその先の岩壁には横の這い様に長いクサリが取り付けられている。 
ブリッジというのは、ある鞍部まで降りてると長さにして4~5㍍の短い鉄の橋のことである。 この橋の真下はV状に切れていて、両側は、これまたスッパリ切れ落ちていて結構、吸い込まれそうな恐怖を感ずるところである。 一瞬ためらいながらも、風の合間に姿勢を低く保ちバランスをとって急ぎ足で通過する。
その向こうは行き止まりのような垂直の岩壁である。 有るか無いかのはっきりしない足場のルートを横たわるクサリを頼りに、しっかり握って右側へトラバースする。 
脚下は、深い深い平蔵の修羅の谷がバックリと口を開けている筈である。 幸いと言うか、この修羅の谷は濃い霧がすっぽり覆っていて、恐怖心を少なからず和らげているのである。
切れ落ちる岩壁を右に、左にやり過ごしながら、ルートは東側を大方巻くように付いているので、牙をむく西よりの悪魔(風)を少しでも和らげることが出来るので有難い。 
岩場の○印、矢印、そしていたる所に張付けてあるクサリを頼りに、這い這いをしながら、ジワリ、ジワリと進むのみである。 何本かのクサリを頼りにヘツリ部分(絶壁などの険岨な路などのこと)などを慎重にくだると、どうにか一息つける処まできた。

そこには、槍の穂先の様な岩塔が二本不気味に立っている。 所謂、「前剣の門」というらしいが、地獄の入場門、「針の山」のゲートを連想させるのに充分である。 
地獄へ向かう途中には三途の川や賽の河原が待ち受けているが、こちらは山岳の急峻な地、地獄本丸へ到る地獄門といったところか・・?。 「三途の川」は謂わば、千尋の谷底へ連なる、大いなる渓谷に例えれば、「賽の河原」は、その千丈の谷底へ吸い込まれそうな、細く切り立ったガラ場の行程をいうのではなかろうか・・?。
この地獄の本丸、つまり剣岳及び頂上に至るまでの道程は、いかなる修羅場、死の世界が待ち受けているのやら甚だ心細い限りなのである。 しかし、我等は、立山信仰の修行者、回峰行者にもなったつもりで、如何なる修羅が待ち受けていようと内心は無心で、無言で、無我の境地で、地獄本丸の参拝を目的に(頂上制覇)、ただ、そこを目指して突破しなくてはならないのである。

門からは平蔵谷側の細く頼りない岩棚の道を、クサリを利用しながら進む。 更に登りきると、今まで足場もままならないような岩場の連続が嘘のように、狭いながらも平坦な地でホッーとする。 安定した尾根道も束の間、又々岩の大壁が立ち塞がる。 そして左手、東大谷俣が鋭く切れ落ちている。この岩峰の上は「平蔵の頭」というらしく、岩面に矢印のペンキが記されている。 
鎖で攀じ登ること数回、平蔵の頭に達したようである。 山頂には小さいながらも三角錐のケルンが施してあって心が落ち着く。 

次回は、平蔵のコルから山頂


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