うちの芝生が一番青い

Tokyoに暮らす、ごくごく平凡で標準的な【ナイスサーティーズ】の奮闘記。

目黒区役所

2011年05月25日 | 建築、デザイン
所用で目黒区役所へ行ってきました。

中目黒駅の近く、駒沢通り沿いに建つこの白く美しい建築物・・・
気になっている方も多いのではないでしょうか。




窓の切り取られ方が特徴的なこの建物、「モダニズム建築の巨匠」村野藤吾氏の設計です。




前川國男氏設計の世田谷区役所と並んで、美しさを競うこの目黒区役所。

うーむ昔の官庁建築は素晴らしいなぁ・・・と思いきやこの建物は
1966年に「千代田生命保険本社ビル」として建てられたものなのでした。

コンバージョン、いわゆる転用です。
役所建築にコンバージョンされるのはかなり珍しいケースではないでしょうか。

しかし、50年ほど前の世代である【モダニズム世代】の建築家の作品からは、
建築に込める魂というか想いみたいなものが建物からビシビシ伝わってきます。

ひたすら美しく、そして「軽くない」「品がある」。
素晴らしい!

そしてこの建物のハイライトがこちら。



正面玄関を入って左手に見えてくる 中庭の演出です。
はっと息をのむような美しさがあります。

中目黒探索にいらしたついでに、この東京でもトップクラスの美しい建築。
ぜひお立ち寄りくださいませ。

書評 ~ 「東京に暮らす」

2011年05月23日 | 書評
最近区立図書館に行くことが多くなりました。
図書館はなんといっても「書籍代ゼロ」が魅力です。

また書棚を眺めてるうちに、読むジャンルが広がってくるのも良いところでしょうか。


今週のチョイスは

「東京に暮らす」   キャサリン・サンソム 著






イギリスの外交官である夫に伴って来日した著者が、昭和初期の東京の街と
人々の暮らしを軽妙な筆致で描いた日本印象記。

「東京の人々はどんな暮らしをしているのか・・」
イギリスに暮らす友人や親せきのという問いに答えるために書いたものです。


全く違う日本人の習慣や考え方に戸惑いつつも、「日本人の素晴らしさ」を紹介する内容となっていて
著者がいかに日本人の人柄や勤勉性を好意的にとらえていたかがよーく伝わってきます。

~日本人を観察していて感心することが二つあります。
 一つは 日本人がとても幸せな国民であること。
 もう一つは 今日は目新しかったことが明日にはもう当たり前のことになっていることです。

こんな表現に集約されています。

食べ物のおいしさ、日本人女性が美しく賢いこと、工芸品や季節を感じる感受性に優れていること、などなど
当時最先端の国であったイギリス人の目にこのように映っていたことは、とても嬉しくなります。


また挿絵がなかなか味わい深く、おもしろい。

  そばやの出前


  結婚式


  風呂


  金魚売り


  玄関


ちょっと誤解が入っている、こんな観察もあります。


日本人がもてなし好きなのをみて・・・
「日本人はまるで宴会のために生まれてきたような国民です・・・」


長い挨拶のやり取りをみて・・・
「お辞儀は理解不可能です。二人は喜び合って身を深くかがめ挨拶の言葉をつぶやきます。お辞儀は次第に浅くなり
 お互いに目を見つめて、いつまでお辞儀を続けるか決めます。 そしてまた目を見つめあって品よくお辞儀を終え
 暗黙のうちに挨拶の儀式は終了します。」

といったふうに・・・。ちょっと面白い。


当時の生活が垣間見られたようで、なかなか面白い本でした。
こんな本にふっと出会えるのも図書館の魅力と言えるでしょうか・・・。

 書評 ~ 「ひらめきの導火線」 

2011年05月16日 | 書評
今週の書評です。

今週のチョイスは 「ひらめきの導火線」 茂木健一郎 著





メディアでの露出度も高い茂木健一郎氏。
氏の著書を初めて手に取りました。

この著書のテーマは 「ひらめき」に関して。



 「日本人は創造性がない・・・」
 
欧米人が発明したものを【マネ】して進化させるだけ。

1980年代のジャパンバッシングのころからずーっと言われ続けてきたことである。
このことに我々日本人は引け目を感じ、そうなのだと思い込んできた。

そのことに問題提議をし、日本人のひらめきに関するオリジナリティを解説していく構成となっている。


そもそも「日本人は創造性がない・・・」というのは欧米人が作り出したフィクションに過ぎない。

その欧米人的な価値観による「ひらめき」の最たるものが「ノーベル賞」であると言えるだろう。
独創とは一人の天才がゼロから偉大なひらめきをもって成すという感覚。
「ノーベル賞」の感覚はまさしく欧米人的な発想である。

「自分こそがこのことを発明し、成し遂げたのだ」という、ヒーロー的な感覚である。


でも我々日本人には素晴らしい文化がある。
創造のプロセスに様々な人が参加するという素晴らしい「創造の文化」である。

それを象徴するのは 
・防人(当時の軍人の底辺の人々)から天皇までの歌が集められた「万葉集」であり
・誰もが提案書を提出し、即座に生産ラインに反映される「トヨタ生産方式」なのである。

「普通の人間が小さな力を重ねることで社会が回る」というこの日本的な心性。
この素晴らしい文化に我々はもっと自信を持っていくべきである。

日本人の一番の美徳、それは勤勉であるということ。
単純な精神論や根性論に陥らなければすごく理にかなった成長理論なのだそうだ。
日本人は自分たちのやり方が非常に普遍性を持ったものであるという感覚を持つべきなのである。


日本の社会にもすっかり広まった欧米的な競争や成果主義。
これとは少し違う「競争」に多様性による豊かさをはぐくむカギがある。

欧米とは全く違ったアプローチにこそ、日本が再生する可能性があるのだと思う。


それを証明する事実として、現代を代表する企業であるグーグル。
その企業理念の一つが
「一人の賢者より多数の普通の人の方が賢いし、鋭い一人の知恵より平均的な多数の知恵の方が上だ。」なのである。


著者は最後にこう結ぶ。


「日本は一度徹底的に負けるべき。」であると・・・。
直接戦ってその差を肌身で感じる。いまはその戦いすら避けて逃げている状態であると。

幕末や戦後の日本が大きく成長したのは、「欧米の列強諸国との差を痛感した」そのパワーが源となった。
それを乗り越え、すさまじい努力で急成長を遂げてきた。

今こそ原点に立ち返り、日本が持つ底力を発揮すべき時なのでしょう。

なかなか面白いアプローチのお話でした。

書評 ~ 「建築家 安藤忠雄」

2011年05月09日 | 書評
本日はかなり久しぶりの書評です。

今週のチョイスは 「建築家 安藤忠雄」







現在、世界で最も有名な建築家である。もはや疑いの余地はないと思う。

今でも大阪を拠点としながら、世界中に美しく、崇高な雰囲気さえ漂う建築を作りつづけている。
彼の作るコンクリート打ちっぱなしの建物には、建築に対する強い思いや意志が詰まっているようだ。


そんな安藤氏の今まで歩んできた人生、建築に対する思いを
自身の作品を紹介しながら綴った構成となっている。



もうかなり有名な話であるが、安藤氏は建築の勉強を学校で受けていない。

経済的な理由から大学には進学せず、誰にも師事することなく全て独学で学んできたというのだ。
アルバイトをしながらひたすら書籍を読み、コルビジェなどの作品集をトレースしていく。
(時には大学の授業に潜り込み、講義を受けていたらしい)

そしてお金をためては、世界中を旅しながら建築物を見てまわる。
まさしく全て独学である。


将来に対する保障など全くない中で自分の事務所を開設。
全く仕事がない状況の中、彼を支え続けたのは「強い意志」「強い気持ち」なのである。

実際、彼が残してきた建築は、実現するために『様々なハードル』を乗り越えなくてはならないものが
多いのだが、それを常に乗り越えながら実現させているところが凄いと思う。
(技術的、法規的、コスト的・・・などなど)


それから40年。
若いころ思い描いた自分になっている。





一見「華やかなサクセスストーリー」に見えるが、安藤氏はそれを全面的に否定している。


 ~ とにかく思うようにいかないことばかり、なにか仕掛けても大抵は失敗に終わった。
   それでも僅かな可能性に懸けて、ひたすら影の中を歩き、一つ掴まえたら、またその次を目指していく。
   そうして、小さな希望の光をつないで、必死に生きてきた人生だった。


安藤氏は人間にとっての 【幸せ】を 次のように考えている。


・本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。
 その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている。

 無我夢中の時間の中にこそ、人間にとっての【幸せ】があるのではないだろうか。



建築に全く興味がない方にもおすすめです。
講演会のときもそうでしたが、話が面白く、わかりやすい。そして深いのです。

「いいなぁ」 と思うこと

2011年05月02日 | 日記
今日の午前中、所用で大森まで行ってきました。
東急バスを乗り継いでのショートトリップ、東急バスの全線定期フル活用です。

城南地区に網の目のように張り巡らされたバス路線は誠に便利。
渋谷、目黒、世田谷、品川エリアのたいていの場所に行けます。
なんと東京駅まで伸びる路線もある!

バスの移動というのはなんとも落ち着きます。
ゆっくりと進んでいくため、車窓からの風景も良い感じで移っていく。
お気に入りの方も多いのではないでしょうか。


そんなバスの車中でいつも感じること。
それは高齢の方のマナーがとても良いということです。

団塊の世代とよばれる方々の『一世代上』以上の方々だと思いますが
降りるときに、多くの方が

「ありがとうございました。」とおじぎして降車されるのです。



いつも「あぁ、いいなぁ。」と思います。
モラルとか礼儀といったものが生活のベースに堅くそなわっている。

古くにはほとんどの日本人が持ち合わせていた感覚なのでしょうね。
これこそ日本人が大切にすべきアイデンティティの一つなのだと思います。