うちの芝生が一番青い

Tokyoに暮らす、ごくごく平凡で標準的な【ナイスサーティーズ】の奮闘記。

書評 ~ ことばへの旅

2010年07月22日 | 書評
本にも「雰囲気」があると思う。

なんとなーくアカデミックな雰囲気が漂っているものだ。

文章の運びや表現、取り扱うテーマ、著者の知性などから
「よい雰囲気」を出している本は読んでいて「心地よい」。

音楽や絵画をはじめとする美術にも「雰囲気」のある作品があるようにだ。
(もっとも音楽や美術のことはよく知らないけど・・・)


その逆もある。

最近は売れれば、誰でも本が出版できる時代だ・・・。
だから残念なことに、少々「品のない」な本も多く、運悪くそのような本に出会うと「がっかりする」・・・。


今回出会ったのはそんな「雰囲気のある本」。

新聞記者、ニュースキャスター、評論家として有名な森本哲郎氏の著書である。






「ことばへの旅」


古今東西、時代の新旧、いろんな人が語った、有名な言葉を森本氏なりの感性で「噛み砕いていく」という内容である。


たとえば

パスカルの 「人間は一本の蘆にすぎない。だが、それは考える葦である。」



氏は100近い著書を残している、「知の巨人」であるといえる。
なのに表現がとても丁寧だし、ソフトである。なんだか身近な感じがするのである。

文学、哲学というものは明確な答えのようなものはないし、「雲をつかむ」ような学問であるというのが私のイメージ。

でも過去の偉人達が残したことばに、自分の実体験や考えを交え、自分なりの考え方を表す。
しかも誰でもわかるような、やさしい言葉で。そう簡単にできることではないなぁ・・・。


「あぁ、こんな考え方もあるのだなぁ」
読みながら、何度も感心したのでした。


すごく読みやすい本でしたが、「深い」内容です。
もう40年近く前に出版された本ですが、古さは感じられません。

森本氏の知識、教養の奥深さに触れ、なんだか自分までもが「アカデミック」な人間になったような錯覚になったのでした。