古稀背包客放浪記

古稀バックパッカーの東南アジア見て歩る記

西寧の掏摸(スリ)団 その2

2010-07-21 10:40:12 | 日記
還暦背包族(bei bao zu)放浪記 その58

7月16日(金)その2

キャンセルしたバスの払戻金40.2元が全財産だ。

ターミナルの入り口にボーっと立つも何事も無い。
完全に真っ白な状態だ。
頭が回らない。
本当に気が抜けてしまったようだ。
何をする気にもならないし、そう、悔しさや、しくじったという後悔の念も無い。
ただ、ボーっと立っているだけだ。

何も気付かずに夏河行きのバスに乗って行ってしまったら、
もっと大変なことになったかもしれないと思う。
夏河では紛失届けも、何もかも出来ないし、西寧まで戻る金も方法も無いからだ。

とにかく、何か動かなければ為らないんだが気が抜けて腰砕けの状態でボーっとしている。

完全な仕事を遣られたいう気がしてくるだけで、それ以外の感情が出てこない。
仕事人への恨み辛みや、憎しみが涌いてこない。
同じように中国社会に対する不満のようなものも涌いてこない。
ただ、完全な仕事を遣られたという気しか起こらない。
不思議だ。

あまり大変だという気にもならない。

まずは、盗難届けを出して、銀行カードのストップ手続きをして、
パスポートは如何するんだろう、ビザは如何為るんだろう、金の工面は如何しよう。
何処に行けばいいんだろう。

そうだ、別の宿だが、つい先日まで一緒に行動したT氏が居るはずだ。
15日までは西寧に居ると言っていた様な気がする。
今日は16日だがまだ8時前だ。行ってみよう。
そうだ、彼にお金を借りよう。
お金さえ手に入ればその後は何とかなる。彼にお金を借りよう。

40.2元の中から1元を出して市内中心部へ向かうバスに乗る。

彼にお金さえ借りられれば何の事は無い。
何とか切り抜けられるに違いない。
そのお金で北京か上海に行ってパスポートを手に入れ、
いや、日本に一度帰っても良い。
そうすれば何の事は無い。もう一度出発すれば良い。

T氏の投宿している宿は市内中心部のユースだ。
気が急くが如何しようも無い、落ち着くしかない。

フロントのオネーチャンにT氏はと聞くと、その辺に居ないかとの返事。
玄関の辺りを見回すがそれらしい人影は見当たらない。
今チェックアウトして出かけましたと言う。彼はチャリンコ族なのだ。
居ないよと言う。何時出たの。
ほんの10分位前だからそこら辺で出発の準備してないのと言う。

今7時40分。それらしき人影は無い。