古稀背包客放浪記

古稀バックパッカーの東南アジア見て歩る記

大草原国家旅遊風景区の草原と空

2009-10-31 11:55:35 | 日記
その14 還暦背包族(bei bao zu)ベイバオズ

2009年10月23日(金)

昨夜は良く寝れなかった。
電話が数回鳴ったり、ドアをノックされたりした。公安や武警であれば宿の人間を連れて来るはずだから簡単にドアを開けられるはずだ。そうでない所をみると誰かの間違いか、何かのイタズラだ。
服を着たままベットに横になる。不安な一夜を過ごす。

そんな訳で、早々に出発することにした。成都に帰ろう。
多分、一番のバスは6時発に違いないので、宿を5時にはチェックアウトする。真っ暗な中をタクシーで汽車站に向かう。
成都に帰ろう。

昨日の武警との経緯は次のようなものだ。
午後3時頃に、馬爾康(マルカム)の裏山のゴンパに登ったら、若い武警二十人程が入り口の石段に屯してトランプなどをしていた。休憩時間なのか何なのかリラックスして遊んでいた。こんな武警も有りなのかと、しらっばくれて、手にカメラをぶら下げたまま通り過ぎざまに二三枚撮った。階段を降りて行こうとすると、後ろから声を掛けられた。
しまった、見破られたか。知らん振りして階段を下りると、前に廻られ何か言われた。ここはしらっばくれるしかない。
言葉が通じないとみると、カメラを出せと迫る。ぶら下げたカバンの中で先程の写真を削除しようとするが中々美味くいかない。思いっきり前の画面に戻して差し出す。暫らくいじっていたが画面が小さいのでハッキリとは確認出来ないようだ。その間に別の隊員から何やら聞かれたので、手帳を出して書いてくださいと丁寧に言う。「あなたは「本地人」か」と聞かれ、「日本人」と答える。筆談で「中文が解からないのか」と聞かれ「解からない」と答える。すると、カメラをいじっている隊員に何やら声を掛けカメラを返してくれた。良かった。
面倒は御免とばかりに、急いで階段を下りる。

暫らく降りると後ろから声がする。追ってきたのだ。意味がわからない振りでそのまま下る。人が居る所までどうしても下らなければならないと思い必死だ。だが走る訳にはいかない。
今度は本当にまずい。急いで先程の画面を削除する。終わったか終わらないうちに隊員が二人追い越した。後ろに多分三人。完全に囲まれた。
しかし、写真は削除出来たから多分大丈夫の筈だ。一番前の偉そうな隊員が何処かと電話で話をしている。「ズーベン」なる単語が聞こえる。まずい。電話の様子ではまだ結論が出ていないようだ。
「止れ!」とは言わないでただ前後を固めているだけだ。何とか人の居る通りまでは降りたい。

四、五分の下りだが非常に長い階段に感じられる。
停まらないで何とか人の居る道路まで降りることが出来た。しかし、今度は数人に完全に囲まれた。住民の人々が何だ何だの素振りをするので、自分たち二人以外は散れと一番偉そうな隊員が言った。二人の隊員に足を止められて、質問される。
なんか解からないが色々と質問されるが埒が明かないと見えて、筆談で「宿はと」聞かれるので、「名前は覚えていない」がこの辺りだと地図を書く。「名前は」ときかれ暫らく意味が解からない風にしていた。地元の人が五、六人何だ何だと言う態度で寄ってきた。人が集まってきた。するとその一番偉そうな隊員は「OK OK」という仕草。今度は後も見ないで人通りの多い方の道へ急ぐ。
たぶん人民を刺激しないように言われているのだろう。人が集まってくると急いで行ってしまった。
たった其れだけだが、心臓がバクバクだった。

一日に20数本のバスしかない時刻表を見ると、成都行きは4本で始発はやはり6時だ。これで馬爾康を離れよう。切符売り場は未だ開かない。早く切符を買ってバスの乗客になろう。やっと落ち着く。成都に帰ろう。

見渡すと、九賽溝県行き16人乗りのミニバスがある。7時10分発で、148元、約500kmの道程だ。うん、九賽溝か。あの超有名な世界遺産でもある九賽溝に直接行けるのであれば、行ってみようかとも思うし、武警や公安が何かしても反対方向に成ると思い、決断する。九賽溝は門票(入場料220元観光車90元の計310元)が中国一高いことでも有名だが。

バス代148元は今までで最も高い汽車票だ。多分道が良ければ10時間位のバス旅だ。

しかし、これがまた色々な意味で素晴らしいバスの旅だった。
その1は街を出ると直ぐに、素晴らしい凸凹の未舗装の道路で、片側が工事中の実質一車線の道路が峠まで三時間続く。時速に直して精々十四、五キロメーター位か。
その2は「紅原」の街の北側に広がる黄河と揚子江の分水嶺の一つで、大草原と言うか湿地帯の高原(3500~3800m)を通ることだ。数キロに及ぶ直線の舗装道路、緩やかにカーブする道路が大草原に一本だけある。100km/h位でとばす。バスの速度計は壊れているので正確には解からない。対向車はほんの数台だ。
周りは見渡す限りの黄色く枯れた大草原。黄河の支流の白河が緩やかに流れる。耗牛が数百、数千の群れを作ってあちこちで放牧されている。遥か遠くの山裾の耗牛は黒い点々にしか見えない。中国の広さと自然を実感する。数キロ直線を走り山裾に沿って緩やかにカーブし、一寸した丘を越えてまた次の直線コースに出る。
遊牧民のテントがポツリポツリと見える。隣の家まで何キロあるのだろう。

360度の草原遥かになだらかな山並みが望める。正に大草原、大高原、正真正銘の大草原国家旅遊風景区だ。

その3は晴れ渡った青空とその空気の清々しさだ。何も言うことは無い。

午前中の凸凹道の後は、まるで高速道路のようにとばし九賽溝には夕方の6時頃に着く。
11時間のバス旅は終わった。腰に付けた万歩計は5万台の数字を示していた。(バスの座席に座っていて反応したバウンドの数だ。)

 
コメント
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